ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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悪戯童子

 殴られた。蹴られた。

 拒絶され、去る背中を何度も見送った。

 

 仕方ない仕方ない。だって、自分は弱いのだから。弱いままで居て欲しいと、願ってしまったのだから。

 そんな自分を、拒絶することで守ろうとした兄を恨むほど彼女は無知にはなれなかった。

 

 聡明だった。だから気付いた。自分が邪魔だと理解していた。だけど兄があそこまで力を求めるのは、思い上がりではなく自分の存在。

 

 死ぬわけにもいかず、さりとて力になれるわけでもない。兄の背中から目を逸らし続けた視界に映るのは、自分と違って戦える力があるくせに日常を繰り返す冒険者。

 

 

 

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 何時か強くなれる。何時か冒険すればいい。

 そんな言い訳をして、でも自分でも言い訳だと気付いている彼等は自分を強く見せたくて、苛立ちを吐き出したくて弱い者にあたる。

 

 モンスター? やれ竜を倒した、雄牛を倒したと聞けば、惨めになるだけ。

 冒険者? なくはないが、派閥間の問題になりかねない。相手を選ぶのも、そこそこ面倒。

 一般人? これも手を出す奴はそれなりにいるが、直ぐに捕まる。旅人も同様。存外、己より弱くとも手を出せる相手は少ない。

 

 だけど、居るのだ。冒険者全体、とまでは言わずとも大抵の冒険者からすれば殴られたって問題にされない者が。

 

 それはサポーター。特に、同派閥でも組んでもらえないフリーが望ましい。

 恩恵をもらいながら冒険出来ない落伍者。恩恵を持つ故に、一般人より介入され難い。

 

 勿論やりすぎれば都市の憲兵や正義の乙女達がすっ飛んでくる。

 大半の冒険者は耳を貸さずとも、彼等彼女等はサポーターの言葉に耳を貸す。言うなと脅したところで勘の鋭い団長に見つかることも大半。

 

 嘗ての時代に比べて、サポーターの在り方はだいぶ改善されたと言って良い。まあ、それでも馬鹿なことをやる馬鹿は消えないが。

 

 具体的には自分の成長が頭打ちになったと自覚し、かつ都市の憲兵や正義の乙女達にまだ捕まったことが無い、調子に乗りたての1、2年目の冒険者。

 

 そんな彼等も、冒険者をやってるとある噂を聞く「『悪戯童子(パック)』には気を付けろ」。

 二つ名、では無く通り名。それも、複数人の。

 

 それは子供の姿をしたサポーター。

 こんな話がある。とある冒険者パーティが子供のサポーターを連れているのを目撃した。普段は4人だから、珍しいこともあるものだと、少し心配した。あまりいい噂を聞かないパーティだからだ。

 

 後日、パーティは解散。慣れていたはずの階層でモンスターの群から這々の体で逃げ出し、4人中2人は冒険者を辞め、残った2人は責任を押し付け合い喧嘩別れ。

 

 またあるパーティは適正階層を見誤り、危うく全滅する被害に遭った。全員、階層を更新しなくなったとか。

 

 あるパーティは男二人、女一人だったのだが女が浮気していることがバレ解散。あるパーティは換金担当が金をこっそり持ち逃げして歓楽街で使い大喧嘩。あるパーティはリーダーがカジノにはまり借金漬け。

 

 聞けばどれもこれも自業自得。その子供だって、もっと奥に行きましょうとは一度も言っていない。

 自己責任を受け入れたくない冒険者がサポーターのせいにしてるだけと最初は思われて、でも数が多い。

 

 そして、その子供は一人ではない。ある時は猫人(キャットピープル)の少年。ある時は、高貴な血を感じさせる薄緑髪のエルフの少女。ある時は顔に傷を負った小人族(パルゥム)の少女。ある時は考えのたりなそうな女戦士(アマゾネス)の少女。ある時は黒髪を目元まで伸ばした根暗なヒューマンの少年。

 

