ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「これがこの世界を揺るがした結果か………報復………いや、抵抗か?」
魔竜を滅ぼしてから数日、アイズそっくりなアイルズの魔法剣学の授業で『殺し合え』と命じられ、リリウス以外の全員が疑問なく従った。
アンディが『左腕をくれ、代わりに俺の右足を上げる』と言った時は少し動揺したが、『君の心臓を食べたい』と言ったフィリウスと『お互いの心臓を刺しましょう』と言ったエーフィ、『死体を抱き締めて上げる』と言ったミッシェルの全員を気絶させアイルズを斬り殺した。
アイルズの死体が消えると全員糸の切れた人形のように倒れた。
「時間がない。終わりはもう間もなく………次は『古城』。残り2体の『番人』を」
精神支配が解けかけ、強硬策に出たのだろう。ならば次の番人を滅ぼせばさらに支配が緩むはず。
フェルズの言動制限もまだ解けていないようだ。
「急げ、アイルズが倒れた! 『歪み』を捕らえろ!」
教師の声が聞こえた。さて、どうするか。全員殺して………いや、この場では倒れてる生徒が巻き添えか。
おそらくはアーディ達以外の行方不明者……。
「ああ、リックスの一撃が、今も体を痺れさせる!! これが、愛!?」
「…………フィリウスはおかしくなってないのか」
「ふっ。私は元々頭がおかしいわ!!」
「ああ、そうか…………」
純粋な人間じゃないというか、魔法で作られた人形だから効果が正しく働いていないのだろうか? 他の皆に比べても一層おかしいし。
「ユーフィ達を運ぶから手伝え」
少なくとも『仲間』と認識されているのは同時に入った皆だけのはずだ。
空き教室。埃を被った部屋で、他の皆も目を覚まし始めた。
「うう、頭が痛いですわ。どうしてあんなことを…………」
「まるで悪夢………いや、まだ悪夢の中なのか?」
殺し合いをしていた時の記憶もあるらしい。全員申し訳なさそうにしている。
「いったい、何が起きているんだ?」
「……………まあいいか」
リリウスは説明することにした。
「この世界が偽物で、私達は本当の私達ではない、ですか」
「信じがたいけどよぉ、なんかすんなり受け入れられる」
「私はリックスの何もかも受け入れるぞ!」
「貴方は黙ってください…………あいたたた」
精神支配が解けている影響か、全員すんなり信じてくれた。それはそうか、あちらが本物なのだから。
「やはり向こうの私も優秀なのでしょうね」
「知らね」
特に関わってこなかったし。
「とりあえず、次の番人を潰す。古城の悪狼だ………」
悪狼………この世界が取り込んだ人間の記憶で出来ているのなら、それに該当する存在をかたどっているのだろう。
悪の狼と聞いてリリウスが思い浮かぶ相手は………居ないな。狼関連で思いつくのはベートぐらいだ。
「よく来たなぁ! リックスとその仲間達!」
そこに居たのはボールドだった。
「俺の正体を見破るとは流石だな。そう、膝に矢を受けた話も、満月の夜に姿を現さなかったのも全て
「その昔現れた人狼が矢を受けた箇所は肩って図書室に記されてたけど…………」
本当に適当だなこの世界。おまけに生徒が洞窟にこもる職員の夜の行動なんて知ってるわけないだろ。
情報収集でアフィリアに満月の夜の教師の動向を聞いても、ボールドに関しては尋ねるまで忘れてたし。
「俺は夜になると残酷な獣と化す人狼! 夜な夜なこの屋敷に足を運んでは迸る獣性を解き放っていたのさ! そのあまりの凶暴さに誰もが恐れついた渾名が『
「ベートさんにぶっ飛ばされますよう! あれ、ベートさんって誰?」
エーフィが首を傾げた次の瞬間、ちょっとイラッとしたリリウスの蹴りがボールドを消し飛ばした。
「うぅ!」
「あ、頭が割れる!」
「気が、狂いそうだ!」
「い、いたい………!」
