ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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4度目の決着

 漆黒のバロールこと『単眼の王』。それは古代に於いて黒竜以前、『大穴』を守護せし門番。

 数多の英傑を消し飛ばし、当時最強の英雄の一人である小人族(パルゥム)の騎士と相打ちになった怪物。

 

 その豪腕は大蛇の鱗を砕き、その死閃は獣の肉を抉る。

 肘から生えた鋭い刺は英雄の剣を弾き牙は蛇の体を抉る。

 

 一人と一匹の戦いに苦しむダンジョンが放った刺客。

 強かった。だからこそヴリトラとリリウスは真っ先に『単眼の王』を狙ったのだ。

 

「ハァー、ハァー…………!」

「…………ふぅ、はぁ!」

 

 ヴリトラが魔石を喰らい、吸収した魔力で傷を癒す。リリウスもバロールの血肉で傷を癒した。

 死にかけるほど強かったが、それを喰らい万全以上の万全。

 

 共闘はここまで。即座にぶつかり合う。

 

「ドゥルガー!!」

 

 突進に吹き飛ばされたリリウスが叫べば、無数の武具が現れる。

 それをLv.8の腕力で投げ飛ばす。

 

 軌跡に白い輪を出現させながら迫る武具がヴリトラの鱗を傷つける。それでも深くは刺さっていない。

 

「爆ぜろ」

「ガッ──!?」

 

 轟音。武具が爆ぜ、内包していた魔力を放出する。吸収すら間に合わず炎が剥がされ、衝撃が内臓を揺さぶる。

 

 リリウスの蹴りが罅割れた鱗を蹴りつけ、完全に砕いた。

 

「…………カッ」

 

 ゴボッと血を吐き出すヴリトラはリリウスへ牙を突き刺す。

 大量の毒が流し込まれた。

 

「っ!!」

 

 毒自体はリリウスに効果はないが、その量に浮き上がり弾け血液が押し出される。

 毒混じりのドス黒い血涙を流すリリウスは牙をへし折り喰らいながらマーダを振るう。

 

 紅い炎で形成された巨大な蛇がヴリトラへ飛び掛かる。

 

「グルアア!?」

 

 魔法を喰らうヴリトラの炎に触れても衰える様子はない。どころか、こちらの炎を奪い火力を増す。耐火性に優れた鱗を焼く程ではないが炎でありながら実体を持つかのようにヴリトラに絡みつく。

 

「グルルル………ゴアアアアアア!!」

「!!」

 

 ヴリトラから魔力が溢れ出し、確かな理知を宿していた瞳が凶猛に染まる。

 理性を代価とした魔力の過剰解放。フィンやリリウスのように獣へと堕ちることで力を激増させる奥の手。噴き出す魔力に炎の蛇の体が揺らぐ。

 

「【傲慢なる悪意の王。血の河を啜れ、肉を貪れ】」

 

 対するリリウスの選択も、同じ。

 

「【ラーヴァナ】!!」

 

 理性が完全に吹き飛ぶ。獣の如き本能を剥き出しに、餓えた獣は目の前の巨大な肉に涎を垂らす。

 

 目の前の蛇は獲物。『捕食者』による全能力、特に『敏捷』と『力』が増幅。

 蛇は格上。『強食』により全能力上昇。

 

 ただの踏み込みが大穴を生む。ただの疾走が大地を抉り峡谷を生み出す。

 

「ガアアアアア!!」

「グオオオオオオオ!!」

 

 拳と頭蓋がぶつかり合い新たに生まれたジャガーノートが消し飛ぶ。

 リリウスの拳が砕け、ヴリトラの頭蓋が罅割れる。

 

 剣を振るえば大気がうねり、空間を抉るような斬撃がヴリトラへ襲いかかりヴリトラは斬撃を突き破り尾を叩き込む。

 

「!?」

「グ、ギ………!」

 

 リリウスは()()()()()()()。そのまま首と腰の力で100M(メドル)近くあるヴリトラの巨体を投げ飛ばした。

 

「ガアッ!」

 

 巨体でも………巨体だからこそ、叩きつけられた衝撃は大きく再び血を吐き出すヴリトラ。尻尾を持ち上げ噛みついたままのリリウスを壁に叩きつけた。

 

「グルル………!」

 

 忌々しげにヴリトラを睨むリリウスは、噛みついたままの牙から雷を体内に流し込む。体内の焼夷体液(ガソリン)が魔力を吸うも、Lv.8の精霊混じりが放つ雷はヴリトラの身を体内から焼いていく。

 

「オオオ!」

 

 全身から蒼い炎を放つヴリトラ。リリウスの魔力を吸い、発火時点でかなりの高温の蒼炎にリリウスは飛び退き何処からともなく二振りのシミターを取り出す。

 

