ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
四方世界。
4つの方向に広がる世界は、その全てが神々の被造物。モンスターはもちろん、人々に恩寵を与える地母神から悪しき者共に呼び出される時を今か今かと待ち侘びる邪神もそう。
時折盤の外からかき乱しにやってくる外なる神もいるが、神々はそんな飛び入り参加も大喜び。
彼等は別に邪悪というわけではない。人々が怪物に打ち勝てば喜ぶし、感情移入が激しいタイプの《幻想》なんかはお気に入りが死んだ日にはショックで寝込む。
《真実》はそりゃあ『パーティーを全滅させるつもり』で準備したりするし、《豊穣》は果敢に立ち向かう“秩序”を返り討ちにするのが楽しくって触手をのたうち回らせるし、《太陽》なんて暑苦しいことこの上ないが、みんながみんな『様々な者たち』を愛しているし、支配しているわけではない。
冒険を用意すれば冒険者は必ず向かい、怪物達は必ず立ちはだかる。それをみんなで眺めて、サイコロを振って楽しむのだ。大好きな『様々な者たち』の生き様を。
さて、そんな彼等は今日は珍しい相手と遊ぶ事にした。
《幻想》の女神は美しさそのものの女神と。
《真実》の男神は偉大なる古き時代から生きる天空の老神と。
さてさて、今より始まる冒険譚は、果たしてどのような物語へと変わるのか。
「……………」
ダンジョン深層にてリリウスはピクリと顔を上げる。空気が変わった。いよいよらしい。
「でもよぉ、リウっち、なんで俺っちなんだ?」
と、尋ねるのは
後ろには全身鎧で種族を隠した
3人組で『入り口』を探すことになったのだが、アステリオスを平均にリリウスが頭2つに抜けてリドが頭2つ劣る。結果的にトータル値がアステリオスだがチームの戦力差がすごい。
「他の使える奴等、俺と殺し合いしようとするから」
厳密にはマナサー辺りは大人しいが、しっかり者だからこそ留守を任せたいというか。
「フィルヴィスは潜入先が忙しいらしくてな」
近々【ロキ・ファミリア】を招くらしく、フィルヴィスは死者が出ないよう色々調整に回るらしい。スパイも大変だ。
片割れは地上の友についているらしい。
「唯一ヴリトラは『契約』でおとなしくしてるが、彼奴はでかいからな。そいつ等抜けば、一番はお前だリド」
「ああ、そうかい………」
一応はリーダー。実力的に上の者も数人いるが、まとめ上げれるのは彼ぐらいだろう。
「へへ、なら頑張るぜ」
トカゲの表情ゆえにわかりにくいが、照れくさそうに笑うリド。リリウスは頷くと歩き出す。
「この先だ」
リリウスが見つけた通路。『隠れ里』からも近いそこは、散々調べ尽くされた故にあるはずが無いと断言出来る道があった。
3人は奥へと踏み込み……………眩い光りに包まれた。
「………………飛ばされたか」
アステリオスとリドの姿がない。
『仲間と逸れてしまった』と言うやつだろう。まあ、あの2人なら大丈夫だろうとリリウスは改めて周りを観察する。
洞窟…………いや、地下遺跡、だろうか?
四角く削られた通路。オラリオのダンジョンともまた異なる。
冒険者の視力でも薄暗く映るであろう光源なき通路。元々視覚能力に優れた
「GRRRRRR!!」
背後からニタニタと気色の悪い笑みを浮かべ近付いてきたなんか小さいのの首を掴む。
「…………ゴブリンか?」
緑の皮膚。醜悪な相貌。小柄な人型の体躯。それはゴブリンのようだが、ダンジョンのゴブリンより『気持ちが悪い』。
造形がより醜悪……………いや、目だな。悪意に満ちている。
ゴキリと首の骨をへし折る。
「…………装飾品。多少の知性はあるのか………」
布を巻き、糸に通した骨を首に掲げ、後は妙な入れ墨………いや、化粧か?
