ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
巨大化したオリヴァス・アクト。その姿は巨大で醜悪な
「オオオオオオオオオ!!」
振り下ろされる拳。地面がくだけ
解き放たれんとする膨大な魔力に魔導師が目を見開く中、リリウスが顎を蹴る。下顎が潰れ、閉じた口内で魔力が暴発、頭部が吹き飛ぶが、回復。
「ジャアアアアア!!」
蛇のような巨大花についた腫瘍の表皮を突き破り食人花が現れる。Lv.4から………
「ドゥルガー………アグニ」
「キヒッ」
精霊の炎が焼き尽くす。それでも別の場所から現れた食人花が冒険者達へと迫り、そちらに視線を向けたリリウスを巨大な拳が殴り飛ばす。
「チィ………」
骨が軋む。肉が潰れる。
Lv.9……それも
「強いのお、あれ。地上であれに匹敵する分身はおったか?」
「居ねえな」
それで蛹状態。魔石を取り込み分身として羽化したらどうなるか……。
「待ちやがれ!」
ベートはレヴィスへ追撃しようと迫るが、食人花共が立ちはだかる。それでも砕きながら進むが……
「仲間が死ぬぞ」
「っ!!」
その言葉に足が止まる。諦観も蛮勇も意味をなさぬ格上の数の暴力に晒される冒険者達を視界に入れる。
「アリアに伝えろ………59階層へ来いとな」
レヴィスはそういうとモンスターの流れに逆らうように消えていく。ベートは舌打ちしながら食人花共を皆殺しラウル達の許へ駆け寄ろうと走り………
「ベートさんは、あのデカいのを!!」
ラウルが叫ぶ。
「ここは、俺達が!!」
「………ああ? 何ほざいてやがる雑魚が! てめぇ等如きが」
「お、俺だって………俺達だって【ロキ・ファミリア】なんす! 最も勇敢な団長に従う眷族! 頼ってばかりの、存在じゃない!!」
ベートは舌打ちすると踵を返す。狙いはオリヴァスと共にリリウスへと襲いかかる巨大花。
「寄越せ!!」
「──!」
オリヴァスが邪魔でトドメを刺せなかったリリウスがベートへ炎を放つ。白銀の長靴で吸収し、炎の蹴りが叩き込まれる。
「!!」
「暴れんなデカブツ。綺麗に焼けねえだろうが」
「アタシ【ロキ・ファミリア】じゃねえけど!!」
「文句は後にしなさい!!」
最強戦力であるベートをいかせたことに文句を言うルルネ。アスフィが咎めるが、後で文句言われるらしい。
「本当よ、私達Lv.3なんだけど」
エリリーも大盾で食人花の触手を防ぎながら文句を言う。
「すいませんっす。でも、ちゃんと守るので」
「あら、言うじゃない」
「ラウルはすぐ格好つけるんだか………ら!」
飛び抜けているのはアキだろう。ステイタスもLv.5のランクアップが可能で、偉業をなすだけの状態まで極まっていると言っても異様。恐らくはスキルだろうとフィルヴィスは予想する………。
因みにアキのスキルは2つで、片方は敏捷と跳躍力補正。
もう一つは【
好感度が限界突破している相手がいる場合は、『力』と『器用』の中補正、『敏捷』の高補正が掛かるのだ。
「【どうか力を貸し与えてほしい】」
レフィーヤの
「【まもなく
放たれるはエルフの女王の魔法。戦火を焼き払う炎柱を生み出す魔法。その膨大な魔力に惹かれ食人花が迫る。
「おらあ!」
ベートは
「アアアアア!!」
「ガッ!!」
ただ体躯を揺するだけで第一級を吹き飛ばすオリヴァス。理性の溶けた瞳がリリウスを睨みつけ、再び拳を振るう。
「二度も食らうか………」
黒い風を纏い撃ち合う。オリヴァスの拳が溶け崩れ、オリヴァスは即座に腕を捨てた。しかしすぐ生える。
再生能力が高い。リリウスの一撃でも全損しないほどの耐久に大質量。
「ベート・ローガ、彼奴等を連れて離れろ」
「ああ!?」
「逃げろというか………ん〜………邪魔。これ以上は、
ベートはギッと歯軋りして、しかし大人しく下がる。リリウスが敵であったなら、どれだけ実力差があろうと噛み付いたろうが、生憎今は味方。自分の参戦は、足を引っ張るだけだ。
50階層でもそうだった。未知のモンスターを前に、アイズが殿を任せられた時も文句を言いこそすれ、正しい言い分には最後に従い、己の無力を憎むのがベート・ローガという男なのだ。
