ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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間違いはなく

 亜人(デミ・ヒューマン)専門店と言うのは割とある。特にエルフの専門店は敷居が高いを通り越して排他的。エルフ以外の客がうっかり入ろうものなら店中の者に睨まれるだろう。

 

 そんなエルフの店に、リリウスは居た。

 アルヴの王森を救ったからだろう。

 

「まずは、礼を。私の故郷を救ってくれてありがとう」

「成り行きだ」

「その成り行きの結果、私の故郷は救われた」

「……………嫌いだったんじゃないのか?」

「…………ああ、嫌いだったさ。慣習に縛られ、同じ事を繰り返して、変わろうとしない。世界においていかれている自覚もなく、自分達は至高だと疑わない」

 

 それでも、あの森は故郷なのだ。

 

「だから、ありがとう」

「…………………まずってことは、次は?」

「昨日は、済まなかった。お前の向かいに居た者はベートが侮辱した者と聞いた。不手際で危険にさらしたものをああも笑うなど………もっと早く止めるべきだった」

「別に彼奴は間違ったことは言ってねえだろ」

 

 と、リリウスは応えた。確かにミノタウロスが上層に来たのは【ロキ・ファミリア】が原因だろう。

 だが、別にミノタウロスでなくとも人は殺されるし、自分より強いモンスターが来ないと思ってるならそれは考えが甘すぎる。

 

 存外、ベートとリリウスの考えは近いのだ。違いがあるとすればリリウスは赤の他人に興味が無く、ベートは赤の他人の泣き声を、その予兆ですら放っておけないということ。

 

「残酷な篩ではあっても、理不尽な罵倒ではあっても、無意味な嘲弄じゃねえ………まあ昔の俺ならぶっ殺してたが」

 

 リリウス的には、むしろ意味を理解したうえで笑うベートより理解せず笑っていた他の奴等の方がムカつく。特に監督責任のあるロキ。フィンは笑ってなかったしどうでもいい。

 

「変わったな…………」

「もうガキじゃねえんだ」

 

 と、運ばれてきた前菜の皿を掴み口に流し込むリリウス。

 

「おかわり」

「それから、フィンが済まない」

「?」

「お前の叫びをなかったことにした」

「………………あー」

 

 何のことか分からなかったが、恐らくは7年前の大抗争でアルフィアに叫んだ言葉だろう。

 正義に石を投げて罵倒しても正義に救ってもらえた民を見て救ってもらえなかった自分と比べてだいぶ子供っぽいことを叫んでいた気がする。

 

「別に大きく変わらないだろ」

 

 むしろ下手に有名にすれば人喰いが知られる可能性もあった。あの時のリリウスは石投げてきた民衆鏖にしたりもしていたし。

 

「そうか………」

「他に何か聞きたいことでも?」

「……………アイズの……いや」

「…………………アイズか」

 

 一応、仲は良かったほうだろう。大抗争以来街中で出会うとそこそこ話すし、ダンジョンで後をチョコチョコ付いてきた。

 

「まだ怖がられてるみてえだが」

「あの子は………」

「怖がらない為に強くなろうとしてるって? 考えが単純だな、ガキだし」

「1歳差だろう」

「俺の方が歳上だ」

 

 運ばれてきた料理の少なさに目を細め、また皿を掴んで口の中に流し込む。

 

「でもまあ、強くなってるだろ。今はLv.5だったか?」

「伸び悩んでいるがな」

「ランクアップが近いんだろ。7年で3から6になるんなら早い方なんじゃねえの」

 

 5から6まで1週間のリリウスが言ってもあまり説得力がない気がする。

 

「…………3年か」

「…………?」

「あの子がLv.5になったのは3年前。私達は、8年かかった」

「俺は1週間」

「…………ああ。辛い思いをさせた。お前はアルフィアを……」

 

 と、リヴェリアの顔の横を何かが通り抜け壁に突き刺さる。

 木製のフォークだ。

 

「俺がアルフィアを慕っている事と、殺したことは俺の意思だ。押し付けたなんて思い上がるな殺すぞ」

「…………すまない、軽率だった」

「むしろ、彼奴等の命を踏み台にして成長してないことを詫びろ」

「…………ああ、私達は停滞した。だが、それでも間違いだとは思わない」

 

