ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「上層で殺人事件?」
「ああ、ナイフで切られたり、魔剣か魔法で焼かれたり、後は鞭のようなもので頭蓋をふっとばされたりな」
ダンジョン内での行方不明事件調査中、【アストレア・ファミリア】が見つけた死体。モンスターにやられた死体ではなかった。
頭蓋を吹き飛ばされたのは、まだモンスターの可能性はあるがLv.1とは言え恩恵を持つ冒険者相手に………上層のモンスターはあるまい。それこそ、怪物祭で現れたモンスターのような。
「関与があると?」
「うちの団長の勘だがな」
「うん。それは、動くに値するね」
アリーゼの勘は馬鹿にできない。何よりフィン自身、親指が疼いていたところだ。
「だけど、確か24階層で異変が起きているんじゃなかったかな? ギルドの要請で、うちからはベートとレフィーヤを向かわせたけど」
「ああ、そっちは問題ねえ。なんせ、世界最強のあたしのかわいい弟が向かってるからな」
24階層。
モンスターの大量発生が確認され、ギルドは上位派閥に対処を要請。
【ロキ・ファミリア】からはベートを隊長にレフィーヤを含めた第2級数名。まずは情報を集めるために18階層、リヴィラの街へ向かった。
「……………ああ?」
「【
そこでパタリと出くわしたのはリリウス・アーデ。都市内外において並ぶ者無き世界最強の眷族。
隣には黒いローブを纏うエルフ。
「昔の二つ名で呼んでんじゃねえよ」
「…………今なんだ?」
「【
二軍の一人が答える。
「狂犬? 似合わない二つ名だな」
「誰が犬だゴラァ!!」
ベートが叫び、敵意に反応してリリウスも構えようとするとエルフの少女が慌てて抱える。
Lv.9の彼を抑えられるとは思えないので、リリウスが傷つけないよう気を使っているのだろう。それでも今回の件についてこさせるつもりなら相応の実力者。いったい何者?
「つーかなんでこの階層にいんだてめぇ。Lv.7以上あんならすぐに片がつくだろうが」
「生き残りの救助も依頼のうちだからな。はぐれた人数を把握しておく。それ以外は
「イヴィルス………?」
「リリウス………」
「此奴等はどうせ何時か関わるだろ」
リリウスと彼女の会話からして、本来は隠しておきたいことのようだ。ただリリウスとしては遅いか早いかの違いとしか思っていないらしい。
「人為的に起きてるってのか?」
常と異なるから異常。ならば確かに、人為的に起こせないとは言わないが………。例えば、モンスターに魔石の味を覚えさせるとかやりようは確かにある。
しかし大移動ともなれば、人の手で起こせるのか?
「後【ヘルメス・ファミリア】とも合流する。待ってろ」
「何でてめぇが仕切ってんだよ」
「? 動きが遅れるから先に行くなと言ってんだ。邪魔だし」
ビキリとベートの額に青筋が浮かぶ。ラウルが悔しそうに拳を握りしめた。
「【ヘルメス・ファミリア】なんざ雑魚ばかりだろ。意味あるのか?」
「此奴だけだと異変の原因や、その結果起きた副次的な変化を纏めて吹っ飛ばすからな」
要は調査結果『消し飛んだから分からない』を避けるための人員という事だろう。確かにそれなら、強さは必要ない。
「寧ろお前の下の方が役に立たないから失せろ。それかフィン追加しろ」
「なん……っ!!」
フィンがいれば使い物になるとは思っているらしい。リリウスはエルフの少女に抱えられたままリヴィラの街へ向かった。
が、エルフの少女は何故かリヴィラに入らずリリウスを降ろす。リリウスも特に質問することなくリヴィラに歩き出した。
「あの人はついてこないんですか?」
「フィルヴィスは人目を避けているからな」
「フィルヴィスさんっていうんですね」
「グルル」
「え、な、なに?」
「聞いてもない名前を勝手に呼ぶなと」
「ワフ」
ふん、と鼻を鳴らす大型犬。彼等に手も足も出なかったラウル達は怯えるように後退りベートがチッと舌打ちした。
「なんて呼べば………」
「シャリア」
「シャリアさん?」
なら名前はフィルヴィス・シャリアか。彼が連れているのだから相応の実力者なのだろうが、誰も知らない。
「…………【ロキ・ファミリア】だ」
「【
リヴィラの視線はお世辞にもいいとは言えない。なんなら敵意すら混じっている。
「おい!」
と、車椅子に乗った両足のない男が叫び………リリウスは無視して歩く。ベートも一瞥しただけで気にしてない。
え、とレフィーヤ達が固まった。
「ま、待てよ!」
男が再び叫び、2人は面倒くさそうに振り返った。
「今更ノコノコやってきて、どう責任取ってくれんだ!」
「……………?」
「俺の仲間も殆ど死んだ! てめぇ等が地上で呑気に過ごしてる間に、俺の目の前で食い殺されたんだ! 俺だって、足が………畜生、やっとLv.3になれたってのに!!」
涙を流しながら失った己の足を、そしてもう隣にいない仲間を思いギリッと歯を鳴らす男。
「都市最強の派閥だの世界最強だの偉そうにふんぞり返って、いざという時クソの役にも立たねえ! お前等それが解ってんのかよ!?」
そうだ、と同調する声が聞こえた。それを皮切りに他の冒険者も次々騒ぎ出す。
「お前等が何もしないからこんなことになったんだぞ!」
「責任取れ! 責任!!」
「俺等にばっかり苦しい思いさせやがって!」
「弱者いたぶって楽しいか!!」
「何時も何時も好き勝手やりやがって!」
「とっととなんとかしてこいよ!」
ベートはますます不機嫌になり、ラウル達は後退り。両足を失った男がリリウスの足を掴む。
「なぁ、どう償ってくれるんだ………?」
「…………………」
ゴシャッと、リリウスが男の顔を蹴る。ボールのように吹き飛んだ男は壁に激突し崩れ落ちた。痙攣しているから死んではいないようだが。
「どけ」
集まった連中に一言。
敵意も悪意も嫉妬も嫌悪も、その一言が全てをへし折る。
慌てて道を空ける冒険者に一瞥もせずに進むリリウスに、文句を言う者はもう誰も居ない。
その光景にベートは再び舌打ち。
「………てめぇ等はここが楽園だとでも思っていたのかよ? んなわけねえ。ここは地獄だ、ガキでも知ってる。全部承知で
ベートがわざわざ最後に罵倒した理由
まだまだ小さなリリウスより、自分みたいなクズが悪意に晒されるべきだと思ったから。
因みにリリウスが手加減せずに蹴っていたら男は跡形もなかったよ。
ロキ・ファミリアにギルド(フェルズ)が依頼した理由。
最強戦力のリリウスが人工迷宮攻略を行えないので代わりに闇派閥に関わる戦力が必要だから。
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