ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「は、Lv.9? 世界、最強………? あの、子供が? あ、いや……パルゥム? だから、実年齢はもっと上なのか?」
「17歳だよ」
「17歳で世界最強!? いや、ていうか最大派閥の【ロキ・ファミリア】の団長がLv.6で………」
「派閥の
派閥としてのランクは、故にC。第一級以上が一人だけ。他は高くてLv.3と中堅程度。
「因みにエピメテウス様は恩恵がなくてもクソ強いので、Lv.2ながら兄様と戦えますよ」
「あれと戦えるのね…………」
精霊を拳1つで吹き飛ばす規格外。精霊の中でも高速戦闘を可能とする耶俱矢曰く、超ギリギリで霊力を一点集中の防御に回して死ぬかと思ったらしい。
「怖いよぉリリルカ〜! 夕弦の格好させたの、そんなにいけないことだった〜!?」
「兄様はそれぐらいで人を殺そうとしませんよ。リリが死ぬほど嫌がったわけでもないですし………恐らく単純に、耶俱矢様が生理的に気に入らなかったのかと。耶俱矢様、リリ達に何か隠れて悪いことしてません?」
「そ、そりゃあ精霊だし、空間震起こしたり、私と夕弦は殺し合って辺りに被害を撒き散らしたりはしてたけど………」
八舞姉妹は、まさに超高速で飛び回る台風であった。観測されても現場に駆けつけた頃には既に居ないなんてことも、駆けつけていてもあっという間に突き放したり。
「う〜ん? 姉妹と殺し合ったから、ですかねえ? それにしては過激な………まあ耶俱矢様がこうしてダメージもなく生きている辺り、力量を考慮して脅しのつもりで殴っただけかも?」
思ったより硬い、とは言ってたし、測った力量に沿って攻撃したのだろう。
「もう少し硬いと思われてたら私、死んでた?」
「死にさえしなければ治してくれる方がこのオラリオには居ますから」
「もうやだ〜、異世界怖い〜!」
シクシクとリリに抱き着く耶俱矢。二人とも格好があれな美少女達の絡み合いに士道は目を逸らしベルの目を隠し、ロキはまじまじ眺めている。
「よしよし、リリが説得してみますから」
「ふんだ、でもどうせ本当に殺し合いになったらリリルカはあの小娘………じゃなかった、小僧の味方をするのであろう?」
「え? はい、勿論」
「即答!? 酷いよ〜、半身なのに! もっと優しくしてよ〜!」
あっちは放置よ、と琴里。関わるのは面倒と判断したらしい。
「それで、あの超絶ハードモードのレイドボスは、どうするべきかしら」
「むう。しかし、世界を救うためなのであろう? ならば敵ではないのでは?」
「その世界を救う名目で精霊と敵対した奴等を、私達は知っているでしょ」
「むう…………」
世界の脅威たる精霊をそもそも脅威でなくするラタトスクと異なり、排除する〈AST〉という前例もいる。事実、【ロキ・ファミリア】とてアイズを排除する可能性を視野に入れているのだ。
「心強いと言えばいいのか、不安と言えば良いのか…」
報告を聞いたフィンはそういって肩を竦める。
彼なら或は反転したアイズとすら渡り合い、勝利すら出来るかもしれない。
ただ被害を気にして引いたように、地上は脆い上に壊してならないものが多く、故にリリウス達が戦えば余波でオラリオが崩壊する可能性すらあるが。
「
「彼はやるよ。必要さえあるならね」
リリはお前が知ったように語るんじゃねえよ、と思ったが実際にそうなので内心のみで舌打ちすることにした。
「あ、あの人から………何だか私や、ノエルちゃんに似た力も感じました」
「リリウスおねえちゃんはね、ふゆのせいれいのちからもつかえるの! だいせいれいだよ!」
恐らくはエネルギー量は十香達にも迫るであろう存在。その力の片鱗すらあの時見せもしなかった。
「そう言えば彼奴、何で異界の精霊の力を……」
「こっちで精霊の力を使うとなると、それこそ精霊と契約するぐらいしか思いつきませんが……」
似て非なる異界の精霊と? それは考えられない。考えられるとするなら………
「
「リリウスの【
それが相手から力や『時間』を奪う為の狂三の『時喰みの城』と組合わさり、中にいた狂三の分身を喰らったのだろう。
「あっぶないわね。吸収能力も強化されてそう」
なんなら霊力パターンは狂三と同じなのに、総量はオリジナル以上と来た。
「ほんと、何で〈ナイトメア〉と手を組んでるのよ」
世界を救う為とは? 目的へ至る手段は?
