ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「………さっむ!」
急激に
「ははは、はははは! 取り込まれたようですねえ
あの娘! ああ、残念です。とてもとても残念です……彼は、英雄にはなれなかったようですね?」
「………………」
嘲笑するヴィトーをセシルはジロリと睨む。
「………貴方、嘘ばっかり」
「…………何のことです?」
「貴方は『英雄』に憧れていない」
「!?」
その言葉に細目を見開くヴィトー。
「尊敬もしてない。貴方は英雄を見下している」
「………ほう? 何を言うかと思えば、それは心外です。私は心から……」
「ならどうして、ベルを嗤うの」
怒りを顕にヴィトーを睨む。ベルを侮辱することを許さないというように。
「!!」
「自分より強いモンスターに挑み、自分より強い人と戦って、こんな危険な場所にまで来て、貴方に挑んだベルを、嗤える訳がない!」
英雄を敬っていると言いながら、その実ヴィトーは心で英雄を嘲笑う。誰かを救おうと走るものも出来るはずがないとその足を引っ掛け笑っている。
「……仮にそれが真実だとして、何だと言うのです? 私が世界と同じ欠落を抱えていようと、この惨劇が覆るわけ───」
「忘れたの? 貴方が、ここで誰を英雄と呼んだのか………」
風が吹く。雪を撒き散らす突風。その中心地に、ベルが立つ。
「英雄を尊敬し、憧憬を持っているなら、気づけた筈……」
「まさか………!」
「私は気付いてた。私も、先輩達の背中に憧れたから! 今のベルは、悔しいけど、その時の先輩達と同じだから!」
古の英雄の如く、精霊の力を借りた少年。立てぬと決めつけて、立ち上がれぬと見下した失態!
「うおおおおおおおおおおお!!」
「っ!! この、ていど!!」
疾風の化身となって駆け抜けるベル。ヴィトーの持つ雷の剣とナイフがぶつかり合う。
疾風の刃がヴィトーの身を刻む。
(だが…………私の勝ちだ!)
もしも、もしもベルがLv.2だったなら、或は結果は別だったろう。力が足りない。一手、届かな──!!
業火が発生する。魔法、ではない。リリから受け取っていた魔剣!!
「………!?」
弾かれる精霊の剣をベルがヴィトーを踏み台に駆け上り手に取る。
「私の剣を…………!?」
バチバチと紫電を放つ雷の剣。Lv.4で無ければ耐えられない下位精霊達の怒り。
「づぅ! がっ………!」
無理矢理抑えつけられ、意志を殺され、抗うことも出来ぬ精霊の叫び。リリウスの気付けとはまるで別物の痛みに蹲るベル。
「ベル………」
「だい、じょうぶ………」
心配そうなユーフィをなだめながらベルはそっと剣に手を添える。
「ちゃんと、助けるから………だから、今だけは………力がいるんだ。助けたいんだ………挫けるわけには行かない! 力を貸して!!」
「愚かな! 武器化した精霊に意志などない! そんなものにすがるなど、やはり貴方は英雄の器ではなかったようだ!!」
振り下ろされるは呪剣。不治の傷を残す悍ましい死を振りまく剣。振り下ろすのはLv.4。蹲ったままのLv.1に防ぐ手段は…………。
「………なに!?」
金属音が鳴り響く。弾かれるヴィトーの剣。
なんだ今の『力』は? いや、何よりも今の疾さは!!
「あなた、ば〜か!」
べぇ、とユーフィがヴィトーに向かい舌を突き出す。
「ぶきになっても、わたしたちのおもいは、そこにある! みんな、みんな! あなたなんかだいっきらい!」
両人差し指で口に端を引っ張り、いー! と見た目そのまま幼女のように嫌悪感を表現するユーフィ。
「そして、だから………
雷が走る。ヴィトーが使っていた時とは比べものにならない雷光。
紫電がベルの体内を奔る。神経を焼きながらも、その肉体を加速させる!!
「疾い!?」
「うあああああああ!!」
走る。奔る。疾走る。
加速する。止まらない。何よりも速く、誰よりも疾く。雷を纏う少年は駆け抜ける。
撃ち合うごとに、加速する。攻撃が当たらなくなっていく。
その速度はLv.2を超え、3を超え、4を超える!!
