ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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巡り合いも出目次第(ゴブスレコラボ)

 リリウスとアステリオスと離れたリドは迫りくるモンスターを切り裂きながら2人を探す。

 

 セシル謹製の剣は深層のモンスターにだって通じるのだ。

 

「う〜ん、母ちゃんに似た気配だけど、ちょっと違う。なんだか気味が悪いぜ」

 

 ダンジョンの子たる異端児(ゼノス)だからこそ感じる違和感。海に飛び込んだら沼だったみたいな、致命的に何かかズレている。

 

「お…………」

 

 壁を砕き生み出される蜥蜴のモンスター。ゴブリンがやたら多いが、時折他のも現れる。

 オラリオのダンジョンと違い、階層ごとに強さの平均はあるが上限が突出した感じだ。

 

「SYURURURU!!」

 

 ガバッと大口を開け迫る大蜥蜴。その鱗は並の剣など容易く弾くだろう。それを自覚しているからこうして突っ込んで来るのだ。

 

「オメェ、馬鹿だろ」

 

 その大口に剣を突き刺すリド。剣は内から頭蓋と鱗を貫く。

 

「オレっち達の所のただのモンスター(考えなし)だってもうちょい考えて動くぞ」

 

 駆け引きがない。

 生み出されたモンスター達はただ目の前の存在を襲うというだけを目的としている。だからこそやりやすいのだが。

 

「母ちゃんってやっぱりすげえんだな………と」

 

 響く足音。聞こえてくる声は、ゴブリン共だろう。やたら多いのだ。そして、恐らくはこのダンジョン擬きの外から来た彼等は一応考える頭を持っている。

 

「けど弱いしなあ………あとなんか作戦が雑だし、すぐに責任押し付けるし」

 

 なんなら勝手に仲間割れ始めたりもした。レットを知ってるからちょっと複雑。

 

「…………ん?」

 

 なんか大きな足音も交じっているような?

 

「GUBABUBUBU!!」

「でか!?」

 

 3М(メドル)は間違いなくある巨大なゴブリン。ゴブリンか、あれ?

 

 筋肉と脂肪のホブ共と違い、筋肉の塊と言ってもいい肉体に鎧を纏うモンスター。

 

「GUBURARARARA!!」

 

 その咆哮と共にゴブリン共が速度を上げる。

 

「ちょっと多くねえかあ!?」

 

 リリウスが奪還した異端児(ゼノス)達により数は倍増。それにより多くの同胞を保護し更に数が増え、ならば当然潜る階層も深くなり至った推定レベルは6のリド。

 

 だがリドの戦い方は堅実的。

 

 アステリオスやヴリトラの様な圧倒的な破壊の力を持たず、タクシャカやマナサーの様な特殊な力も持たない。

 

 多対一でも戦えるが一気に殲滅、と言う戦い方をするタイプじゃない。と、その時………

 

「助太刀致そう、同胞よ」

 

 突如現れる巨大な影。角と尾を持つ人ならざる翡翠の鱗に包まれた二足の蜥蜴。蜥蜴人(リザードマン)だ。

 

 骨を削ったようなナイフを振るう。

 

「GUGYAAAA!?」

 

 敵が増えたことに動揺すし混乱するゴブリン共と異なりでかいのは忌々しそうに顔を歪めるだけ。何やら叫んでいるゴブリンの頭を握りつぶした。

 

 大方どうすればいいか聞いてきたゴブリンに苛立ったのだろう。その死体を持ち上げ投げつけてくる。

 

「うおっと!」

「ぬう!」

 

 2人が避ければ無意味にグシャリと潰れる。でかいのが叫ぶとゴブリン共は自分がああなるのはゴメンだとばかりに我先にと向かってくる。

 

「おお恐ろしき竜よ! 末裔共の戦働きを御覧あれ!」

 

 何やら口上を叫びゴブリンを切り裂く蜥蜴人。リドも負けじと尾で叩き潰し剣で切り裂き牙で貫く。

 

「所詮小鬼と油断なされるな。英雄(チャンピオン)田舎者共(ホブ)とは比べ物になりませぬ」

「チャンピオン? なあ、向こうの通路って誰かいると思うか?」

「さて、小鬼共は鼻が利く。見逃すとは思えませぬが」

 

 ゴブリンを対処しながらの質問に蜥蜴人は訝しみながらも答えてくれる。ゴブリンしかいないなら好都合!

