ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「ベルお兄さん、わたし、にもつ持ちます」
「ええ、いいよ」
「じゃあ、リリ」
「危ないので駄目です」
「むぅ〜」
2人の役に立ちたいのに、とむくれるノエル。ベルは可愛いなぁと微笑むが、リリは何処か不満げだ。頬つねったし。
「ひはひひはひ!」
「ただの小娘が恩恵持ちの役に立とうなんて烏滸がましいんですよ。弱者は強者を守れません」
何処か苛立ちがこもったリリだが、加減はしているのだろう。仮令Lv.1でも、子供の肉体なんて簡単に千切れるのだから。
「リ、リリ………その辺に」
「ベル様からも言ってやってください」
「え、僕?」
「サポーターを連れてるベル様なら解るでしょう? 役立たずが足を引っ張って良い道理なんてないって」
「え? リリは別に役立たずじゃないでしょ?」
と、ベルが不思議そうに首を傾げた。リリもん? と首を傾げる。2人して首を傾げたので、ノエルも真似して首を傾げた………と言うか上半身を傾けた。
転びそうになって慌てて腕をパタパタ振るう。偶々見ていた神々はウンウン頷く。
「いや、え………だって、リリはサポーターで………戦えなくて」
「あのね、リリ。僕の師匠なんだけど………」
何か言いかけていたリリはその言葉に声を止めた。
「すっっっっっごく、教えるの下手なんだ」
「………………はあ?」
「剣の振り方一つ説明するのにこぅ……『右腕をぐっとやって腰をぐいと………あ、まてその前に足を地面にぎゅっと………』って感じで………途中から面倒になって見て覚えろって」
ある程度覚えて来たら実戦で使えなきゃ意味がないと死にかけのキラーアントを持ってきたりする。
気絶した時、死んだはずのおじいちゃんが『こわ〜、お前の叔母さんそっくりじゃ。あ、うそですおばさんじゃなくおかぎゃあああああ!!』と言う声が聞こえた気がした。
死んだ筈の祖父…………あれ、ひょっとして僕、死にかけてた?
「ええと、だから………沢山のことを出来る人は居ても、何でも出来る人は居ないと思うんだ」
「……………………」
「だから、その人ができないことを誰かが代わりにやって、その人の代わりに誰かが…………そうやって出来ないことを補って、出来ることで支えれば………きっと
それこそ、黒竜を倒すことだって、とベルは言う。
ノエルの頭を撫でながら、夢物語を語るように。
実際完全な本音というよりは、子供を元気づける為なのだろう。
「…………………」
ああ、やはり違うな。綺麗事ばっかりだ………誰も支えてくれないから、誰も支えることができないほど強くなった人が師匠のくせに。
「………………」
何やら落ち込んだリリ。どうしたの、と声を掛けるベル。
「何でもありません。次の店が最後の買い物です」
「あの、これ結構変な臭がするんだけど………」
「怪物寄せですからね。混ぜ方間違えると生臭くなりますよ」
「そういうのって『調合』のアビリティ持ってる人に頼むものじゃ………」
「金がもったいないです」
リリって結構節約家だよなぁ、とベルは思った。
ベルがリリが指さした商品を取る最中、ノエルは不意に店の外を見る。
「…………?」
不思議そうに首を傾げてトテトテと歩く。
人気のない路地裏。積まれた木箱の裏………一本の短剣があった。刺さった場所が凍りついている。
「貴方のお友達ですよ」
「え?」
「こんにちは。いけませんよ、ええ、いけませんねえこんな場所に一人で来ては………昨今正規派閥は忙しみたいですから………地上にモンスターが現れたり。そう、今日みたいに」
細めの男がそう言うと、破壊音と咆哮、遅れて悲鳴が聞こえてきた。
「……え? え?」
「いや全く、平和というのは、甘い毒ですね。7年前なら叫び声が響いても、もう少し避難は的確だった………今は、何処に避難すれば良いかもわからず右往左往するだけ………はは、はははははは!!」