「私以上に使いこなして!? こんな………巫山戯るな! こんな、都合のいい!!」
精霊の力を引き出すベルに理不尽だと叫ぶヴィトーを、精霊の契約者であるセシルは睨みつける。
「ご都合なんかじゃない。貴方は精霊すらも英雄の道具と見下して、苦しめて、悦に浸った……ベルは、誰かの為に戦いたくて、その力を貸して欲しいと願った」
なればそれは英雄神話。嘗ての神々が愛した、人と精霊の正しき形。
ベルはふと思い出す。それは祖父の語る英雄の物語。情けなくて、誰かの助けを借りて、それでも最後には助けるはずの姫にまで助けを借りる、滑稽な英雄。
そこに出る、雷の精霊………祖父のお気に入りの英雄と共にあった精霊の名前を、今借りる。
「
雷撃、斬撃。放たれる絶大なる力。下位精霊の寄せ集めであろうと、神の分身たる精霊の真の力が解放される。
「がああああああああああ!?」
ヴィトーが吹き飛ばされる。雷に神経を焼かれながら倒れる。息はあるが、立ち上がれない。
「……はぁ、はぁ……やった?」
「うん。貴方の勝ち…………」
「べる、すご〜い!」
ふらつくベルをセシルが支え、ユーフィが飛び付く。ベルは
「行きましょう、セシルさん!」
「…………セシルでいいよ」
「え?」
「敬語もいらない。急ごう!」
「は、はい………あ、いや。うん!」
取り残されたヴィトーはそれでも笑みを浮かべる。
「無駄、です……精霊は止まらない。げほ! この間違った世界に、是正を…………ははっ、はははははははは!!」
「アハハハハハハ!!」
精霊の嬌笑が響き、吹雪が吹き荒れる。
雪像達が暴れまわる。
「くっ、この!」
リリを守る為に盾で攻撃や吹雪を防ぐアスタ。氷像達は確かに本物のリリウスやエピメテウスよりは弱い。それでも余裕でLv.4はある。
「【
業火が雪像を溶かす。溶かされた側から新たに現れる。
「きりが無い!!」
アイズは特に狙われている。その身に宿す精霊の力を求めて雪像の大群が接近する。
「……………ノエル」
リリは何も出来ない。出来ることがない。
レベルが、低く、サポーター。戦う術を持たない無力な少女でしかない。
「…………神様………どうしてリリを、こんなふうに産ませたんですか………!!」
何も出来ない自分が憎くて、奪う世界が嫌いで、でも、その思いを『
「なんで、何も出来ないんですか!」
自分を慕う少女を救うことも出来ず、奪った精霊に復讐する力もない。
無力で、そのくせ、無力を言い訳に立ち向かうことも出来ない。
「リリは、どうして………何のために」
「迎えに行くためだよ」
蹲るリリに手が差し伸べれる。顔を上げると、ベルが立っていた。
「行こう、リリ。ノエルを起こすには、君が必要だ」
「………………」
背後から迫る雪像。ベルは振り向きざまにエピメテウス型2体を切り裂き、小柄故に回避したリリウス型にヘスティア・ナイフを突き刺す。
「【ファイア・ボルト】!!」
内部に弾ける炎が雪像を溶かす。
「……………」
アリーゼは見逃さなかった。ベルを…………いいや、リリを攻撃しようとした雪像の動きが鈍ったのを。
まだ、
「道を! 2人が進む、道を開いて!!」
「「「!!」」」
アリーゼの言葉にアスタやリューは当然、アイズも動く。アリーゼが明確な指示を出した。ならば、それが勝利への道である事を、彼女達は知っている。
「【今は遠き森の空。無窮の夜天に
詠唱を唱えながら駆け出すリューと並走するベル。
小柄な
「【愚かな我が声に応じ、今一度
立ちはだかるように現れる雪像をアイズが切り刻みアリーゼが溶かす。
「【汝を見捨てし者に光の慈悲を。来れ、さすらう風、流浪の
「アアア、アアアアアアアアアアア!!」
迫りくる冒険者に苛立つように笑みを消し叫ぶ穢れた精霊。生み出されるは嘗て精霊が戦ってきたであろう無数の怪物達。
「【
向き合うは、アイズ。竜を模した雪像を睨みながら風を纏う。
「『リル・ラファーガ』!!」
「────!?」
突き抜ける風の一撃。全てを貫く暴風の槍。
精霊の猛攻は、冒険者達を止めるに至らない。彼女達の身体は傷ついている。凍りついている。なのに、止まらない!?