情報が足りない。本当にアイズを殺して世界を救うつもりなのか? だとしたら行動に移せそうな機会など他にもあったが。
フィンはふむ、額に親指をあてる。彼の考えごとをする時の癖だ。何か、重要な何かを見逃している。それを解決するピースは、恐らく………。
2日後。
あの後もアイズとデートを繰り返し良好な接触を繰り返した。しかし、数値化された好感度には一切の変化はない。
「あれだけベル君に迫られてかい!? 見ているだけの僕だって思わず赤面してしまったのに!」
「ええ、そうなんだけど………私達がアプローチの仕方を間違えているのか、それとも………ベルの方も疲れてきてるわね」
「………はぁ」
「………大丈夫か、ベル」
噴水のある広場、ベンチに座るベルの背を優しく叩く。
「士道………うん、大丈夫じゃないかも」
慣れないことばかりで、なのにアイズはベルを見ていない。誰かに好きになってもらうのは凄く大変な事らしい。結論、士道は凄い。
「解るよ。俺も大変だったからな………いきなりデートしてキスしろなんてさ」
当たり前だが、精霊が最初から好意的だったわけでもない。殺されかけたことも何度もある。
「………士道は、元の世界でこんなこと、ずっとやってるんだね。すごいなぁ…………」
「まぁ、俺なんかより………精霊の方がずっと大変なんだ。いや、とても悲しい境遇にいる」
「悲しい………?」
「琴里がちょろっと言っただろ? 〈AST〉とか。精霊は生まれた瞬間から人類に恨まれ、殲滅対象になっちまう」
「………! 僕達の世界のモンスターみたいに?」
「ああ………本当に怪物とか、災害扱いだ。精霊にも感情があって、生きているのに」
それも、間違いではない。事実として彼女達は破壊を撒き散らす。士道がかわいそうだと叫べるのは、彼に精霊達をどうにか出来る力があったからに過ぎない。しかし………
「それに、もっと恐ろしい連中もいたんだ。恨みや悲しみからじゃなく、精霊を利用しようとする奴等が……」
「り、利用……?」
『あの男』を、士道は恐ろしいと思った。
得体がしれない、人の形をした何か。
「あの………『アイザック・ウェストコット』が………」
(アイザック……ウェストコット………?)
「ちょっと関係ない話もしちまったけど、とにかく俺は、そんなものから守りたいと思ったんだ、
真っ直ぐに前を見つめる瞳に迷いはない。
「ベル。俺は精霊をデレさせて力を封印するのは、ただの『手段』だと思っている」
「え?」
だって士道の『目的』は、そんなものではない。彼がやりたいことは………
「精霊を救うこと」
「────」
「それを忘れなかったからこそ、俺は立ち上がれた。だから、ベルにだって出来るさ。困ったら、いくらでも相談しろよ! 俺達はチームなんだからな!」
先に帰ってるぜ、と立ち上がる士道の背中を見送りながら、ベルは………胸に引っかかりを抱えていた。
士道の言葉にどうしても理解の届かぬものがあったからだ。
「…………今回も無理だな」
バベルの最上階。そこを(勝手に)仮の拠点にしていた狂三はリリウスの言葉に本から顔を上げる。
「あら、あら………随分、手厳しいですわねぇ? アイズさんを救えるのは、ベルさんだと貴方が言ってたではありませんか」
「アイズを救えるのはな……だけど、アイズをベルが救えるのと、ベルがアイズを救うのは別だ」
ムシャムシャと
「それ、お高いんじゃありませんの?」
「質がいいし、十四億ヴァリスぐらい? 狂三お姉ちゃんこの影は物理的じゃねえもんも俺より効率よく食えて便利だな。相変わらず、俺の腹は膨らまねえが」
「ところでわたくしの分身を知りませんこと? こら、ちゃんとこちらの目を見なさい」
「…………入れてたけどいなくなった」
リリウスは目を逸らしたまま、狂三が周りを回ればリリウスもその場で回る。
「…………あら?」
「ん?」
と、不意に狂三が窓の外を見る。
「どうやら、新しい動きがあったようで。貴方に言わせれば、終わりの始まり、でしょうか?」
「……………」
「……………わたくしが、代わってあげましてよ?」
「それが出来ないから、俺が世界を救うんだろ」
ベルはアイズを追いかける。
空間から突如現れたアイズ。今までもああして現れたのだろう。
アイズが訪れたのは北西の市壁。ベルとアイズ、レフィーヤが訓練していた場所。見上げていると流れ星が見えた。数は2つ?
