ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「っ…………う………」
「おや、起きましたか」
響く咆哮にノエルが目を覚ます、本来なら格下の動きを止める
逆に、とベルに目を向けるヴィトー。完全に怯えている………。
深層の怪物の群にも匹敵する食人花にすら挑んでみせたのに。強さ、ではなく本人の気質………ミノタウロスにトラウマでもあるのだろうか?
「ヴオオオオオ!!」
そんなベルに突っ込むミノタウロス。他には目もくれない。
モンスターが一人の人間に固執する? あり得るのか、そんな事………『彼等』とは異なるようだし……可能性があるとすれば、取り逃した獲物? いや、上層にミノタウロスが現れたあの事件は【ロキ・ファミリア】自ら解決したはず。
「っ! うわあああ!!」
ならあの光景はなんだろうか? あんな情けない子供の何に執着するというのか。叫び声を上げ、それでも足が動かない。あれは死ぬな。
「っ!」
「おや」
あの動き、サポーターかと思ったがLv.2だろう。スペックだけで見れば彼女の方がベルより上。
「ベル様! しっかりしてください!」
「ヴゥ! オオオ!!」
邪魔されたミノタウロスは怒りを声を上げる。はっと正気に戻ったベルはリリを投げ飛ばしミノタウロスに手を向ける。
「【ファイアボルト】!!」
薄暗い
「うわああああああ!!」
闇雲に剣を振り回すが如く放たれる魔法の連撃。無詠唱という、魔力の手綱を握る時間のない反則技は、しかし故に威力は低く、何より悪手だ。
「ヴオオオ!!」
炎と黒煙を突き破り現れる腕。ベルの胸元を掴む。
咄嗟に後ろに跳ぼうとしていたのに、掴まれただけで内臓が揺さぶられる衝撃。
ベルは高く投げ飛ばされた。
「あ………がっ!?」
浮遊感に固まり、次の瞬間衝撃。地面を転がりながらモンスターの群の外に落ちる。
「はっ、あ………」
勝てない。
魔法が効かない。力が足らない。速さも足りない。恐怖と絶望がベルの魂に黒い影を落とす。ミノタウロスはその様子に気付いているのかいないのか、そのまま歩き出し………。
「っ!!」
リリが立ちはだかる。ヴィトーは愚かだと鼻を鳴らす。あのミノタウロスの強さは異常だ。Lv.2であろうと、戦闘職でもない少女など一瞬で肉塊に………
「ヴォ!?」
「………ん?」
ミノタウロスはリリを見てビクッと後ずさった。怯えている? なぜ?
そう言えば彼女の顔はリリウス・アーデに似ているが………取り逃した個体? いや、彼がミノタウロス程度逃がす筈が……。
「……………」
ミノタウロスはリリを避けるように横に移動する。リリも慌てて移動したが、逆方向に走って横を抜ける。
「っ! ユーフィ!」
『ええい!』
ユーフィがミノタウロスを吹き飛ばす。オーク達を巻き込みながら吹き飛んだ。流石は人類救済に送り込まれた精霊。
腕を
「…………は?」
魔力を燃やし、細胞を活性化させ傷を癒す。本来なら莫大な魔力を持つ階層主にしか許されない力。それを、取り込んだ魔石による強化を捨てる代わりに実行した。
「ヴオオオオオ!!」
そしてそこまでされて、ユーフィに向ける敵意は煩わしいと言わんばかりの物。その敵意は依然ベルに向けられる。
「……………っ!」
理由は分からない。でも、狙われているのが自分だけなら逃げ回ればリリとセシルの邪魔にならないはず。そんな考えが過る。
無様でも逃げ回って、逃げ回って、逃げ回って、逃げ回って、逃げ回って…………少しでもセシルとリリからこのミノタウロスを引き離す!!
それは冷静に考えた結果ではない。逃げる為の言い訳探し。それでも直ぐに背を向け全力で駆けないのは、ミノタウロスの狙いがリリ達に行かないように………!
「ベルお兄さん!」
「おっと」
駆け出そうとするノエルの背をヴィトーが蹴り、転ばせた背中を踏み付ける。うぐ、と声を漏らしながらもノエルはベルに不安そうな視線を向ける。
「…………大丈夫だよ」
それは強がり。
「………負けない、から」
自分より怯える彼女を元気づけながら、自分を奮い立たけるただの見栄。
「直ぐに勝って、君を助けるから」
「出来るといいですね」
「あぐぅ!?」
ヴィトーはノエルの頭を踏み付け気絶させる。そのまま担いで運ぶ。
「セシルさん! リリ! 追って!」
「なっ!? でも、貴方が!」
「このミノタウロスは僕を狙ってます! 僕が追えば、此奴もついてくる。大丈夫です………誰かが来るまで、持ちこたえれば………!」
セシルは霧の奥に消えたヴィトー達とミノタウロスを見る。このミノタウロスを倒すのは、一筋縄では行かない。
推奨レベルはLv.2でも、Lv.3ですら油断出来ないミノタウロスの強化種。Lv.1一人に任せるなんて………!
