ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
リリが本名を名乗っていた理由は、怪しく思われギルドに問いただされてもいいように。所属と名前だけ言って、いるか聞かれればギルドはいると答えるだろうし、わざわざ性別まで確認はしない。するとしても流石にそこまでは教えないだろうし。
その後騙されたと文句を言っても、リリは種族や見た目、性別が違うので名前を使われただけと言い張れる。
ソーマ・ファミリアは団員数は多いので、他の団員の名前を使う事もある。
原作でも本名名乗ってたの、その辺りに理由がありそうだなぁと。
「う〜ん。他所の派閥のサポーターかぁ」
「や、やっぱりまずいですか………」
担当アドバイザーであるエイナにサポーターを雇った事を報告すると苦い顔をされた。
「一口に【ファミリア】間の問題と言っても、お互いの利益を尊重する契約をしてる例もあるし。ベル君から見て、そのリリルカさんはどんな人?」
ファミリア名簿に名前はあった。だが、主神の意向で情報の一部秘匿が行われ、エイナの権限では全て閲覧することは出来ない。そういう眷族が【ソーマ・ファミリア】には何名かいる。
ソーマの所は最大Lv.9ではあるが、それを除けば2止まり。それでも複数の眷族の情報を一部秘匿化。何かを隠している?
「あの、エイナさん………【ソーマ・ファミリア】って、どんなところですか?」
「ちょっとまって…………」
と、エイナは資料を漁る。自分の知識だけでなく、正確な情報を教えるつもりだろう。
「【ソーマ・ファミリア】。5年前を皮切りにより深く探索系になった【ファミリア】ね」
「5年前?」
「その頃は商業系にも片足を突っ込んでたみたい。商品はお酒………今はたまぁに売ってるみたい」
「それは、何かあったんですか?」
「リリウス・アーデ氏がオラリオを出たの」
ここで師が出てくるのか、と微かに目を見開くベル。
「ちょうどその頃、【ソーマ・ファミリア】でもいろいろゴタゴタがあったんだって。当時の団長の犯罪行為が公になったり」
当時の団長ザニスは…………死亡してる。でも死因は、これも秘匿されてる? まあ、リリウスが関わっていると言ってるようなものだが、とエイナはベルを見る。
師匠が誰かの死に関わっていると言っても良いのだろうか? エイナはリリウスをよく知らない。故に、不安を覚える。
けど、ギルドが問題にしていないと言うことはリリウスが罪人ではないとされたという事。エルフの聖地を救ってくれたリリウスを疑いたくないが、しかし………。
「アーデ氏を抜いた【ソーマ・ファミリア】実力は中堅も中堅だね。平均より上の冒険者が多くいるけど、飛び抜けた実力者はアーデ氏だけ。一応、団長はLv.3だけど…………」
中堅派閥の団長としては上澄みだが、【ファミリア】の規模を考えると低いほうかもしれない。というか団員数が異様に多い。
「まあ、神ソーマが他派閥と問題起こしたことはないらしいし、【ファミリア】間の問題にはならないかな。そのサポーターと組むのも、良いと思うよ」
エイナもエイナでサポーターを探してくれていたらしいが、見つからなかったようだ。少し前まで居たフリーのサポーターは、皆自分の派閥を見つけた。
そもそも恩恵なしでダンジョンに潜るのは自殺行為。また新しく派閥を決めていない新人が現れるまで待つしかないだろう。
「サポーター………って、冒険者に疎まれていたりするものなんですか?」
ふとベルは、リリとの会話で気になっていたことを尋ねる。
「………そうだね。専門職のサポーターは、身分が低いかもしれない。理由は、分かってると思うけど」
エイナの肯定に、ベルはこの間まで憧れていた冒険者に失望に近い感情すら覚えてしまう。
「普通、サポーターって力の弱い人がなるものなの」
一流の【ファミリア】なんかは、先達が経験を積ませるためにやっていたりする。あの【ロキ・ファミリア】なんかは上級冒険者と区分されるLv.2どころか、深層に挑む際はLv.3もサポーターになるという。
それはつまり、後進を育ているわけで彼等は純粋なサポーターではない。純粋なサポーターとは、これ以上強いモンスターと戦えないと成長が頭打ちになった者達だ。
それは才能が理由であったり、或いはモンスターに萎縮する精神的な問題でもあったりする。総じて彼等は蔑視の対象になる。
「………………」
エイナ自身も快く思っていない、冒険者の現実。勿論、やり過ぎないように改善はされている。昔は冒険者の気分一つで金を払わない、暴力を振るうなんてこともあったらしい。
「今は最低賃金も決まって、破ればギルドから罰金もあるけど、それでも扱いは悪いかな」
「そう、ですか…………」
自分のことではないが、やりきれない。胸の奥がムカムカとする。
何かしてあげないと、そう思う。
「ありがとうございました、エイナさん。参考にします」
「うん。私の方は何時でも良いから、こういう話はちゃんと相談しに来てね」
と、個室から出るベルを見送ろうとしたエイナはふと気付く。
「あれ、ベル君。何時ものナイフはどうしたの?」
「え?」
腰に手を伸ばし鞘に触れる。あれ、形が何か違う?
