ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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久々にオリジナルかいて遅れた。ごめんね


勇蹄再演1

 

 ヴリトラとリリウス。異端児と人間の中の規格外。

 戦いの余波だけで『破壊者』と称される怪物を消し飛ばす真なる破壊者達は確信していた。

 

 この深度で自分達の戦いの妨げになる怪物は生まれ得ない。

 

 ビキリと、灼熱の大地が罅割れても両者は気にしなかった。獣の戦いに割り込む身の程知らずは真っ先に喰い殺して続ければ良い。

 

 そんな、2匹の獣の勘違い………傲慢な思い上がりは

 

「「────!!」」

 

 目の前の宿敵よりもまずこの化け物を殺す。殺さなくてはならない。規格外のサイズを持つヴリトラが炎纏う牙を、リリウスが全てを喰らう炎を纏う剣を向け

 

「グオオオオオオオ!!」

 

 視線が向けられる。即ち、絶体絶命。

 

「──!!」

 

 リリウスの片腕が消し飛んだ。視線を向けられたが故の不運。幸運なヴリトラはそのまま単眼の王に噛みつき、魔石ごと噛み砕こうとする。

 

 自分より遥かに小さい筈の巨獣が腕を薙ぎ、ヴリトラの巨体を吹き飛ばす。

 

 誰も自分達の邪魔を出来ない。そんな、獣達の思い上がりは…………漆黒の巨獣の出現が、一瞬で吹き飛ばした。

 

「づぅ!」

 

 左腕、消滅。出血、断面が焼けてなし。

 なら問題ない。

 視線を向けられる前に風を起こし地面に降りる。同時に駆け出す。

 

 竜と人を混ぜ合わせたかのような、長い首の単眼の巨人。サイズは違うが、あれはバロール。それも漆黒種!!

 

 神を殺すための尖兵が、神なき階層に現れた理由は恐らく自分達を殺すためだろう。だから、殺さねば死ぬ。確実に殺される、あれはそれだけの力を持っている。

 

 直線では決して走らない。バロールとの戦いは基本的に散って視線を固定させないこと。単身で挑める者など極僅かで、しかもこのバロールは『耐久』が優れたLv.8であるリリウスの肉体を簡単に焼き消した。

 

「だが、遅え!!」

 

 速度はリリウスが遥か上。背後に周り、その脊椎へ剣を振るう。竜の首すら切り裂く断頭の剣。しかし

 

 ギィンと響く金属音。肘から生えた硬質な棘がリリウスの剣を止める。

 Lv.7すら沈めるリリウスの『力』を、不安定な格好で受け止めるバロール。

 

「っ! ぐあ!」

 

 バロールがそのまま腕を振るえば、振り払われる虫の如く、巻き込まれたリリウスが吹き飛ばされた。

 叩きつけられた壁が罅割れ、肺の中の空気を吐き出す。

 

 地面に落ちたリリウスと起き上がったヴリトラは即座にバロールを睨む。

 

「グウウウ………!!」

「馬鹿力が………」

 

 リリウスが知る、如何なる鎧よりも頑強なヴリトラの鱗がただの拳で砕けた。

 ヴリトラが知る、最も速く強いリリウスの一撃が防がれた。

 

 2人揃ってバロールへ向かったのはただの偶然。されど、必然。

 

 今のやりとりで解る。最強の冒険者、最強の異端児(ゼノス)の想いは一つ。

 

 単独では勝てない。

 力を合わせず挑んだとして、待っているのは確実な死。

 

 と、そんな己の標的を見てバロールは次の行動に移る。

 

「オオオオオオオオオオッ!!」

「「!!」」

 

 階層主、迷宮の孤王(モンスターレックス)

 バロールを含めた、ただ一匹しか出現(スポーン)しない怪物達は、その強さから王と呼ばれる。

 

 怪物の王とされる竜とも違う。一つの階層を支配する、同胞を持たぬ孤独の王を指す言葉だ。

 

 だが、一部モンスターは正真正銘王である。

 無限の骸の兵(スパルトイ)を召喚する漆黒の骸王(がいおう)ウダイオスもその一つ。

 

