ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
英雄を見た。
崩壊した街、その瓦礫の上で終末の精霊の首を無慈悲に切り落とす、幼い影。
数多の神が天へと還り、その残滓を矢へと変え湧き出る魔物を消し飛ばす。
猛毒の嵐を纏い、精霊の寒波を放ち、ついには封印された恩恵を喰い破り、守る者を失い助ける者も無く、
理由も分からぬままこの世界の強者達に追われ、保護されたが故に助かっただけの自分は見ていることしか出来なかった。
彼と同じ毒の風を操る巨獣が現れ、蠢くだけで大気を掻き回す巨大な海蛇が現れ、蛇とも竜とも見える悍ましき邪竜が現れ、彼が死にゆくさまを、ただ見ていた。
「さて、ベルさんは、アイズさんを救えるでしょうか? その前にお母様に認めてもらわなくてはならないなんて、前途多難ですわねぇ」
バベルから事を見下ろす狂三。リリウスは結果は分かりきっているとでも言うように眠っている。
異界で出会った友。彼は過去を話さなかったが、他ならぬ『彼自身』から聞いた過去には、狂三も思うところがあった。
一人で背負い、一人で変えようとして、まるで自分のようで………。
確かに狂三はこの世界を救うつもりだ。異界の住人である自分達が滅ぼして良い道理などないのだから。でも、それ以上に、あの子が背負わずに済むのなら、背負わせたくないのだ。
「だから、頑張ってくださいましベルさん。貴方が
寝ぼけながら椅子をかじろうとしていたリリウスを椅子から離し買っておいたジャガ丸くんを皿に乗せて置いておく狂三は、そう言って都市を歩く白を見つめた。
「リヴェリアさん………」
「来たか、話はレフィーヤから聞いている。フィン達とは、何を話した?」
場所は、何故か闘技場。
「アイズの『絶望』を知る意味はないこと。アイズを救うには『希望』になるしかないこと………」
「そうか、そう言ったか。フィンとガレスが、お前達に………いいだろう。なら私も、お前達を見極めさせてもらおう。だが、その前に………」
リヴェリアは睨むようにベルを見た。いや、ようにではなく、事実ベルを睨み付けていた。
「──ベル・クラネル、お前は何故そんな腑抜けた目をしている?」
「────」
「今、私の前に現れたということは、『意志』を示すということだ。私は既に、アイズを手に掛ける覚悟を決めている。それを覆すために、お前達は決意を持ってやって来た。アイズを救うというのなら、そうでなくては道理に合わん」
救う方法が彼等しか持たず、その彼等が救うと決めたからこそ、リヴェリアは最悪に備えた。彼等を信じながらも、最悪に備えた覚悟を決めた。だと言うのに
「何故、お前の目は淀んでいる?」
「ぼ、僕は………僕はっ………」
「ベル………!」
「……僕は、アイズさんの力になりたくて! あの人が苦しんでいるなら、少しでも代わってあげたくて! 士道と一緒に、救ってあげたくて、だから………!」
「イツカ・士道を巻き込むな。お前の薄弱な意志を彼の陰に隠すな。私は
ベルの魂胆など全て見通し、リヴェリアは言い訳を封じる。誰かを添えなければ意地も通せぬ、他ならぬそんなベルの意志を問う。
「ベル・クラネル。世界は『英雄』を欲している」
人々も、神々も………一人の少女でさえ。
鼓動が跳ねる。
英雄の存在を問うアイズの言葉が脳裏に蘇った。
「………わかりません。リヴェリアさんの言ってることが、わかりません!?」
「馬鹿者。お前が
子供の言い訳をリヴェリアは許さない。許せる筈もない。ベルは、彼女の覚悟を踏み躙りに来たのだ。最悪の覚悟を、踏み躙らなくてはならないのだ。
「お前はアイズを救うと言っておきながら、その実、救済する気など毛頭ない。いや、出来るはずがないと現実から逃避している」
「………!?」
「お前はアイズに『理想』を押し付けているだけだ。あの子が一人で、物語の『英雄』のように立ち上がることを願っている」
固唾をのんで本の
「ふざけるなよ、小僧。あの子が剣を執ったのは、決して『英雄』だからではない!」
「「………!?」」
吹き上がる魔力に、敵意に士道とベルは息を呑む。
「貴様がその目を抉り落とさないと言うのなら、その眼差しであの子を貫くというのなら、先に私が殺してやる。剣を抜け、構えるがいい。アイズを真に救いたいと言うのなら、その想いを証明してみせろ!」
次の瞬間、ベルの目の前に現れるリヴェリア。後衛と言えどもLv.6。数多の修羅場を潜り抜けた経験が、体を隠すローブがベルの『目』を欺く。
「ベル! く、くそおおお!!」
「【終末の前触れよ、白き雪よ】」
士道の拳を杖で絡め取るようにそらし、石突で腹を打つ。加減されたとは言え、それでも一般人を吹き飛ばすには十分。