「ガアアアア!!」

 

 理性を失いながらも失われない技の冴え。5年の月日をかけて身に染み込ませた神々の武技は、爆増したステイタスで振るわれる神技は、まさしく破壊の嵐となりヴリトラへ襲いかかる。

 

 規格外の破壊の渦に飲まれるヴリトラ。されどこちらも規格外。

 

「オオオオ!」

 

 罅割れ、砕かれた鱗を内から再生させることで剥がし体を振るい欠片を飛ばす。焼夷体液(ガソリン)により燃え上がる鱗は鉄すら熔かすだろう。

 

 リリウスは猛毒の風を纏い天井に跳ぶ。ヴリトラが顔を持ち上げるより早くリリウスが天井を蹴り黒風で加速する。

 

 漆黒の流星が蛇の胴体に落ちる。

 

「ガアアアアアア!!」

「ゴア!!」

 

 先に耐えられなくなったのはボロボロにされたダンジョンの地面。

 51階層。上から響く轟音に怯え丸くなっていた不運なカドモスが燃え盛る蛇に焼かれながら押しつぶされる。

 52階層。さらなる下層から砲撃が放たれるも効果はなく、空いた穴を広げながら落下。

 58階層。ヴァルガング・ドラゴンが焼け死ぬ。

 59階層。せっせと階層の『改造』に勤しむとある存在の『触手』が遠くから響く轟音に首を傾げた。

 

 62階層。

 【ゼウス】、【ヘラ】以来未踏の階域。

 氷河湖に落ちた超高温のヴリトラにより水蒸気爆発が起きて辺り一帯のモンスターが消し飛ぶ。

 

 もうもうと立ち上る蒸気の中で暴れまわる2匹の獣。

 互いに限界は近付いていた。

 

「…………ブラフマー………」

 

 リリウスが再びダンジョンから力を奪う。二度目の、しかも10階層分以上下に潜った結果、その力は先ほど以上。

 

 ヴリトラも体内で炎を燃やし、魔力を流し込み火力を高める。全身の発火器官が燃え上がり、まるで蒼い鬣を生やしたかのような姿となる。

 

「……ストラ!!」

「ガアア!!」

 

 放たれる神技。

 階層を白く染める熱線。

 

 ぶつかり合う2つの破壊。閃光が階層中に広がり、モンスターは消し飛び59階層で勤勉に『異界』の作成に励んでいた『触手』が一時的に断ち切られ61階層と62階層が繋がる。

 

 

 

 

「………俺の勝ちだ」

 

 倒れるヴリトラの体に登り、リリウスはマーダを構える。

 

「次は『約束』を果たしてもらうぞ」

 

 振り下ろされた魔剣が魔石に突き刺さり、リリウスが押し込むと衝撃が貫通して魔石が割れる。

 

 ヴリトラの体が灰へと崩れ鱗や牙、焼夷体液(ガソリン)の精製器官である竜胆が残る。超大型級すら優に超える巨体故に、当然ドロップアイテムも大量。

 

 勿体ないが回復の為に…………

 

「オオオオ!!」

 

 と、ダンジョンの破壊者を滅ぼさんとするジャガーノートが現れた。

 

 

 

 

「振動が止まった。決着がついたのか?」

 

 ダンジョン39階層。深層最初の安全階層(セフティーゾーン)にまで避難した【ロキ・ファミリア】は下から断続的に響いていた振動が収まった。

 

 しかし、ここは未だ深層。動けない団員も半分以上。めまいだけで済んでいた団員にも動けなくなった者がいる。どうする? 地上に戻り、アミッドを連れてくるべきか? そう考えていると、眩い陽光が辺りを包む。

 

 魔力を含んだ光。しかしダメージはない。寧ろ………

 

「回復魔法?」

「アア。巻キ込ンダ詫ダ」

 

 光源より現れたのは、黒衣の人物。仮面で顔を隠し、声も変えている。性別も種族も分からぬ不審人物。

 

「………君は、さっき仮面の男の仲間かな?」

「アア」

 

 性別は男。一つだけ情報を手にできた。

 

「よければ、君達が何者なのか教えてくれるかな?」

 

 と、フィンが尋ねるが仮面の人物がやってきた方角から遠吠えが聞こえた。

 仮面の人物は無言で背を向けるとその場から立ち去った。

 


 

『単眼の王』漆黒のバロール

ジャガーノートの大群ですらつまむだけだったリリウスとヴリトラが速攻で共闘するレベルの怪物。ポップの瞬間を狙われ初撃を受けたがそれでもリリウス達を殺しかける正真正銘の化け物。

ユザパられた哀れなボスキャラ。

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