 そして、バロール。

 フォモールを率いる単眼の王。視線はそのまま死閃となり全てを消滅させる、魔眼の王。

 

 彼が鳴くと、ダンジョンが応えるように揺れた。

 壁に、床に亀裂が走り、現れるフォモールの大群。上級冒険者すら蹂躙する深層の怪物の群は興奮状態でリリウスとヴリトラに群がり…………喰われた。

 

 魔石を噛み砕き魔力を回復力へと変えるヴリトラに、食えば治癒するリリウス。

 

 身の程を知らぬ雑兵を千切り、潰し、引き裂き喰らう。

 新しい腕を生やし、新しい鱗が体を覆う。が………

 

「チッ!」

 

 回復が終わらぬ内にその場から飛び退けば、赤い光がフォモールを消し飛ばした。

 怪物の強靭な肉体が、燃える前に消え去った。

 

 やはり普通のバロールではない。スパルトイを巻き込む事を気にしないウダイオスと異なり、バロールはモンスターを巻き込む攻撃を躊躇うのだが、このバロールには躊躇(それ)がない。

 

 本来のバロールの攻略は、その『習性』も利用するのだがこの漆黒のバロール相手にはそれが行えない。

 

 確実に敵を殲滅することのみを指針に行動する冷徹なる孤王は他を顧みない。

 

「ヴリトラ!!」

「ガアアア!!」

「!! グルアアア!!」

 

 ヴリトラの熱線とバロールの光線がぶつかり合う。高熱の風が吹き荒れフォモールの大群が焼かれていく中、リリウスはバロールを睨み詠唱を唱える。

 

「【傲慢なる悪意の王。血の河を啜れ、肉を貪れ】」

「【ラーヴァナ】!!」

 

 ボンッ! と大地が爆ぜる。

 残像すら残さず、遅れて世界が気付いたかのように大気が爆ぜ軌跡が生まれる。

 

 爆進の妨げとなる全ては消し飛び、妨げにならずとも近くにいただけでその肉体は爆ぜた空気に巻き込まれ消し飛ぶ。

 

 破壊の疾風、と呼ぶにも速すぎる。破壊の光となったリリウスに対して、バロールは光線の撃ち合いを切り上げ首を動かす。

 

 光線(はかい)が薙ぎ払われた。

 

 燃えた森も丘も、全てが消し去られ焼けた荒野のみが残る。

 

 リリウスに直撃しなかったのは、バロールの頭部がヴリトラの熱線に押され狙いを逸れたから。

 

 つまり、バロールはリリウスの速度に反応してみせた。

 

「────!!」

 

 振り下ろされた腕がリリウスを叩き潰す。階層が揺れ、大地が罅割れた。

 

「シャアアアア!!」

 

 リリウスに視線を向けたバロールに大口を開けて迫るヴリトラ。顔の損傷を修復しながら、バロールはその牙をヴリトラに突き立てる。

 

「ギュアア!?」

 

 バキバキと鱗を貫き、肉を抉りヴリトラの体を噛み千切る。

 肉を抉り取られた傷口に光線を放とうとしたバロールは、しかし唐突に片腕を振り上げバランスを崩す。

 

 地面に叩き潰されたリリウスが腕を蹴り上げたのだ。

 

 小人でありながら竜巨人の姿勢を崩す程の力を前に、バロールは一瞬呆ける。刹那にも満たぬ隙を見逃さない2匹の捕食者。

 

「オオオオ!!」

 

 バロールはヴリトラの牙を腕で受け止め、リリウスの剣を爪で弾く。

 ミシミシと喰い込む牙に、鬱陶しげに腕を振るいヴリトラを投げ飛ばした。

 

 巨大なヴリトラの身体が投げ飛ばされた紐のように宙を舞い轟音を響かせ大地に落ちる。

 

「カッ────ギャアアア!!」

 

 ゴウッとヴリトラが炎を纏い、リリウスがヴリトラの額に降り立つ。

 

「呑め、ヴリトラ」

 

 自らに宿る精霊の力で魔力を炎に変換する。ヴリトラの蒼炎が潤沢な魔力を喰らいより温度を上げ、フォモール達が舞い散る火の粉に焼き尽くされていく。

 

「──────」

「………?」

 

 バロールが固まる。なんだ?