「リヴェリアさん!? やめてください、こんな!!」
「【黄昏を前に
詠唱は止まらない。止まるわけもない。リヴェリアは既に言った、思いを証明しろと。
ならば、ベルがするべき事は一つだけ。
「ちくしょう!」
「【閉ざされる光、凍てつく大地】」
ナイフを振るう。だが詠唱は止まらない。
並行詠唱。同格の魔剣士のリューよりは極まっていないだけの、第二級冒険者程度などより遥かに洗練された高等技術。
弾かれ、逸らされ、叩かれ、打たれ………、ナイフは届かず、一方的に傷が増えていく。
「【吹雪け三度の厳冬──我が名はアールヴ】」
故に、詠唱は完成する。
「【ウィン・フィンブルヴェトル】!!」
狙いは地面。吹き荒れる吹雪が大地に触れ、爆ぜる。氷の礫が舞い、寒波がベルと士道を吹き飛ばした。
「うぉおおおおおお!?」
「ぐっ!!」
魔砲の余波。それだけで吹き飛ばされたベルと士道をリヴェリアは一瞥する。
ベルは立ち上がらない。立ち上がれないのではなく、立ち上がろうとすらしない。意志は示せず……
「力さえ示さない。もういい、消えろ………お前には失望した」
「リ、リヴェリアさん………!」
「二度と私の前に現れるな。二度とアイズを救うなどと………口にするな。お前はただの『子供』だ、ベル・クラネル」
その視線を最後に、その言葉を残して、リヴェリアはその場から立ち去る。
少しして、先に立ち上がれたのは士道。
「ベル、大丈夫か……?」
「………………」
「はは。あの魔法使い、すげー強かったな。アイズの母親代わりっていうのも、頷け………」
「………………もう、無理だよ」
吐き出すような、絞り出すようなベルの方声に、士道は顔色を変える。起き上がったと思ったら、膝を抱えて蹲る。
「っ…………ベル」
「もう無理だ………僕じゃ無理なんだ! アイズさんを救うことなんて!」
「そんなこと!!」
「士道は何も知らない!!」
「!!」
あの人に助けられた。あの人に憧れた。
あの人に追いつきたくて、だから今まで頑張ってこれた。
「でも僕は、一度だってあの人のためになんか戦ってない! 全部、自分のためにしか戦ってきていない!」
馬鹿みたいに憧れた、英雄のようなアイズの背中を追うだけでベルは、彼女の為に戦おうなんて一度だって思わなかった。思う必要がないと思っているから。
「……ベル」
「リヴェリアさんの言う通りだ。何も違わない! 何も! 僕は、ただの『子供』だ! そんな
「…………ベル。先に謝っとく。ごめんな」
士道は一度目を閉じ拳を握り……ベルの頬へと振り抜いた。
「………がぁ!?」
「歯ァ食いしばれ!! お前がふざけたこと言い続ける限り、何度でも、ぶちのめしてやる!!」
「なに、を………!?」
何をするんだ、その言葉を吐く前に拳が飛ぶ。文句など言わせない。
「しっかりしろよ馬鹿野郎! アイズを助けるって決めたんだろ! なら諦めるんじゃねえよ! 無理だとか言ってんじゃねえよ!」
「…………なにも………何も知らないくせに!」
「ああ知りたくもないね! うじうじ悩んでる、今のお前の気持ちなんて!」
「!! このおおおおおお!!」
怒りに任せた拳が士道を打つ。
「ぐぉ!? ………はっ、そんなもんかぁ!!」
再び士道がベルを殴りつける。
「……!?」
恩恵を持たぬ者の硬さではない。恩恵を持たぬ者の力ではない!?
「俺は何人も精霊を封印してきたからな! ちょっとズルして『力』を使わせてもらえば、
「がぅ!? 〜〜〜〜〜〜!! っのおおおお!!」
2人の少年が殴り合う。互いに皮膚が切れ、血が流れる。皮膚の下で出血し、腫れ上がる。それでも互いに拳を収めない。避けも、受け止めもしない。
何時しか沈みかけの日は消え、赤い空は黒く染まる。
「なんで助けてやれない! なんで『救いたい』って言えない! お前だって本当は、アイズを助けたいんだろう!」
「僕には資格がないって、そう言ってるじゃないか! 解るでしょう? 解らないの!? お願いだから解れよ!!」
「へぇ、誰かを救うのに資格なんているのか! 初めて知ったぜ!」
「っ!! 士道ー!」
打撃音と叫び声が響く。闘技場の管理者たるガネーシャは様子を見に来て、うんうんと頷き「それもまたガネーシャ!」と叫び貸し出し時間を(勝手に)延長した。
「ベルのそんな弱気なところが、アイズを追い詰めたんじゃないのか!」
「!!」
「わかるよ! 俺も十香達とデートした時、何度も挫けそうになった!」
人を殺した精霊がいた。
男嫌いの精霊がいた。
残酷な真実を知ってしまい、絶望した精霊がいた。何度も死にそうになった。もう散々だった!
