ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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戦争遊戯決着

「【イカリア・ヘリオス】!!」

 

 告げられる魔法名。輝く煌炎。

 瓦礫が熱で赤く発光し溶け始める。

 

 熱い。途轍もない熱気に、かいた汗が頬を流れ、落ちる前に蒸発する。

 

 途轍もない熱量。神の恩恵がなければ全身大火傷を負うほどの灼熱の地獄。

 

「ここで切りますか………」

 

 【太陽の光寵童(ポエブス・アポロ)】の名の由来となった魔法……()()()()が、二つ名の象徴とも言える魔法とスキル。

 

 陽光の下ステイタスを上げるスキルと、陽光の下熱量の増す魔法の組み合わせ。

 

 リリウスのスキルによる飢え、アルフィアの常にステイタスの限界解除を約束する病、フィンの理性を代価にする狂猛、アイズの魂を壊すほどの黒風、レオンの相手がある程度の強者でなければ効果を発揮しない段階強化魔法など、強力なスキルや魔法には代償や制約がつきものである。

 

 ヒュアキントスの魔法は昔日と現代の英雄達に並ばんとするため目覚めた魔法。

 届かぬ太陽へ目指す羽が焼けるように、未だ足らぬ身で炎の英雄達に並ぼうとする代価は、融け落ちる蝋の翼の如く焼けていく体が証明している。

 

「肉が焼ける匂い…………」

 

 効果を一番発揮出来るのは太陽が真上に来る正午の数分。当然その熱はより強くその身を焼くが、蓄積ダメージさえなければ長く持つはず。

 

 だから使うのは正午近くと思っていた。魔法がなくともスキルでそれなりの強化をされるヒュアキントスが今、ここで魔法(切り札)を切る理由は…………。

 

「っ!!」

 

 炎を背から噴き出し、推進力を生み加速。狙いはベル。

 

「っ!!」

 

 Lv.3へと至った速度特化の前衛であるベルですら全く反応できない。咄嗟に構えていたナイフで受けられたのは偶然。

 

 高熱が皮膚を焼く。一瞬の接触で鎧が焼け付くような熱を持つ。

 

 

 

 

 

「なんか話してるな」

「…………『そこまで出来るほど神様を慕うならどうして』と『当然だろう、私は勝ち続けてきたのだから』だな……」

 

 デメテル印のポテトを使ったじゃが丸くんを食いながらリリウスが鏡に映る二人の唇を読む。

 

 自らを焼くほどの魔法を使ってまで神のために戦えるなら、どうして自分の気持ちがわからないのかと叫ぶベルに勝ち続け神の隣に立ち続けたから負けた側など知らんと言っているようだ。

 

 ここはオラリオ。冒険者の都。

 力こそが全て。なれば、なるほどヒュアキントスの言い分も尤もである。要は勝てばいいのだ。

 

 

 

 

 

「結果を見れば、まあ上々か」

「そうか? あれは実際負けだろう」

「まあ、確かに。妙なアイテムに救われたな」

「ダメージの肩代わりと言ったところか。一度は完全に負けていた」

「俺が言っても説得力は薄いが、第一級とされるLv.5に第2級のLv.3が瞬殺されないだけでも十分だ。リューのサポートがあったとは言え、瞬間的火力ならLv.6含めてもトップクラスだったな」

 

 その分己自身も炎に焼かれるというデメリットも存在するが。一応は炎に対する耐性を得てはいるようだが、それでもあのダメージ。

 

「まあ、負けとは言ったが確かに俺もあの小僧を評価する。精霊の加護を纏ったとはいえ、あの炎の戦士を前に臆せず突っ込める者などそうはいないだろう」

 

 大精霊に届かぬ上位精霊の加護なれど、ヒュアキントスの炎は精霊の力を超えていた。拮抗は一瞬。それが分かったうえでベルは炎に突っ込んだ。

 

「そもそもあの男、日の位置が関わるくせになぜあのタイミングで魔法を使った。格上のリューがいるとは言え、逃げに徹して正午まで待てば勝てただろうに」

「そのような姿を神々に晒したくなかったのだろう」

「誇りか?」

「いや、愛だ」

「なぜそこで愛」

 

 神の眷属の失態を神はゲラゲラと笑うだろう。眷属本人も、その神も。だからこそ衆目集める戦争遊戯(ウォー・ゲーム)にて、勝ち確で仕掛けるという蛮行を犯しておいて逃げ惑うという姿を晒せなかった。

 

「まあ負けてりゃ世話ないが」

 

 神々が観戦していたバベルからは『ぷぎゃーwww』と言う謎の言語が聞こえてきたとか。

 

「まあその頑張りに、神ヘスティアも思うところはあったようだが」

 

 戦争遊戯(ウォー・ゲーム)の勝者である【ヘスティア・ファミリア】は【アポロン・ファミリア】へ如何なる要求も出来る。

 その一つは私財の没収。だが眷族達の治療費分は残したそうだ。

 

 後、ファミリアを解散させアポロンを追放しようとしていたが、ヒュアキントス辺りはギルドの戦力流出禁止令を無視しようとしてたのでギルドからも金を払うことで要求を緩和。

