ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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そして歴史は動き出す

前回のあらすじ(大嘘)!!

 

 市立オラリオ学院高等部アリィは、ホスト部にあった壺を割ってしまい借金を背負うことに!

 本来は雑用になるはずだったが、その美形からホストとして働くことになったアリィだったが、一つ問題がある。それは、彼女は「女の子」であった!!

 

アリィ 男装ホスト。天然で女をたらす……ように見えて計算づく。

 

アフロディーテ ホスト部創設者。楽しいことが大好き。

 

リリウス 俺様営業。アフロディーテが部室に近付くと出入口に移動する。

 

ベル ストーカー被害に悩まされる真の天然年上キラーの部員。

 

シル ベルの客の一人。ストーカー被害に親身に相談を受けるが、リリウスが時折うさぎ探偵の目で見つめている。

 

アレン 俺様営業。リリウスと仲が悪い。

 

ヘディン 優等生。

 

ヘグニ 中二病。

 

ガリバー四兄弟 四人で騒ぐ。

 

フィン 人気ナンバーワン。経理も行っている。

 

ティオネ フィンのストーカー。

 

 


 

 

 後にシンドの戦いと呼ばれる戦いはたった1日で終わった。

 3人と3匹の殲滅戦。『三英傑三獣士』と語られる事になる戦いではシャルザード軍がしたことと言えば戦争の後始末。

 

 死体が残っていれば運が良く、焼き尽くされた者や原型が分からぬほどに破壊された者までいる。

 

 戦を悪戯に拡大させた黒幕ともいえる神ラシャプは姿を消したらしい。それを聞いたリリウスは一度だけ砂漠を眺め、しかし直ぐに興味を失った。

 

「アリィ様、ワルサの殲滅と平和が戻った事をいち早く民へ報せましょう」

「あ、ああ………」

 

 大勢の前で真名を呼ばれることにまだ戸惑いを覚えるアリィ。

 

 しかし、これは戦争と呼んでも良かったのか。とにかく戦争は終わったが………。

 

 などと考えていると王都ソルシャナに辿り着く。アリィ達に気付いた民達から歓声が上がる。何もしてない兵士は何処か気まずそうだ。

 

「リリウス!!」

 

 アポピスの鱗や牙を引きずるリリウスはアリィの言葉に振り返る。

 

「ありがとう、貴方達のおかげで、シャルザードの平和は戻った!」

「そうだな」

「私だけでは無理だった! 故郷に帰ることも、こうして民を笑顔にすること出来なかった!」

「礼を言わせて欲しい! 貴方にとって、別の恩人への恩返しだとしても、私は貴方達に救われた」

「そうか………じゃあ、ここまでだ」

 

 リリウスは再び背を向ける。エピメテウスもそれに続く。2人の背中に、アリィは思わず息を呑む。

 

「わ、私は!」

「…………」

 

 再び視線を向けるリリウスとエピメテウス。

 

「私はいずれ、子を残さなくてはならない。相手も、民が納得するような………リリウス、お前なら……」

 

 王族の務め、などと取り繕った未練だ。

 王子として崇める民達、王族として仕える臣下。未熟な娘、或は成長を始めた王として扱うエピメテウスとも違う……『王』という役目を持っているだけの、ただのアリィとして対面し続けたリリウスへの、仄かに灯った想いがまだ離れたくないと少女の胸で燻る。

 

 もし断られたら、その時は…………。

 

「…………どっちでも良いが」

 

 と、リリウスは民に目を向ける。

 

「お前は『王』以外にはなれねえよ」

 

 ここでリリウスを選び国を捨てたとしても、アリィはシャルザードから逃れる事は出来ない。呪ではなく、彼女が王だから。

 

「金が貯まったら、モンスター退治の依頼でもオラリオに出すと良い。ロイマンが何を喚こうと格安で請け負ってやる」

 