「そんな俺だから言ってやる! 負けるなベル!」
倒れかけたベルの胸ぐらをつかみながら叫ぶ士道。その視線から逃げられない。その視線から目を逸らせない。
「これっきりでもいい! なってやれよ! アイズの英雄に!!」
「──────! ぐうぅ!!」
「「ごふ!!」」
互いの拳が、互いの頬を叩く。
脳が揺れたのか、体力の現界なのか、2人揃って倒れ込んだ。
「………2人並んでノックアウト。やっぱり、冒険者って強いな………」
「……………士道、空」
「え?」
空を見上げれば、空の端が白く染まり、星々を隠していく。
「…………朝」
「うわ、信じらんねぇ………夜通しで殴り合ってたのか、俺等……」
「…………士道、ごめん………………ありがとう」
「気にすんなよ。言っただろ? 俺とお前は『相棒』だって」
「………友達じゃ、なくて?」
「………ああ、そうだな。『友達』だ」
違う世界に住む、絶対に会う筈がなかったのに、喧嘩までした……………大切な友達。
「……もう、大丈夫か?」
「うん。やらなきゃいけないことも、僕がしたいことも、解った」
「そっか………今日はもう『運命の日』だ。アイズは夜に現れる。チャンスは、これが最初で最後………」
「解ってる」
「……怖いか?」
「怖いよ。怖くないって言ったら、嘘になる」
「そうか、そうだよな」
よくわかると、士道は笑う。
「じゃあ、挫けそうになったら俺を思い出せ! 負けそうになったら、俺を呼べ! 俺は何時だって、お前を助けにいってやる!!」
「うん! 行こう、士道!」
「やぁ、リヴェリア。遅かったね、どうなった?」
「………打ちのめしてきた。あんな軟弱では、話にならん」
リヴェリアの言葉にガレスはがはははは、と豪快に笑う。
「随分きつく当たったようじゃのお!」
「リ、リヴェリア様………ベル・クラネル……あ、達の、その後は?」
「知らん」
「知らんって、あのヒューマン達が何とかしないと、アイズさんが!」
「私は見極めただけだ。そしてベル・クラネルは意志も力も示さず、無様を晒した。失望した男のことなど関知しない」
とても辛辣な態度にレフィーヤはチラチラ外を伺う。ベル達が気になるのだろう。
「それじゃあ、賭けでもしてみないかい?」
「か、賭け?」
「ああ。ベル・クラネルが立ち上がるか、立ち上がらないか。チップは………そうだな、アイズが好きなジャガ丸くんにでもしよう」
僕は『立ち上がる』に賭ける、とフィン。
「儂も『立ち上がる』に賭けるとしよう」
「わ、私は………私も、ベルは立つと思います!」
ガレス、レフィーヤも『立ち上がる』に票を入れる。そして、リヴェリアは………。
「私も、『立ち上がる』だ」
「──困ったな。賭けになりそうにない」
市壁に向かう過去のベルを士織に扮した士道が押さえる。その間にベルは、市壁に向かう。
アイズは一人、空を見上げていた。
暗闇の空に走る銀の線。流星が流れる。
誰かが教えてくれた。流れ星とは神様が世界の様子を覗くために『天の扉』を開いた時、漏れ出た光なのだと。
神様と私達を繋げる星の架け橋が開かれる時、天上は願い事を一つだけ、聞き届けてくれる。
もう顔も名前も思い出せない
願い事は、何だっけ。
願い事は、何だった。
決まっている。
破壊を。破滅を。滅亡を。残酷な世界に終焉を。
涙と悲しみを断つために。
全てが終わった虚無は、全てをなかったことにしてくれる。
『胸』の奥も言っている。それは等しい救いなのだと。
闇の安らぎは、これ以上『私』を増やすことはない。
…………でも、本当に?
それが、私の本当の願い? 私は、本当は何を望んでいたの?
