ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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駆けつける白

「さっきから、うざったい!」

 

 未開拓領域に飛び込んだリリ達を襲う闇派閥(イヴィルス)の残党。

 リリは篭手に仕込んでいた《リトル・バリスタ》でそこらの水晶や石を放つ。

 

 小人族(パルゥム)専用の小型サイズだが、Lv.2でもなければまず引くことの出来ない重さだ。放たれる矢はLv.1程度なら服の上からでも骨を折れる。

 

 なにせ自爆してくる相手だ。近づいて欲しくない。

 

『え〜い!』

 

 ユーフィが嘶くと突風が吹き荒れ人間もモンスターも纏めて吹き飛ばす。とんでもない力だ。

 英雄の友にして剣、あるいは盾……恩恵(ファルナ)が授けられる前の下界救済機構(システム)は、中位と言えども神の分身。その力は規格外。

 

『う!?』

 

 と、不意にユーフィが足を止める。

 

「どうしたの、ユーフィ」

『うぅ………なんか、あそこ、いきたくない!』

「わがまま言うな! 彼処にアンタの仲間がいるんだ!」

『うう〜!』

 

 セシルの言葉にユーフィは勇気を出して最深部へと飛び込んだ。

 開けた空間。水晶の空中回廊が頭上を走り、周囲の疑似雪(すいしょう)と合わせはまるで氷の秘境。

 

 そして、一番奥。

 ユーフィが思わず後退る。

 

「………なんですか、あれ」

「モンスター、なの?」

 

 水晶の壁の中に凍りつくように埋まっている巨大で醜悪な下半身と、天女のように美しい女の上半身を持つ怪物。

 

 腰の下には2つの花。羽のように広がる五対の葉………。

 リリは勿論、セシルも見たことがないモンスター。

 

 見ていて気持ちが悪い。どうしようもない違和感を覚える。

 

「お気に召してもらえましたか?」

「「!?」」

 

 その言葉に振り返るとノエルをそばに置くヴィトーがいた。

 

「『彼女』こそ我々を導く真の女神! 破壊と暴力の化身にして、世界是正の象徴です」

「リリおねえさん!」

「ノエル!!」

「おや、白髪の彼は? ミノタウロスにでも殺されましたか?」

「簡単に負けないわよ。世界最強の弟子だもの」

 

 ニコニコと人の死を確かめるヴィトーにセシルが返す。

 

「ノエルに何をさせるつもりですか? あの怪物は何ですか」

「怪物とは酷い言い方だ! 彼女はね、貴方達が可愛がっているこの娘と同じ存在ですよ?」

『ちがう! あれ、かけら! うう、なかまのかけら…………』

「ええ、正確には分身ですね」

 

 精霊の欠片? 分身?

 見るからに怪物のあれは、ダンジョン由来ではなく精霊由来の何か? 意味がわからない。

 

「穢れた精霊の分身………『精霊の分身(デミ・スピリット)』! 怪人(クリーチャー)共とエニュオの悪巧みの一環ですが、まあ我々はのんびり待つのもアレなので」

「エニュオ………?」

「彼女が目覚め、歌を紡ぎ、ダンジョンの『蓋』たる神塔(バベル)を吹き飛ばせば、世界の崩壊はどれだけ進むのか。愉快な想像が止まりません」

 

 笑顔でオラリオの崩壊、ひいては下界の混沌を語るヴィトーにセシルは顔を歪める。リリも世界を呪ったことはあるが、ここまで悍ましくなったことはない。

 

「我々は彼女に目覚めてほしいのです。ですが、彼女は眠り姫のまま。私達がどんなに望んでも、手を尽くしても瞳を開いてくれない。どうしたら目覚めてくれると思いますか、皆さん?」

「世界最強を連れてきたら、英雄に会いたくて目覚めるんじゃないですかぁ?」

 

 その場合、目覚めた彼女を世界最強がその日のダンジョンの飯に変えるだろうが。

 

「それは困る。実に困る。なので、手始めに………皆さんの悲鳴で彼女を起こしてくれませんか?」

 

 その言葉とともに現れる巨大な芋虫。

 

「また新種!?」

 

 食人花同様目に痛い、毒々しい極彩色。怪物の宴(モンスターパーティー)さながらの数で現れる。

 

「では皆さん、歌って踊ってください。眠っている彼女も、思わず小躍りしたくなるほどの、陰惨な歌劇を!」

 

