ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
【ロキ・ファミリア】
重苦しい空気にベルは居た堪れない。
誰もが士道達を睨む中、エピメテウスは落ち着いた様子で茶を飲む。
「それで、神様………何がどうなって」
ベルが視線を向けるのは五河琴里。士道の妹だという彼女を保護したのは、ロキとヘスティアらしい。
「まず改めて、私達は異界の精霊。士道を除いた全員がそうよ」
「うむ。私は確かに精霊だぞ。だが、敵意はない。信じてほしい」
「異世界とは言え、よりにもよって
「………リヴェリアさん?」
頭が痛いとばかりに額に手を当てるリヴェリアに、ベルは言葉の真意を掴みかね首を傾げる。
「何でもない。とにかく君達の話を信じよう」
「じゃ、じゃあ…」
「改めて謝罪させてくれ。君達は『対話できる相手』だ。『排除』を指示したのは早計に過ぎ、全て僕の責任だ」
未知の存在、『危険因子』で一括りにして、個々の差を考えなかった。モンスター、或は
精霊を名乗り絶大な力を振るう時崎狂三を名乗る少女も、現れた力の塊は危険と判断する材料になってしまった。
何か、作為めいたものを感じる。
「………が、団員達の『悪感情』を払拭するのは困難だろう。仲間が豹変し、消えてしまった今となっては」
「むう………」
部屋の隅に控えながら睨みつけるベートとレフィーヤ。ティオネも警戒はとかず、ティオナだけが居心地悪そうにしていた。
「そのアイズとやらは、私のせいで………こちらこそ、すまな──」
「その辺りのことは後じゃ。お主達が言葉を尽くしたところで、何かが変わるわけではない」
「っ!」
その言葉に顔を伏せる十香。
「ここには限られた幹部しかいない。お互い、腹を割って建設的な話をしよう」
「ええ、そうね。それには同意よ………ちゃんと、嘘をつけないことは証明しているし、ね」
と、ロキを見る琴里。フィンはなるほど、と納得する。
「神々には嘘をつけない………そういう事か」
「ええ、本当に見破られちゃうのよね。試しに士道が昔書いた小説の必殺技を騙ってみても、見事に見抜かれたわ」
「なんでそんなのでテストしてるんですかねぇ!?」
「えっ、士道、物語を書いてたの!? 必殺技ってことは、もしかして英雄譚!? すごいなぁ!」
「やめろぉ! そんな無垢な目で俺を見るなぁ! 厨二という漆黒の鎖に縛られた俺を見ないでぇぇぇ!」
言い回しからして、未だ後遺症は残っているようだ。
「むぅ、またシドーがおかしくなってしまった………」
「鎖に縛られている士道……詳しく聞かせてほしい」
「おりがみおねえちゃんはどうしてそんなことしりたがるの?」
「それはねぇ、ノエルちゃん」
「だ、駄目だよ、よしのん!」
「クク、我からすれば鎖などまだ生温いわ! もっと腕にシルバー巻くとかさ!」
ヘスティアはこの子達も相当アクが強そうだと思った。
「……………話を戻すけど。あんた達がベルの言っていた神様ってやつなのか?」
「おう、少年。自分らのとこにも精霊がおるんやし、似たようなものやろ?」
「か、軽すぎません………?」
「まあ、こんなもんだよ。
と、ヘスティアも軽く返す。信じていた信じていないに関わらず、神という存在を文字通り神聖視していた士道はええ、と困惑した。
「はいはい。話を進めるわよ。今問題なのは、例の『反転』した剣士でしょ? アイズって言ったかしら?」
「ああ………あの反転した姿……前の十香と同じだった」
士道は嘗て十香が反転した時の姿を思い出しながら言う。姿は似ていても、全くの別人。因みにそんな彼女ともキスをしてやがるのが五河士道である。
「十香と……? ふむ…………それで、意思の疎通は可能そうだったの? 反転体となると、無秩序に破壊をばらまく可能性もあるわ」
「うむ、私は近くにいたが、言葉は発していたぞ。消える直前、確かに『憎い』という言葉を……」
その言葉にリヴェリアが肩を揺らす。
「言語認知はしている、か………まあ、性格がどうなっているかまでは解らないけど。そもそも、どうして精霊でもない人間が『反転』なんて………」
「…………心当たりはある」
「………え?」
「異界とはいえ『共鳴』した、とでも言えば良いのかな。彼女の『血』が………」
ん? とそこでティオナは何かに違和感を覚える。しかし彼女は感覚型………有り体に言えば馬鹿なので何に違和感を覚えたか自分でも分からない。
「つくづく面倒なことになってきおったのお」
「……?」
言葉を濁す【ロキ・ファミリア】三首領にベルは首を傾げた。
「ま、原因なんてどーでもええ! それより、どう対処するかや」
「ああ、その通りだ。君達の話によれば『反転』した精霊は能力が増し、より攻撃的になる、だったね?」
「はい。十香の時も、折紙の時も………建物や街を………」
「オラリオに被害を出す可能性が高いというわけか………第一級冒険者という土台に『精霊』の力が加わっておるのなら、儂等でも押さえきれるかわからんぞ。レベルの1つや2つ、上に見積もっておいた方がよさそうじゃ」
なら兄様なら楽勝ですね、と心の中で呟くリリ。見た目通りなら、だが。
リリもまた、フィン同様作為的なものを感じている。『敵』の目的がオラリオへの攻撃として、Lv.8程度の存在を当てるか?