頭が痛い。耳鳴りがする。心の内側を叩く声か止まらない。
けれど胸に巣食った『空洞』は、そんな痛みすら流してしまう。
『心』が言っているの、忘れちゃ駄目だって。
『胸』の衝動に抗いながら、私に何かを頻りに訴えている。
そんな風に踏みとどまろうとする私に──『絶望』が優しく囁いた。
『英雄』は居ない。『英雄』は現れることはない。
力を失う。瞳から光が消える。元々凍てついていた心が氷の鎧に覆われた。
もう、何も感じない。何も痛まない。何も苦しまない。
……
もう言わないって約束していた、その絶望の言葉を。
あの空に届くことはないと諦めた、幼かった私の願いを。
『誰か、私を………』
「アイズさん!」
まるで星の代わりに願いを聞き届けたかのように。
『彼』は現れた。
「………ベル?」
「………はい」
「どうして、ここにいるの?」
「アイズさんがいたから。アイズさんと、会うために」
「………そう」
その言葉はアイズの氷の鎧を剥がさない。その声は、アイズの心に届かない。
「何を、見ていたんですか?」
「………空と街。私が、これから壊す世界。私が………憎んでいる世界」
「アイズさんは、この世界を憎んでいるんですか?」
「そうだよ」
「アイズさんは、この世界が嫌いですか?」
「…………解らない」
嫌いなものより、好きなものが沢山ある。
風や、街や、皆が………だけど。
「『胸』が叫んでるから………壊さなくちゃ」
「…………………」
「でも、苦しいの。指が寒いの。何か、とても寂しい。あの時みたいに……全部凍りついて……」
「──ねえ、ベル。『英雄』は、いるのかな?」
「────」
あの時と同じ質問に、ベルは息を呑む。
これが正しいとは限らない。それでも、ベルは己の答えを出す。
「───『英雄』は、いません」
その頃の士道(士織)。
「もう放してください! もう行かなきゃ!」
「くっ、しまった!」
過去のベルが行ってしまった。このままでは………! と、士道の周りが歪むような感覚。霊力が乱れている………【
「時間がない。急げ、ベル!」
「そうだね。知ってたよ………『英雄』なんて」
失望するように、安堵するように霊力を解放しようとするアイズ。そんなアイズにベルは言葉を続ける。
「……そう、『英雄』なんていない。お伽噺のように、誰をも救ってくれる英雄なんて!」
「……えっ?」
「強くて、格好良くて、どんな人も颯爽と救う! そんな物語の住人なんて、何処にも居ないんだ! 待っていても、現れるはずがない!」
だから! 僕は貴方の『英雄』になりたい!
「!」
「僕が、貴方の『英雄』になりたい」
氷の鎧が揺れる。閉じこもった心が震える。
「僕にはアイズさんの『絶望』は解らない! アイズさんが何に苦しんで、何に悲しんでいるのかちっとも! それでも、僕は貴方を助けたい! 僕を助けてくれた貴方のように、今度は僕が!」
「────」
氷の鎧が、ひび割れる。
「アイズさん………」
固まるアイズの手を、ベルは優しく取る。
「貴方を、助けに来ました」
「ぁ────」
光を失った瞳から、星明かりに輝く雫が溢れる。
「これは、なに………? これは、涙? わたし………どうして………」
「アイズさん、これを」
「………指輪?」
「はい、約束をしましょう」
ベルの手がアイズの手を優しく包み、指を嵌める。
「アイズさんが、また何処かで悲しんでいる時、泣いている時、僕が助けに行くって………この指輪に」
「…………助けに、来てくれるの?」
「僕は弱っちくて、格好悪くて、どんな人も救えないですけど………この指輪に誓って、貴方を助けに行きます。いつか、『英雄』のように」
「…………………」
時間が………ベルも己に訪れる違和感に気付く。世界の修正よろしく、世界が異なる時間のベルを元の時間に引き戻そうとする。
その場からベルが消え、アイズは一人残される。
「────ありがとう、ベル」
アイズは指を嵌められた薬指を右手で包み、そっと胸元に持っていく。大切な大切な…………とても大切な宝物のように。
第一周のリリウス。
事前情報無しに【ロキ・ファミリア】に襲われていた狂三を保護。なんとなく、自分に似ている気がしたから。
しかし調査の為に隠れていた結果後手後手に回り、天の扉がオラリオを崩壊させた。
アイズを殺した後、神の力による攻撃にブチギレたダンジョンが生み出した新たな漆黒のモンスター達にダンメモ4周年の時のベル同様自力でステイタスの封印を破りエピメテウスと応戦するも最終的にはベヒーモス、リヴァイアサン、ニーズホッグに敗れた。
光の酒カス
兄妹の魂を保護した。
闇の酒カス
準備全部無駄になったし最終的には望みが果たされたように見えるもそこは神なので自分をコケにされたと感じて酒浸り。
エイプリルフール、皆が見たい嘘は?
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バーサーカーリリウス(/Zero)
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英雄派リリウス(ハイスクールD×D)
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冒険者リリウス(このすば)
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死に戻らないリリウス(リゼロ)
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魔物リリウス(ガッシュ)相棒エピさん