怪物と言うよりは、悪意と相まり蛮族に近い。これが四方世界の怪物とやらなのだろう。
「この程度ならまあ問題はねえが…………」
ズン、と地面が揺れる。振り返ると角と翼を持つ何かが居た。オラリオのダンジョンでは見かけない類いだ。物語に出てくる悪魔とはこのような形をしていたような気がする。
「GYRARARAAAAA!!」
「ダンジョン産の味とはやっぱり違えか」
ボリボリと骨を噛み砕くリリウス。
オラリオのモンスターとはまた異なる味だ。
「でも似てる味………厄介事、ね」
ゴクリと最後の一口を飲み込み歩き出すリリウス。上に向かうか下に向かうか。
オラリオの迷宮なら下なのだが…………。
「……………」
スン、と鼻を鳴らすリリウスは歩みを止める。不愉快な匂い。怒りは魔力となって溢れ、地面が罅割れる。
進む方向を変え、たどり着いた
「GUGYAGYA!!」
「GYABBBBB!!」
女に群がる子鬼共。一匹がリリウスに気付き振り返る。次の瞬間、子鬼の首が落ちた。
「GHII!?」
咄嗟に女を盾にしようとしたゴブリンの頭が潰され、杖を持とうとしたゴブリンが細切れになり、笛を吹こうとしたゴブリンの喉笛が抉り取られる。
「なるほど、こういう生き物か」
殺しながら観察すれば、なんとも醜悪な生き物だ。
コイツラにリーダーは居ない。厳密には命令する立場は居るが、どうも全ての個体が『聞いて
「んで、女で増える…………」
腹の膨らんだ女は虚ろな目でリリウスを見た。厳密には見ていない。既に事切れていた。ガラスのような瞳にリリウスの姿が反射しているだけ。
体温を失うまで生きていると勘違いしたのか、或いはただの道具だったのか。孕ませておいて産めなくてもそれはそれで良いらしい。
「………一先ず方針は決まった」
一時的とは言え、愛を司る女神の眷族であったリリウスを前にあの暴挙。アルテミスのみならずアフロディーテも顔を歪めることだろう。なら、やることは一つ。
「ゴブリンは皆殺しだ」
と、その時。リリウスは勢い良く振り返る。
闇の奥から聞き覚えのある声が聞こえてきたからだ。
「………リリ?」
リリの声。だが、何故? 巻き込まれた?
いや、ここにいる理由なんて後で良い。
リリウスは地面が砕けるほどの踏み込みで音を置き去りに駆け出した。
女は壁際に追い詰められていた。
カタカタと震える女を見てゴブリン共はニタニタ笑いヨダレを垂らす。
嗜虐欲が満たされ、粗末なそれが熱り立つ。
顔を隠した
が、一先ずは女を味わう。涙目になる女にベロリと舌を出したゴブリンは、次の瞬間壁のシミになった。
「…………へ?」
「リリ! ………………ん?」
「……………リリ?」
やってきたのは白髪の少年。耳の形は
「…………?」
女を不思議そうに見つめジロジロと眺める。と………
「う、後ろ!」
シャーマンが炎の矢を少年に向かい放ち…………少年は炎の矢を食った。
「GUGYA!?」
「え!?」
「GOBUBUBU!!」
と、今度は大柄な個体が棍棒を振るう。少年は片手で受け止めるとヒョイと腕を振るいホブ・ゴブリンが吹き飛び数匹巻き添えになり潰れる。
「…………リリじゃない?」
「えっと…………はい」
「だが声は…………???」
ゴブリンなど見えていないかのように女を観察する少年は、やがて騒ぐゴブリン共を鬱陶しく感じたのか女に耳を塞ぐように指示し大きく息を吸う。
「わっ!!」
「「「────!!」」」
ビシィと壁や天井に亀裂が走りゴブリン共は見えない圧力に潰され赤いシミに変わる。離れた場所にいたシャーマンはかろうじて生きていたが、耳から血を流して立つことも出来ない。
それでも逃げようと這いずる足を捕まれ持ち上げられる。
バキリ。骨を噛み砕く音が聞こえた。
早速出会ったか、と《真実》は笑います。出会うはずの無い二つの世界の人間達は、果たしてどんな
「…………冒険者ではないな。何故ここにいる」
尋ねるウラノスさんに、《真実》もちょっとバツが悪そうに目を逸らす。
賽の目で決まったから、こう言ってもあまり理解してくれないのです。
それよりも、次はウラノスさんの番だと話をそらします。神様だって怒られるのはごめんなのです。
「………………」
ルールはルール。異界なれど神々の決め事。ウラノスさんは賽を振る。カラカラ転がる賽の目は、果たして何を運ぶのか。
どうやら小鬼を生で食べるのが、良くない結果を招いたようです。
「っ!!」
響く金属音。
白髪の少年は食いかけのゴブリンの指をペッと吐き出し相手を睨む。
女だ。片刃の剣。ただの鋼。業物というわけでも無いそれは、しかし少年に確かな脅威を一瞬なれど感じさせた。
「…………強いな」
「その女性から離れろ」
口元を赤く濡らす
濃密な戦いの経験が、目の前の少年が少年の形をした途轍もない化物である事を知らせる。
自分は本来、『彼女』がこのような怪物と戦えるようにサポートするのが役目だがまさか逸れたタイミングで遭遇するとは。
「………お前は何者だ」
「冒険者………」
首元に刃を這わせようとして来たので反射的に剣を弾く少年。
「………識別表は?」
「…………………識別表?」
女はやはり警戒度を上げた。
少年は目を細める。
「面倒くせぇ………」
リリ&受付嬢 CV内田真礼
リリウスのいる
ゴブリンのみならずデーモン、ロックイーター、ミノタウロスなんかも犇めく高難度の
リリウス
妹の声帯を持つ謎の女に混乱している。短気になってるぞ。
ファンブル! 口元を拭う時間がなく、初接触は最悪な形になってしまった。