ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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惨劇

 『精霊の分身(デミ・スピリット)』は美しく微笑むと、無数の触手が伸びて来る。

 

「っ!!」

 

 風を纏ったアイズと大盾を持つアスタが弾こうとすれば、逸らすことには成功したが2人も弾かれた。

 重い。一体どれだけの魔石を食ったのか。

 

「【焼キ尽クセ炎獄ノ珠。代行者タル我ガ名ハ火精霊(サラマンダー)──】」

「詠唱!? それに、この魔力!!」

 

 吹き上がる魔力が、物理的に吹き荒れる風となり発動しようとしている魔法の前兆が、魔法の規格を知らしめる。

 

「【炎ノ化身(ケシン)炎ノ女王(オウ)】」

「回避!」

「【ファイア・ボール】」

 

 放たれる炎弾。第一級の魔法にも匹敵する威力の炎が永久に解けぬはずの粉水晶(ゆき)を溶かす。

 

「無理無理! あんなの食らったら髪の毛が焼けちゃう!」

「髪の毛じゃ済まないよー!」

「アハハ。アハハハハハ!!」

 

 戦慄する冒険者達と対照的に楽しそうに笑う『精霊の分身(デミ・スピリット)』。

 魔法を、触手を玩具を手に入れた子供のように好き勝手使用する。

 

「ぐあああああ!?」

「ひ、ひぎゃああああ!!」

 

 おまけに敵も味方も関係なし。闇派閥(イヴィルス)が炎に飲まれ、爆ぜた。

 アリーゼは己の手を斬ると、Lv.6の総力で駆け抜け闇派閥(イヴィルス)達の覆面を赤く染める。

 

「今血をつけた人達は冒険者!」

「解るんですか?」

「前提を知ってればね。悪党の目はアイズちゃんより見慣れているもの。正義はすごいのよ。ね、リュー、アスタ、セシル!」

「……わかりません」

「見てる余裕ないよ!」

「アスタ先輩と同じ!」

「つまり私がすごいってことね!」

 

 その理屈ならベルも凄いことに………いや、彼の場合後方に居たけど。

 

「後はあっちか…………」

「オオオオオオオ!!」

 

 大量の冒険者を取り込み、そのまま人質にしている。おまけに、目覚めた『精霊の分身(デミ・スピリット)』。

 

「っ! 重い………」

 

 アイズの主観にはなるが、触手の巨人はゴライアスと同等か少し弱い程度。だが、『精霊の分身(デミ・スピリット)』の脅威度はウダイオスすら超えバロールに迫る。【ロキ・ファミリア】が深層に潜れる全員を連れ、総軍を持って挑むべき相手。

 

「どうやら、この舞台が向かう先は『惨劇』のようですねぇ。精霊の虐殺という名の」

「! 貴方も、このままじゃ、ただじゃ済まない!」

 

 味方すら殺される状況に笑みを浮かべ続けるヴィトーにベルは叫ぶ。あの『精霊の分身(デミ・スピリット)』は目覚めさせた闇派閥(イヴィルス)すら虐殺する。

 

「それも本望です。『彼女』を解き放ち、神塔(バベル)を破壊して、世界是正の礎になるというのなら。後は、それを確実のものとするために………『生贄』を捧げましょうか?」

「…………っ!?」

「『彼女』、穢れた精霊の起源は、どうやらモンスターが数多の『精霊』を食らったものらしいですよ?」

 

 嘗ての古代、英雄と共にダンジョンの奥深くまで潜った古の大精霊。モンスターに食われてなお、モンスターの存在を乗っ取り自我を保った神の分身は、しかしモンスターに取り込まれたことによりその性質を反転させた。

 

「上位精霊である貴方を取り込めば、『彼女』の力はより強大になる………良かったですねえ、ノエルさん。本当の『家族』と一つになれますよ」

「いや……そんなのいや!」

 

 怯えるノエルに手を伸ばすヴィトー。割り込むように飛び込むのはベル。『精霊の分身(デミ・スピリット)』との戦いには、どのみちついていけないからだ。

 

「させるもんか! ノエルを生贄になんて!」

「………貴方は本当に、英雄のようですねえ。ですが、現実を見たほうがいい」

「はああああああああ!!」

 

 全力の斬りかかり。ヴィトーはそれをあっさりかわし反撃が来る! 右に──

 

「がはっ!?」

 

