ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
Q.なんか難易度高すぎない?
A.だってLv.3でLv6階層主に、Lv.4でもLv.7に、最近では世界焼き滅ぼせる亜神にすら挑むリリウス基準ですし。
響く剣戟の音。
ぶつかり合う怪物と人間。
激突音を演奏に、舞い散る血が火花に彩られる一匹と一人の共演。誰に邪魔させることも許さない。
「追い付いた! よーし、やっちゃ………あれ、どうしたの皆?」
次々合流する一同。ティオナは立ち尽くすアイズ達に首を傾げて、その戦いを見る。
「おお〜。あれ、誰? 知らない人!」
「彼は…………ベートが侮辱していた少年か?」
リヴェリアの言葉にフィンがへぇ、とベルを見る。
「ベート曰く、ほんの二十日前、彼は駆け出しだったはずだけど」
どう見ても、そんな光景ではない。速度だけならLv.2に比肩する高速の静音。対するミノタウロスは全てを破壊する破壊の轟音。
身体能力で勝るミノタウロス強化種が優勢ではあるが、
「リリウスの奴、どんな鍛え方したんだ?」
「リリウスの………そうか、彼が噂の………」
世界最強のリリウス・アーデの弟子。名は確か、ベル・クラネル。
第一級冒険者を名乗ることを許された彼等からすれば、まだ粗の残る稚拙な戦い。足下に及ぶこともない、程度の低い争い。
しかし、彼等の胸を掴んで離さない何かがあった。足を縫い止め、その光景を見せ続ける何かがあった。
「…………アルゴノゥト」
ポツリと、ティオナが呟くとある英雄譚………或は童話の名前。
英雄に憧れる青年が牛人により
時には人に騙され、王に利用され、多くの者達の思惑に振り回された滑稽な男の物語。
友人の知恵を借り、精霊から授かった武器で戦い、なし崩しに王女を助けてしまう、滑稽な、英雄の名前。
「あたし、あの童話、好きだったなぁ………」
苦しくて、辛くて、心が死んでしまいそうな幼いティオナの胸に温もりを与えた英雄譚。胸に灯る懐かしい熱を逃さぬように胸に手を置くティオナを一度だけ横目に、アイズも思い出す。
幼い頃、母が読み聞かせてくれた本。彼女が愛した物語の一つ。
「……………前」
フィンは呟く。
少年は前へと進む。
直撃すれば死が免れぬ大刃をくぐり抜け、身を震わせる雄叫びを自身の咆哮で相殺し、勝利をもぎ取ろうと全身を奮い立たせて、ただ前へ。恐ろしい怪物の眼前へ。
何か考えがある動きには見えない。
こちらを意識すらしていないだろう。それでも、この場の誰よりも………今まさに挑むミノタウロスにすら劣る彼が前に進めるのは…………それは、きっと「勇気」。
「ヴオオオオオオオオッ!!」
「っ!!」
ミノタウロスの体が赤く発光する。全身から溢れ出る紅い燐光は……燃焼した魔力の
先程以上の力と速さを以て、大地を割る一撃。
「!!」
瞬き一つ行わず目の前の怪物を見据える瞳が充血する。一瞬すら見逃さぬ瞳に痛みが走る。それでも見る。
ミノタウロスの構えは、大振り。しかし、ベルはそれなりの距離を取っていた。あの距離では届くはずがない、先程のように地面を打ち付ける気すらない。
だが、その瞳を見て確信する。当てる気だ!!
