ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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笑顔をくれる英雄(ひと)

Q.イシュタルはどうしてリリウスを魅了できると思ったの? 神威が効かないの知らないの?

 

A.神威が効かないということは神殺しを行えるということなので基本的に秘匿事項。ただし上位派閥には共有されてる。イシュタルも知ってるけど、アフロディーテに惚れたのならアフロディーテより美しい自分に惚れると思ってたよ。

なのに無反応だからアフロディーテの『魅了』が通じたに違いないと思って『魅了』しようとして、察しのいいリリウスは自分の想いを侮辱されたと判断して蹴ったよ。椅子樽の従属神と思ったから対応が甘かった。良かったね。

 


 

 事態は夜動いた。

 

 現れるは無数の食人花。そこに交じる【カーリー・ファミリア】と………別の神………昼間会ったクソ女神の血の匂いを放つ眷族。

 

「ベル、詳しい案内はシャバラに頼め」

「はい! 師匠(せんせい)は!?」

「思ったより数が多かったから、街の住人避難させてから行く」

 

 そう言うリリウスは、何時の間にか食人花に食われそうになっていた幼子を抱えていた。

 

 

 

「よっ、とぉ! こいつ等、何処にいたんですか!」

 

 閃く槍が食人花の魔石を砕く。横合いから別の個体が大口を開け飛び出してくるが、シュヤーマは器用に歯茎に足を乗せ跳ねる。

 

「サポーター君、シュヤーマ君、大丈夫かい!? なんか凄い事になってるけど!」

「この程度ならシュヤーマ様がいればリリは問題ありませんが………」

「くそう、なんだって地上でこんなに沢山のモンスターが! 君達、離れちゃ駄目だぜ!」

 

 逃げ惑う内に親と逸れた子供達を守ろうとするヘスティア。動きがどうしたって遅くなる。

 

「兄様の鼠が近くにいるし、平気だとは思いますけどねえ」

「それでも守ろうとする姿を見せてあげないと、この子達が安心できないだろ!」

「普段はいい神様なのに、どうしてベル様が関わると………」

 

 と、そんな事を呟くリリに襲いかかる影。モンスターではない、人だ。

 シミターを持つアマゾネス。その足に巻き付く鎖。

 

「!?」

 

 バランスを崩し建物の壁へぶつかるアマゾネス。

 

「今は一先ず、街の住人の避難が優先です。モンスターだけではないようなので、気をつけて」

「リリはともかく、アミッド様は攻撃出来るんですか? 絞め技も関節技もしている暇は無さそうですよ」

 

 人を傷付けない手段を戦い方としているアミッドには厳しいのでは、と思っていたらアミッドはアマゾネスの蹴りを受け止め、()()()

 

「問題ありません。私が傷付け、私が癒やす。この騒動に()()()()()()()()()()()()()誓いましょう」

「あ、はい」

 

 

 

 

 ティオナ・ヒリュテが笑うようになったのは、何時からだったろう。

 

 最初は彼女も笑えなかった。

 テルスキュラでは殺し合いが日常。モンスターは勿論、同族(アマゾネス)だって殺した。『家』だと思っていた、『部屋』の仲間達も。

 

 教育係のバーチェは怖くて、痛くて、苦しくて………笑える筈なんて無かった。なら、何時から笑ったのだろう? 国を出てから? 外の世界の広さを知って? オラリオで友達が出来た時?

 

 違う。もっともっと昔。英雄に出会ってからだ。

 

『………バーチェ、読んで?』

 

 ある鍛錬の日。終わった時、バーチェに音読を頼んだ紙屑。何故興味をもったのか、怖い筈のバーチェに頼んだのか、今となっては思い出せない。

 

 一日待たされ、次の日に戻ってきたバーチェが読み上げたそれは、英雄譚。或いは英雄などではないと笑われる道化の物語。

 

 王様に騙され、人に騙され、友の知恵を、精霊の武器を、最後には助ける筈の姫の力を借りる、笑わられる滑稽な男。それでも偉業を成した英雄。

 

 ティオナの大好きな英雄。笑われて、笑わせて、笑顔をくれる英雄が言ってたんだ。

 

『どんなに馬鹿にされたって、どんなに笑われたって、唇を曲げてやるんだ。じゃなきゃ精霊だって、運命の女神だって、微笑んじゃくれないよ』

 

 だから、私は笑うよ。笑えるよ!!