 

 アポロンが無理矢理眷族にした者達を脱退させ、アポロンを2ヶ月追放。その間アポロンに仕え続ける眷族は当然ダンジョンを利用出来ない。その間にもベルは強くなるだろう。

 

「とは言え、勝ちは勝ちだ。何か送ってやったらどうだ?」

「…………………」

 

 後日ヘスティア達の枕元に新鮮な鹿肉が置かれていた。新鮮すぎて枕元が赤く染まっていた。超怖い。

 

 

 

 

 さて、アポロン達の屋敷を私財として押収したベル達が引っ越しの準備を始める頃、リリウスはモグモグとじゃが丸くんを食べていた。

 

 デメテルの作ったSPECIALなPOTATOを使ったPREMIERなじゃが丸くん。横でアイズももっもっと食べている。

 

 現在、とある酒場の個室。密会などに使われる防音に優れたそこに集まる見目麗しい美女美少女達。

 

 金で雇われたクロエこと【黒猫(ブラット)】、じゃが丸くんに釣られたアイズこと【美姫(ビューティ)】、『天然ジゴロを落とす指南講座』の参加券にのった命とナァーザこと【女忍(くのいち)】と【蒼犬(シアン)007】。ちなみにナァーザは向こう3年分の野菜も報酬内容だ。

 

 そして最後に、リヴェリア。仲間に加えたいというデメテルこと【大佐(カーネル)】の言葉に何を馬鹿な、と返すが、それでも彼女は来た。アイズがいるからだ。目を離すと何をしでかすか分からない。

 

「はむ、はむっ…………リヴェリア、ごめんなさい………! はむぅ」

「じゃが丸くんを食べるな! あと食べながら話すなといつも言っているだろう!」

「……………………」

 

 無言になった。ここにリリウスというじゃが丸くんを奪い合う相手がいるので、食べることを優先するようだ。 

 

「【美姫(ビューティ)】を見張るためにも、貴女は彼女の近くで

もっと言うなら私に従うしかない。ねぇそうでしょう、母親(ママ)?」

「? 年齢的には曾祖母じゃねえの」

 

 リリウスは不思議そうに首を傾げた。一切の悪意はない。天然である。

 

「お母さんは……うん、結構年上、かな。リヴェリアも歳、離れてるけど」

 

 悪意のない天然その2。

 

「とにかく。何が何でも協力してもらうわ。私達の目的の最後のピース【女王(レギナ)】としてね」

 

 リヴェリアは仕方ない、とため息を吐く。

 それで結局、デメテルの目的は何なのだろうか。そしてなぜ黒いメガネをしているのだろう? リリウスもつけてるけど。

 

様式美(ノリ)よ、突っ込んではダメ」

「「イエスマーム、サーイエッサー。オーイェー」」

「お前達も既に洗脳されているんじゃない」

「それでデメテル様、どうして私達を集めたの? そろそろ教えてくれない」

「そうね、では話しましょう。『カジノ・パラディッソ』は知ってる?」

 

 最近歓楽街に開業したカジノだ。魔法大国(アルテナ)の魔道具を使った最新鋭の設備を謳い文句にしているそこに侵入したいらしい。

 

「そこに、フレイヤが来るのよ。お得意様限定のVIPルームにね」

 

 世界最強派閥とも言われる【フレイヤ・ファミリア】の主神にして、下界で最も美しいと言われるフレイヤの贔屓に預かれると知られればそれだけで『格』が上がるだろう。

 

 ちなみにその際、カジノが手に入れた『女神の涙』という宝石をあしらった指輪をつけるらしい。これも格上げの一環なのだろう。

 

「というわけでVIPにフレイヤが呼ばれて、警備には【フレイヤ・ファミリア】が就くの」

「この時点で嫌な予感」

「右に同じにゃ…」

「まさか、目的とは」

「そう! 私達の狙いはフレイヤよ!」

「「「「下りる!」」」」

 

 クロエとナァーザは【フレイヤ・ファミリア】に挑めるわけはなく、【ロキ・ファミリア】のリヴェリアとアイズは問題を起こせない。アイズも「ノーマム、サーノーサー。オーイェー」と申し訳なさそうに呟く。申し訳なさそうなのは既にじゃが丸くんを食ったからだろう。リリウス? ふーん、と呟いただけでじゃが丸くんを食い続けてるよ。

 

「待って、落ち着きなさい。誰もフレイヤ達にケンカを売るなんて言ってないわ」

「にゃ? 他に目的があるってことにゃ?」

 

 あっても【フレイヤ・ファミリア】がいる時点で色々やばいが。

 

「デメテル様は、何をなさるおつもりなのですか!?」

「ええ、私達の真の目的は……フレイヤを誘拐することよ!!」

「「「「下りる!!」」」」

「ん、分かった」

 

 最後のじゃが丸くんを飲み込んだリリウスは立ち上がると個室から出ていこうとするのでデメテルは背後から持ち上げて膝の上に座らせた。

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