 

「GURRARAAAAAII!!」

 

 痺れを切らし突っ込んでくるチャンピオン。リドは胸部を風船のように膨張させる。

 

「ガバァ!」

 

 口腔から吐き出されるは赤い火炎。迫るゴブリンの群を焼き尽くし、チャンピオンまで勢いを衰えること無く到達する。

 

「GUGYAGYAGIAAAA!?」

 

 炎に包まれ叫ぶチャンピオン。声として肺の中身を吐き出し反射的に空気を吸うと、炎が空気を追いかけ喉も肺も焼き尽くす。

 

 悲鳴の続きは上がること無くゴブリンの英雄(チャンピオン)は炭素の塊へと変わり崩れ落ちた。

 

「最近の蜥蜴人(リザードマン)は火を吹くのかい。儂の出番はなかったな」

「拙僧より、より竜に近き位階へ居るようですな。感嘆いたしました、見事な竜の息吹」

「うお、ドワーフ!?」

 

 石を片手に現れたるは白髪白髭のドワーフ。リザードマンも何やら良く分からない感心をしながら両の指を合わせている。

 

「しっかしお前さんほとんど裸じゃねえか。北方の蛮族みたいだな」

「戦士なのでしょう。己の鱗こそが鎧………僧侶の拙僧とは異なりますが、その生き方も尊敬に値するものかと」

「は、裸………んなこと言われたの初めてたぜ」

 

 なんか妙な気分。服でも着たくなってきた。

 

「ええと、あんたらはこっちの冒険者って事で、良いんだよな?」

「ふむ? 妙な分け方だな。こっち?」

「さて、奇妙な光に包まれてここに居ましたが。もしや貴方は何か事情を知っているので?」

 

 

 

 

 ゴブリンチャンピオンの首が飛ぶ。

 ずんぐり太った小鬼の王(ゴブリンロード)が、最強戦力をあっさり殺されたことに狼狽する。

 

「GOROGYAGYAGY!!」

 

 部下達に突撃させ自分だけ逃げようとしたが、グシャリと踏み潰された。

 

「役に立たん小鬼共め………」

 

 通路の奥から現れたのはゴブリンチャンピオンよりもなお巨大な人型の怪物。青黒い肌に、額からは二本の角が生えている。

 

 対峙する全身鎧は確かに巨体。だが、それでも目の前の怪物のほうが大きい。

 

 怪物の名はオーガ。人食い鬼であり、重装備の騎士を一撃で潰し高名な魔術師を逆に魔術で焼く恐るべき怪物である。

 

「この地は我等が神がお生まれになる地。踏み込みただで帰れると思うな!!」

「……………………さっきのよりは強いか?」

 

 叫ぶオーガに、全身鎧は口上などどうでもいいからかかってこいとでも言えように手を動かす。オーガの額に血管が浮かび上がる。

 

「おのれ! 我を小鬼程度と侮るか! その愚行、冥府で悔いるが良い!」

 

 オーガが呪文を唱え、放たれる青白い雷。雷速の槍は容易く全身鎧へと落ちた。

 肉の焦げる匂い。鎧の中で黒焦げになっていることだろう。怒りに任せて殺してしまったが、苦しめて殺すべきだった。と………

 

「違う」

「………何!?」

 

 ガシャリと鎧が動く。

 

「自分が求める雷光とは、まるで違う」

 

