ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
【
チャージ次第ではLv.2がLv.5階層主級、それも防御能力に秀でた硬皮に覆われるゴライアスを消し飛ばせる威力を発揮できる。
まさしく破格の『英雄の一撃』。だが………
(………流された!)
当たりはした。相応のダメージを与えた。それでも、バーチェは耐えた。
スキルの代償に大きく体力を削ったベル。まだ動けるバーチェ。決着はついた。
「惜しかったのぉ、小僧………だがよい闘争ではあった」
「…………っ!」
「むぅ………迷うな。バーチェの糧とするか、連れ帰って種にするか」
「………?」
言葉の意味が理解出来ないベルは首を傾げ、そういえばヘスティアの眷族だったかと思い出す。
「ティオナ、バーチェ、もう一度戦い勝った方がその小僧と……」
と、不意に全ての眷族が振り返る。
見つめる先はベルが開けた大穴の方角。つまりロログ湖。
「…………ああ、ここまれれふね」
「なんだと?」
と、ベルの呟きにカーリーが訝しむ。
「………勝ひたかったなぁ」
次の瞬間、轟音と共に海蝕洞が崩れる。カーリーの側にいた眷族が即座に彼女を抱えて崩壊の範囲から逃れる。
「妾の船ー!?」
海蝕洞を破壊したのは【カーリー・ファミリア】を乗せてきたガレオン船。
何やら黒い鎖が巻き付いている。
その鎖をたどるように一つの影が大破したガレオン船の上に落ちてくる。
「
「…………アミッド」
リリウスが抱えていたアミッドの名を呼ぶと、広がる
「【ディア・フラーテル】」
神々しい光が周囲を照らし、ティオナとベルの毒も傷も、バーチェの火傷も纏めて癒やす。
「よおベル。勝てたか?」
「……………負けました」
「そうか」
と、リリウスはガレオン船の残骸から這い出してきたアルガナに目を向ける。彼女の傷も癒えていた。
ついでに
「いったい何が…………!」
「貴様か!?」
ティオネも這い出してきた。
アルガナは船の上に乗るリリウスを睨みつけた。
「てめぇ! 何のつもりだ!?」
叫ぶティオネにリリウスは視線を向け、直ぐに逸らす。見るのは街の方だ。
「時間切れだ。あの勇者が他の連中を連れてきた」
なんか光る蛙をベートがぶっ飛ばしてたけど、あれって
「ふざけんじゃねえ! これは、私がやらねえと! そうしないと【ファミリア】が!」
「この程度に後れを取るかよ。まあ、お前はどうでもいいけどリリの友達も居るし、アイズにエルフィ、リヴェリアもいるからなぁ。後、あの爺の弟子も探さねえと」
リリウスが思い返すのは『大決戦』のおり、酒と飯を奢ると約束しながら死んでたらしいクソジジイ。弟子がいるっぽいから、何時かそいつに飯を奢らせる予定だ。
「だから、お前………俺達の言葉が解るだろ?」
と、アルガナを指さす。
「もうオラリオにちょっかいかけんな。約束を破れば、次はお前達の国を滅ぼす。他の連中にもそう伝えろ」
「男っ、
屈辱に身を震わせながらアルガナは構える。
他のアマゾネスも『儀式』の邪魔をした不心得者に敵意を向ける。
矮小な男など即刻屠って、ティオネとの『儀式』を再開する。そしてバーチェとティオナを殺し、『最強の戦士』へと………!!