 

「うぅぅ!!」

 

 ゴン! と地面に頭を叩きつけるティオナ。意識が飛びかけていた。危ない危ない。

 

「よぉし! 目ぇ覚めた!!」

「おお! 立つか! それで、形勢は不利なままじゃ。これからどうする?」

 

 ティオナの前に立つのは、黒紫の光膜を纏うバーチェ。

 

 バーチェの魔法【ヴェルグス】だ。種別は付与魔法(エンチャント)。属性は、『猛毒』。

 数多同胞の命を喰らい、魔力(アビリティ)を強めた蠱毒の王。

 

 防げば腕がただれ、殴れば腕が腐り、防げば体が猛毒に犯される。

 防御不能、攻撃不可能の最悪な猛毒は肉体だけでなく、戦う者の心すら蝕む。

 

 遠距離攻撃でも出来なければまず戦いようがない。ならば、どうする?

 

(そんなの、馬鹿なアタシに思いつくわけないもんね!)

 

 だからティオナが出した結論は、殴る。毒を喰らおうと殴る。腕が腐り落ちれば蹴る。捨て身の特攻………ただの痩せ我慢。シンプルな彼女らしい解答。

 

(アミッドが居るし、大丈夫!!)

 

 幸いメレンに今、アミッドがいる。Lv.3になった時点で最早比べられる治療師(ヒーラー)が存在せず、その上最近Lv.4になった世界最高の治療師(ヒーラー)

 

 多分腕ぐらい生やしてくれる筈!

 

 こんなものはただの強がり。解ってる。でも、だって………笑ってないとアタシじゃないから!

 笑ってれば、幸運だって向こうから──!!

 

 リィンと、鳴り響く鈴の音を、アマゾネス達の困惑の中でもティオナの耳が捕らえる。

 

「…………うそ」

 

 振り返り固まるティオナ。その隙を見逃すはずもなく迫るバーチェ。

 

「【ファイアボルト】」

「────!?」

 

 走る白雷。闇を引き裂く純白の炎雷が毒の鎧を焼き尽くし、バーチェを吹き飛ばす。

 

「ぐ、う!?」

 

 体を回転させ、炎雷から逃れる。槍の如く突き進む炎雷により、壁が砕け、海蝕洞は掘削されていき海が見えた。

 

「ティオナさん!」

「アルゴノゥト君!」

「…………アルゴノゥト?」

 

 ティオナが呼んだ名前に、バーチェは焼け爛れた腕を構えながらベルを見る。

 

 エルフの少女を攫う際に一番抵抗した………ただそれだけの男。自分よりも弱く、既に下した相手。の、筈だ。

 

 なのに、なんだあの目は………!

 

「…………お主、何者じゃ?」

 

 儀式の乱入者にカーリーは不機嫌そうにベルを睨みつける。アマゾネス達も武器を抜き、直ぐにでも飛び掛からんばかりに殺気を放つ。

 

「【ヘスティア・ファミリア】………ベル・クラネル」

「ヘスティア? ほう、それで? 慈愛の女神の眷族が、何をしに来た。『儀式』が気に入らぬと、邪魔をしに来たか?」

「はい」

「……………」

 

 目をまっすぐ見つめ、逸らすことなく言い放つベルにカーリーは少しだけ興味を持つ。

 

「戦いたくない人を戦わせないでください。儀式から逃げたい人を、逃してください。僕は、それをお願いするために来ました」

「ア、アルゴノゥト君!?」

 

 かか、とカーリーは笑う。

 

「出来ると思うか? 叶えると思うか? 妾の享楽を、ただの子供の戯言で!?」

「どのみち、テルスキュラは今日終わる」

「何?」

師匠(せんせい)が………リリウスさんが潰すと決めたから」

 

 リリウスがそうすると決めた。

 だから国が滅びる。至極単純で、至極当然の結果。15年前ならいざ知らず、今の世にその決定を覆せる勢力など存在しない。

 

「…………貴様」

 

 最強の陰に隠れるベルにカーリーは今度は侮蔑の目を向けた。

 

「一度敗れ、何故また挑むかと思えば、そんな下らぬ理由とはな………失せろ。貴様は、我が眷族(むすめ)達が喰らうまでもない」

()()()………」

 

 ベルは、一歩前に出る。アマゾネスの一人が飛びかかり、その拳を回避して壁まで殴りつける。

 