「ギシャアアアアアア!!」
魔力に惹かれ、気絶していた食人花が飛び上がる。
迫りくる脅威を前に、ミノタウロスは大剣を薙ぐ。ベルが横に飛ぶのとほぼ同時。
ベルはもちろん、食人花にすらその剣は届かず、
紅の斬光は、切断などとお世辞にも言えぬ圧倒的な破壊の衝撃となって食人花をすり潰す。
「…………今のは、僕の見間違いか、リヴェリア」
「戦士でない私に聞くな。ガレスなら、答えを出せたろう………だが、戦士ならざる私の感想でいいのなら、私にはそう見えた」
二人の会話を理解できる者は、ここには居ない。【ロキ・ファミリア】でさえ、神たるロキを除けば名前が出たガレスしか知り得ぬスキルや魔法ではない『技』。
「【ゼウス】と【ヘラ】の技!」
オリジナルに比べれば精度も威力も射程も遥かに劣る。
城も丘も斬れぬ、それでも屋敷程度なら破壊するであろう斬撃。魔道士の砲撃にも匹敵しうる破壊の一撃。
「フゥゥー! フゥ──!!」
ミノタウロス強化種の
第2級程度の存在に許されぬ一撃の代償は小さくなく、魔力の燐光が明滅し、フゥフゥと荒い息を吐くミノタウロス。
「ヴオオオオオ!!」
必殺の一撃を回避した獲物に怒りとも歓喜とも付かぬ叫びを上げるミノタウロス。杖のように突いていた剣を再び持ち上げ、ベルへと迫る。
「うああああ!!」
圧倒的な破壊を前に、恐怖なく、闘志を燃やし迫るベル。
「【ファイアボルト】!!」
狙いは顔面。爆ぜる炎が視界を奪う。
「っ! 今、詠唱した!?」
「連射……超短文詠唱? いや、詠唱しているようには見えない」
だがその分威力は低い。鬱陶しいとばかりに炎の壁を突き破り迫るミノタウロス。大剣を回避し、漆黒のナイフで斬りつける。
伸びてくる手に慌てて離れる。
「………決定打がない」
両刃剣は、硬いミノタウロスの肉を断てない。詠唱の長さが威力に比例するならば、当然威力の低い炎は耐熱耐寒効果もあり、防具としても重宝されるミノタウロスの皮膚を焼けても、命を奪うほどの威力を出せない。
ミノタウロスはベルの持つ漆黒のナイフにのみ警戒していた。それだけが、ベルが彼に有効打を与えうる武器。
他の武装への警戒をおざなりにする程には、ミノタウロスの耐久は優れている。
有効打になっても致命ではない。ベルがナイフで攻勢に出ればミノタウロスは多少の負傷を無視して潰しに来るだろう。己の肉を斬らせ、ベルの骨を断つ。
「フゥ、オオオオオオオ!!」
猛攻を流すベル。一撃一撃に腕が痺れる。
Lv.1のベルにとって、文字通り規格外の威力を流しきれない。
甲高い音を立てバゼラードが砕かれる。勢いの止まらぬ大剣は大地を大きく抉り爆砕させる。
吹き飛ばされながら、ベルは圧し折れたバゼラードを全力投擲。神の恩恵により得た人外の膂力はガラクタと成り果てた剣に矢という役目を与える。
顔面に迫る銀の矢をミノタウロスは小賢しいと角で迎撃。ベルはその光景を見るまでもなく、駆け出していた。
「!?」
「うあああああああああ!!」
体を捻り、繰り出そうとしてくる技は刺突。手は右手………
地面を抉っていた大剣を無理やり引き戻り剣の腹を盾代わりに構えた。
弾かれる
ミノタウロスの目が驚愕に見開かれ、手首にナイフが突き刺さる。
「グゥ!」
しかし元々力と耐久に優れたミノタウロス。深く突き刺さらない。
「【ファイアボルト】!!」
ゼロ距離魔法。ミスリルの刃を伝い内部に侵入した炎雷が爆ぜミノタウロスの手首を吹き飛ばす。
支えを失い倒れようとした大剣を掴み取り、振るう。
どういう経緯で手に入れたかは知らないが、中層から訪れたミノタウロスが持つ………中層に挑めるだけの冒険者の持つ剣。
ミノタウロスの体を斬りつける。
「うおおお!!」
剣に振り回されながら、斬り上げる。
「うわ、下手くそ!」
重量武器使いのティオナが思わず叫ぶほどの不格好な剣。だが、押している。
「フゥ、ヴ………ヴヴゥオオオオオ!!」
再び、燐光。紅の魔力を纏ったミノタウロスが正面から
鋼鉄の如く握りしめられた拳が血を噴き出しながら大剣を押し返す。だが、力でベルを圧倒しようと大剣の重量がミノタウロスの拳を押し返した。
「づぅ、おおおおお!!」
「ヴオオオオオ!!」
拳と大剣の一瞬。意味をなさない雄叫びを上げ、気迫と気勢が空気を揺らす。
不格好な軌跡を描く剣が蹴り落とされる。
拳を防ぐ大剣が額に当たり血が噴き出る。
地面が蹄形に陥没する。
草木が薙ぎ払われる。
一進一退どころではない。どちらも退かず、されど進めず拳と大剣の猛攻。
ミノタウロスの拳が再び大剣を弾く。あっさりと………。
「グ!?」
剣を引き、ミノタウロスの拳の勢いを乗せた大剣を己を軸に回転させ脇腹に叩き込む。刃がめり込みながら肉を切り裂き、ミノタウロスはたたらを踏むように後ろに下がる。
「フゥ、フゥ………ブフゥ────!!」
2足の猛牛は腕を………否、前足を地面に着ける。爆ぜて破壊された前足も。
本物の牛のように四足になったミノタウロスが繰り出そうとするのは、突撃体勢。だが彼我の差は5
「…………はぁ………っ!」
初めて思った。勝ちたいと。
目の前の相手に勝ちたい。僕は………英雄になりたい!!
