ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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リヴィラ攻防戦

 モンスターの他に変なのが交じってる。それがリリウスの感想。

 食人花や芋虫については()()()()()から知っていたが、これは初耳。『彼女達』の劣化複製品だろうが。

 

「しししん、しねえええ!」

「あの人のかたたき! かたた、かたき!」

「るあああああ!!」

 

 食人花の蔓を生やす異形の人間。

 人とモンスターの、真の意味での混成種。

 人並み外れた人でなし。

 

 食人花の口がない者も居れば腹から口を生やす者、後頭部から出して輝夜の言うフタクチオンナとか言う極東伝説上の怪異みたいなのもいる。男だが。

 

 そして、リリウスを憎んでいる。だけど心当たりは少しもない。本当に誰?

 フィンに絡んでる女からして、自分が恨みの対象で間違いないとは思うのだが。それにしても数が多い。

 

「エピメテウス!!」

「【永炎(えいえん)たれ不滅の英雄。太陽(ヘリオス)より盗みし消えることなき英雄譚(ひかり)を此処に】」

 

 紡がれる詠唱。溢れ出す魔力。

 煌々と輝く(ひかり)の化身に()を失い蛾の如く群がる食人花。

 

 されど、その牙は当たらず。その蔓は切り裂かれ焼き尽くされる。

 

「【来たれ炎軍(えんぐん)! 世に示せ、これぞ我等が英雄神話】!!」

「【ヘリオス・エリュシオン】!!」

 

 現れたるは炎の戦士達。古の時代、恩恵を持たぬままモンスターと戦い抗い続けた古き英雄軍、その再現体。

 

白の芸術(アルスワイス)……【暴食】、【静寂】」

 

 同時にリリウスが呼び出すは新しい英雄譚、3大冒険者依頼(クエスト)にとどめを刺した神軍と称された戦士達の内2人。あとついでに複数のリリウス。

 

「リリウスがいっぱい!? え、あれ………1人ぐらいバレないかな!?」

「冷静になってくださいアーディさん。貴方は都市の憲兵でしょう」

 

 大混乱のアーディを杖で思っきり殴るアミッド。Lv.6相手だし、Lv.4の自分が本気でやっても問題ないという医療従事者的判断だ。

 

「いたた。でもありがとう。冷静になれた……ところでリリウスの分身と炎の兵士さん達、Lv.6(わたし)より強くない?」

「生憎支援職でLv.4の私には分かりかねます」

 

 炎の戦士達は強さにバラツキがある。それでも最低でもLv.4………高ければLv.6並。

 リリウスの分身達もLv.6は余裕であるし、【暴食】と【静寂】に至ってはそれより上。当然数が多かろうとLv.4程度しかない食人花はみるみる内に削られていく。と…………

 

「「「!?」」」

 

 轟音が響き、19階層入口が爆ぜる。

 土煙の中から現れたのは超巨大な蛇のような、極彩色の植物型モンスター。

 食人花にも似た気味悪さを持つモンスターの直ぐ側には無数の食人花の群。

 

「モンスターの援軍だと!? おいおい、ふざけんじゃねえ!!」

 

 超大型に区分されるであろう食人花に加え、それすら優に超える階層主級のモンスター。リリウスとエピメテウスの出した氷炎の戦士により押し返したと思ったら、まさかの援軍に冒険者の誰かが呻く。

 

白の芸術(アルスワイス)、【ウダイオス】」

「炎の記憶、【ベヒーモス】」

 

 が、リリウスが作り出した骨の氷像が無数の氷柱を地面から生やしモンスターの群れを固定し、エピメテウスが作り出した巨獣が炎風で動きを止めたモンスターを氷ごと蒸発させた。

 

「もう全部彼奴等2人で良いんじゃないか」

 

 その光景を見て1人の女冒険者が呻く。世界最強とされるリリウス・アーデはもちろんだが、その相方らしい男は何者だ?