それしか爆弾を用意できなかった、と言われればそれまでだが。
「押さえられたとしても、間違いなく周囲に被害が及ぶ。力による無力化は得策ではないか………」
「おお、あのアイズたんがそんなことになってまうなんて! 何か方法はないんか、コトリたーん!!」
「コ、コトリたん………」
ロキは相変わらずである。琴里も困惑している。
「ま、まあ呼び名はさておいて、精霊の事なら任せてもらいましょうか。私達は以前、『反転』した十香や折紙を元に戻しているわ。同じ方法が通用するかは未知数だけど、試す価値は十分にある」
「──俺達がてめぇらに任せると思ってんのか?」
「ベートさん……」
「アイズを変えた直接の原因を作ったのは、てめぇ等だ。そんなてめぇ等にどうして丸投げ出来ると思ってやがる」
「話し合いを求める相手に聞く耳を持たず襲いかかる相手の言葉よりは、聞く価値ありますけどねえ」
「ああ!?」
変な格好はさせられたが、基本的に懐いてくる耶俱矢を無下に出来ないリリはそんな耶俱矢達を襲ったベート達に冷たく言い放つ。
「まあ、リリルカの言い分はともかく、貴方達だけでお仲間の精霊の力を封印できるつもり? 貴方の不信感も理解出来ないでもないけれど、感情に任せて私たちを排斥するのは、果たして正しい判断かしら?」
事実今回の事件は仲間を傷つけられ、感情に身を任せた部分も大きい関係あるだろう。
睨み合うベートと琴里を士道とフィンが諌める。
どのみち異邦の力が関わっている以上、フィン達は協力を仰ぐしかない。
「けっ………」
「それで、具体的にどうするつもりだ?」
「ふふん、任せて頂戴。私達は精霊対応のエキスパートよ。相手が精霊ならすることは1つ………つまり」
ゴクリとベルが唾を飲む。
「デートしてデレさせろ!」
「「「「──は?」」」」
一応異邦人側の味方であるエピメテウスも、リリも何言ってんだ此奴という目を向ける。
「ここにいる士道は、霊力を封印する力があるのよ。その条件は対象に心を開かせること。つまりそのアイズって子を、士道がデレさせる! そして最後は──キスよ!」
「え──ええええええええええええええええええええええええええ!?」
ベルの絶叫が黄昏の館に響き渡る。
「何処をどうなったらそうなんだボケがぁぁ!?」
「────────────」
(リヴェリアが思考を停止させおった!)
石像のように固まったリヴェリアを見てガレスが心の中で叫ぶ。
「とにかく、好感度を上げてキスすれば全部解決するのよ! 士道はこれで精霊達を救ってきたんだから!」
「ということは………まさか、皆様も………」
「「「「…………………」」」」
リリが十香達に視線を向けると当然と言いたげな折紙を除いて全員照れていた。
「え、えっと……まあ」
「わーお、ゼウスもびっくりだ」
「そうとなれば、早速作戦を──」
「「そんなの許すかああああああああ!!」」
ロキとレフィーヤの叫びが黄昏の館に(以下略
「オーケー、落ち着きましょう。今必要なのは剣ではなく言葉よ」
琴里が右に移動する。レフィーヤも右に移動する。
「人は対話によって解り合えるわ。力によって通した意志は、また力によって駆逐されるもの」
琴里が左に移動すれば、レフィーヤが左に移動する。
「自らの意見を通すのに暴力を用いるのは、この上なく愚かな行為じゃあないかしら? そして、少なくとも私は、貴方達を理知的な人間と評価しているわ」
「つまり?」
「……この子を離してくれないかしら?」
「フー! フー!!」
琴里に張り付き間近で睨み続けるレフィーヤ。言葉を失ってしまっていた。
「レフィーヤ、ステイ。ステイや。とりあえず話を聞いたろ………」
「あのレフィーヤという少女………」
「ん? どうした折紙」
「何処か不思議なシンパシーを感じる」
「いや何にだよ!? って、それはそれとして、琴里。一体どうするっていうんだ?」