と、4人が頭を抱えて蹲る。精神支配が緩んできたのだろう。だが完全ではない。どうすれば…………
「洗脳された者の目を覚ますには、現実世界の自分に紐づいた言霊をぶつけるしかない。異様な人格の付与も、現実世界を想起させないためだからな」
幼女姿のフェルズが現れた。
「フェルズ」
「2人ほど私に任せてもらおう………あ〜、あ〜! ごほんごほん! あ! 【
「…………は?」
「やっぱり!? あの2人、怪しいと思ってたんだ!」
「あっちでは、冒険者に人気のハーフエルフが新人冒険者と腕を組んでるぞ〜!」
「おお! エイナ、手が早い!!」
頭痛で苦しんでいたエーフィとミッシェルが飛び起きる。否、そこに居たのはエルフィとミイシャ。
「ふ、ふぁう……ひにゃああああああああああああ!!」
そして2人は悶え始めた。
「うええええ!? うわああああ!! 何で私、あんな嫌な性格になって冒険者に喧嘩売ってんの!?」
「私だって、あんなの私のキャラじゃないよう!」
ただ、エルフィはダメージは少なそうだ。
「そして、そちらの2人は君に…………ふむ、ごにょごにょゴニョリータ」
「? そう言えば良いのか?」
リリウスは首を傾げた後、指を曲げ顔の前に持っていく。
「アーディお姉ちゃん、フィルヴィスお姉ちゃん、大好きニャン☆ リリウスを好きにして良いニャ」
なお、表情筋は仕事しない。
「「はう!!」」
アンディとフィリウスは胸を押さえ蹲り…………
「「う、うわあああああああ!!」」
先程の二人と同じように悶える。
「何で私、男の子になってるの!? ていうか男の子なのにどうして同じベッドで眠ろうとしてるの私ぃ!」
「殺せぇ! 殺してくれぇ!! 誰か私を、うわああああああ!!」
特にフィルヴィスが酷い。柱に、壁に、床に頭をぶつける。
「いかんな。精神が崩壊する! リリウス、何か慰める言葉を!」
「俺のあの言葉で現実を思い出す時点で2人とも結構あれだから、気にするな」
「「ガフ!」」
アーディとフィルヴィスが揃って血を吐いた。
「お、落ち着いて〜!」
「くそぅ! お前はいいよな、あんないい配役をもらえて!」
「? さっきの言葉通りなら、現実であれなぶんまともなキャラになるか、無能な分優秀にされる世界だろ?」
「「げふ!!」」
4人全員蹲った。再起には少し時間がかかるようだ。
4人が落ち着きを取り戻しフェルズがこの世界について説明する。
端的に言ってしまえば、ここは夢の世界のようなもの。
生きた者達を幻想と虚構の狭間に取り込み、人格を上塗りして腐らせる。さしずめ『夢想の食人花』。
リリウス達が取り込まれた後、フェルズもこの世界に飛び込んだ。しかし、外部から無理矢理飛び込んだ為か強力な『制約』を受け、
幸いにもリリウスが正気だったので、なんとかなったが。
「次で最後だ。最後の番人を打ち倒し、この世界を瓦解させよう」
最終決戦に向け、フェルズは己の見解を話す。
この世界は取り込んだ者の記憶を頼りに『登場人物』を構成する。
アイズもそのうちの一つだろう。因みにフェルズもこの世界の『趣旨』は理解できないらしいが、『魔法学院』という設定には沿っているらしい。
囚われた者達は頭痛に苦しみ脅威にはなり得ないので無視していい。
「そして、それは恐らく…………」
「皆まで言うな。この学院の支配者…………この世界の頂点は、もう分かってる」
たどり着く13番目の部屋。学院の最上階。
「──ついにここまで来たか、『歪み』とその仲間達」
「!! お前は……………誰?」
「リックス………いや、この世界の『上書き』をはねのけた『歪み』そのもの。やはり貴方だけは早々に始末しておくべきだった」
「ティオネさん! いや、あれが最後の番人!」
「【ロキ・ファミリア】なのか、あれ」
エルフィが反応したということはそうなのだろう。
教師としての名前はなんだったか?