 共通点は子供。子供のサポーターに関わった者達が破滅する。

 でも、【ガネーシャ・ファミリア】は動かない。噂話の域は出ず、被害者と名乗る者達も聞けば自業自得。

 

 金や装備を盗まれたと言うが、ダンジョンに放り出し逃げたのなら、所有権は回収した者にあるし、その子供が取っていったとは断言出来ない。

 

 ただ盗まれたと訴える者もいるが、その金額も微々たるもの。冒険者である以上、ある程度は自分達で用心しろとしか言えない。

 

 盗まれた金額の総額はそこそこだが、全員別人ではやはり動けない。

 

 犯罪と扱うには弱く、故に悪戯。複数犯なのか模倣犯なのか偶々なのかも不明。

 子供のサポーターには気を付けろ。被害に遭った冒険者が口を酸っぱくして言っても、調子に乗り始めたのに成長が遅くなり始めた冒険者は、自分ならば大丈夫だと思い上がる。或いは、逆に奪ってやると一攫千金を狙う。

 

「だからベル君。サポーターを雇った方が良いけど、慎重に選ばなきゃ駄目だよ?」

 

 と、エイナが担当冒険者ベルに伝える。

 ベルが冒険者半月で最高評価B、最低評価ですらEというちょっと何言ってるか解らない成長を見せて適正階層が下がった故に、サポーターを雇った方が良いと提案する際に気をつけないとならない事を話したのだ。

 

 ていうか半月でEってなんだ。Hだって腕のいい冒険者。Gなら出来過ぎ。Fですら速すぎる。

 世界最強が弟子にしたそうだが、一体どんな修行をつけているのか。

 

「って、そうだ。アーデ氏!」

「はい?」

「アーデ氏は世界最強だし、ひょっとしたら良いサポーター知ってるかも。ベル君、弟子なんだし聞いてみたら?」

「え? でも師匠、パーティについて聞いたら知るかって」

 

 エイナは知らないが、リリウス・アーデは基本的にソロで潜る。【アストレア・ファミリア】に所属していた時はパーティを組んでいたが、その時は指示に従うだけ。

 

 勿論学区で学んではいるがダンジョン内での実践は、自身に迫る強者であるエピメテウスしかまだ無いのだ。

 

 


 

リリウスのスキル【滅蛇者(ヴリトラ・ハン)】は宿敵(ヴリトラ)との4度目の決着という特別な経験値(エクセリア)を既にランクアップ可能だったが故に余すこと無く使い発現したスキル。その出力は規格外。

 

怪物、蛇、竜の判定はリリウスに依存するので実は異端児(ゼノス)には怪物殺しが反応しなかったりする。当然ヴリトラも蛇、竜の2判定。黒竜でも2判定。

出力の上昇は蛇、竜、怪物。

まあダンジョンリザードにやったように無理やり判定はできる。汝は蛇、罪ありき!

因みにリリウスにとって竜とは黒竜なので、竜種以外を竜判定するには最低でもオラリオを殲滅できる強さが必要。インファント・ドラゴンとかはドラゴンなのに良くて蛇判定しか受けない。

雷性付与(ヴァジュラ)が最後に来る事から解るように実は雷の威力のみならず通常攻撃にも〇〇殺し特性付与可能。三条件満たした敵、かつ神殺しではない相手に放てる最強の技は【我が雷鳴、天地に響け(ブラフマーストラ・メーガナーダ)

居ないかなあ、怪物みたいな精神していて蛇のごとくしつこくて竜のように強くて神殺しじゃないリリウスの逆鱗に触れる敵キャラ。

 

メーガナーダ

インドラジットの本名。名の意味は『雷の咆哮』。

そろそろ200話。みんなは何が読みたい?

  • シヲモトメルノハ【タナトス】
  • モトメルノハ【ディオニュソス】
  • チカラヲモトメルノハ【フレイヤ】
  • ヒビカスノハ【ゼノス】
  • ドウケルノハ【ロキ】
  • 勇蹄再演【バロール戦】
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