ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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カジノ・パラディッソ

 作戦決行当日。『カジノ・パラディッソ』。

 

 歩くたびに一部が揺れる女にロイマンが鼻の下を伸ばしていた。

 

「これはこれはボインヌ様。お久しぶりです」

「あら、ギルド長様。我が国の舞踏会以来でしょうか。今日は遊ばせてもらいに伺いましたわ」

「はっはっはっ、まさかこのような場所でお会いするとは。どうぞご存分に…………しかし、相変わらずご立派なオッパ………」

 

 ロイマンは慌てて口を閉ざす。

 

「なにか?」

「ははは。いえ! 女神のような体型とステキなお召し物だと! それで今日はVIPルームですかな?」

「ええ、私のような上流階級しか知らぬ者には一番落ち着ける場所だと聞いているので………きゃっ!」

 

 と、その時通りかかった女とボインヌがぶつかる。

 

「失礼」

 

 女は頭を下げ離れる。

 

「大丈夫ですかな。いやはや、人が多いですからな」

「ええ…………これですから庶民は」

 

 ボソリと毒を吐くボインヌ。器は胸の大きさに依存しないようだ。

 

 

 

『ターゲットに香水をつけました。【シアン3(スリー)】、【ホワイト6(シックス)】、どうですか?』

「場所は分かりますよ」

『ポーカー、十六番テーブルの前……』

完璧(グレイト)。流石です』

 

 リリウスはカジノ併設の食堂でバイキングの大皿を取りサンドイッチを食べながら香水の匂いを追う。従業員として潜入したナァーザと違い、場所は分かるが場所の名称までは知らない。

 

「君、たくさん食べるねぇ。オレについてきてくれたら毎日美味しい物、食べさせてあげちゃうZE」

 

 神が絡んできた。無視するリリウス。その態度に何故か満足そうに頷く神。

 うまそうな匂いを追うリリウスだったが、段になってるテーブルの上の方にある。

 

「そこの神様」

 

 と、リリウスは先程とは別の神を手招きする。

 

「リウの踏み台になってください」

「はい喜んで!」

「んしょ」

 

 その場で四つん這いになった神の背中を踏みヒョコリとテーブルの上を見る。香辛料を混ぜ込んだ衣に包まれた鶏の揚げ物。

 

「おっと」

「………………」

 

 手を伸ばしたが、ひょいと女神に取られる。

 

「可愛い子ちゃん、これが欲しければゲームしましょう? 貴方が負けたら、私の眷属になりなさい」

「………………………」

 

 チッと女神の顎に何かがこすれるような感覚。女神が疑問に思う間もなく白目を剥いて倒れたので皿だけ手に取りその場から離れる。

 

 リリウスはあくまで切り札(ジョーカー)。必要となれば切るカード。基本的にはフリーだ。

 

『こちら【ビューティー1(ワン)】。作戦を開始する』

『【レギナ2(ツー)】、所定の位置について………やれやれ』

『パーティー会場はここ? 【ブラット5(ファイブ)】、踊ってくるわ』

 

 アイズは真面目故に真剣、リヴェリアは渋々、クロエは楽しんでいるのが声からわかる。

 

「いよいよね」

 

 リリウスの肉の皿に野菜を載せながらデメテルが微笑む。

 

「私達がやろうとしているのは、迷宮都市(オラリオ)でリリウスちゃんぐらいしか成し得ないであろう不可能任務(ミッション・インポッシブル)

 

 そのリリウスがいるのだから、まあ最終的にどう転ぼうが成功は約束されている。だが敢えての搦手。

 その方が面白いからだ。神の娯楽である。誰の為の?

 

 それは恐らく。

 

「行くわよ。世界をひっくり返しに」

 

 神血(イコル)恩恵(ファルナ)の繋がりもない集団、【ダンジョンズ7(セブンス)】が。

 

 俺はデメテルからあまり離れなければいいだけだけど、とリリウスはケバブを串ごと貰った。

 

 

 

 さて、所変わりVIPルーム。招かれたVIP客達は人も神も変わらずフレイヤに見惚れる。何時もの光景、何時もの日常。

 

 フレイヤは退屈でつまらなそうだ。そんな姿にさえ見惚れるばかりで、気付くのは護衛のオッタルぐらい。誰もが『フレイヤの美』の虜となる。

 

「自明かと。フレイヤ様の『気紛れ』を紛らわす人も物も、そうはありません」

「ふふ、言うわね。オッタル。けれど、本当にどうしようかしら。こんな水着(もの)を着てみたけど、衆目の前で一泳ぎなんてごめんだし」

 

 と、その時だった。

 

「おい、聞いたか、下の階…」

「ああ、なんかすごい事になってるらしいな。どうする、俺達も行ってみるか?」

「馬鹿野郎! 【フレイヤ・ファミリア】もいるのに持ち場を離れるわけには………」

「………?」

 

 何やら従業員達が騒がしい。とは言え慌てているわけではなさそうだ。

 

「何があった?」

「ああ、いえ。下の階が少々騒がしいようでして………」

「下の階が?」

「た、大したことではありません。何でも新しい踊り子(ショーガール)が、初御目見得(デビュー)し、小柄な見た目からは信じられないほど食べる猫人(キャットピープル)の幼女がいるらしく」

