ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
第3魔法を使えば押し勝てる。それがリリウスの出した結論。
威力を試したことはないが効果は幾つか試している。
問題は
「もう一度だ」
立て、と促すアルフィア。リリウスはフラフラと立ち上がる。何合目の切り合いか…………覚えていない。
解るのは負け続けているということ。こんなに何度も負けるのは炎の記憶以来か。
骨が砕け、肉が潰れ、皮が裂け、アーディとフェルズの魔法で傷を癒しながら立ち上がり続ける。
「何時までかかる。この世界が持たんぞ?」
「……………!!」
わかっているなら、とティオネスがアルフィアを睨む。
Lv.9に匹敵する
元より実体を失いかけた死にかけの
そうなればリリウスに食われる。それを本能で感じる精霊達は結局アルフィアに賭けるしかない。
再び放つ斬光。押し負け吹き飛ばされた。
「……これってベルをボコボコにしてるからだったり?」
「何を言っている。そもそもあの子とお前では始まりの時期が違う。であるなら、お前と同じ程度で良い訳がないだろ」
確かに。
一ヶ月でLv.2にランクアップしたわけだし、半年で第一級にする程度には鍛えないと。
「も、もうやめて!」
と、アーディが立ち上がろうとするリリウスを抱きかかえながら叫ぶ。
「少し、休ませて………」
「そんな暇はない。この世界は、そう長くはない。お前達が夢から醒めた時点で、終わりは訪れる」
「いや、主にお前のせいなんだが………」
『悪夢』の終わりがさもリリウス達の目覚めのように言うアルフィア。リソースをガンガン消費していての発言に精霊が思わず突っ込んだ。
「それでもいいぞ? 時間切れを狙ってみるか?」
「冗談!」
立ち上がり剣を振るう。ふっ飛ばされた。
何が足りない?
速度は、そうだな。力も足りない。何より技術が足りない。
だが、このアルフィアはあくまでリリウスやフェルズの記憶から作られ、そこに病がなかったらと言う想像が入っている。
逆説的に、アルフィアが『力』や『魔法』ではなく『技術』で行っている『斬光』は、
如何なる枢機か目の前の相手から技を盗む………ではない。理解している筈のそれを、自身に反映する。
鳥が飛ぶ方法をわかっているんだから飛べというようなものではあるが、そこまで理不尽ではない課題。
「ちょっとタンマ!」
「良いだろう」
「さっきはそんな暇ないって言ったのに!? 差別、差別だー!」
「やかましいぞ小娘」
アーディが叫ぶ中、リリウスは頭の中でアルフィアの動きを再現する。
感覚として理解出来る。それを体に反映させる方法が………。
「……………まずは、己の心と肉体のズレに気付け」
「薬学教師」
「魔法薬学の権威にして魔法学院の校長かつ悪の大魔法使いでもあるティオネス・ワルプルギスだ………いや、最早肩書に何の意味もないが」
「どういうつもり?」
警戒するように見つめるアーディにティオネスは知るものか、と返す。
堕ちても結局、彼女達は精霊ということだろう。
「ズレ…………」
そう言えば、と己の格好を見るリリウス。
服は着替えた覚えがないが、この世界に来てから既に制服。学院支給の剣も携えていた。
本当に?
この世界のほとんどはマヤカシなれど、この身は本物。ならば、この世界に来た時から共にあった服や装備は…………?