 

 英雄の子孫、とまでしか調べられなかったが、英雄の血筋とはああも規格外なのか? いっそ、英雄の子孫探して眷族に迎え入れた方が備えになるのでは?

 

 なんてことを現実逃避気味に考える中、不意にそれは起こる。或いは、()()()とでも言おうか。

 

「──────!!」

「わっ!? な、なんだ!?」

 

 唐突に、女の持つポーチから悲鳴が響く。この混戦の中、反応したのはリリウスとアイズと…………()()()

 

「ああ、そこにあったか」

「!!」

 

 殺気もなく、高揚もなく、怒りもない。そこらの石を蹴り飛ばしその下に偶々探し物を見つけた程度の感慨すら感じさせぬ冷たく平坦な声。

 

 振り向くと同時に、金属音。

 

「…………は?」

「…………っ!」

 

 異変に気付いた2人の内、距離が近かったアイズが女冒険者………ハシャーナから件の持ち物を受け取った運び屋ルルネに迫っていた凶刃を止める。

 

「!!」

 

 キリキリキリと金属の削れる音が聞こえる。漸く自分が殺されかけたと気付き腰を抜かすルルネ。

 アイズもまた、戦慄していた。

 

 重い。第一級(Lv.5)の自分が両手を使っているのに対し、女は片手。それでも押し込まれる。

 

「邪魔だ」

 

 片刃の剣に手を添え更に押し込む。ズリとアイズの足が僅かに沈む。このままでは斬られる。人相手には使いたくないが…………!

 

「【目覚めよ(テンペスト)】!!」

 

 紡がれるは一言(ワンワード)。超短文詠唱に区分される【エアリアル(魔法)】は第一級である事を加味しても規格外の暴風を生み出す。

 女の体が浮き、吹き飛ばされた。

 

「……………!」

 

 まだ腕に感覚が残っている。ハシャーナ曰く、フィンを超える『力』のアビリティ。なるほど、確かにこれはガレスを彷彿とさせる。

 

「……探し物が3つも見つかるとはな」

 

 そして、報告通り『耐久』も規格外。瓦礫を押しのけ立ち上がった女はゴキゴキと首を鳴らす。

 見覚えがない。炎の様に赤い髪に、翠玉の瞳。強いて言うならアリーゼ・ローヴェルに色合いは似ているだろうか?

 

 これだけの強者まるで知らない。それが悪名であれ、あれだけの武勇が広まらぬなどあり得るのか?

 

「あの小娘がスカディか…………手を出すなだと? ああ、面倒な」

 

 寄生花を宿主ごと凍らせていくリリウスを睨みながら女は顔を歪める。スカディ? 何のことだ?

 疑問に思いつつも、今は取り合う必要がないと判断するアイズ。だが、続く言葉は決して無視できるものではなかった。

 

()()()………お前だけでも連れて行かせてもらう」

「────!!」

 

 それはアイズの名ではない。それでも、アイズに馴染みの深い名前。だが、それを知っているのはロキとフィン、リヴェリアにガレスの4人だけの筈。

 

 なら、この人は……誰だ?

 

「オアアアアアアア!!」

 

 と、その時。ルルネのポーチの隙間からズルリと何かが這い出してくる。それは胎児にも似た何か。緑の体に、髪のように頭部に生えた複数の触手。

 

 体に不釣り合いな眼球が風を纏うアイズと周囲の氷を眺め、飛び出す。

 

 何処にそれだけの力があるのか、自身の総身の何倍もの飛距離を飛ぶ。アイズが回避すると水晶に着地し、今度はリリウスへと狙いを定めて飛んだ。

 

「ん?」

 

 バクリ。

 振り返ったリリウスは口で受け止め、鋭い牙でグチャクチャと噛み潰し飲み込んだ。

 


 

人並み外れた人でなし←我ながら気に入っている

そろそろ200話。みんなは何が読みたい?

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