抜いてみる。リリから借りたナイフだった。あれ、もしかして、間違って持ってきた? じゃあ、ナイフは?
「お、落としたあああああ!?」
売れば端金にもならないこのナイフ、どうしようかとリリはナイフを片手で弄ぶ。
彼女が売る店は失せ物探しにも利用されるし、売ったところですぐに彼の手に戻るだろう。ダンジョン内での落とし物は中古屋で見つかるのは良くある話。
「………………」
人の気配を感じ、懐に仕舞う。現れたのは金髪のエルフに、桃色の髪の
【アストレア・ファミリア】!
何だって、こんな人通りの少ない道に。そう思いながらも自然に彼女達の横を通ろうとして………
「待ちなさい、そこのパルゥム」
「っ!」
有無を言わせぬ言葉に思わず足が止まり、次いでブワッと汗が噴き出す。何故呼び止められたのか。まさか………と信じられない思いが頭の中で明滅する。
「袖にしまったナイフを見せてほしい」
「リオン?」
心の中で盛大に舌打ちする。
「………何故ですか?」
「知人の物に似ていたので。もしよろしければ確認させてください」
この暗闇で、闇色のナイフを見分けるとかどんな視力だ!
視力に優れたパルゥムの上級冒険者であるリリですら無理だぞ。
「生憎ですが、これはリリのものです。貴方の勘違いでは?」
要求をつっぱね、その場から去ろうとする。
「抜かせ」
場が軋んだ。
「……!?」
「【
背筋に氷の刃を突き立てられたような威圧が、足を凍らせる。振り向けない。振り向きたくない。
「動かないでください」
逃げるしかない。
近づいてくる足音に、リリは遮二無二に逃げ出す。相手の足が宙に浮いた瞬間、膝に活を入れ走り出した。
「忠告はしました」
曲がり角に入ろうとした瞬間、衝撃が腕を襲う。
「ぎっ!?」
林檎が爆発した。
ナイフを握っていた左手に赤い果実が直撃し、衝撃で木っ端微塵に砕ける。
「腹に力を込めたほうがいい」
「──!!」
手から落ちたナイフを視線で追い、振り向いてしまう。こちらを見下ろすエルフの目が見えた。
そうか、自分はボールだ。友達ではない。ふざけんな。
「ふぎゃあ!」
加減された第一級の蹴りが、宣言通り腹に当たる。
「な、なに!?」
ヘスティア・ナイフとリリを探していたら裏通りのほうが騒がしくなり、大量の猫が逃げてきた。何事かと裏路地を覗き込んだベル。小さな人影が飛び出し倒れ込んだ。
「リリ!?」
「ふあ………」
思いもよらぬ人物の登場に困惑しつつもベルはリリの隣に膝をつく。
「どうしたの? 何があったの?」
「そ、その声はベル様……?」
顔を上げ、白い前髪から覗く瞳がベルを見据える。
「まさか逃げられるとは」
そこに、ザッとエルフが現れる。
「今度はリューさん!? 何が起こってるですか、いったい!」
「ああ、クラネルさん。実は貴方の…………」
そこまでいいかけ、リューはリリに視線を向けた。その白い髪と耳に首を傾げる。
「おいこらリオン! 一人で突っ走るんじゃねえよ!」
と、さらに初めて会うパルゥムの女性も現れた。リューの知り合いのようだが………。
「………ん? その髪、お前………リリ坊の弟子か?」
「リ、リリ坊? えっと、はい…………」
「そっちのは…………」
「この顔は………」
パルゥムの女性がリリに視線を向け肩を揺らし、リューも視線を追い、改めて顔を見て、また耳を見た。
「……クラネルさん、貴方は今あの黒いナイフを持ってますか?」
と、視線をベルに向けたリューは不意に尋ねる。ベルもハッと思い出した。
「そうでした! あの、上から下まで真っ黒なナイフ見てないですか!?」
「これですか?」
「うわあああああああああああああああああああ!!」
ベルの大歓声が夕暮れの空を裂く。
「これです! ありがとう、リューさん! 本当にありがとうございます!!」
「クラネルさん、その………困る。こう言うことは、シルにやってあげてください」
半泣きのベルはリューの滑らかな白い手を両手で包んだ。ぐっと寄せられた子供のような泣き顔に、リューは珍しく狼狽し、パルゥムは後で飯の時にネタにすると決めた。
「あぁ、良かった。神様ごめんなさい………もう二度と落としたりしません!」
ベルが額に押し当て誓いの言葉を紡ぐと、なまくらどころかガラクタ当然だったナイフは機嫌を直すように、紫紺の輝きを取り戻す。
「…………落とした?」
「すいません、本当に。このナイフ、どこにあったんですか?」
「あったというか………男性のパルゥムが所持していました」
その人が拾ったのだろうか?
