ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
強くなっている。想像を超えて、早く。
あれはもう、偉業さえ超えればランクアップを可能とするレベルのステイタスだ。
「師が良いのかしら? あの子、そういう才能もあるのね」
同じ真っ白な髪の師弟。こう、2人揃えて左右に並べるのはどうだろう。オッタルは大きいから玉座の後ろに配置しよう。
と、ちょうど全てを飲み込み消し去る虚のような魂が見えた。フレイヤの視線に気づいたそれは、直ぐ様物陰に隠れる。淋しい。
ちなみにこの前、ちょっとつまみ食いしたいなと視線を向けたら石を投げられた。警告だからフレイヤの真横を通り過ぎた石は、オッタル達主力の代わりに護衛していたLv.4を壁まで吹き飛ばした。
「でも、あの子ばかりがベルに構うのは、妬けちゃうわね」
自分だってベルに何かしてあげたいのだ。
ヘスティアだってナイフを送ったらしいし。ズルい、私も送ろう、とフレイヤは立ち上がり本棚に移動する。
「これが良いかしら?」
「…………」
ダンジョンで寝ている馬鹿を発見したリリウス。漸くうっかり殺さないようになってきたミノタウロスを一時的にフィルヴィスに預け、地上に戻りステイタスを更新し、またダンジョンに潜ろうとしたらベルが倒れていたのだ。
足でひっくり返す。外傷はない。毒の臭いもない。周囲の魔素に焦げた死体。恐らく、魔法に目覚め早く確かめるために朝をまたずダンジョンに飛び込み
「…………………この臭い」
不自然に途切れた形跡のある匂い。恐らく、匂い消しを使った何者かとそれなりの距離で接触したのだろう。
モンスターの索敵から逃れるためにサポーター等が使う事もあるから、不思議ではないが。
と、不意に覚えのある匂いに顔を上げる。
「…………あ」
「アイズとリヴェリアか………」
リヴェリアと、ボロボロのアイズだ。
アイズの雰囲気に………リヴェリアのほんの少しだが、何処かこちらを責めるような視線。
「バロールにでも単身で挑んだか?」
「そこまで格上じゃない」
「じゃあウダイオスか」
リリウスと同じ、単身での格上階層主の撃破。リリウスのあれは異常すぎて公開されてないから、世間的には2人目か? どちらも【ロキ・ファミリア】。名声を上げるにはもってこいだ。
「剣はないのか?」
「……………リヴィラに置いてきた」
「知っていたのか?」
「ギルドに話は通していたぞ」
別に秘匿したわけではない。それに、仮に秘匿したとしてもレアドロップを隠すためならギルドも強くは出ないだろうが。
「その子…………」
「弟子だ。どうも魔法を手に入れて、馬鹿やったらしい」
「
「弟子…………」
アイズはじっとベルを見つめる。そして、リリウスに視線を向けた。
「私とその子、どっちが才能ありますか?」
「あ?」
「アイズ?」
突然の質問に困惑するリヴェリアと訝しむリリウス。
「知るか。俺はお前のLv.1を知らねえ」
「……………………」
「あ〜……まあ、その頃から通り名あったし、Lv.1としてならお前の方が有名だろ」
「私のほうが、上なんですね?」
嫉妬でもしてるのだろう。実際、スキルや魔法、技量を加味すれば解らないがステイタスの上でなら1ヶ月もかかってない冒険者としてはベルの成長は異常だ。
リリウスの『育成』も無関係ではないだろうが、恐らくベル自身も成長型スキルを持っている。
「お前のとこの狼には感謝してやる。此奴がヤル気になったのはあれが原因だからな」
「…………ベートが侮辱した……そうか………彼が」
リヴェリアは頭を押さえる。実はアイズからベルが彼処にいたのを聞いていたのだが、すぐに止めなかった事を反省している。
「リヴェリア、リリウスさん、私、この子に償いがしたい」
