ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「彼奴、強い……」
「うむ。素早くて、まるでテレビで見た兎だな!」
「よしのん、お仲間?」
「う、うん。そっくりだね」
「それより、あの炎………見たところ精霊ではない。
「もぅ駄目、私、頭パンクしそう………あぁ、夕弦ぅ〜……」
それぞれがそれぞれの反応を見せながら怪物の群を消し去っていく少年を見る。消し去っている………これは比喩ではない。
胸を穿たれ、焼かれ、潰され、斬られた怪物達の体は灰へと変わり崩れていく。
少年だけではない。かなりの巨体を持つ2匹の猟犬とその背に乗り槍を振るう少女も、少なくともただの人間とは絶対に言えない強さを持っている。
「ふぅ………終わったかな」
「そのようですね。あっという間でしたね、ベル様。先日の戦いで数を減らしていたのも大きいですが、やはりランクアップが大きいのでしょう」
約一ヶ月で2度目のランクアップ。急激な成長に振り回されているところもあるが、Lv.3成り立てとしては破格の強さだ。
「……助けてくれて、ありがとう。それで助けてもらったばかりで悪いが…………
「…………え?」
「魔法、モンスター、ダンジョン………ああもう、頭がこんがらがりそうだ!」
明らかに士道が知る世界の常識と違う。まさか、本当に異世界だとでもいうのか?
「えっと、僕らも士道さん達の世界のお話聞いても、正直、良く分からないというか……」
「ああ、悪い。お互い様ってことだよな」
「何だか、すいません。士道さん達の力になれそうになくて」
「いいよ、そんなの。助けてくれただけ十分さ」
申し訳なさそうなベルに士道はニカッと笑う。
「それと………『さん』なんて付けなくていいぞ」
「え?」
「なんか、くすぐったいていうかさ……あんまり同年代のやつに、『さん』付けされるの慣れてなくて」
「あっ………す、すいません、士道さん……!」
「ほら、また」
「あ………ご、ごめん……士道」
と、照れながら士道の名を呼ぶベル。おう、と士道も返した。出会った人間逐一攻略してんのかこの男は。
「ベルと言ったな。よろしく頼むぞ!」
「この世界で初めて会えた人が、友好的でよかった。情報を聞き出すのに手間がないのは助かる」
「ウサギ同士よろしくねベルくん!」
「よ、よろしく、お、お願いします」
折紙の発言が超不穏だった。
「一応聞くけど、友好的じゃなかったらどうするつもりだったんだ?」
「指を──」
「やめて聞きたくない!」
耳を塞ぐ士道。少なくともその言葉だけで何かひどいことをするというのは解るようだ。優しそうに見えて、怖い人?
「そう言えば、毎年毎年浮気性のバカな男どもがやる妙な祭りの巫女達もこんな格好でしたねえ」
因みに最凶の
あれでモンスターを蹂躙してたらしいから、純白の衣を赤く染める恐ろしき花嫁達が沢山居たのだろう。
「んあー! んあああああああああああー!!」
「──わっ!」
と、唐突に耶俱矢が叫び出した。
「やっぱり夕弦が居ないと落ち着かないー! 怖い! 不安! 夕弦! 夕弦ー!」
理由のわからないまま異世界だと知らされ、夕弦が居ない事への不安が爆発したようだ。
「び、びっくりしました。どうなされたのですか、彼女は……」
「ああ、耶俱矢は双子の精霊でさ。夕弦っていうのは耶俱矢の半身みたいなものなんだけど、何故かこの世界には来てないみたいなんだ」
「…………血を分けた家族と離れ離れというわけですか」
その気持ちは分からなくもないが、と………何故かリリの呟きに耶俱矢がグルリと振り返る。
「………ん?」
「な、なんですか? リリのことを、ジロジロみて」
グルグルとリリの周りを回りながら眺める耶俱矢。シャバラも何の遊びー? と真似してシュヤーマが呆れる。
「……………………」
ニヒッと耶俱矢が笑う。
「おりゃーー!!」
「うぎゃあーーー!」
「リ、リリー!?」
耶俱矢が叫ぶとリリが光に包まれた。眩い光が収まると、そこには耶俱矢に似た、色違いの衣装を着たリリが。
つまり幼い
「な、なんじゃこりゃああああああああ! なんですか、なんなんですか!? 何が起こったんですか!?」
「ふははははははは! 他人の衣装を霊装のように弄くるのは初めてだったが、上手く行ったようだな!」
「なに訳のわからないことを言ってるんですかぁ!? なんなんですか、この裸よりも恥ずかしい格好!」
因みに耶俱矢の格好、首輪に南京錠、右手に枷という倒錯度を増す装飾があるのだが、リリは首輪はあるが枷は左腕。どちらにしろオリジナルより倒錯的だ。神々が親指を立てる事だろう。
「かか、光栄に思え! 八舞の霊装〈
「なんでリリが!?」
「うむ……それは、ほら……あれよ。夕弦程じゃないにしても、何か私と似てる気がしたから。声とか?」
「ふざけてます?」
ジトッとリリが睨めば耶俱矢はプイと視線を逸らす。
「おお! 背格好はともかく、装いは夕弦と瓜二つだな」
「びっくりしたなぁ。十香達が自分の霊装を変えられるのは知ってたけど………」
「きっと、この世界だから。霊力が溢れているせいで、あんな芸当も可能」
「ご都合主義って奴だね」
「ごつごーしゅぎ?」
よしのんの言葉に四糸乃はコテンと首を傾げる。その際、プルプル震えている幼女に気付く。