「ヴオオオオオオオオオッ!!」
「うゔああああああああ!!」
ミノタウロスの突進。走り出すベル。
「若い……!」
力で勝る相手に正面から挑まんとする無謀にリヴェリアが咎めるように呟く。
勢いをつけ振り下ろされた大剣は………リリウスが中層で拾った物。使い古された剣は今日までの酷使にとうとう限界が来て砕かれる。
武器の限界。
致命打になり得る武器を失う。これが、ベルの限界。
(………限界?)
限界、なら…………限界を………。
(乗り越えろ!!)
互いの横を通り過ぎるベルとミノタウロス。ベルは地面を蹴る。急制動、方向転換………膝が痛みという抗議を訴えるもこれを無視して振るわれるヘスティア・ナイフ。
ミノタウロスの肉体へと深く突き刺さる。
「【ファイアボルト】!!」
再びナイフを伝い内部で爆ぜる炎雷。ミノタウロスの体がボン、と僅かに膨れた。
「ブゥ、グガ………オオオオ!!」
「【ファイアボルト】!!!」
反撃しようとするミノタウロス。再び内臓を焼く炎雷。ゴホ、と湯気が立ち上る血液とともに煙を吐き出す。
内臓を焼かれる激痛を味わいながらミノタウロスはベルの頭部へ肘鉄を放つ。Lv.1を肉塊に変える必殺の一撃。されど
「【ファイアボルトォォォォォォォ】!!」
それより前に、炎雷が爆ぜる。
ミノタウロスの肉体が膨らみ、破裂。噴火のごとく噴き出した炎の柱が天井を焼く。
「……っはぁ、は………! はぁ……!」
「……………勝った」
ポツリと呟くのは、果たして誰か。
ゴトンと音を立て灰が散った地面に落ちる『ミノタウロスの角』。
ベルはその場で膝をつき、倒れぬよう両手を地面に押し当て酸素を取り込もうと息をする。
そして、そのまま立ち上がり向かおうとするのは下への連絡路。
「クラネルさん!?」
「え、あ………リュー、さん?」
「何をしているのですか! その怪我で、まだ潜ろうなんて」
「行かなきゃ、行けないんです…………ノエルが……そうだ、ノエル! アイズさん、リューさん! 力を貸してください!」
叫び、倒れそうになるベル。アイズが慌てて支える。
「ノ、ノエル………?」
「精霊です………ヴィトーさんと、白い服を着た人達が」
「白い服………まさか、
「………あの子が、精霊だから」
ピクリと肩を揺らすアイズ。フィンはそうか、と【アストレア・ファミリア】を見る。そういうこともあると、そう思っているのだろう。
「解った。ひとまず君は、地上に戻って………」
「出来ません!」
「………!」
「約束、したんです。助けるって! あの子は、きっと泣いてる………だから!」
「…………ライラ、エリクサー頂戴」
その言葉にライラは良いのかよ、と尋ねる。与えて良いのか、ではなく、連れて行って良いのか、という意味だ。傷が癒えれば、彼は必ず向かう。
「足手まといになんてならないのは、さっき見せてもらったもの。ね、ベル………」
「…………はい!」
「うん。よし、それじゃあ……リュー、
「なぜ私なのですか!?」
「だって、私だと胸がゆるくなっちゃうもの」
と、アリーゼは己の胸元に手を添える。アイズは鎧の下に1枚だけで、フィンは小さい。ヒリュテ姉妹は論外。
「上着だけでいいから。ね、お願い!」
「〜〜〜〜! いえ、わかりました」
渋々と文句を言いながら上着を1枚脱ぎエリクサーを飲んでいるベルに渡す。
「今は、セシルさんとリリが…………」
「セシルが? なら、アイズちゃん!」
「うん。ノエルって子は無理だけど、セシルといるあの子なら追えます」
アイズはそう言ってフィンを見る。フィンはコクリと頷いた。
「行きましょう」
アイズが走り出す。一同も後に続き、Lv.1故に遅れるベルをアリーゼが抱えて走った。
ミノタウロスの斬光擬き。
破壊力、範囲、精度、全て未熟も未熟。おまけに一度使うと暫くまともに動けなくなる不完全な技。
当たれば確実にLv.4までなら殺せる。
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