 今度こそ歩き出すリリウス。次は、何を言っても止まらぬのだろう。

 だけど、今生の別れではない。

 

「……………()()()()()

「機会があればな」

 

 

 

 

「……帰りましょう」

「よろしいので?」

「惜しいけれど、あの子の輝きを奪ってしまうもの」

 

 その光景を眺めていたフレイヤは、そう言って微笑む。フレイヤが目をつけたアリィの輝きは『王』であろうとするが故の輝き。

 

 フレイヤが彼女を連れて行っても、その輝きを手元に収める事は出来ない。

 

「あの子達も、オラリオに向かっているようだし」

「…………………」

「貴方達もダンジョンに潜りたいでしょう?」

 

 この世の何処よりも経験値(エクセリア)を得るに適した地下に広がるダンジョン。

 リリウス・アーデというLv.8を見せられ、しかも殴り飛ばされた彼等が常にオラリオの方向を意識していたのをフレイヤは知っている。

 

「ごめんなさいね、我儘に付き合わせて。遠征に行ってきてもいいのよ? 喧嘩はしちゃ駄目だけど」

「御身を守る者が…………」

「『あの子の店』なら大丈夫よ」

 

 

 

 

 王都陥落という絶望的な状況から始まり、存亡の危機に立ち向かったシャルザードは以降諸外国が目を見張る速度で成長していく。

 

 『シンドの戦い』を契機に衰退していくワルサは元より、暗躍していた【ラシャプ・ファミリア】がシャルザードを脅かすことは二度となかった。

 

 復興したソルシャナの広場に飾られる救国の勇士『三英傑三獣士』の像は、オラリオの有名なとある英雄達に似ているとか似てないとか度々論議されるらしい。

 

 歴史家曰くかの英雄の旅路に沿ってはいるそうだ。

 

 また、王国の発展の傍らにはその強さ(カリスマ)により時の人となったボフマン・ファズール……ファズール商会が常に居たとされ、奴隷の交易から足を洗い『軍人も顔負けな武闘派集団に至った』謎の遍歴を持つ事になる。

 

 シャルザードは第十五代国王にして、初代女王となったアリィ・ラザ・シャルザードによる最盛期を迎える事となる。

 

 

 そして、そんな一風変わった『英雄譚』の始まりの影で、『記されない筈だった英雄譚』の幕開け………新たな『悪』の胎動が始まっていた。

 

 

 

 地上に放った最後の精霊がやられた。ならば、彼も戻って来るだろう。

 そうなれば闇派閥(イヴィルス)が五月蝿い。どうにか戻ってこないようにと精霊の力を借りようとするだろう。

 

「馬鹿馬鹿しい。それが出来るなら、【ゼウス】と【ヘラ】(さいきょう)の時代に隠れ潜んでいないだろう」

 

 とはいえ、嘗ての再現のように大人しくされるのも面倒。

 神は魔石の光でぼんやりと照らされた広間を見下ろす。

 

 『これ』は計画実行時のリリウスを想定して育てている。今のリリウス相手に戦える可能性も十分あるが、これだってまだまだ成長させたいのだ。

 

「何より私はリリウスを殺したいが、死んでほしくはない」

 

 無残に食い殺されても、逆に食い殺して一人生き残っても、どちらでも良い。故にこそ、時期を見誤ってはならない。

 

巨蟲(ヴィルガ)でも放ってやれば、形だけでも示せるか」

 

 万物を溶かし尽くすモンスターだが、彼にとっては少し酸味の効いたグミ程度だろう。

 

 本当は出迎えたいが、どうせ覚えられてもいない。出迎えは我慢するしかない。

 今はこちらに集中するべきだ、と広間に落とされたのはモンスターの骨。

 

 湖に浮かぶ小島と勘違いする程の巨大な怪物の死体(ドロップアイテム)。まず間違いなくベヒーモス達と同じ、ダンジョンの放つ滅び。

 