 いや、今は良い。

 

「行け」

「ギシャアアアアア!!」

 

 

 

 

 ()()

 あれは巨大な蛇ではなかった。あれは白い髪ではなかった。

 …………あれとは?

 

 記憶にない記憶に困惑するバロール。

 あれではない。

 お前達は強く、勇気に満ちて、たった2人で挑む者達。

 

 弱くとも、全てを背負い、何かと共に全てを出し尽くしながら突き進んだ彼等ではない。

 

「………光が収束して?」

 

 バロールの眼前で光が放たれず留まり、その光量を増していく。

 

「!! 突き進め、ヴリトラ!!」

「オオオオオオオ!!」

「ガアアアアア!!」

 

 周囲の空間が歪んで見えるほどの熱量を放ちながら突き進むヴリトラ。その口内から放たれる蒼白の熱線に、猛毒の風が酸素と共に飲まれていく。

 

 対し、バロールは迫り来る破壊を見据え………絶望(ひかり)は放たれた。

 

 拮抗はなく、突き進む赤い光を阻む事は何者にも出来ずにヴリトラを飲み込む。

 

「………っ!!」

 

 ヴリトラが咄嗟に投げたリリウスは天井に着地し、黒風を纏う。最大加速………大技を放った隙を逃さない。

 

 その光線が文字通り光速だとしても、視線を合わせる動作と、1秒にも満たないチャージを逃さなければ………!!

 

「…………!」

 

 リリウスが足に力を込める刹那の時間。バロールは眼前に光を溜める。視線を合わせると同時に放つつもりか? それともヴリトラのとどめ。どちらにしろ、リリウスの攻撃が先に当たる。

 

「オオオオオオオ!!」

 

 光が放たれる。方角は、()()()

 拡散し威力が落ちた光線が真上を向いたバロールの眼前から周囲に放たれる。

 

 唯一の安全圏であるバロールの足元には接近が間に合わず、リリウスは光に飲まれた。

 

「ぐぅ!!」

 

 簒奪の炎が焼き尽くす前にリリウスへ当たる光。魔力を喰らい切れず、ダメージが吸収を上回る。

 

 だが、本来の光線には劣る。一度岩陰に隠れフォモールの死体を喰らおうとするリリウスだったが、バロールが地面を叩く。

 

「なっ!?」

 

 バロールを中心に地面が陥没し周囲の地面が捲れ上がる。空中に放り出されたリリウスをバロールの瞳が捉えた。

 

 

 

 

 

 王に民は無く

 

 王に国は無く

 

 征服せず 君臨せず

 

 火を放ち 蹂躙し 眼前全ての命に死を与えん

 

 これなるは病の如く命を奪う破壊の王

 

 恐れ畏み給え 王はいませり 王はいませり

 

 ()はここにいませり

 

 

 

「ガアアアアアアアアッ!!」

 

 ビリビリと階層を揺らす単眼の王の咆哮。

 産み落とされた神殺しは、標的に勝利した。まだ息はあるが、ピクリとも動かない。

 

 何れモンスターに食い殺されるだろう。ならば、次だ。

 次の使命を果たすべく、バロールは天井を見上げる。

 

 地上に出て、母の周囲全てを消し去り、再びそこに座す。

 再び?

 

 どうにも記憶にない記憶が先程から湧いてくる。

 それは憧憬にあらず、魂の強さが故のバグ。故に、その本能を塗り潰すことはない。

 

 古代の地獄の門番(バロール)と比べても更に強化された数多の英雄を消し去った英雄殺し。ゼウスとヘラ亡き今、止められる者は誰一人居ない。

そろそろ200話。みんなは何が読みたい?

  • シヲモトメルノハ【タナトス】
  • モトメルノハ【ディオニュソス】
  • チカラヲモトメルノハ【フレイヤ】
  • ヒビカスノハ【ゼノス】
  • ドウケルノハ【ロキ】
  • 勇蹄再演【バロール戦】
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