「早く! ノエルを助けて!!」
「っ! ああ、もう! 無様でも情けなくても、絶対に逃げ回りなさい! 私だけはカッコよかったって褒めて上げる!」
暫く迷い、それでもセシルは行ってくれた。ベルを冒険者として扱ってくれた。
ミノタウロスは邪魔者がいなくなったと判断したのか、或は会話が終わるまで待ってくれていたのか、ベルへと歩き出す。
「ウオオオオオ!!」
「うあああああ!!」
振り下ろされる大振りの大剣。かわし、横を通り抜ける。背後に回り【ファイアボルト】。すぐさま距離を取る。
無傷のミノタウロスは両腕で剣を構え、振り抜いた。鉄塊の如き大剣は地面を抉り、土の散弾を放つ。
「【ファ、ファイアボルト】!!」
炎が爆ぜ迫る土塊の壁に穴が空く。その穴を通った瞬間には既に迫るミノタウロス。
人に近い形をしているミノタウロスの動きを先読みし、回避。横を通り抜けようとした瞬間、頭突きが放たれる。
「う、あ!?」
ギリギリだが回避できるはずだった。しかし、ミノタウロスには人間にはない角がある。エイナからもらったアーマープレートと腕のすき間に入り込み、アーマープレートを容易く貫く。
「うわあ、ああ!?」
勢いそのままベルの体が引っ張られる。振り回され、肩が外れそうな程の激痛。
幸いにも冒険者の肉体より先に罅の入ったアーマープレートが砕け放り出されるベル。
「かあぁ!!」
背中から地面に落ち、立ち上がれないベル。ダメージ、ではない、やはり勝てなかったと、圧倒的な絶望、恐怖により体に力が入らない。
響く足音。近づいて来ている。殺される!!
震えるだけのベルに迫る死の足音は、しかし唐突に留まる。金色の影が両者の間に割り込んだ。
「…………ぁ」
「大丈夫ですか?」
『大丈夫ですか?』
「今、助けます…………」
「…………!」
助ける? 助けられる?
また、この人に………あの時と同じ、何も変わらないまま!!
「………うゔ!」
足に力が入る。立ち上がろうとするベルに、アイズは信じられないというように目を見開く。
立て、立てよ! 今ここで立ち上がらないで、いつ立ち上がるっていうんだ! 今ここで頼ってしまえば、もう二度と、立ち上がれない。
助けに行かなきゃいけないからなんて、言い訳をして逃げ出したが最後。ベルは二度と英雄になれない。
「ヴゥ………!」
アイズの腕を掴み、後ろに引きながら自らは前に出るベル。その姿にミノタウロスはブルリと身を震わせる。
「待っ──!」
思わず伸ばされたアイズの手は、しかしそこで止まる。怪物へと向かうその背に、かつての
一振りの風の剣を構えて戦いに挑む『英雄』が、少年の背中に見えた。
『英雄』への道に一歩踏み出した少年を前に、アイズの体は動かなくなる。
「ヴヴヴ………ヴオオオオオオオオッ!!」
資格無き者を篩い落とす怪物の咆哮を前に、ベルは
ヘスティア・ナイフと
対するミノタウロスは大剣一本。
ズシンズシン、ジャリジャリと両者の奏でる足音の間隔は短くなっていき、軈て駆け出す。
「追いつきました! アイズ、ミノタウロスはどこに………あれは、クラネルさん!?」
臨時パーティーの中で【エアリアル】を使用したアイズの次に速いリューが追いつく。ミノタウロスに襲われているLv.1を見て駆け出そうとして、アイズが彼女の腕を掴む。
「…………待って」
「何を!? このままではクラネルさんが!」
そこまでいいかけ、響く金属音に振り返る。
「…………え」
「なんだ、上級冒険者と出くわしてたのね」
遅れてやってきたアリーゼがミノタウロスと戦う冒険者を見てそう判断し、あれ? と首を傾げた。
「あの白髪、リリウスの弟子でしょうか? 駆け出しではなかったのですか」
輝夜が疑問に思うのも当然。推奨されるLv.2でも殺しかねないミノタウロス………その強化種とベルが戦っている。戦いになっている。
駆け出しのはずの冒険者が、上級冒険者が対処するべき強化種と。
「…………あれは邪魔しちゃ駄目ね」
アリーゼは抜いていた剣を鞘に納める。
「アリーゼ!?」
「獲物を横取りするのはご法度だもの。それに………今あの子は、冒険をしているわ」
アリーゼ・ローヴェルはその光景を見つめる。
冒険へ挑む冒険者の姿を、その目に焼き付けるように。
ベルは今日、初めて冒険をする。
紅いミノタウロス。
リリウスにボコボコにされる過程で食った魔石で傷を癒す方法を見つけた。「じゃあもう少し傷つけても問題ないな」とリリウスが判断したため食った魔石の量に比べて強化率は低い。
ただし魔力の燃焼方法を覚えたので強化魔法的な使い方も実は出来ちゃう猛牛の剣士。
次に貴方は加減しろバカと感想に書く
エイプリルフール、皆が見たい嘘は?
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魔物リリウス(ガッシュ)相棒エピさん