「ガアアアア!!」
オリヴァスはリリウスへと狙いを定める。他の誰も見ていない。
「まっすぐ、みやがっでえええ!!」
嫉妬、嫌悪、増悪、厭悪、憤怒、悲観、忌避………リリウスの目に、汎ゆる悪意を持ってオリヴァスが叫ぶ。
「どいつも、こいつも………わだじをみぐだしやがっでええええ! きらい、やがって! 踏み外す前に、縋れたくせに!!」
暗黒期より前。下界は平穏かと言われれば、そんな事はない。
【ゼウス】と【ヘラ】は自らを救世の駒と割り切り、オラリオ以外を他に任せた。完全に放置というわけではないが、
そんな外界に生まれた一人の子供。道端に捨てられた何処にでも居る不幸な少年。ただ、その白い髪はその国ではまず見ない。
皆と違う。だから、同じ境遇の者達は自分より下にして良い存在として扱った。
親の温もりを知らず、友と助け合う事もなく、餓えて死ぬだけの子供に手を伸ばしたのは
一つ言えることは、彼がその道に進むことを止める導もなければ、手を引き、引き戻す友も居ないということ。
人を殺せば褒められた。もっと殺せと笑っていた。
強い奴に怯えれば、笑ってくれた。弱い者いじめは楽しいだろと尋ねてきた。
自分を苦しめた連中を殺して、憎しみすら失った自分に「おかえり」と言ってくれた。ありふれた言葉。それだけで、
多くの死を望む願いを叶えたかった。神が愚かだという全てを愚かと断じて、断罪し続けた。
幼い子供の泣き声が自分の
自分を置いて天に返った神を憎み、死の間際で絶望した自分を救った『彼女』に縋り、選ばれたと奮い立たせて■■■■■■くれたエニュオに………エニュオ?
違う。何だ、何故あいつに…………!!
「ぎいぃぃ!? エニュオ!! エニュオオオオオオ!! あいつ、あいづののの!!」
何故彼奴を慕っていた。何故、何もしていないあいつに!? あれだ、あの酒の匂いを嗅いでから!!
「おい」
「がぎゃ!?」
リリウスの蹴りがオリヴァスの巨体を揺さぶる。打撃への耐性だけならヴリトラを超えているその体を蹴り、痛む足で着地するリリウス。
「俺に文句があったんじゃねえのか?」
「──────!! おまえ、ばかり………おまえばっがりいいいい!!」
自分と同じくせに! 何もかも敵だったくせに!
たまたま救われただけの、
「なんで………
「…………俺には彼奴等がいて、お前には『彼女』が居たからだろ」
「────!!」
そうだ………此奴は、『彼女』の
今度こそ、奪われない。今度こそ!!
仮令『彼女』の特別が、本当はレヴィスだけだとしても………それでも、結局は道具でしか無かったとしても!!
『空が見タイの』
『名前ヲ教えテ?』
ただ使われるだけだとしても!!
『友達ニなりマショウ?』
たったそれだけが、自分には新鮮だったから。たったそれだけで救われたから!!
「おおまえええを、ごろずうううう!!」
「そうか」
リリウスはオリヴァス・アクトの殺意に籠もった叫びに、目を細める。
「…………お前は強いよ」
【
「オオオオオオ!!」
オリヴァスの肉体が急速に痩せ細っていく。
精霊の分身ならざるオリヴァスに魔法は使えない。全魔力をただ一点に放つ単純な技擬き。
相対するは、雷の暴威。リリウスの体から溢れる、眩い雷の威光。その全てが片手に収束する。
「【インドラストラ】」
放たれる雷の矢。オリヴァスの決死の一撃に、拮抗すら許さず貫いた。
「………思い出した。お前、アルフィアと戦った時近くに居た……リューの友達いじめた奴」
と、リリウスは呟く。
「オリヴァス・アクトね…………今度は覚えた。もう忘れねえ」
上半身ごと魔石が消し飛んだ下半身が遅れて灰へと還る。砂煙の如く広がるそれを背を向け、リリウスは18階層へ向かうべく歩き出した。
こちらのオリヴァスは妹が居ないまま、邪神に救われていたリリウスの可能性の側面があります。
指が滑りとても出世しました。
天界では彼の元主神が見つけてくれるといいですね。
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