ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
ふざけるな、と、バーチェは怒りを燃やす。
救いたいと、救いに来たと、そう宣う男に覚えるのは、怒りしかない。
ふざけるなふざけるなふざけるな!!
「お前、程度が!!」
「ぐう!!」
振るわれる拳を防ぐ。ミシリと骨が軋む。
「お前如きが! お前程度が!! 思い上がるな!!」
ガードすべく顔の前に持ってきた腕を掴まれ、岩壁に叩きつけられる。
「この程度で私の『儀式』の邪魔をするな!!」
「そんなに、怯えてるのに………『儀式』を続けるんですか……」
「……………!」
ギリッと忌々しげに歯噛みするバーチェ。
「怯えているだと? ああ、そうだ! 恐ろしい! 私は、アルガナが恐ろしい!!」
バーチェの中に宿る恐怖。それこそがアルガナ。
バーチェの姉にして【
「物心ついた時から、あれは私を殺そうとしていた!」
姉である事は、妹であることは、互いに教えられなくても解った。
バーチェは殺し合いばかりの闇の中に光を見つけたと思ったが、それは一瞬。
アルガナはバーチェを殺すと決めていた。特別な存在、自らの半身………それを殺し『最強』へと至らんとしていた。
「あれを姉と思った事はない。あれは捕食者だ、あれは化物だ! 私はあれに食われたくない! 死にたくない!!」
強さが必要だ。殺されないための強さが。
だからバーチェはティオナを育て続けた。戦士となった彼女を殺し、何れ最強へと至るために。
「何者にも脅かされない力が! 何も奪われない力が! あと少しで手に入る! 邪魔をするな!!」
「────」
チリンと鈴の音が響き、ベルの頭を砕くはずだった蹴りが弾かれる。
「──!?」
やはり、おかしい。あの時より硬い。
ステイタスの更新を控え、貯蓄していたか?
全体的な
だとしても、バーチェより弱い。両腕の大火傷、ティオナとの戦闘………大凡万全などとは言えない傷がなければとっくに決着はついている。その程度の相手。
「【ファイアボルト】!!」
「ぐっ!!」
三連撃。詠唱のない速攻魔法故に行える反則技。
一つ一つの威力は弱くとも重なり合えば相応のダメージとなる。
「Lv.7は………オラリオに3人います。
そして、まだ勉強不足のベルは知らないが、今のオラリオ以上の力を保有していた過去の英傑達を打ち破る怪物もいる。
「どれだけ強くなっても、貴方の恐怖は消えない!」
「それでも、恐怖は減る! 力さえあれば、もうアルガナに怯えなくて済む! 恐怖も味わったことがない軟弱な
「──!!」
「!?」
バーチェの拳に合わせるようにベルの頭突き。白い光を纏う額が拳を弾く。
皮膚が裂け、血がどろりと流れた。
(………極一時的な強化……!)
発動すれば一定時間強化を行うスキルと違い
低ければ常識の範疇だが、高ければレベル差の1つ2つは覆す。あの時の魔法なら、それこそ
(………低ければ?)
違和感。
一瞬しか発動しない強化スキルも、まああるだろう。発動毎に体力にしろ精神力にしろ消費する等条件があるならおかしくはない。
だが、威力の変動?
感情に出力が変動するスキルはあるが……………
(時間に応じた、行動結果の強化!)
攻撃、防御、移動、魔法………そのどれにも使えるというのは破格のスキルだが、条件が分かればそこまで怖いスキルではない。
「【
時間を掛けさせずに潰す。
「【ヴェルグス】!!」
猛毒の
ベルのファイアボルトに焼き飛ばされた猛毒の鎧が再びバーチェの体を覆う。
「ぐ、うぅ!!」
顔を狙い槍のように迫る手刀を横に弾きながら体を反対に倒すように飛ぶ。
接触を一瞬にするように避けたというのに腕の皮膚がただれる。
「────チッ」
が、バーチェも焼け爛れた腕を叩かれ激痛に顔を歪める。
(………あやつ、毒への耐性が上がっている?)