 相応の武具を用意しなければ傷一つつけられないであろう骨をゴリゴリと噛み砕く音が響く。

 うっすら浮かび上がる黒い鱗。巨大な何かが蠢いている。

 

「…………もう一匹の竜も作り、柱も設置し………全部やらなくてはならないのが、神の辛いところだな」

 

 

 

 

 フェルズはリリウスからの手紙を受け取っていた。

 もうすぐ帰る、とのことだ。コレがロイマンに知られたら、宣伝も兼ねた祭り騒ぎにでもしそうなので噂にならないようにしなくては。

 

 一先ずソーマとアストレア、それからガネーシャには伝えておこう。

 後、リリウスからの個人に向けられた手紙。

 

 【アストレア・ファミリア】でも【ガネーシャ・ファミリア】でもなく、その派閥においてたった一人交流があるが故の個人向け。

 

 まあ『彼女』が騒ぐとも思えないし、部屋に手紙をこっそり置いておこう。

 

 

 

 

 アミッド・テアサナーレは治療師(ヒーラー)である。自他ともに認める生粋の後衛。それも、攻撃手段を持たない。

 

 だけど彼女はダンジョンに潜る。彼女の脳裏から離れないのは、毒に苦しむとある少年。

 ニ大治療師(ヒーラー)と称されるもう一人と共に行っても延命させ苦しめる事しか出来なかった。

 

 結局、彼の器を昇華させることで適応させた。

 あんな思いは、二度とごめんだ。魔法を使えば『魔力』は上がるだろうが、それでもいずれ頭打ち。ならば器を昇華させるしかない。

 

 あれからランクアップしたのはたった一度。リリウスはまた強くなっている。そんな彼が苦しむ程の毒や呪なら、今のままでは足らない。

 

「……………?」

 

 ダンジョンから帰った彼女の部屋の机に置かれた手紙。誰が?

 鍵はかかっている。勝手に入り込む輩などこの派閥にはいない。

 

 手紙は2枚。1枚目を開ける。

 『騒がないなら2枚目を開けてくれ』とだけ。首を傾げながら2枚目を開く。

 

『帰る。リリウス』

 

「…………………は?」

 

 何も言わず出て行ったリリウスからの、初めての手紙。とても単純なその文字に、アミッドは少しキレた。

 

 

 

「リリウスが?」

「うむ! もうすぐ戻って来る!」

 

 と、モストマスキュラーのポーズを取るガネーシャ。

 

「ただし、騒ぎは起こさぬよう内密に! と言うかそろそろが何時か分からん!」

「お姉ちゃん、私暫く門番やるね!」

 

 言うが早いか、アーディは飛び出していった。

 

 

 

 

「アタシの第一級入りのプレゼントにしちゃ、豪華すぎねえか」

 

 と、ライラは皮肉を言う。

 

「てか、今日のパーティーの趣旨が変わりそうだな。良いけどよ、別に」

「大丈夫よ! そっちはリリウスが帰ってきてから開きましょう!」

「彼が素直に来るでしょうか?」

「食事の用意をすれば来るでしょうねえ…………ああ、そう言えばセシル達は初めて会うのでしたね。物理的に食われないよう気を付けて」

 

 物理的に? と首を傾げるセシル達。

 

「まあよほど腹減ってねえ限りは、喧嘩売らなきゃ安全だよ」

 

 

 

「がああああ! この、クソ虫があ!!」

 

 食料を溶かすわ、なら食ってやろうとすれば自分の溶解液で溶けるわ、クソみたいな生態の新種のモンスターによって、リリウスは餓えていた。

 常日頃から餓えてはいるが、食材を奪われとてもとても苛立っていた。

 

 

 

「もうすぐつくぜぇ、坊主」

 

 そして、餓えた獣が歩く街道と同じ道を走る馬車で一人の少年が天を突く塔に目を輝かせていた。

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