「何デ!? どうシテ!」
それは彼女が忘れてしまった英雄の姿。どんな敵にも臆さない、どんな傷も戦わぬ理由になりえぬ、強い輝きで精霊も神も魅了し続けた人類の可能性の光景。
「【空を渡り荒野を駆け、何物よりも
「【ルミノス・ウィンド】!!」
突き進む緑風纏う光球の流星群。前方に存在する全てを消し飛ばす。
「アアアアアアアアア────アハ!」
悲鳴を上げながら、しかし笑みを浮かべる穢れた精霊。打ち出すは氷の槍。狙いはベル達。
「させるかあああああ!!」
鉄壁の加護を纏うドワーフの
「ありがとうございます! 皆さん!!」
ベルの目は見逃さなかった。
必ず道は開くと、必ず全ての攻撃を防ぐと信じ、確信し、その視線に収め続けた穢れた精霊の動きを………ある場所だけ異物が入り込んだように、動きが鈍かったことを。
「ここだあああ!!」
「ギィ──!?」
雷が肉の一部を焼き払う。抉られた傷に剣を突き刺し、切り傷に手を突っ込む無理矢理肉を引きちぎる。
限界を超えた『力』にベルの肉体が悲鳴をあげる。
「ノエル!!」
「…………リリ?」
閉ざされていた少女の目が開く。リリが手を伸ばす。
「リリ! !? んぅ、うう〜!」
数多の精霊を食らった力の塊。されど、所詮はその分身。大精霊を完全に取り込むには時間がかかる。ましてや手に入れた力を子供のように振るい続ければそれが遅れるのも道理。
「イヤ! イヤアアアアアア!!」
せっかく手に入れた力が、一つになった姉妹が離れていく。そうはさせぬと傷を癒やし諸共取り込もうとして、ベルが慌てて剣を振るう。
「アハハ! 無駄なの、ニ………!?」
ベルが振るった剣は赤黒い呪剣。傷に染み込む悍ましい呪力が再生を妨げる。
精霊の奇跡で消して、いや、殺さないと!?
「ア、アアアア!!」
「ぐっ!!」
「ベル様!」
混乱し、諸共氷漬けにしようと放たれた冷気。剥がれかけの力を十全に使えるはずもなく、少女達をかばうベルの体を凍らせても芯までは届かない。
「はや、く!」
「っ! ノエル!」
「うう〜! やぁ!」
腕に張り付く蒼肉を凍らせ砕き、リリの手を取る。
瞬間、リリに流れ込むのは膨大な魔力。
「!?」
リリはノエルを一気に引っこ抜いた。勢い余ってすっ飛び地面に転がる。
「ノエル!!」
「リリ………!」
抱き合う二人を見て微笑むベル。だがまだ終わっていない。
「アア、アアアアアアアア!!」
氷の角が砕け、髪と肉の色を戻しながら精霊が叫ぶ。雪像は崩れる。だが、一つの属性に変質した魔力が多様な属性へと戻った。
「【火ヨ、来タレ
「高速詠唱!? ていうか、これ………」
「超長文詠唱!!」
詠唱を唱えながら全力の防御態勢をとる精霊。魔法で全てを焼き払う気だろう。
「【全テヲ焦土ト変エ怒リト嘆キノ号咆ヲ我ガ愛セシ
防ぐ術はない。全滅の単語が誰もの脳裏を過る中、ノエルはベルの持つ剣に気付いた。
「リリ!」
「はい!? って、氷の槍!」
「やっちゃえ!」
「はあ!?」
ここは普通、アイズとかリューとかアリーゼだろう。何で一番弱い私に!? そう抗議しようとして、ノエルの目を見る。
彼女はこんな自分を信じている。
「ああ、もう!!」
叫びながら、槍を受け取る。
「【──代行者ノ名ニオイテ命ジル与エラレシ我ガ名ハ
詠唱は完成した。大気を揺らす魔力は放たれようとしている魔法のただの余波だというのだから逃げ出したくなる。だが………
「あんな目されて、私だけ何もしないままなんて居られるわけないでしょう!!」
まさかの単騎駆け。この中で最も弱い少女が槍をその手に精霊へと駆け出す。
「【ファイアーストーム】!!」
迫りくる紅蓮の津波に、リリは臆することなく前に進む。
「ぶち抜けええええ!!」
「……………ァ」
肉体も髪も魔石も、全てが凍りつき真っ白な氷像となった『
大精霊の力は紛い物の精霊の炎すら消しさり勝利をもたらした。
「……………あ〜………これが神々の言う『クソチート』ってやつですかぁ。なるほど、力を手にした冒険者が調子に乗るわけですよ……………勝つのって、ちょー楽しい」
雪の上にごろりと横になり、リリは天井を見上げながら呟いた。と………
「まっず! これ、崩れるわ! 退避退避!!」
アリーゼは即座にリリとノエルを抱え上げる。
「アリーゼさん! この子、目を覚まさない!」
「アイズちゃんが運んであげなさい! 地上は…………遠いわね。目指すは18階層!」
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