カーリーはその戦いを見ながらベルを観察する。
バーチェにやられた時はもっと毒の効果が出ていた筈。
その理由はベルのスキルとリリウスの発展アビリティ。ステイタスの成長を早める【
この2つを使いベルはギリギリまで耐異常を上げた。
それでも、ジワジワと蝕まれるし、滅茶苦茶痛い。
「【ファイアボルト】!!」
距離を取るように魔法を連発する。『耐久』に物を言わせ突破しようとしたが、紛れた白い炎雷がバーチェを吹き飛ばす。
魔法を持つ者はそれだけで数多の派閥に引く手数多。その理由は、格上にも通じる射程の破壊力。
それだけの力を持ちながら、ベルの目は………。
「………その目」
「……………?」
「本気で私を、殺さないつもりか………!」
「はい」
チリン、リンと鈴の音を奏でるベル。あの
「なめるな!!」
向かってくるバーチェが警戒するは強化された魔法のみ。
炎雷を回避し………
「………!?」
「う、ぎっ………!」
ベルの蹴りがバーチェの側頭部を打つ。毒に足を侵されながらも、勢いを止めない。
「……………!」
Lv.3の一撃。Lv.6のバーチェに対して効果はなく、それでも不意をつかれた体を吹き飛ばすには十分。
「今の動き…………!」
「………………」
(………これが対人格闘………)
見て覚えろ、とは良く言われるもので。
リリウスという規格外の
スキルの影響もあり鍛錬中に限り『器用』の補正が在るベルは、余程の絶技でない限り鍛えられた『目』の恩恵で再現できる。
バーチェは確かに強い。その対人格闘は極まっている。だが、絶技ではない。先の見えぬ霊峰ではなく、遥か遠くに背中が見える道の先。
補正がなければ再現はできない。これを殺し合いと心が認識してしまえば、途端にベルの対人格闘技術は失われる。
(
ベルは戦いに来たのではない。殺し合いに来たのではない。彼女達を助けに来たのだから。
これは、それをなすために強くならなくてはならない自分に与えられた、師からの鍛錬メニュー。
「何処までも………! お前は、テルスキュラの歴史すら否定するか! 殺し合わない!? 最強の戦士は生まれない!? なら、私がこれまで殺してきた命はどうなる! エルネアを、友を、同胞を殺してきたその全てが無駄だと言うのか!?」
「無駄に決まってる!!」
白い光を纏う拳と黒紫の光膜を纏う拳がぶつかり合う。
バーチェの拳が砕けた。ベルの指が拉げる。
「オラリオの人達は、怪物と戦って貴方達と同じぐらい強くなった…貴方達より強い人だっている。貴方達の歴史は、最初から意味なんてない!」
「……………!!」
カーリーは目を細め、しかし怒ることはしない。反対にバーチェは目を見開き怒りを顕にする。
「それに、貴方の行動だって………」
「なんだと………!」
「だって『最強の戦士』になったって、恐怖が消えるわけないんだから」
ベルは知っている。
間違いなく『最強の戦士』と呼ばれるに相応しい男が、それでも現状に満足していないことを。
「強さを知るからこそ、それ以上の強さを想像してしまう。それより強い存在に、ずっと怯えてしまう」
「なら…………ならどうすればいい!? 今より強くなっても、まだ強い奴が居るのなら! また、恐怖に怯えろと!?」
バーチェの激昂に、ベルは言葉を詰まらせたりしない。だってその答えはベルの中にはずっと前からあって、師だってそのように行動しているのだがら。
「力を合わせればいい」
「───────!」
「1人じゃ勝てない相手にも、2人なら勝てるかもしれない。3人ならさらに強い相手にも………皆なら、きっとどんな相手にだって」
きっと勝てると、そう信じてる。祖父の大好きな英雄譚に出てくる言葉の1つ。
「だから、この手を取ってください。そしたら僕は、絶対に貴女を守るから」
「………………!」
「惑わされるでないバーチェ。その程度の輩が、何を救えると、何を成せるいうのか」
「Lv.6を倒せます」
「やってみろ!!」
バーチェの拳が飛ぶ。眼窩底が砕ける。
バーチェの抜き手が放たれる。脇腹を抉られる。
バーチェの蹴りが肋を砕きながら吹き飛ばす。
鈴の音は止まらない。
どれだけ痛めつけようと、どれだけ毒で犯そうと、どれだけ死を近づけようと、鈴の音…………否、
(強さを証明しろベル・クラネル!!)
スキル【
思い浮かべるは『
「………!」
ベルの頭部を砕かんばかりに迫るバーチェの拳。鮮血が舞う。
「アルゴノゥト君!」
「んぐぅ!」
ギリギリで首を回し受け流しながら、手首に噛みつくベル。頬の肉が一部千切れた。
リリウスでもあるまいし、そのまま腕を食いちぎるなんて出来る訳もなく、精々が僅かな拘束。それで十分!!
「………!!」
バーチェが腕を引く。歯が抜ける。激痛に脳髄が熱を持つが、毒の痛みに比べればマシ!!
「ああああああああああああああ!!」
叩き込まれる拳は、白い光を放っていた。
Lv.6の『耐久』すら貫く一撃がバーチェへ叩きつけられた。
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