「くかかかっ! 我が半身として、精々邁進するが良いぞ!」
「アホなんですか! 離れてください!」
士道は耶俱矢が元気になったことに安堵した。相性がいいらしい。確かに声とか凄く似てる。生き別れた姉妹とか、魂を分けた半身とか、前世とか、中身がおんなじというか……。
「折紙じゃないけど、最初に会ったのがベル達で良かった。正直、さっきまでは俺も不安だったけど少し前向きになれた」
「士道………」
「夕弦達も待ってるだろうし……元の世界に帰る方法を見つけたい。もし迷惑じゃなかったら、力を貸してくれないか、ベル?」
「勿論!」
この二人もこの二人で相性が良いらしい。
「どう、したの?」
士道とベルの後ろで、四糸乃はノエルに話しかける。
「リリのうわきものー!」
「ええ!?」
「わたしいがいのせいれいのちから、つかってるー!」
「ノエル!? 違うんです! って、精霊?」
どういう、と尋ねようとした時、再び響くモンスターの咆哮。数こそ減っていても、この広大な空間にはやはり相応の数がいる。
「くく、我が半身と巡り会えた刹那に現れるとは、運のない化物共よ………」
「か、耶俱矢様?」
「かか、今の我々は、久方振りに全力で暴れられるぞ! 〈
現れる巨大な突撃槍。吹き荒れる颶風。
「士道達は下がっていて。私達で十分」
「〈
十香が顕現させるは、巨大な大剣。
「〈
折紙が顕現させるは、王冠。
「〈
四糸乃が顕現させるは………その、何………その……うさぎ型巨大怪獣。
斬撃がモンスターを切り裂き、光が焼き払い、吹雪が凍らせる。
「……すごい。あの数のモンスターを次々と……」
「十香様達の〈天使〉、でしたか? あまりにも規格外です。力は第一級冒険者並………それに、まだ余裕が。見てください、こんな恥ずかしい恰好なのに鎧よりも………」
リリは自分の腕に噛み付くバグベアーを指差しながらいう。伝説級という謳い文句に偽りなしだ。
と、その時………ダンジョンが震えた。
「な、なんだ!?」
「これは……地震?」
「本当に、そうなのか? まるで世界そのものが揺れているような………!」
「ちょ、ちょっとちょっと! 何か、嫌な予感しかしないんだけどぉ!?」
「これはあれだね、ボスキャラが出るよ」
困惑する異界の住人達に対して、ベルとリリは心当たりがあった。ていうかつい先日経験した。
神がダンジョンに入ってはいけない理由。バレた結果ファミリアの財産半分を罰金として取られた禁忌。
因みに意図しなかったとは言えヘスティアを襲った冒険者に支援したのでヘルメスが【ヘスティア・ファミリア】の分の罰金も肩代わりさせられていた。
「あれは………そんな!」
天井の巨大水晶が砕ける。現れるのは、黒の巨人。
「なんで、どうして………あのモンスターが!」
轟音を立てながら着地すると憎悪を孕んだ瞳を異界の精霊達に向ける。
「ゴァアアアアアアアアア!!」
「わわわわわ!? なんだっ、なんだ!? 地震!?」
比較的に浅い階層での異変は地上にまで影響を及ぼす。危険と言うほどではない地震にヘスティアは思わず叫ぶ。
「いや、これはダンジョンが震えているのか? まさか、どっかの馬鹿な神がダンジョンに入った!?」
と何処かの馬鹿な神は地面の、その下を見つめる。
「──いいや、ちゃうな。これは神々の仕業やない」
「ロキ!? どうしてここに………いや、神々の仕業じゃないって、どういう……」
通りかかったロキの言葉に困惑するヘスティア。と、その時……
『──都市内に存在する全【ファミリア】に通達! ギルドは『
ギルドの放送が街全体に響き渡る。
『
「あぁ、ダンジョンに『何か』が現れた。そんで、それの発してる力を、
ロキ曰く、ウラノスに呼び出され聞かされたらしい。そしてその『何か』は突然現れた。
ダンジョンに気付かれる前に調査しようとしたその矢先にこのザマ。事が先に動いた。
敵か味方かは不明。だが、ダンジョンの暴走と言い、存在自体が危なっかしいのだけは間違いない。今はフィン達の報告待ちらしい。
髪飾りを探しに行ってくれたベル達は大丈夫だろうか?
「ちょっと! どこなのよ、ここは!?」
「「ん?」」
「いきなり訳の解らない場所に放り出されて……何が起こってるの!!」
そう叫ぶのは黒いリボンを巻いた赤毛のツインテールの少女。
「あれは………?」
「キヒヒヒヒ。始まりましたわ。始まってしまいましたわ」
バベルの屋上から騒がしい都市を見下ろす2色の瞳を持つ少女。時崎狂三。
「さあ、さあ………今度こそ、本当に面倒な、蛇のようにしつこい御方を捕らえましょう」
「早く見つけろ、腹減ってんだ」
その隣でジャガ丸くんを食べる白髪の少年。カチカチと針が動く時計の片目が都市を見下ろし、買ってもらったジャガ丸くんの袋詰めを食べていた。
「ですがぁ、本当にその時まで何もしないおつもりで?」
「お前が言ったんだろ。俺に世界は救えても、少女を救えない………彼奴を救えるのは、俺じゃない」
「では、彼女の唇を奪う王子様は誰でしょう? やはり士道さん?」
「ベル。俺の弟子だ…………唇は奪えないだろうけどな」
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