「お………」
「え………」
服が変わった。剣も形を変える。
リリウスはその場でピョンピョン跳ねる。
「よし……!」
再び斬光。押し負けた。
「……………あれ?」
「…………はぁ」
アルフィアは呆れたように息を吐く。
「そう簡単に覚醒してたまるか。元よりお前は、何を剣に乗せている?」
「…………………」
「闇雲に振るい自慢するだけならそこらの子供でも出来る。お前は、私に示すのだろう?」
「……………そうだな」
永遠にこの時間が続けばいいと、そう思った。
帰らなきゃならない場所があるけど、あと少しだけならと無意識に引き伸ばし続けた。
「アーディ」
「ん? どうし…………」
ガブリとアーディの首筋に噛み付くリリウス。鋭い牙がアーディの肌を突き破る。
「っ!?」
「うわ、うわー!」
「は、破廉恥な!」
「え、え、何してるの!?」
顔を真っ赤にする少女達。だが、噛まれたアーディ本人は。
「あいたたたたたた!? え、なに!? 痛い痛い痛い!!」
物語の吸血鬼ではないのだ。噛んだ牙に痛み止めだの快楽物質だのは存在しない。激痛に悶え暴れるアーディに、リリウスは『毒牙』で生成した麻痺毒を流し込み痛みを止める…………ついでにLv.6の耐異常をあっさり突破して麻痺させた。
ジュルルと血を啜り飲み込む。Lv.6………第一級冒険者の血を取り込んだ。
傷が癒え、
魔法を解除し、狂化を完全に解除。
「これが最後だ」
「…………ああ、来い」
振るわれる斬撃。世界を照らす光。
放たれる2つの斬光を前に、ティオネスは世界の終わりを………夢が覚めるのを悟る。
轟音。
閃光。
振動。
空間に亀裂が走り、柱や壁が輪郭を失うように崩れていく。
灰色の魔女は無傷。その剣だけが割れた。………否、斬られた。
「…………まあ、及第点にしておいてやろう」
アルフィアはそう言って剣を放り捨てる。
「え、終わり………」
「此奴は既に私を殺した。2度も殺されてやるほど鬼畜ではないさ。試練は一度でいい」
アルフィアの言葉にリリウスはぷふぅ、と息を吐き出しその場に膝を突いた。
と、世界が激しく揺れる。
「まずい! 世界が崩れる! 急ぎ、脱出を!」
「ど、どうやって!?」
「2人の攻撃の中心点だ! 世界に穴が空いている!」
フェルズの言葉にミイシャ達が慌てて駆け出す。リリウスは麻痺したままのアーディを抱えて、アルフィアを見上げる。
「…………家族と過ごせているか?」
「ああ、また………一緒にいるよ」
「友は増えたか?」
「ああ。沢山……親友と呼べる奴も居るし、好きな人も出来た」
「それは、まあいい………お前が恋をするのは認めてもいいが。何故よりによってあの女神なんだ」
「……………なんでだろうな」
フェルズから読み取った記憶により、本物のアルフィアに妹がいることをこのアルフィアも知っている。可愛いがっていたことも。
子供がいた事はリリウスの記憶から知ったが………なので、どんな反応をしていたのかは解らない。
一つ言えるとするなら妹と似ていない赤い目をよく思っていない事だろう。リリウスの記憶でも目が赤くないことが良いと言っていたし。
本物のアルフィアもこんな気持ちだったのだろうか、とリリウスの頭を撫でる。
「もういけ、お前は本当の世界で、本物の英雄となれ」
「……………うん」
「楽しかったぞ」
「俺も」
長くは語らない。もう十分、彼女と過ごしたから。
空間に空いた穴に飛び込むリリウスを見送り、アルフィアはティオネスへと視線を向けた。
「迷惑をかけたな」
「ええ、まったくね。誰かに従う姿を創造出来ないほど想像できないとか、貴方本当に何なのよ」
「調べず、実体化させるからこうなる。まあ、
「……………ヘラ………あの女神の眷族か」
ならば必然か、と肩を竦めるティオネス。
「まあ、良いさ…………最期に、良いものを見た」
「………死にたくなかったのだろう?」
「当然だ。生を受けた、死する者の当たり前の叫びだ………だがまあ、死にたくない一心で作ったこの胃袋でも、英雄の一助になったのなら…」
それでもいいかと、思ってしまった。
「………まったく、我々は…………何処まで行っても、精霊だったなぁ」
数多の精霊の意志の総体が消える。柱や床が崩れるのではなく消えていく。灰の魔女もその崩壊に巻き込まれていく。
その顔に消滅への恐怖はなく、我が子を旅立たせた母のように、安堵と期待に満ちていた。
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