ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
リリウスに殿を任せたリヴァイは巨人を利用し空を駆ける。
より人の多い場所を目指す巨人は、それでも近くの人間に反応する。当然リヴァイへと手を伸ばすがその指先が彼に触れることなく切り刻まれていく。
やがて街へ辿り着く。
「クソ、なんだコイツら! 胸を貫いても頭を砕いても死なない!」
「不死身なのか!?」
街に残っていた【ガネーシャ・ファミリア】の団員は巨人に攻撃するが弱点をつかぬ限り巨人は死なない。手を拱いている彼等の前でリヴァイは巨人の脊椎を削ぎ落とす。
「こ、殺した!?」
「奴等の弱点はうなじだ。サイズ関係なく縦1m幅10cm、大きな個体程比率が小さくなる。魔法、だったか? それで吹き飛ばせ」
慣れている調査兵団ではない彼等は、むしろ大規模に破壊させた方が効率的だろう。リリウスも魔法で巨人を焼き払っていた。
「…………雷か」
遠雷が聞こえる。リリウスの仕業だろう。
人の身で落雷のごとき破壊を齎す。羨ましい限りだが、代わりにこちらの世界にはそこまでましなければ対応出来ない巨人以上の怪物がいる訳だ。
「怪物退治とは勝手が違うだろうからな、巨人退治は俺達に任せろ」
「俺達?」
リヴァイの耳はこちらに接近する立体機動装置の音を捉えていた。
「兵長!」
「来たか。巨人の殲滅に移れ」
やってきた調査兵団に、リヴァイは簡潔に告げる。
「壁に張り付いている、射線からそれた個体だけでいい。連中の詠唱とやらの時間を稼げ」
「「「了解!!」」」
合流したばかりでありながら即座に命令に従う様は、冒険者には異様に映る。冒険者と言う『集まり』ではなく兵団という『組織』。
組織力という点だけなら【ロキ・ファミリア】にも勝るだろう。
「西の方にも人員回せ!」
「東も足りてねえんだよ!」
「………俺達も部隊を分ける。エレン、ミカサは西。残りは東だ」
「そ、それでもたりないんじゃ………」
コニーがおずおずと声を漏らすが、リヴァイはやってくる足音に視線を向ける。
「お前達! 良くぞ持ちこたえた! 俺達が来たぞおおおお!!」
「「「ガネーシャ様!」」」
立体機動装置より遅れてきた【ガネーシャ・ファミリア】だ。
「ふっ!」
先頭はアーディ。巨人の群からガネーシャを守りながらなので遅れたが、市壁の上にいた団員にガネーシャを投げ渡すとすごい勢いで巨人を狩っていく。
彼女達は巨人の対処法を学んでいる上級冒険者の本隊。いかに不死身の巨人の群でも弱点が知られた今大した脅威にはならない。
「バキゴリ………ゴクッ」
変異した巨人を喰らい尽くすリリウス。見た目に反して密度の薄い巨人だが、変異巨人はまあまあ食いごたえがあった。
しかし、よほどリリウスを行かせたくないのか巨人達はまだまだやってくる。
明らかな意思を感じるのに、勝つために戦っている感じではない。目的は時間稼ぎ?
「あ、シャクティ」
ひとまず街へ向かおうとしたらシャクティが鎧の巨人と戦っていた。変異巨人………ではない。あれは、明確な知性を持つ動き。
ただ硬いだけならともかく鎧の下の肉の柔軟に加えて動き回る巨体。罅を蓄積させていくが押し切れていない。
「…………」
「──!?」
鎧の巨人が何かを投げた瞬間と同時にリリウスが鎧の足を切り落とす。
「………樽?」
中に何かいる。
「ウオオオオオ!!」
と、すっ転びながらもリリウスへと拳を振るう鎧の巨人。なかなかどうして、戦士だ。だが相手が悪すぎる。
鋼鉄より硬い鎧で覆われた拳はあらゆる物を粉砕する筈だがリリウスの蹴りは拳のみならず腕の鎧もまとめて薄氷のように破壊する。
「!!??」
子供のような体躯でありながら巨人を圧倒するリリウスに明らかな動揺を見せる鎧の巨人。その隙を逃すはずもないリリウスがトドメを刺さなかったのは、背後から突如発生した衝撃波に振り返った為。
「………………巨人」
シャクティが思わず呟くそれは、階層主すら優に超える巨大な人形の巨人。皮膚がなく剥き出しの筋肉はよくよく見れば人のそれとは明らかに違う。
歯の数も多く、足の形が妙だ。腕も足に比べ細く人間の比率で考えるとやや長い。
「………………」
アレの倍以上の青銅巨人を知るリリウスは特に驚愕した様子もない。かと思えば、急に目を見開く。
「あれは、別の巨人?」
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「お前か、巨人の王は」
次の瞬間、地面が爆ぜる。超大型巨人の首ともう一体の巨人の首が飛ぶ。
「外したか。邪魔な木偶の坊が」
エレンは困惑していた。
自身の故郷の滅びの元凶たる超大型巨人がこの世界にも破壊をもたらそうとしていることに怒りを覚え巨人化したが、次の瞬間にはそろって首を飛ばされた。幸いなことにエレンの両足が切られる程度で済んだが。
(………あれ、こいつの狙い俺じゃね?)
巨人の目を通して映る小柄な少年の目に浮かぶ殺意。向けられているのは、間違いなく自分。
「エレン!」
ミカサが慌てるが、もはや誰にも止めることは不可能。
「リリウスー!! これを見ろおおおお!!!」
「!」
ガネーシャの叫びに少年は視線を向ける。つられてみたエレンが見たのは、筋肉を見せつけるようなポーズのガネーシャ。
「?????」
少年も困惑している。落下しながら何かを考え込み、ああ、と納得すると剣をしまい代わりに鎖をエレンの巨人の頭部に巻きつけ市壁の上に下ろす。
「これは敵じゃないのか」
「うむ!」
「…………だが俺を狙った」
「それは先の話だ」
「…………? ……………そういう事もあるのか」
ガネーシャの言葉に首を傾げたリリウスだったが、狂三お姉ちゃんを思い出し納得するリリウス。
「超大型は殺せたのか?」
「ん? ああ、消えた」
「そうか………まあいい」
リリウスの言葉にリヴァイは特に悔しがらなかった。あれは自分達で倒すべきと思っているのだろう。
「何か気づいたことはあるか?」
「全部同じ味」
「…………食ったのか」
「根本的にあれは一つの存在だ。繋がってる……だから王を倒しても一時凌ぎ。王を手に入れて支配しろ」
「王? 超大型か?」
「あんなの、他の巨人と大して変わらん。王は………ん〜…………」
リリウスはチラリとガネーシャを見る。
「まあ、巨人を殺していけばいずれ見つかる」
「そうか…………」
と、その時リヴァイ達の体を光の粒子が包む。士道の時とは違うが、どうやらこの世界から帰るようだ。超大型の中身は慌てて返していたが、天界の神もひとまず満足したのだろうか。
「じゃあな最強。巨人の殲滅、まあ頑張れ」
「ああ、お前もせいぜい頑張れ、最強」
そうして、世界から異物が消える。
彼等は彼等の願いのため戦い続けるのだろう。何時か巨人が全滅する時まで。