 芋虫が口から液体を放つ。粘性を持つそれは地面に触れた途端ジュウウウと焼け付くような音を立てながら煙を噴く。

 

「地面が溶けた!?」

「溶解液!?」

 

 どの程度まで溶かせるのかは知らないが、地面を溶かす速度からしてLv.2でも耐久が低い方のリリは絶対に当たってはならない。

 

「この!!」

 

 矢をダンジョンで拾った石や水晶から鉄の短矢に変える。

 大型の芋虫は存外脆くあっさり突き刺さる。しかし血が出てくることはなかった。

 

 傷口から吐き出した液体と同じ体液が噴き出し近くの仲間を溶かす。

 

「溶解液の詰まった爆弾! セシル様、不壊属性(デュランダル)の武器だったりします? 鍛冶師でしょう?」

「アタシ、顧客の頼みならともかく鍛冶師が自分から楽な道(そういうの)に頼るのよくないかなあって…………」

「使えねえええええ!!」

「そこまで言う!?」

「ああ、もう!」

 

 と、リリは叫ぶ。

 

「【響く、十二時のお告げ】」

 

 その詠唱とともにリリのうさぎ耳が消え、白い髪と紅い瞳は茶色に変わる。幼子の骨格から少女の骨格に変わったその姿は獣人の幼女ではなく小人族(パルゥム)の少女。

 

「【貴方の刻印(きず)は私のもの。私の刻印(きず)は私のもの】!! 【シンダー・エラ】」

 

 【灰被り(シンダー・エラ)】。

 変質魔法を持つリリウス・アーデの妹、リリルカ・アーデの持つ変身魔法。兄と違い自由に、何を取り込む必要もなく姿を変えられるその魔法は幻惑魔法に類するのかもしれないが、それでも異端。

 

 何せ獣人に化ければ耳や尻尾が、誰かに化ければ服が()()()()()()()()。しかも耳は感覚器としても機能する。

 

 実在する幻影。肉体の一部を生み出すことすら可能なその魔法は、正確なところ何属性に当たるのか明確な答えを出せるものは居ないだろう。

 

 本来は、『自分を同等サイズの何かに変える魔法』。しかしスキル【鳩嘴抉目(サンドリヨン)】によって、その力は増幅される。

 

 ・魔法効果の向上。サイズをある程度変更可能。

 

 ・魔法対象の広域化。()()()()()()()()

 

 芋虫達が足を失いジタバタとその場で飛び跳ねる。バランスが取れず、吐き出された溶解液を仲間同士で掛け合う。

 

 短文詠唱に属する魔法とは思えぬ結果をもたらしたリリに、ヴィトーはほぅ、と感心したように笑う。

 

「意外に、邪魔ですねえ貴方。死んでください」

 

 と、リリへ向かってくる人影。白装束の自爆兵。今まさに起爆ピンを抜こうとしていた。

 

「づああああ!!」

 

 それを蹴り飛ばす、白い影。撃鉄装置を持っていた右肩を蹴りつけ、握力を失った手が撃鉄装置を手放し男は転げ飛ぶ。

 

「…………」

 

 白い髪が見えた。肩で息をするほどに、慌てて助けてくれた。

 

「────兄様?」

「リリ、大丈夫!?」

「ぁ………ベル、様」

 

 振り返った顔は兄ではなく、そもそも小人族(パルゥム)の身長ではなかった。

 

「さっすが私! ナイスコントロールね!」

「アリーゼ、せめて一声かけてから投げるべきだ」

「『女の子が危ない、いっけー!』は、ないと思うよ」

 

 次々現れるアリーゼ、リュー、アスタ。

 

「アリーゼさんは、コントロールが凄いね」

「褒めてくれたのはアイズちゃんだけ!? 後でジャガ丸君買ってあげちゃう!」

「!! 頑張り、ます!」

 

 ふん、と拳を握るアイズ。

 Lv.6が、3人。中堅派閥の総戦力にすら容易く勝利するであろう布陣。流石のヴィトーも、その顔に驚愕が浮かんだ。

 


 

勝ったな。この布陣に正攻法で勝つほどの力はヴィトーにはない! 正攻法ではな!

ところで行方不明の冒険者って何処だろうね?

エイプリルフール、皆が見たい嘘は?

  • バーサーカーリリウス(/Zero)
  • 英雄派リリウス(ハイスクールD×D)
  • 冒険者リリウス(このすば)
  • 死に戻らないリリウス(リゼロ)
  • 魔物リリウス(ガッシュ)相棒エピさん
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