ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
リリウスは鼻や耳がいい。
その気になればオラリオの端から、反対の端で作られている料理の材料を見抜ける程に。
スキル、レベルにより文字通り人知を超えた五感はそれだけ規格外。勿論普段からそんなに膨大な情報を処理しきれるわけがなく、石すら握り潰せる冒険者が日常生活を送れるように、無意識に機能を抑えている。
なので、
「……………エルフィ」
「ぅ………」
倒れるエルフィ・コレット他【ロキ・ファミリア】数名とベル。潮風に紛れた僅かな血の匂い。辿ってみればこれだ。
特にベルが酷い。皮膚がただれている………毒だ。それも、Lv.3になった時取ったばかりとは言え『耐異常』を貫く『猛毒』。
「何があった?」
アミッドが傷を癒す傍らでベルへ問い掛ける。
毒による痛みか、或いは意地か………意識を手放さなかったベルが目だけを向けてくる。
「レフィーヤさん、が………さら、われ………ました!」
悔しそうに呻くベル。たまたま居合わせ、奮戦し、やられたのだろう。この残り香………あのLv.6の、臆病な方か。カーリーもいたな。
【ロキ・ファミリア】に喧嘩を売った? 狙いは【フレイヤ】では………いや、個人的ならぬ個神的なカーリーの発案か。後あの姉妹。
椅子樽には許可を取ったのか? 独断、或は椅子樽はLv.7の戦力を得る可能性に投資したか? あれ、椅子樽だっけ? まあ良いや。
「エルフィ………」
「う、うう……あれ、痛くない?」
アミッドの治療が終わり目を覚ましたエルフィ。リリウスは彼女に問い掛ける。
「イカ焼きの礼だ………ドゥルガーとのデートのシメも、まだだったし、
「「────!!」」
ギョッと目を見開くエルフィとベル。
確かに【カーリー・ファミリア】は世界有数の世界勢力。第一級の中でも上位の大派閥。が、それだけだ。
リリウス・アーデには及ばない。まあ、仮に勝っていても一食の恩で噛みつくのがリリウスだが。
とは言え、今エルフィはその力の向かう先を決められる。国も、派閥も、ただ一言言えば終わらせられる力が……
「いや、別にいいって。ていうかリリウス、命の価値軽すぎるよ」
重いって、とエルフィは断る。
「別に全部の命が軽いわけじゃねえぞ? 弱肉強食は奴等の流儀。それを押し付けて当然だと彼奴等は思ってる………だから、流儀に則ってやるってだけだ」
「う〜ん。そりゃ、殺しにくる相手だろうけどさ………それに、今はアミッドさんともデート中でもあるんでしょ? 怒られるよ?」
「………………」
「私は気にしてないよ。まだ、誰も殺されてないからね。レフィーヤを取り戻して、皆でこんにゃろー! ってぶっ飛ばして、それで終わりでいいんだよ、こんなの………じゃなきゃ、ティオネさん達が可哀想じゃん。せっかく抜け出して、ここにこれたのに」
その言葉にリリウスは目を伏せ、もう一度エルフィを見る。
「…………………そうか。お前が色んな奴と仲良くなれると自信もって言える理由が分かった」
「お、褒めてる?」
「要するに馬鹿なんだなお前」
「貶されてる!?」
「アリーゼと同じタイプだ」
「オラリオでも人気の? う〜ん、これは、どっち?」
褒めている。
まあ、なら、殺戮はなしだ。
「ええ〜、期待させておいて、生殺しじゃ〜!」
と、リリウスの中からドゥルガーが出てきて文句を言ってくる。殺戮かと期待したのにやっぱ無しなど、不満もあるのだろう。
「じゃあ代わりに、お前の母の思惑に乗らないと思え」
「むぅ、それなら……」
「ぼ、僕も!」
と、ベルが立ち上がる。この中で一番強く、故に一番抗い、だからこそ一番打ちのめされたベル。その目の光は陰っていない。その魂は濁っていない。
「僕も戦います!」
「…………戦えるか?」
「はい! まずはレフィーヤさんを!」
「そっちは問題ないだろ」
「え?」
「カーリーは殺害の神じゃなくて、殺戮の女神だ」
生きようと逃げる者を追いかけ殺し、殺されてなるものかと抗う者を組み伏せ殺し、砕き、引き裂き、切り捨て、潰し………惨たらしく殺す殺戮を尊ぶカーリーは、しかしただ死を振りまきたい訳では無い。
「抗いようもねえ奴を害することはしない。人質という形で縛り上げた相手にそれ以上の事はしないだろ。違うか、ドゥルガー」
「まあ、母はそういう神だ。もとより年がら年中殺し合いで暇をつぶしていたヴェーダの戦神。数多の悲鳴と数多の血を見たいのであって、縛り上げて殺すのは、悪神の類が好むもの」
テルスキュラという殺し合いが行われる陸の孤島から一切出てこなかったのもそれが理由だろう。