「それでは貴方が納得しない。『儀式』に関係なくても、師匠(せんせい)は凄い人だから。貴方はそれを認めてるから………きっと、それだけじゃやめない」

「それで?」

師匠(せんせい)じゃ、駄目なんだ。『儀式』に無関係で、貴方が見向きもしなかった誰かが、貴方の戦士を超えなきゃならない」

「だから?」

「だから、僕が戦います……」

「アルゴノゥト君!?」

 

 共通語(コイネー)を理解出来ないアマゾネス達はカーリーに向かい合い続ける男に困惑し、言葉を理解する三人は三者三様の反応を見せる。

 

 ティオナは驚愕し、カーリーは笑い、バーチェは怒りに身を震わせる。

 

「駄目だよアルゴノゥト君! バーチェはLv.6で………それに、毒だって!」

「解ってます。一度、やられてるので」

「なら、どうして」

 

 どうして…………自分がやらなきゃいけないのに、自分がやるのに、そう問い掛けるティオナに、ベルは微笑む。

 

「だって、貴方が苦しんでるから………貴方を、笑顔にしないとって、思ったから」

「!?」

「貴方を助けたい。貴方の笑顔が見たい。さっきみたいな、強がった笑顔じゃなくて、本当の」

 

 ボッとティオナの顔が真っ赤に染まる。己の知らない感情が、毒とは別の理由で心臓に早鐘を撃たせる。顔が熱い? 胸の奥から体が燃えそうだ!

 

「そして同じ理由で、貴方も救いたい」

「────は?」

 

 そして急速に冷え込んだ。

 

 バーチェを真っ直ぐ見据え、ベルは彼女も救うと言った。

 

「いろんな強い人に会った。色んな目を見てきた………自信だったり、不満だったり、願いだったり…………皆、色んな思いを宿してた。でも、貴方の目には恐怖しかないから」

「………………!」

「貴方は初めて会った時から、何かに怯えていた。今だって、ここにない何かに怯えている。それが『儀式』に関係あるというのなら、僕は儀式を壊して、貴方に安心してほしい!」

 

 ティオナはアタシは、というようにベルの後ろで己を指す。

 

「ティオナさんも、貴方も、僕は救いに来た!」

「……………くっ、くく……くはははははは!! ははは、きひひひひゃひゃひゃ!!」

 

 腹を抱え大爆笑するカーリー。アマゾネス達が更に戸惑う。

 

「ひひ、ひーひー………笑わせてくれるのぉ。救う? バーチェを救うと来たか! きひひひひひ!」

 

 そしてすん、と急に落ち着く。

 

「その為に示すと? 妾のやり方で、『最強の戦士』は生まれないと」

「はい」

「妾の戦士と戦い、自分が上であると示すと?」

「はい!」

「そこまで言うなら、やってみせるがいい!!」

 

 女神の許可は下りた。なら、後は戦うだけ。

 

「アルゴノゥト君! アタシも戦うよ! アタシが戦わなきゃ…………」

「ティオナさん」

 

 ベルはもう一度ティオナに振り返る。

 

「大丈夫です」

「────ぁ」

 

 ペタン、とその場で膝を折るティオナ。急に体の力が抜けて……? どうして………。

 

「安心してください」

 

 ああ、そうか。気が抜けたのだ。

 ギリギリだったのに、安心して、緊張の糸が切れた。自分よりも弱いはずの男の子に、どうしてか安堵してしまった。

 

 なんか、変な気分だ。英雄譚では良く見た立場で、自分がそこにいるなんて。

 

 守られるだなんて、助けられるだなんて、思ってもなかった。

 

「…………アルゴノゥト君…………頑張ってね」

「はい!」

 

 


 

ベル(全快)Lv.3対バーチェ(ティオナによるダメージ+両腕の火傷)Lv.6

 

レディ、ファイト!

 

因みにリリウスは一つ助言をしている。『倒したいわけじゃないなら、戦いと思うな。格上に師事してもらえると思え』と………。

 

 

見てるか、士道。ベルが、女を救うぞ。

エイプリルフール、皆が見たい嘘は?

  • バーサーカーリリウス(/Zero)
  • 英雄派リリウス(ハイスクールD×D)
  • 冒険者リリウス(このすば)
  • 死に戻らないリリウス(リゼロ)
  • 魔物リリウス(ガッシュ)相棒エピさん
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