 ズン、と一歩一歩前に進む全身鎧に、オーガは思わず後退る。後退った事実に気付き、振り払うように鋼鉄の棍棒を振るう。

 

 砕かれた。

 

「だが、強い。糧にさせてもらう」

「ゴア!?」

 

 胸を貫かれる。驚異的な再生力を持つオーガでも、心臓までは再生出来ない。

 

 

 

 

 

「……………む? 魔石がない」

 

 オーガの胸の肉を抉り出したアステリオスは首を傾げた。そこそこ強いモンスターの魔石。喰らえばさらに強くなれると思ったのだが。

 

 師であるリリウス曰くリリウスを抜いた世界最高位であるLv.7も目前まで来た。それにふさわしい魔石を求めていたのだが…………。

 

「母の模造ではすべてのモンスターに魔石があるわけではないか」

 

 厳密には外から来たモンスターには魔石がないのだが、アステリオスにそれを調べる術はない。

 

「やはり母の元へ帰るか」

 

 そのためにはこのダンジョン擬きを攻略する。ならば、やはり下だろう。他2人も下に向かう筈。そう歩き出そうとしたアステリオスは、不意に足を止める。

 

 遠くから声が聞こえた。同胞の声でも、リリウスの声でもない。()()()()()()()()()()()()()()()、しかし()()()()()()()()()()()()声。

 

「ウオオオオオオオオ!!」

 

 アステリオスは興奮して叫び駆け出す。道中ゴブリン共が轢き潰され壁を突き破り生まれた目玉が目を光らせる前に弾け飛ぶ。

 

 おっと巨大な壁が。上の方に空いた穴から声が聞こえる。どうやら向こうに空間があるらしいが、向かうには右か左か。

 

「ブルアアアアアアアア!!」

 

 砕いてしまえば問題ない。

 

「なんだあ!?」

 

 何やら驚いている様子の槍使いとゴブリン共。目当ての白を探してキョロキョロ辺りを見回すアステリオス。

 

動く鎧(リビングメイル)? いや、冒険者か?」

 

 やはり声が聞こえる! 近くにいるはず!

 

「何処だ! 何処にいる!? 自分は此処にいるぞ!」

 

 しかし返事は返ってこない。と、何やら鉄の塊が飛んできた。

 

 エウロペがよく読み聞かせる地上の本で見た覚えがある。あれは錨だ。舟が流されぬよう海底に沈める重り。

 

 よくよく見れば小鬼共。ホブにチャンピオン。

 戦うまでもない雑兵共に、アステリオスは鎧の奥で眉間に皺を寄せる。

 

 彼我の実力もわからぬのか向かってくるゴブリン共。それが勇気であるなら蛮勇であろうと評価する。そうでなければ彼との戦いが嘘になる。

 

 だがこれは違う。無根拠に自分の勝利を、安全を疑わず一方的に暴力を振るいたいだけの、ただの愚行。付き合う価値などありはしない!!

 

「ウオオオオオオオオオオオ!!」

 

 広間(ルーム)の大気どころか壁や天井まで震わす咆哮。

 

「「「────!!」」」

 

 小鬼とホブは意識を手放しチャンピオンすらガタガタと震え蹲る。

 

 挑む資格無き者が立つことを赦さぬ咆哮。アステリオスはそれでも彼なら立つはずだと改めて探す。

 

「すげぇなあんた、どういう魔法だ?」

「声!」

「ん、ああ。声を使った魔法だな」

 

 聞こえた声に振り返るの槍使いの男が一人立つのみ。

 

「どうかしたか?」

「…………………違った」

「は、何が?」

「探し求めている相手の声かと思ったが、貴方の声だった」

「良くわからないが、探してる奴が俺と声がにてるのか…………どんな奴なんだ?」

「…………白い。そして、赤い………炎の雷光。この身を焼き尽くさんと迫る火矢」

「魔法か? 俺も少し使えるが…………ファイアボルト! って叫んでも火は出せねえぜ」

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