踊り子(ショーガール)? 猫人(キャットピープル)?」

 

 

 

 その頃下の階。

 

「うおおおおおおっっ!! なんだ、あの踊り子はぁ〜〜!?」

「サングラスで顔がはっきり見えない。だが、それが良い!」

「なに? この程度の盛り上がり? もっと客集めてこなきゃ、もう踊らないよ」

「「集めてきまーす!」」

 

 なんと正体はアイズだ。とても棒読みだが気にする者はいなかった。

 

「あの娘、すげえ食うなあ」

「途中から『後何皿食えるか』から『次はどの皿を取るか』に賭け内容変わったなあ」

「フフ、お嬢ちゃん。これは酒が合うよ」

「あの(やろう)! 酔わせて何をする気だ!?」

「クソ、先を越された!」

「ゴータッチの異端者だ! 殺せ!!」

 

 神々がうるさい。

 とは言え、場の視線はそちらに集まる。そして【フレイヤ・ファミリア】は話題の女など興味も持たない。

 

 

 

「アイズめ、目立ち過ぎではないか?」

「ごちゃごちゃ言ってニャーでおミャーもさっさと行くにゃ。なるべく警備の目を薄くするんにゃ」

 

 リヴェリアは仕方ない、と会場へ向かう。ロキの用意した水着より遥かに露出が少ない億倍マシな水着とは言え、やはり人前には出たくなかったようだ。

 

 

 

 

「い、イカサマだ!!」

 

 とリヴェリアに負けた客が騒げば他のエルフ達が怒りを露わに騒ぎ出す。当然警備員の目はそちらに向かい、【フレイヤ・ファミリア】の視線も逸れる。

 

「それじゃあ、行きましょうか」

 

 ボインヌにはずっとスケベ豚(ロイマン)が侍っていたが、命が気があるふりをすれば自分をそっちのけて小娘と話すロイマンに、自分と話していた男に他の女が優先されたという事実に不愉快になったボインヌが離れ、ナァーザが薬で寝かせた。ちゃんと安全な薬である。

 

 アイズもデメテルと合流するべくその場を離れることにした。

 

「あー、なんかここの客、ノリが悪いわねー。カジノの質も悪けりゃ客の質も大概。おりさせてもらうわ」

「そんな〜! 頼むよ、もっと踊ってくれ!」

「私達を虜にする貴方の舞を、もっとみた〜い!」

「ブヒブヒ鳴いてんじゃないわよ豚ども。蹴るわよ!」

「「「蹴ってください!!」」」

 

 人が減るどころか増えた。逆効果であった。アイズはそそくさ退散する。

 

「「「待ってー! その御御足で蹴ってくださーーい!!」」」

 

 

 

 なんとか引き離したアイズはデメテルと合流。ボインヌの服はデメテルとぴったりだった。

 

「あれ、リリウスさん………【白猫(ホワイト)】は」

「『後で』って言って、どこかに行っちゃったわ………」

 

 

 

 『カジノ・パラディッソ』屋上。

 リリウスはチキンを骨ごと食いながらある男と対峙していた。

 

「妙な騒ぎがあると思えば、一体全体どういうつもりだ。後その服はなんだ」

「女神の娯楽ですよ………どちらも」

「その喋り方はなんだ」

「リウなりに可愛い女の子を参考にしてます……………まあ、確かにここに人はいないか」

 

 【白妖の魔杖(ヒルドスレイヴ)】ヘディン・セルランド。この度Lv.7となった()()最強の魔道士。

 

「貴様も神の娯楽に振り回されるか………」

「勝手に仲間意識持つな。振り回されてるんじゃない、付き合ってやっているんだ」

 

 リリウスがその気になれば簡単に終わることを、デメテルがやりたいやり方でやらせている。

 

「神デメテルならば、まあそこまで厄介事とは思わんが、何をするつもりだ?」

「フレイヤの誘拐」

「……………なんだと?」

 

 

 

 

 

 

「すげぇ! すげぇぜ【未完の少年(リトル・ルーキー)】! また勝ちやがった!」

 

 ベルはモルドに連れられ新装オープンしたカジノに来ていた。

 実は彼等はゴールドカードを持っていて、どのカジノでも入れるのだ。要するにカジノ側から金を落とすとみられている。

 

 ダンジョンに潜る為に入り用となる金をそんな事に使うから低迷するくせに、他人の成功に嫉妬するような連中だったが今はベルと仲良くしている。

 

「この金がありゃ引っ越し後のいろいろ買えるだろ」

 

 だから続けろというモルドにベルはう〜ん、と唸る。と、その時。外から轟音が聞こえた………

 

「なんだぁ!? 落雷か、近いぞ!」

「きょ、今日は晴れてたはず!」

 

 ざわざわと騒がしくなるカジノ。しかし音はそれっきり。何だったのだろう?

 

「…………あ、ベル」

「え? アイズさん?」

「うん………あ、違った。今の私、ボインヌ様の護衛のカトリーヌ」

 

 ベルは不思議そうに首を傾げた。

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