「一応考えがないわけじゃないわ。さっきヘスティア達から聞いたんだけど、この都市には凄腕の
「おるでー! 【
またアスフィの心労が増えそうだ。ただでさえ【ヘスティア・ファミリア】の罰金も肩代わりしているのに。
「だそうよ。その人に、士道の力を
「!! そんな事、可能なのか!?」
「そりゃあやってみないと解らないけれど、話を聞く限り可能性はありそうよ。それに、今回の目標は、私達の知る精霊とは違ってこの世界の力を帯びた疑似精霊──ならむしろ、そっちの方が相性はいいんじゃないかしら?」
というか仮に士道が封印したとして、その後は? 士道に惚れたアイズを放置して暴走する可能性もあるのだ。この世界の力で封じるべきだ。
「まあもちろん、誰かがデートして、そのアイズの心を開かなきゃいけないのは同じだけど」
「………話を聞く限り、僕達の専門分野ではないと言うか、とにかく『デート』とやらは君達に一任したほうがよさそうだ。代わりに、僕達は万が一の事態に備えさせてもらおう」
「万が一、ですか?」
「ああ。アイズを
「「なっ!?」」
隠し事せず堂々と言ったフィンの言葉にベルと士道が目を見開く。
「君達の作戦の成否にかかわらず、アイズが被害を出す確率は高い。この認識は間違っているか?」
「……いいえ、間違っていないわ。勿論最善は尽くすつもりだけど、イレギュラーは幾らでも起きるでしょうね。今、彼女は恐らく『隣界』にいる。何時、何処に現れるかは、私達にも解らない。『空間震』が起こるのかさえ」
そして空間震を予見する装置も、ここにはない。
少なくともそれはフィン達が手を尽くさない理由にはならない。アイズの出現に幅広く対応するために都市中、及びダンジョンに団員を配備する。
相手はアイズ。他の派閥を巻き込むことは出来ない。
「勿論、被害を食い止められればそれでいい。が、もしそれが叶わず『最悪』を迎えたのなら………僕達はアイズを『排除』する」
「フィンさん!?」
「……………」
「止めてくれるなよリヴェリア。止めることは許さない」
「……………解っている。解っているさ、フィン」
微塵も納得など言っておらず、握り拳は震えている。
「リヴェリア様………」
彼女を心配するレフィーヤでさえ、フィンに文句を言わない。
「……待って、ちょっと待ってください! いくらなんでも、そんな………!?」
「若造、状況を見ろ。今の盤面を見下ろせ」
ガレスは言う。【ロキ・ファミリア】はもう、『その時』に片足を突っ込んでいる。
「………なんだよ、それ」
「シドー……?」
「何言ってるんだ! あんた達はそれで良いのか!? あんなに、あんなに怒るほど大事な仲間なんだろ! それを──!!」
「原因を作ったてめぇ等が、何をほざいてやがる!?」
士道の怒号はベートの怒号にかき消される。
「君の優しさは素直にうれしい。だが、感情と理性は切り離すべきだ」
単純な話。アイズがモンスターを超える厄災になるのなら、殲滅するしかない。秤にかけるのは都市全ての命。いかに第一級冒険者であろうと、釣り合うわけがない。
「…………フィンって言ったわね、団長さん」
「ああ、何か?」
「いいえ、別に。貴方の言うことは正しいわ。常に最悪を想定して動くべきよ」
指揮官である琴里はフィンの判断に理解を示す。
「ただ、どんな世界でも組織の長は辛いものねって、思っただけ」
「………辛いと思うのは傲慢だ。少なくとも、僕はそう思っている」
団員の配備のためにフィン達は動く。ここからは別行動………ここは好きに使っていいらしい。
仲間を殺さなければならない【ロキ・ファミリア】にも、仲間に殺されるかもしれないアイズにも、十香の胸は苦しくなる。自分のせいで………
「と、十香さん………元気出してください」
「そうだよ。
「四糸乃、ノエル…………ん?」
今、ノエルが聞き逃せない言葉を言っていたような?