「いや、今はそんなことより!!」
ベルが市壁を駆け上がると、顔を上に向けて佇むアイズがいた。
「アイズさん!」
「………………………」
「どうしたんですか、アイズさん。こんな所で…………」
「空を、見てた……」
「………空?」
「後は、街」
オラリオを見下ろすアイズを見て、ベルは安堵する。空を見上げていたアイズが、何処か遠くへ行ってしまいそうな気がしたから。
「………………あ、アイズさん! また、ジャガ丸くんを食べに行きませんか? 僕、一緒に行きたいところが………」
「もう、いい」
「………え?」
「もう、たくさん食べた。もう食べなくていいように、沢山………もう大丈夫。だから──」
「──ダンジョンごと、
「なっ…!?」
「憎い。だから壊す。許さない。だから殺す。もう『私』を増やさない。だから滅ぼす」
とてもとても単純で、とてもとても簡単な方法。悲劇の元凶たるダンジョンを破壊する。怪物の進出を押さえる蓋諸共、怪物の根源を破壊する。
出来るかは解らないが、出来そうな気がする程度には、今のアイズは力を持っている。
「私は
「どっ………どうして!? モンスターがっ、ダンジョンが憎いなら、オラリオを壊す必要なんて!?」
「どうしてだろう? 解らない。でも『胸』の奥が言ってるの。この光景を、壊そうって…………」
黄昏の館に警報が鳴り響く。危険を知らせるために、不気味な福音。終末を告げる笛の音。
「
「ど、どういう事だい!?」
「
「琴里、ヘスティア! 都市の
「『胸』の奥が今も囁いている。ううん、違うのかな。私はずっと、この場所が………幸せな皆が、嫌いだったのかもしれない………」
「!? アイズ、さん………」
「──ねぇ、ベル。『英雄』は、居るのかな?」
「────────」
その問いかけに、ベルは言葉を失う。だって、アイズの姿が………ベルの憧れが、まるで英雄に助けを求めるただの少女のように………。
「『英雄』は、居ると思う?」
「『英雄』、は──」
でも、その問いかけなら応えは………きっと届くと、ベルは不器用な笑みを浮かべ、
「『英雄』は、アイズさんです」
「…………っ」
「『英雄』は、アイズさんみたいな人だから! アイズさん達のような人を、皆は『英雄』と言うから! だから僕は………! 僕は、アイズさんがいれば!」
『精霊を救うこと』
『それを忘れなかったからこそ、俺は立ち上がれた。だから、ベルにだって出来るさ。困ったら、いくらでも相談しろよ! 俺達はチームなんだからな!』
その言葉がずっと引っかかっていた。その言葉が、ずっと理解できなかった。
『救う』?
『誰』が………? 『誰』を………?
(僕がアイズさんを救う?)
ずっと考えつかなかった。いや、
だって、助けられてきたのはベルの方。
強くて、綺麗で、遠すぎて……『英雄』みたいで。
誰よりも憧れて、だから追いつきたいって………。そんな自分が、どうやってこの人を…………。
「……………………………………………………………………そう。そうだね、
音が聞こえた。取り返しのつかない音が。致命的な何かを間違えてしまった音が。
『最悪の選択肢』を選んだ者に与えられる、『破滅』の音が……。
「!?」
吹き荒れる霊力の暴風がベルとアイズの間を開く。
「『英雄』なんていない…………解ってた。あの時からずっと……ずっと──だから私は」
「な、何が起こってるんですかぁ!?」
「黒い暴風! 都市全体を包み込むほどの………!!」
「これじゃあまるで空間震! いや、それ以上の!!」
リリの叫びに折紙と士道が息を呑む。
「アイズ、さん………」
「…………クソが!」
「………叶わなかったか」
呆然とするレフィーヤ。歯がひび割れそうなほど食いしばるベート。破滅を確信するフィン。
「行くぞ。もう一刻の猶予もない。そうだろう………リヴェリア」
「ああ…………」
「総員、武器を持て! 目標は市壁北部! 【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン!」
フィンの掛け声に、己の葛藤を振り払うかのように叫ぶ【ロキ・ファミリア】が向かってくる。ベルは黒い暴風を纏い浮き上がるアイズに叫ぶことしか出来ない。
「アイズさん! やめてください! アイズさぁぁん!?」
その声は風に飲まれ消えていく。アイズには届きはしない。
「壊す……」
嘗て懐かしい夢を運んでくれたその白は、アイズの目に映りはしない。
「魔道士隊! 詠唱!