「まあ、気をつけるこったな。落とし物が戻ってくるなんてまれだ。気付いたら売り物になってたりするからなあ」
「は、はい! えっと…………」
「ライラだ。そこのリオンと同じ【ファミリア】」
凄く強そう、というのがベルの素直な感想。
やがてリュー達は買い出しの途中であることを思い出し別れることになった。
路地裏に去ろうとするライラは、徐ろにリリの耳元で呟く。
「
「────!!」
「お土産」
「…………アダマンタイトに見えるんだが」
「アダマンタイトだ」
19階層、隠れ里。魔道具の調整をしていたフェルズにリリウスが大量のアダマンタイトを渡した。
「あの迷宮に入った」
「………鍵は?」
「普通に開いたぞ」
リリウスは鍵を持たずとも、歯車が軋む様な音を立てながら開けた扉を思い出す。人はそれを力尽くと呼ぶ。
「それで壊したのか」
「違う。何もしてないのに壊れた」
「魔道具を壊す奴は何時もそう言う」
「事実だ。俺は
今回のは警告。或いは本気で圧殺する気だったのかもしれないが、迷宮の通路が崩れリリウスを生き埋めにした。
第一級ですら圧殺しかねない超重量。されどリリウスは生きていた。生きていたが、引き返した。
何せあそこはダンジョンを中心としたオラリオの地下。下手に崩壊させられれば、多くの住民が地に飲まれ、どころかバベルすら崩れるだろう。
少なくとも、そんな盤面そのものを破壊するような行為を神は行わないだろうが、リリウスが攻め込めばその時点で壁も扉も飴細工の如く砕かれ蹂躙される。なら、そんな反則を使ってでも台無しにする可能性がある。
「俺があの迷宮に入るには、最低でも迷宮を操るクソ野郎を捕縛するか殺してからだ」
少なくとも罠の発動に人の意志を感じた。全てが手動とは言わないが、崩壊なんて最終手段は間違いなく手動の筈。
「崩壊機能を作ったのは、恐らく罠使ってたのと別の奴だ。あの迷宮には誇りや執念を感じた」
崩壊機能は、迷宮を憎む何者かがつけたしたとリリウスは推理している。だからこそ、自動崩壊まではないと思うが。
「階層移動には使わせてくれるみてぇだが、浅いからなああれ」
18階層まで続く迷宮を浅いと言い切れるのは、恐らくリリウスぐらいだろう。
情報量のジャブ
デアラコラボのリリウス
仕様天使『
霊力量で強制的に効果を増幅させた天使。デメリットは使用中、連続で撃ち続けると銃が壊れる。
拗ねているのか、ドゥルガーが出てこない。
時喰みの
リリウスのスキルと凶悪なまでに噛み合ったスキル。
霊力の加護ごと喰らい尽くす攻防一体の影。狂三は捕食しないようにして分身の収納にも使っていたが、リリウスには不可能。本人曰く「しまってたら何時の間にか消える」。
狂三の時喰みの城と影を共有しているので、狂三も分身を収納できないデメリットが生じる。
「ところでわたくしの分身を知りませんこと? こら、ちゃんとこちらの目を見なさい」
「…………入れてたけどいなくなった」
そろそろ200話。みんなは何が読みたい?
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