彼女が語るには、リリウスが取り込まれたせいで楽園が崩れ始めているのだとか。
「貴方達は、一体何なの!」
アーディの言葉に、ふんと鼻を鳴らし、しかし答える。
「私達は数え切れない『下位精霊』。そしてここは、私達が集まることで生み出した『夢想の世界』」
発端は彼女達も忘れた。覚えているのは、深く傷ついた彼女達は傷つくことの無い楽園を求め、多く集まり、大精霊の如き『奇跡』を行使しこの世界が創られた。
「自我が薄い私達の世界は最初、真っ白だった。けれど貴方達下界の住人を『歓迎』することで、知識や記憶を吸収して変質した」
だからって何で魔法学院?
「『誰も傷つけ合わない世界』は悪しき心を持つものは招かれない。私達の楽園は完璧だったのよ。たとえ偽りの価値観と記憶を植え付けられても、ここは楽園だった」
「でもお前等、俺達を
リリウスにしては珍しく長話を聞いてやったが、嘘を騙るので首をへし折ろうと迫り………
「っ!!」
迫る手刀を慌てて回避する。
瞳を伏せた灰色の魔女が佇んでいた。
「ふふ、ふはははは! 馬鹿め、そう簡単にことが進むか! さあやれ、アフィリア! この世界最強の、破滅の魔女よ!」
「黙れ」
「────え」
顎に一発、背骨に一発。計2発の拳がリリウス以外には認識不可能な速度で叩きつけられる。
人に体を似せた精霊は脳が揺らされ、脊髄に衝撃が走り体が麻痺する。
「が、あ………な、なにを…………」
「私に命令をするな」
「……………どういうことだ?」
「…………考えられるとしたら、我々の記憶を読み取り作られた彼女が『誰かに従う姿』を想像できなかった………とか?」
「そ、それでも彼女は、人形…………」
「ああ、その通り。だが、記憶の元がそもそも正規の手段ではない異物で、古代から生き、
アフィリアの瞼が開き、見つめるのはフェルズ。
「お前も気づけ、リリウス。私はその骨がこの世界に現れた後、
「………………あ」
リリウスの記憶の元、リックスの母として生み出され、彼女をより長く知るフェルズにより存在が本物に近く染められ直した。
「えっと、じゃあ味方なの?」
アーディが恐る恐る尋ねる。正直敵対したくない。
「してやってもよかった…………が」
と、アルフィアは一歩歩く。
「リリウス、私はお前の未練が生み出した。殺した相手に、こうありたかったと思うとは何事だ。甘えすぎだぞ、リリウス」
「っ!」
叱られた子供のように萎縮するリリウス。
「世界を救うと、あの女神に誓ったのだろう。未来を手にすると決めたのだろう………なら、過去はここにおいていけ」
「……………いやだ」
「……………なんだと?」
「過去も今も、全部掴んで…………俺は未来を手にする」
その言葉にアルフィアは目を細め、そうか、と短く呟く。
「であるならば、最後の授業だ………強欲にも何も捨てぬと言い切り、傲慢にも世界を救わんとするならば、私を超えていけ」
「……っ! あの時みたいな事を」
「当然だろう? 私はお前達の記憶から作られたのだから」
アルフィアは精霊の背中を踏みつけた。
「
「ぐっ! わ、解った………」
世界を構成する力が集まってくる。膨大な魔力、精霊の気配が部屋に満ちる。
「あの〜、あの人って結局誰なんですか?」
話についていけないエルフィが尋ねる。ミイシャも聞きたそうにフェルズ達を見る。
「彼女のモデルはアルフィア…………【ヘラ・ファミリア】所属のLv.7」
「Lv.7!? ていうか、ヘラ………!」
「リリウスと、ちょっと特別な関係だった人…………」
「で、でもLv.7なら………アーデ氏の勝ちですよね? Lv.9で──」
神々はそれを
「!?!! …………がっ!」
「言ったはずだ、甘えすぎだと…………この私は、お前の理想。この身は病に冒されることなく、
「げふ! ごほ………!?」
「今の私は、あの時の私より強いぞ?」
アルフィア・レプリカ。
リリウスから取り込んだ記憶、生命力を受け取り、この世界の
推定レベルは…………9。
「来るが良い、
エイプリルフール、皆が見たい嘘は?
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