「それは、どういうことだい? アイズは、彼女と接触したことで変質したのでは?」
フィンが尋ねる。ノエルは不思議そうに首を傾げて、ティオナが「あー!」と声を上げた。
「そうだ! そうだよ! 精霊! ノエルちゃん、向こうの精霊と触れ合ってたじゃん!」
漸く違和感の正体を察したティオナが思い出すのは、不安から手を繋いでいたノエルと四糸乃。
四糸乃は氷の精霊で、ノエルは冬の精霊。なんなら十香とアイズ以上に『共鳴』して然るべき存在。
「わたしたちは、にててもべつものだもの」
「だろうな」
と、エピメテウス、そう言えば彼は『共鳴』じみた力を使っていた。
「異界の精霊の力はセフィラの欠片が源らしい」
「セフィラ………セフィロトかぁ? そらまた、随分な………異界にもあるんか?」
「同一、とは限らぬが似たようなものだろう」
「ロキ、セフィラとは?」
「あ〜………簡単に言うと、天界にある神の樹というか…………樹そのものが神というか。意志もない、
「まあ樹の形をした神と思え。異界の精霊は、その欠片」
無限の神が己の力を固め作った有限の分身とは根本から異なる、『無限を砕いた欠片』。神の分身どころから、神そのものの一部。ダンジョンが反応するほど神に近い力は、神殺しに通じると言ううことは完全な神の力でなくとも精霊よりもデミ・アルカナムに迫る神に近い力。
「私は嘗て別の名を名乗り、今はエピメテウスと名乗っている。伝説に記される通り、このエピメテウスこそが天の炎を扱うものだ」
と、詠唱もなくエピメテウスの手に灯る炎。人が神や精霊を一目で理解するように、その炎は遥かに高位のものだと理解出来る。
「少なくとも多少の『干渉』程度はあるだろうが、変質させる程の『共鳴』は起きぬはずだ」
「そうだよ。それにね、よしのおねえちゃん」
ノエルがゴニョゴニョと四糸乃に耳打ちする。四糸乃はえ、と驚く。
「だ、だめ、だよ………ノエルちゃん、危ないよ」
「だいじょうぶだよ」
「で、でもぉ…………」
「だめ………?」
「う、うう…………き、気分が変になったら言ってね? えい!」
と、ノエルが光に包まれる。あの時のリリと同じ。つまり………
「じゃーん!」
四糸乃と同じ格好をしたノエルがいた。
「リリ、かわいい?」
「ええ、かわいいですよノエル」
異界の精霊の力を纏う大精霊。大きく力が変化したようには感じられない。
「アイズおねえちゃんは、せいれいひとりぶんのちからのじょうしょうじゃなかったよ? もしひとりぶんでも、そしたらとおかおねえちゃんはうごけない」
十香の力が大幅にアイズに流れたわけではない。つまり、別の要因でああなっている。
「じゃあ何が原因だって言うんですか!? 彼女の姿と、同じなんでしょう!?」
「しらない」
ノエルはいいきった。
「でも、あれはべつのなにか、だよ」
「であるなら、タイミング的に僕達が手を組まないように利用された、かな?」
仮にも都市最大派閥の【ロキ・ファミリア】。精霊の力に酷似した力を振るうその何かが動きにくくなるのは確かだ。
「ではやはり、私が戦ってしまったから」
「う〜ん。じゃあ殲滅を命じたフィン様と、話を聞かなかったアイズ様の自業自得では? 十香様の言葉に応じていれば、少なくともあの場でああなることは無かったわけですし」
責任を感じる十香にリリはそう応える。
「こういう時兄様なら心を抉るセリフでフィン様達に責任を問いて奴隷としてこき使えるのに」
「なんなの、我が半身の兄って」
「世界一強くて優しいリリの自慢の兄様です」
「やさしいって………さっきの発言と矛盾してんじゃん」
「クチュン」
「あらあら、風邪ですの? いけませんわねぇ」
「俺は『悪食』を発現してから風邪引いた事ないよ」
体内の雑菌全て食い尽くすので。
「今さらだけど狂三お姉ちゃんはなんで俺の力を借りようと思った?」
確かに俺最強だけど、とケバブ串を食べながら尋ねるリリウス。
「貴方が最初から、わたくしを信用してくれたから」
「…………最初から?」
「だから、貴方にあんな事をさせないために………それにぃ、わたくし達は余所者ですわ。傷跡を残すわけには行かないでしょう?」
「狂三お姉ちゃんは優しいんだな」
「………わたくしが? 優しいなんて、そんな訳」
「だから止まれなくなってる。それを止めるのは、あの士道とか言う男か」
「士道さんが、わたくしを止められると思って?」
そう尋ねる狂三に、リリウスはああ、と応える。
「愛はすごいってアフロディーテも言ってたぜ。狂三お姉ちゃんは士道を愛しているからな。きっと救ってくれるだろうよ」
「なっ、愛………なぁ!?」
顔を真っ赤にして狼狽える狂三は、しかしそれ以上は文句を言わなかった。リリウスはケバブの串(金属製)をブチブチと食べる。
「………まぁ、良いですわぁ。あちらの方は士道さんとベルに任せて………わたくし達はわたくし達の
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