ひとしきり笑い、ふぅ、と唐突に落ち着く男。
その異様な態度に怯えるように後退るノエル。
「おや、怖がらせてしまいましたか? 悲しいですね。私はただ、貴方を『家族』に会わせてあげたいだけなのに」
「かぞくは、いるよ………かぞくは、リリ!」
「はは! 家族? あの小人が? おかしなことを言いますねえ。ええ、確かに? 私が紹介したい『家族』も、厳密には貴方の『家族』ではありません。でも、あの娘よりはずっとあなたに近い………貴方も知っているでしょう? 自分と、あの少女が一緒にいられないことぐらい」
「知ら、ない………しらない、もん!」
「本当に?」
「わたしは、だって…………わた、し? わたしは………だれ?」
細めの男は頭を降りてうずくまるノエルに手を伸ばし………
「!!」
割り込む白い影。
ベルだ。
「………ベルおにいさん」
「おや、これはこれは。路地裏の英雄様じゃないですか。いけませんねえ、周りを見なくては。こんなに悲鳴が聞こえるのに、無視とは酷い! ここはダイダロス通りに程近く、きっと貴方のあの時の活躍を待つ子供達が──」
「この子に、何をしようとしたんですか………」
「…………ご家族の下へお連れしようと。ええ、善良な一般市民として、迷子は放っておけませんからね」
「ふざけた事を…………」
と、新たに現れるのはリリ。ギロリと男を睨む。男は肩をすくめた。
「その『娘』をこんなところで泣かせたくないのですがねえ………貴方達、少し眠っていてくれますか?」
「っ!!」
響く金属音。吹き飛ぶベル。男はおや、と驚いた顔する。
「Lv.1に反応出来る速度ではないはずですが………いえ、反応というより反射ですね。考える前に動いていた……ですが『力』が足りない」
飛んでくるボウガンの矢。それを指で挟んで受け止める男はそのままリリへ投げ返す。咄嗟に回避し、矢が石畳に突き刺さった。
「余計な時間を食う気はないので、頼みましたよ貴方達」
その言葉と同時に飛び込んでくる白装束の男達。その手に握られる魔剣が火と風を纏い、その魔力に誘導されるように現れる食人花。
「ああ、アイン………貴方の下へ!」
「イスタ、必ず見つけてみせる」
食われる直前、魔石をベル達に向かって投げる。白装束を食い殺した食人花達は次の獲物に牙を剥く。
「リリおねえさん! ベルおにいさん!」
「おっと、貴方は此方です」
「!? あ、え………か、らだ………」
駆け寄ろうとしたノエルの体が不自然に固まる。
「パンプキング、なんてふざけた名前の男が持っていた
男の手に持っていた鉄の欠片が砕ける。古き時代、神の造りし杖でも、所詮は壊れた骨董品と言うことだろう。
「さて、流石に強いですね、オラリオは………食人花の咆哮がどんどん減っていきます」
「! 待て! くっ!」
ノエルを抱えて去ろうとする男に叫ぶベル。食人花の蔓を慌てて回避する。
「どうしても、と言うならどうぞ。歓迎しますよ………怪物の群を、越えられるなら」
「!! ノエルー!!」
叫びは虚しく食人花の咆哮に掻き消される。以前戦った個体より遥かに強い。
またカウンター狙いで大口を開ける瞬間を狙おうとするベル。と…………
「そこの冒険者! 頭下げて!」
「っ!!」
その言葉に咄嗟にしゃがみ込むベル。食人花は目の前の獲物より優先するものが現れたとばかりにベルの上を通過しようとして、轢き殺された。
それら真空の
「せ、精霊………?」
その馬はベルに気付くと鼻先を擦り寄せる。
『こおりのなかまー? あなた、おともだちのしりあい?』
「え、精霊の契約者?」
と、馬の背に乗る少女が首を傾げる。ベルも何のことかわからず困惑する。
『あなたたち、なかまとあそんでた!!』
「え、いや………なんのこと!?」
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