フィンの号令が飛ぶ。何れ再び訪れるであろう『
「フィンさん!? 待って、待ってください! あの人は、まだ!?」
ベルの叫びは無数の魔法の号砲に掻き消され、数多の魔法は風に全て吹き飛ばされる。
魔法を打ち消し尚も止まらぬ風が市壁の上へと迫る。
「どけ、若造」
「ガ、ガレスさん」
その風を防いだガレスは、ベルに視線を向ける事なくアイズを睨む。代わりに応えてやるのはベート。
「てめぇは失敗した。てめぇは負けた。てめぇに任せた俺達が、一番の負け犬だ。失せろ」
失う者がそこにいた。だからベートは追い払う。
悲しむ者がそこにいた。だからベートは吠え立てる。
これ以上の傷を刻まれぬ様に、刻まれるべき傷を請け負うように。
「……………」
「………っ!」
レフィーヤは何も言わない。睨むのは、一瞬。それがベルには苦しかった。
「尽くす言葉はもうない。下がっていろ、ベル・クラネル。あの子を止めなければ………あの子を終わらせてでも」
「ぅ、ぁ………」
新たに現れる影に、ベルは視線を向けた。
「………琴里さん、神様…………士道………」
「ベル」
「もう……仕方ないんだ。もう、どうしようも………」
「あ…………あ…………あああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
絶叫を掻き消すように嵐が吹き荒れる。魔法も、盾も、剣も、何もかも吹き飛ばし、精霊の力すら届かない。
「……! 魔力の流れが、変わった!?」
「なんだ………何をする気だ!?」
「開け──〈
「あれは………光の輪?」
「ちゃう、あれは……扉や」
「精霊の力、自分自身を媒介にして……『天の扉』を開いた!?」
「あの『扉』が、あの子の本当の〈天使〉? いいえ……本当の〈魔王〉」
訪れる力は精霊の術式として召喚される『天の扉』とは理由が違う。正真正銘天界由来の力………
空間………否、世界そのものが震える。その衝撃に、神の眷族に守られず、恩恵持たぬ士道が吹き飛ばされた。
「ぁ……」
【
破壊が落ちる。終末が放たれる。
崩壊が……
「【ブラフマーストラ】!!」
崩壊が、穿たれた。
「……………え」
「…………………」
何一つ目を向けなかったアイズが漸く視線を動かす。ただ一つの脅威に向けて。
「…………
「下がっていろ【ロキ・ファミリア】。此奴は俺が
「
「吠えるなよベル。『英雄』に強さなんざ求めやがって………ああ、だが……強いだけの『英雄』だから、俺は世界しか救えないんだろうな」
風に乗り接近したアイズの剣を受け止め、蹴り飛ばす。アイズは空中で静止すると黒い嵐をただ一人の人間を磨り潰すべく圧縮する。
「ふっ!!」
「【
リリウスの魔力により強化されたそれは最早弾丸とすら呼べず、極大の大砲の如き光線が吹き荒れる嵐を減速させる。
「【
「!!」
対象の内定時間を加速させ成長、老化、経年劣化を促進させる弾丸が触れた全てを風化させる。
アイズの片腕が骨になり、骨すら塵へと変わる。
「【
逆に時を巻き戻す弾丸をオラリオに撃てば、あれだけの破壊が全て修復される。
修復が終わったのを確認すると、リリウスはアイズを蹴り飛ばした。遠くで轟音が響き山より巨大な土煙が立ち上る。
「【
「──!?」
土煙から抜け出ようとしたアイズだが、舞い上がった土煙が停止して即席の拘束となる。
「つくづく規格外ですわねえ……あれでわたくしと同じ力を使っているんですから、出力の違いなんて言葉が陳腐に思えてしまいますわぁ」
「狂三!?」
「ごきげんよう、士道さん」
こんな状況で、にこりと微笑む狂三。場違いな彼女にベルは怒りをぶつけるように叫ぶ。
「狂三さん!
「止まりませんわ」
「っ!!」
「やらなくていいと言っても、やるんですもの。もう救えないアイズさんの代わりに、世界を救うんですもの………」
「そんな、そんなの………だって! ………っ!」
カチャリと狂三がベルと士道に銃口を向ける。
「わたくし、少し怒ってますの。身勝手ですけど、託された事を行えなかったベルさんに………あんな子供よりも強い者がおらず、全てを背負わせるこの世界に」
「狂、三………?」
「でぇ、も………所詮余所者のわたくしに、余所から来たあの力に、この世界の未来を歪める権利なんてありませんわ。こんな未来、あり得てはならない……だから」
「
「【
2つの銃弾が響く。
取り返しのつかぬ未来を変えるために、取り返すも何もない、選ぶ前に………時計の針が遡る。
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