 腹に蹴りがめり込む。甚振るように加減された力でベルは吹き飛ばされた。

 

「いい目を持っていても、経験が足りない。駆け引きを知らない………私はこれでもLv.4ですからね。未熟者の虚を突く程度なら、ええ、赤子の手をひねるようなものです」

「ベル様!」

「げほ! ごほ!」

 

 咳き込むベルに駆け寄るリリ。追撃しようとしたヴィトーに向かい剣を向けると、剣から炎が飛び出した。

 

 魔法が込められた剣…………魔剣だ。なかなか高価なものを持っている。

 

「リ、リリ………ノエルを連れて、逃げて……!」

「なっ!?」

「この人は、僕が抑える!!」

「何、言ってるんですか!?」

 

 勝てるわけがない。勝てるはずがない。

 レベル差がそう簡単に覆るのなら、上級冒険者を抱える派閥がでかい顔などしない。ましてやLv.1と4なんて!

 

「だったらリリが! リリはLv.2です! ベル様より、リリの方が………足だけなら、ベル様の方が」

「え、Lv.2なの………すごいなぁ、リリ。でも、駄目だよ」

 

 フラフラと立ち上がるベル。ヴィトーは寸劇でも楽しむように、手を出さずその光景を眺める。

 

「ねえ、リリ………これが終わったらさ、師匠(せんせい)と仲直りしてくれる?」

「は、はぁ………? こんな時に、何を!?」

「僕、リリも大好きだし………師匠(せんせい)も、大好きだからさ。2人が仲直りしてくれるってなったら、頑張れるから………だから、危ないことしちゃ駄目だよ」

「〜〜〜〜〜!!」

 

 頑張ったところで勝てる相手じゃない。戦力差を覆す『なにか』を、ベルは持っていない。

 

「お願いだから、君が居ないと、ノエルも動けない!」

「! ずるい、ですよ…………それは」

 

 ノエルを抱えるリリ。無力感に震えながら、ベルに魔剣を手渡す。

 

「…………ちゃんと、兄様と話します。リリだって、兄様と……だから」

「うん。頑張る!」

「お話は終わりました?」

 

 ヴィトーは背を向けるリリを見ながら笑う。

 

「健気ですねえ。ですが無駄です、貴方を殺して、あの小人を追いかける。それで終わり………」

「させ、ない!」

 

 手を向ける。ベルに構えを取るヴィトー。しかし、その手が向くのは上!

 

「【ファイアボルト】!!」

 

 空を駆ける炎雷。頭上の空中回廊を爆発させる。存外脆かった水晶を砕いて、落ちた水晶は水晶を砕き、大質量の水晶が轟音を立て広間(ルーム)に落ちる。

 

「ああ、なるほど。やってくれましたねぇ………私をこの場に縫い付けた。いえ、閉じ込めたということですか? 貴方は私を押さえ、時間稼ぎと? 無駄なあがきです。貴方一人では、私を………」

「一人じゃない!」

『なーい!』

 

 と、ヴィトーの言葉を否定するのはセシルとユーフィ。ユーフィの背に乗って、瓦礫の山を駆け上がってきたのだろう。

 

「【アストレア】の精霊契約者…………これはこれは。では、貴方を殺し、その駄馬も『彼女』に捧げるとしましょう」

『だばってな〜に?』

「えっと………駄目な、馬?」

『だめじゃないもん! ぶか? もたくさんいるすごいせいれいだもん!』

「いや、アンタの部下って今も森にいるじゃない」

 

 Lv.1に、Lv.3………それから住処を離れた中位精霊。

 

「では私も、精霊の力を借りるとしましょう」

 

 そう言ってヴィトーが取り出したのは紫電を纏う剣。

 

『なかま!?』

「ええ、武器化させた雷の下位精霊を折り重ねた特注品です。雷はいい……美しい悲鳴(うた)を奏でてくれる! 時に貴方達、神経を焼かれるご経験は?」

「気絶した時、師匠(せんせい)が僕を起こす時………」

「えぇ……」

「……………そうですか」

エイプリルフール、皆が見たい嘘は?

  • バーサーカーリリウス(/Zero)
  • 英雄派リリウス(ハイスクールD×D)
  • 冒険者リリウス(このすば)
  • 死に戻らないリリウス(リゼロ)
  • 魔物リリウス(ガッシュ)相棒エピさん
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