「【傲慢なる悪意の王。血の河を啜れ、肉を貪れ】」
コキリ、と迫りくるアマゾネスに対して面倒そうに首を鳴らしたリリウスは詩を紡ぐ。
魔法を使うまでもない相手。使う理由は、闘争を求める彼女達には、獣ぐらいがちょうどいいとでも判断したのだろう。
「【ラーヴァナ】」
瞳が赤く染まり、向かっていた拳を牙が捕らえる。
皮膚を貫き、肉を引き裂き、骨を捕らえ、首の筋肉にて引き寄せたアルガナを殴り飛ばす。
「僕と同じことしてるのに、僕と全然違うや…………」
海に触れることなく水面を引き裂きながら突き進んだアルガナはやがて巨大な水飛沫を上げる。
リリウスは咥えていた腕の手首の部分を噛み千切る。雨のように降り注ぐ海水に濡れながら、固まるアマゾネスを吹き飛ばす。腕が落ちるより速かった。
蹂躙という言葉すら生温い圧倒的な力の差。
リリウスは崩れた海蝕洞の上に移動する。
「────オオオオアアアアアアアアア!!」
メレン中に響く咆哮。意識を奪う
ギョロリと街へ向く紅眼。 足元が爆砕し、リリウスの姿が消えた。
「バーチェ、バーチェ! 早く上へ連れていけ! 見逃してしまう!」
カーリーだけはテンションが上がっていた。
さて翌日。
アミッドのおかげもあり、メレンは血に染まったが怪我人は一人もいない。まさしく有言実行。
ただ、避難した住民は兎も角突然目の前でアマゾネスの四肢が千切れたり壁に真っ赤に張り付いたりする光景を見せられた【ロキ・ファミリア】の何名かは翌日になっても顔が青く部屋から出てこなかった。
件の元凶リリウスは、特に気にすることなく神々と情報交換をしていた。
まず食人花を湖に放っていたのはニョルズ。それが今日まで人を襲わなかったのは、ギルドメレン支部の支部長ルバートが横流しした魔石を街長マーダックの家で文字通り粉々にして魚粉と混ぜ撒かせていたから。
魔石を貪ることに夢中になっている食人花は寄ってきたモンスターを襲うことはあれど人は襲わなかった、というわけだ。
「シハチとモハチがいりゃ問題なかったのになあ」
「ああ、彼奴等食人花よりも全然強かったなあ」
おまけにエコーロケーションによる魚群、モンスターの索敵も行える。今後はあの二匹に漁の手伝いをしてもらうことになるだろう。
因みにカーリーはとても落ち込んでいる。今回の騒動の原因を全部被らされたからだ。【イシュタル】と揉めたくもなく、ギルド職員、善神の代表格まで関わった今回の事件は真相を公にできない。
イシュタルが兵を出せたのも、そのあたりをよくわかっているからだろう。
他にも落ち込んでいる理由は結局リリウスの戦いを殆ど見れなかったし、殺戮もしてなかったからだ。
アミッドは自分がいる前提の死者を出さない蹂躙に、流石に怒って叱っていたが。
「うぐぐ〜、アルガナももう使い物にならんし〜」
「あん? 千切れた腕も治ったんやろ?」
「アルガナはアマゾネスじゃ」
「腕ちぎっても惚れるんだな」
と、リリウスは「チコクチコクー」と叫びながら此方へ向かってくるアルガナにフォークを投げつけた。
「アルガナがあれではバーチェに戦う理由もない。まあ幸い、バーチェは恋愛とかでおかしくならなかったが」
「…………………」
その言葉にリリウスは街の一角を見つめる。
「うおおお!? 逃げろベル君! 逃げるんだあああ!!」
「は、はいいい!?」
アマゾネスから逃げるベル。背中のヘスティアは必死に叫んでいると、アマゾネス達が蹴散らされた。
バーチェの仕業だ。
「バ、バーチェさん…………」
「…………情けないな。それでよく、私を救えると言えたものだ」
「うっ………」
その言葉に落ち込むベル。バーチェはだが、と続ける。
「………私も鍛えてやってもいい、ぞ? 私の動きは参考になるのだろう」
「え? あ、はい。そうですね」