 フォークを引っこ抜くリリウスに、リヴェリアはそう言い切る。

 

「ここ3年、Lv.2を含めた遠征で死者を出していない。それは、紛れもない偉業だ」

「……………まあ、アルフィアみてえに死者を出すやり方はそもそも後進が育たないか」

 

 折れてるのを見て噛み砕き飲み込む。

 

 リヴェリアの言う事も尤もだろう。冒険者は冒険するべきだ。そうしなければ強くなれない。だが、ただ強いだけの数人では全てを守れない。古代から続く不文律。

 

 後進を育てる。それも間違いなく正しい。

 

「だが結局それは、お前達の見た世界で俺の見ている世界じゃねえ」

 

 リリウスは世界を救うと決めた。決めている。フィン・ディムナが理由はどうあれそれを【ロキ・ファミリア】の役目としようと、リリウスは自分とエピメテウス達でやり切る。だから後進育成に興味はない。

 

 目線で言えば、フィンと同じとも言えるだろう。

 

「もうガキでもねえんだ、お前等がちゃんとしてればなんて甘える歳も過ぎた」

 

 だから、と席に座り直す。

 

「ガキ扱いはやめろ」

「………ああ」

 

 それを甘えと言い切るリリウスに悲しく思ってしまうリヴェリアに、リリウスは気づきながらも次のメニューを待った。

 

 

 

「おーい、リリウスく〜ん! それとシャバラ君にシュヤーマ君!」

「……ヘスティア?」

「ワフ」

「クゥン」

 

 帰り道。屋台の匂いに誘われたリリウスに声を掛ける幼女が居た。人間離れした美しい容姿……というよりは可愛らしい容姿の幼女、神ヘスティアだ。

 

 先日ベルを運んだ際に知り合った。どっかで名前を聞いた気がするが忘れた。

 

「この辺りで服の仕立て直しをしてくれる店知らないかい!? この服を買った店では断られちゃって」

「知らん」

「そっかあ………」

 

 確か『神の宴』があるとか………それ関連だろう。

 

「あ、そうだ。僕、暫く帰らないからその間ベル君を頼んだよ? 鍛えてくれるっていうけど、無茶はさせないでね」

「ああ、死なせたりしない」

「ならよし! 待ってろ、ヘファイストス〜!」

 

 そう言いながら服屋を求めて走り去るヘスティア。

 ヘファイストス………鍛冶の神か。後アフロディーテの元カノ…………。

 

「…………武器が良いのか。なら………」

 

 折れた剣で戦ったりしていた自分の時とは条件が違う。もう少しキツくてもいいだろう。昨日の動きを見る限り……。

 

「取り敢えずモンスターの群れに凌辱させるか」

 

 鎖で縛って動ける範囲を制限したりするのも良いかもしれない。弟子を取るのは初めてだ、うまく出来るだろうか?

 

「クゥ………」

「ん? 別に死なせないが」

「ワフゥ」

「ああ、お前の魔法があるからな」

 

 2匹はベルに同情し、心の中でヘスティアに謝罪した。

 

 

 

 

 

 

 アンフィス・バエナ。その潜在能力(ポテンシャル)はLv.5とされる下層の階層主。

 ただしこの推奨はあくまで冒険者有利の陸地での話であり、その討伐は陸地を推奨される。

 

 そんな水の怪物が泳ぐ巨大湖の辺に立つ一人の男。人間の気配に顔を出すアンフィス・バエナを牙剥き出しに唸る狼人(ウェアウルフ)

 

 取り出した魔剣を足に放つ。銀靴が魔力を吸い、一歩水面に進めば水面が凍りつき足場となる。

 

「Lv.6か………」

 

 リリウスがこれを単騎で討伐したのはLv.3。ギルドが認定レベルの再確認の為に冒険者に依頼を出して、結局変わらなかったという。

 

 階層主は本来同レベル帯であろうと単騎で挑むべきではないだろう。Lv.6のウダイオスも【ロキ・ファミリア】が『総出』で倒した相手。それと同等。

 

「蹴り殺してやる」

 

 翌日、【ロキ・ファミリア】に新たなLv.6が現れた。

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