ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
セシル・ブラックリーザは精霊馬のユーフィの背から降りる。
「ええと、大丈夫?」
「は、はい。ありがとうございます………」
ベルは頭を下げると直ぐに走り出す。向かう先はバベル………? いや、ダンジョン?
「あそぼう!」
「うわ!?」
と、そんなベルに飛び付く半透明の幼女姿になったユーフィ。
「こおりのおともだちは?」
「ちょっとユーフィ! こおりのって………リリウス・アーデ? 今はそんな暇」
「ちがうよ? リリウスとはべつ。わたしとおなじぐらい!」
つまりは中位精霊。リリウスは大精霊の力を纏っていた筈………。
「………そういうことですか」
「え、リリ?」
混乱するベルに対して、リリはとても落ち着いていた。
「理屈は分かりませんが、ノエルは精霊が人に化けていたのでしょう」
だからどれだけ彼女の関係者を探しても見つからない。人に存在を悟られない、希薄な精霊が突然人の姿を持って現れたからだ。
「え、でも………気配は」
「力の使いすぎですかね? 記憶喪失もそれが理由? だとしたら、なんだってそんな無駄なことを…………」
「と、兎に角ノエルを助けに行かなきゃ! あの人、怪物の群れっていってた………多分、ダンジョン」
食人花のことではないと思う。怪物の群れを越えて、という割にはベル達を襲ったのはたったの2匹。だから、あの人が向かったのはきっとダンジョンだ。
だけどダンジョンは広くて、どうやってノエルを探せば…………。
「…………あ」
「んう?」
ベルがふとユーフィに視線を向けるとユーフィは逆さまに浮遊したまま首を傾げる。
「お願いします! ノエルの、僕の近くに居た精霊の気配を追ってくれませんか!?」
「…………いいよ!」
「ちょっと、ユーフィ! 貴方も、こんな事する相手にLv.1で戦いに行くなんて!」
「お願いです! 足は引っ張りません! だから……!」
「ええ………うう、先輩達はダンジョンだし。でも……」
断っても、一人で向かいそうだし、とベルを見るセシル。
セシルはLv.3………
「ああ、もう! 解った! 行くよ!」
「うん! あ、リリは………」
「………なんで」
「……え?」
「どうして、助けようとするんですか。あったばかりのくせに………顔も知らない相手のくせに」
その言葉はとても冷たく、なのに焼き付くような熱を孕んでいた。困惑するベル。訝しむセシル。
「子供を助けるのなんて、当たり前じゃない」
「っ!!」
その言葉は残酷だ。
その言葉は、彼女の胸を抉る。
「そんな当たり前知らない! それが当たり前なら、何で………何で誰もリリ達を助けてくれなかったんですか!? なんで、兄様を…………何であの子だけ! そんなのずるい!」
子供を助けるのが当たり前? そんなの嘘だ。だって、誰も自分達の前に現れてくれなかった。だから、あの人は剣を取ったのに!!
「誰もリリ達の声なんて聞かなかったのに、何で、あの子だけ!!」
叫び、吐き出し、肩で息をするリリ。言ってしまった、醜い本音。これで終わり………ノエルの家族ごっこも、ベルのサポーターも………全部終わりだ。
「………リリ」
「っ! なん、ですか………さっさと、ノエルを助けてくればいいでしょ」
「それは、僕だけじゃ出来ないから。あの子には、リリが必要だから」
「そんなの、私の知ったことじゃないですよ! リリは……リリは、大っ嫌いなんですよ、あんなガキ! 大大大っ嫌いです! 勝手に懐いて!」
何時も笑って、悲しいことなんて何もないみたいな顔をして………惨めになる、逃げたくなる………。
「あんな、あんな……ガキ、リリには何の関係も────!!」
「リリ………それは、嘘だよ」
「………!!」
「リリは知ってるよ。ノエルがそんな子じゃないって………僕達と同じ、一人の寂しさを知ってるって」
「………同じ、なんかじゃ」
「うん。僕は、その後すぐ神様に見つけてもらえたから………だから、解るよ。ノエルにとって、君がそうだった」
見つけてくれた、手を差し伸べてくれた、助けてくれた。
たった一人の自分に………それがどれだけ嬉しいか、ベルは知っている。
それを知らなくても求めている事を、リリは自覚している。
「それでも、ノエルがずるいと思うなら………僕が、リリの声を聞くよ。今度は、聞き逃さないから………師匠も………君のお兄さんだって、絶対にそうだから」
「っ! 気付いて………」
「流石に、ね………なんとなくだけど、やっぱり2人って、すごく似てたし。僕がリリについて話す時、師匠、知ってたみたいだったし………サポーターを危険な目に遭わせるなって、すっごい脅してきたし」
あはは、と苦笑するベル。その時の恐ろしさでも思い出したのだろう。
「なんで、リリ達を………リリ達が子供だからですか? 女だからですか? ベル様が、正義に憧れているからですか………っ!」
「憧れ………は、するけど。実行できるほど、強くはないよ」
「なら、なんで………」
「
ベルはリリ、と目線を合わせる。
「リリの言葉を聞かせてほしい」
その言葉にリリは息を呑み、その言葉を絞り出した。
「………本当は、別れたくないです………ずっと一緒に居たい。あの子に、リリみたいな思い、させたくない………!」
「うん。させないよ、ノエルにも………リリにだって、もうさせない。いこう、あの子を助けに」
ダンジョン16階層。ダンジョン内殺人事件の調査に赴く【アストレア・ファミリア】と【ロキ・ファミリア】。
不意に足音が聞こえてきた。酷く慌てている。
「げえ!? 【ロキ・ファミリア】!?」
「私達もいるわよー」
「おお、【アストレア・ファミリア】!!」
「ちょっとー、何その扱いの差」
同じ第一級でありながらその扱いの差にティオナが不機嫌そうにいう。何気に怖がられることが多いのだ。
「どうかしたの?」
「ミ、ミノタウロスだ!」
「ミノタウロス?」
中層にまで来ておいて、何を今更と首を傾げるティオナ。
「ただのミノタウロスじゃねえ! 強化種だ! 同じミノタウロスぶっ殺して、魔石食ってやがったんだよ!」
「「「!!」」」
その言葉は、聞き逃せない。強化種という存在の危険性を知らない者はここには居ない。
「上に向かう連絡通路に………今は、多分14階層! やべぇよ、どうにかしてくれ!!」
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