「なになに、アルゴノゥト君徒手格闘習うの? じゃあアタシも教えてあげる〜!」
と、ティオナがベルの左腕に抱き着く。
「ティ、ティオナさん!? む、胸! 胸が当たって!!」
「え、胸?」
キョトンと首を傾げるティオナは、ボッと赤くなり、しかしにま〜と笑う。
「ね、一緒に鍛えよう! いいでしょ、アルゴノゥト君!」
「何でさっきより強く抱きつくんですかー!?」
「勝手に取らないで。ベルは私の(弟子)」
「ほあーーー!? アアアアアアアイズさん!?」
「コラー! ベル君から離れろー!?」
リリウスは視線を戻す。
「とりあえず自分、『儀式』をやめろや。ティオナとティオネが嫌がんねん。せめて望まない者だけ解放したれ」
「アホか。『死にたくないものは手を挙げよ、出てってよーし』なんて言ったら皆出て行くじゃろ。お主、馬鹿なの?」
「このガキぃ。ぶっ殺されたいんか、おぉ?」
「はいはい、解ったのじゃ解ったのじゃ。愛は世界を救うのじゃ。ラヴアンドピースラヴアンドピース。アフロディーテ様ばんざーい」
アフロディーテの名が出たのでリリウスは取り敢えず頷いておく。
「で、お前等がメレンに来た理由は?」
「教え〜ん」
「おいこら、いい加減にせえよ?」
「これだけは言わん。せめて観戦者の地位だけは死守させてもらう」
まあロキも、イシュタルが関わっている時点でなんとなく解っているが。
イシュタルが食人花………つまり
後手がかりになりそうなのはニョルズに食人花を提供したという謎の男。そいつに密輸を依頼されたそうだ。
ダンジョンの採取物、酒、宝石類、女神が使った後の大浴場のタオル等を他所の国や神に売り、極々稀に何かの生き物………恐らくモンスターの密輸を行ったらしい。
それもここ数年では鳴りを潜めたが。買い手がモンスターにでも食われたのかもしれない。
「おいクソチビ、イシュタルは他に何か言っとらんかったか?」
「さてのぉ。妾達は呼ばれただけじゃ…………まあ強いて言うなら、恐らくあの女神は妾達を切り捨てても問題ないと判断するだけの『隠し玉』があるぞ」
その言葉にロキが思い出すのはアイズとベートが戦ったというフリュネ・ジャミールというアマゾネス。
本来Lv.5であるはずの彼女を、Lv.6に変える『魔法』か『呪詛』を行使する存在がいたらしい。
まあ、リリウスからすれば問題ないのだが。というかそれ、リリウスに行えたら前人未到のLv.10が誕生するのでは?
まあリリウスは基本的に魔法を食うので、術者のレベル次第では一瞬で食われるだろうが。
「そういや、リヴァイアサンの頭蓋は何処に消えたんだろうな?」
オラリオ地下深く。
本来なら休眠状態である筈だが、『彼』が『必滅の矢』を放ったという話を聞いた時から育てているある存在は、精霊の欠片など即座に食い尽くしてしまった。
なので封印している。それでも時折何かに反応するように蠢き、それだけで岩盤が削られる。
本来なら掘削にまだ長い年月がかかる予定の地下は、その存在だけで予定以上に広く広がっていた。
『水の都』から引き込まれた水の中で、その竜は地上を睨む。
自分以外の『王』がいる。片方は遥かに強大。
片方は、そこまでではない。
強大な『王』を超えるには、さらなる魔石が必要だ。さらなる同族の死体が必要だ。
何れ強大な『王』を喰らい、唯一絶対なる存在へと至るために、『王』の血肉がいる。
故に必ず喰らうのだ。
嘘つき爺
酒と飯を奢る約束をしておきながら勝手に死んだ爺。何時か弟子に代わりとして奢らせる予定。
その正体はノワール(前世はマクールの相方ゴォール)。
弟子(ラザルの転生体)
何時かリリウスに有り金全てを食材に変えさせられる運命が決まっている可哀想なラウル。
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