世界有数の戦力で数多の命を一方的に奪えるのは目に見えている。そんなものより、逃げられるかもしれない、抗えるかもしれない、そんな相手同士の闘争を見たいのだ。
「まあその娘が縛られて尚抗う意志を見せるなら別だが………」
「見せそうなんですけど」
「……………まあ、見せたとしても無謀ではない。【ロキ・ファミリア】が動いたのが分かってからだ。今回死ぬ可能性があるとしたら、あのアマゾネスの姉妹だけ」
「アマゾネス………」
「そういや胸の無い方と仲が良かったな。あっちも救いたいってんなら、場所教えるが」
「…………
ベルが脳裏に思い浮かべるは、一人のアマゾネス。
「僕は
「…………そうか」
「では何時行く? 今からか?」
どれだけ上手に隠れようと、リリウスの鼻なら逃さない。すでに潜伏場所は突き止めている。
「【ロキ・ファミリア】が街に散ってからのほうがいいかと」
「数が増えようと俺には問題ないが」
現状、【カーリー・ファミリア】の戦力だけで【ロキ・ファミリア】を抑え『儀式』を実行するのは難しいだろう。
質は兎も角、数の差はある。
可能性として彼女達を呼んだ連中に助力してもらう、或いは………何故か居た食人花を暴れされる可能性もある。
だがそうなろうとリリウスの
「ですが、何もしないうちに終わるのはロキ様も納得できないかと」
「……………………」
事実として【ロキ・ファミリア】がリリウスより下で、任せておくだけで全てが片付いたとしても、何もしないままというのは彼女達の心に影を落とす。
「リリウスとしても、【ロキ・ファミリア】の戦力は上がってほしいはずです」
「……………まあ」
現状オラリオにLv.9はリリウス一人。それより下は、Lv.8すらいない。
黒竜に挑むのも、
「皆さんが自分たちも戦ったんだと、そう思わせる事は必要です」
そして、だからこそリリウスは敵の物量戦に備えられない。
面倒だな。黒竜も、古竜も、すべて一人で倒せると言い切れるだけの力がないというのは。
「……………解ったよ」
リリウスが片腕を振るうと白鼠が大量に現れ街へ駆けていく。
「するのは一般人の護衛。討伐、対処は譲る。俺は俺の敵に当たる」
「
「こんな面倒な事をしないようにする方法は簡単だ。奴等は最強の戦士を作りたくて、自分達のやり方が正しいと思ってる」
だから、それを崩す。
そもそもLv.7が生まれてない時点で今更だろうと思うが、そんな方法で生まれた戦士よりも『儀式』に完全に無関係に生まれた戦士の方が遥かに強いと知らしめる。
「神々の言葉で言う、ワカラセって奴だね」
と、エルフィ。
「時間になったらベルはあっちにある海蝕洞に向かえ。下見した気配がある………そこが『儀式』の場所だろ」
「でも、あの人の方とは限らないんじゃ…………」
「他に邪魔されない場所っつったら、船の上だ。その場合わざわざ向かう必要はねえ」
「そ、そんな事! 泳いでだって………!」
「いや、俺が
だから向かうとしたら海蝕洞だけでいい。船の方には自動的に向かう。
「あと…………」
ボキッと風見鶏をへし折ったリリウスはメレンを見渡せる一番高い建物に向かいぶん投げた。
「
「なんかムカつく視線を感じた」
「確かに見られてましたけど、普段の人の気持ち悪さはなかったような…………」
普段から誰かに見られているベルは視線に敏感だ。その上で、今見ていた何者かは普段ベルを見つめる誰かの粘着くような気持ち悪さがなかった。
「悪意はあったぞ。お前、その辺には疎いからな」
遡ること数秒前。
「盤上の外から蟻共を見下ろすのも悪くない」
煙管を吹かしながら街を見下ろす神の名はイシュタル。
彼女はフレイヤは勿論だが、ロキだって気に入らない。自分より上だから。
だが正々堂々叩き潰せる程強くないので盤上に乗せているのだと言い訳して上から目線になっている。
【カーリー・ファミリア】に戦いを許可したのは【ロキ・ファミリア】の幹部1人でも倒れれば儲けもの。恨みを買うのは【カーリー・ファミリア】のみという思惑があるからだ。
それに【
もし負けてもまた別の勢力を雇えばいい。それに、秘策は何も外だけではないのだ。
そんな事よりも、イシュタルの頭を占めるのは白い髪の小人。
「何れは、貴様も必ず私の足下に這いつくばらせて──」
ギュゴ! と展望台の下が吹き飛んだ。イシュタルは重力に従い落ちた。幸いにも消えたのが一階分で、最上階にいたので死なずに済んだ。
「あんま投擲に向いてねえな俺」
リリウスは基本的に近接型なので、狙いを外したようだ。まああの距離での飛び道具を当てられる冒険者の方が少ないが。
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