「………言い様は他にあるだろう」
硬すぎるだろうと呆れる母代わりの呆れに、理解できてないアイズが二度三度、金の瞳を瞬かせる。
「………まあ、この場で助けるのは当然の礼儀として」
屈んで顔を覗き込むリヴェリアの横でアイズはコクコク頷く。まだまだ起きそうにない、とアイズを見る。
「アイズ、今から言うことをこの子にしてやれ。償いなら、恐らくそれで十分だ」
「何?」
「膝を貸してやれ。枕代わりにな」
リヴェリアは簡潔に伝えた。
「そんなことでいいの?」
「確証はないがな。だが、この場を守ってもやるんだ、これ以上尽くす義理はないだろう………それに、お前なら喜ばない男は居ないだろう」
「そうなの?」
と、男のリリウスに尋ねるアイズ。リリウスはベルのアイズへの好意に気付いているので、ふむ、と少し考える。腹が減ってきたので面倒くさいからさっさと切り上げことにした。
「ああ、喜ぶだろうな」
その後すぐ逃げるだろうけど。そんなことより飯に行こう。先に帰したエピメテウスが料理を用意しているはずだ。
因みにエピメテウスは窯焼きが得意だ。英雄なので(?)。
リリはベルが嫌いだ。見ていて、惨めな気分になっていく。
真っ直ぐで、綺麗で、この世界の闇なんて知らないで、かと思えばこちらが闇の中に居るのを心配そうな目で見てくる。
手を伸ばしてくれるなら、どうしてもっと早く。そしたら、自分は、兄は…………そこまで考え舌打ちする。その当時居もしなかった子供に、何をそこまで期待しているのか。
期待、そう、期待だ。
居れば、自分達を救ってくれたかもなんて、期待を抱いてしまう。今更なんの意味も無いのに。
苛立ちを吐き捨てるように舌打ちする。ありもしない未来を見て、自分がより惨めになる。と、不意にリリは顔を上げる。
犬の唸り声が聞こえた。縄張りでも荒らされたのだろうと、特に気にせず立ち去ろうとするが、続いてか細い少女の声。
「やぁ…………」
関係ない。自分には、何の関係もない。こんな所に来る奴が悪いのだ。弱いから悪いのだ。
助けを求める声なんて、誰にも聞かれず消えていくなんてよくある事を、リリは知っている。
「こないでぇ…………だれかぁ。おとう、さん……おかあさん」
不公平な程に、手を差し伸べられる者と差し伸べられない者に分かれ、自分は後者だった。そして、前者はおしなべて同じ経験がある者ばかりか、後者を経験していない者。だから………
「おにい、ちゃん…………」
「ああ! もう!」
路地裏に飛び込む。赤い服を着た銀髪の少女………というより幼女が頭を抱え震え、痩せた犬がにじり寄っていた。突然割り込んできたリリに視線を向ける両者。
「グルル! ガウ!」
吠えると、更に犬が現れた。仲間がいたらしい。
リリは気にせず犬を見つめる。吠えられ、唸られても目を逸らさない。
「…………クゥン」
軈て、尻尾と耳を垂らし逃げ出す犬達。リリはふん、と鼻を鳴らす。
「そっちの貴方も、さっさと行きなさい。ご両親やお兄さんが探してますよ」
「お、にいさん…………?」
「おにいちゃんがいるんでしょう?」
「……………?」
「何で首傾げてるんですか」
何か、妙だこの子供。
「おとうさんと、おかあさんは?」
「………………………」
「名前、言えますか?」
「……………な、まえ…」
すごく面倒なことになりそう。と、リリはその場を後にする。
「…………………」
ててててっ。幼女はその後を追うように駆け出した。
そろそろ200話。みんなは何が読みたい?
-
シヲモトメルノハ【タナトス】
-
モトメルノハ【ディオニュソス】
-
チカラヲモトメルノハ【フレイヤ】
-
ヒビカスノハ【ゼノス】
-
ドウケルノハ【ロキ】
-
勇蹄再演【バロール戦】