ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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ファンブル(ゴブスレコラボ)

 みずのなかにいる!

 

 

「GUBURURURU」

 

 水面が光ったのを見て船の上にいるゴブリン共はニヤニヤと笑う。ここは罠にかかった者が落ちる場所の一つ。水中には悪しき錬金術師の生み出したキメラが犇めく。

 

 ゴブリン共はそれを観て楽しみ、這い上がってくれば叩き落とす役目を負っている。

 

 水面が激しく波立ち、ザバリと飛び出すワニの首にイルカの体を持つキメラ…………の死体。

 

 ヌメリとした鰻のような肌を持つ単眼(モノアイ)が助けを求めるように手を伸ばし何かに引きずり込まれた。

 

「GYAGYAGIGIGI!!」

 

 その様子を指差しゲタゲタ笑う小鬼共。何やら自慢げにしていた男め、さてはマヌケなのだろう。やられているではないか、と嘲笑うだけで怯えない。

 

 彼等は馬鹿なので、一度船を沈められた光景を見ないと水中から船の上も襲われると理解できないのだ。

 

「GYAGI!?」

「GUGYOA!?」

 

 だから船底が砕けてから漸く慌てだす。間抜けではないので船の上でも危険と学べば即座に行動に移す。船長のゴブリンが櫂を漕ぐように叫ぶ。櫂を握っていたゴブリンが水中に引きずり込まれた。

 

 その間にも水は船内に入る。船長のゴブリンは何やら叫ぶ。どうせ何をしている、とかお前達のせいとかほざいているのだろう。

 

 穴を塞ぐなんて知るわけもなく少しでも高いところに我先にと昇ろうとする。

 

「GU、GYAGUGIGI!!」

 

 と、そこに既に影があった。そこは船長である俺がと叫ぶが他のゴブリン共に引きずり落とされた。

 ゴブリンは自分だけが助かろうと先にいる影へ鶴嘴を振るい…………。

 

 

 

 

「ヘクチ」

 

 水の階層。

 巨大な地底湖を暫く泳ぎ続けたリリウスは漸くたどり着いた陸に上がる。シハチとモハチがいればその背に乗れたが、居ないものは仕方ない。

 

 何やら変な生物がたくさんいた。異界のモンスターとも違う良く分からない存在。

 

 恐らく人工的に混ぜ合わせたのだろう。それ自体は別に興味など無いが……。体が冷えた。

 火でもつけて暖を…………と、リリウスの体を炎が包む。

 

「ははは! 間抜けな冒険者め!」

 

 混沌に魅入られた錬金術師は嘲笑う。彼が乗るのは良く分からない怪物。死体を継ぎ合わせたキメラ。

 

 獅子の顔に六本のクマの足。亀のような甲羅に身を包んだそれはタラスク。四方世界のとある邪悪な魔術師も生み出していた………よほど自分を高く見せたい馬鹿がやること。

 

 大きな群れを支配するゴブリンが王冠を被るのとさして変わらぬ、要するに間抜けの所業だ。

 燃える水で作られた炎を更に燃やす炎。蛇の形をした炎が炎を食らう。

 

「…………は? な、なんだそれは!? 炎が意思を持つかの如く! 如何なる真の言葉だ!」

「知るか」

 

 炎の蛇がタラスクを喰らう。体内の油袋は引火しないように作られていたが関係なく燃やし、爆発。

 錬金術師は一瞬で炭化していたが、その爆発で粉々に吹き飛んだ。

 

「服が乾いたな」

 

 リリウスは特に思うところはなく、再び歩き出す。

 

 

 

 

「どうしよう」

 

 都の賢者と謳われた彼女も、何をどうすればいいか分からないことはある。

 具体的にはダンジョンで仲間と逸れた時の対処法。

 

 厳密にはそれだけならまだやりようはあった。ただのダンジョンなら隠蔽、隠密の魔法を駆使して仲間を探す。

 

 しかしここは普通じゃない。

 

 ()()()()()()()()()()()

 理性などまるで感じさせず唸るオーガは幸いにもこちらに気付かず何処かへ行った。

 

 オーガは魔神将直属の部下にもなったりする混沌側の主戦力。理性がないようだが、だからと言って1人で相手出来る怪物ではない。ましてやああして生まれた以上、更に生まれないとは限らないのだから。

 

「邪神が生まれる地……これもその影響」

「恐らくな」

「!?」

 

 聞こえてきた声に慌てて振り返る賢者。探知の魔道具を掻い潜り隠蔽を施した賢者をあっさり発見し接近した何者か。

 

「もぐ………お前はどっちだ?」

 

 明らかに人の腕を食いながら尋ねる小柄な影。

 

「少なくとも、貴方と食事の趣味は合わない」

「………………ああ」

 

 どう見ても混沌側の相手に一切媚びるつもりなどなく睨見つける賢者に、一瞬目を細める。が、すぐに納得したように持っていた手を飲み込む。

 

闇人(ダークエルフ)………混沌だっけ? その類いだ」

「それでも食うのは違うと思うけど」

「殺して食うのも殺して捨てるのも結局ただ殺すんだ。死体の扱い一つで混沌、秩序言われるのは、理解はしたが納得はいかねえ」

「敵であれ言葉を交わせる相手を喰らう相手を、人は己を喰うのではと思わずにはいられない。食べないでほしい」

「お前は食べねえよ。それで納得しろ」

 

 しばし見つめる。人肉を喰らうなど混沌でなくとも獣や一部の部族や行う所業。何より混沌なら、もっと自分達こそが正しいのだと喚いているだろう。

 

「正義だ悪だで分けるくせに、同じ人間だからと一緒くたにしたがる。わけが分からねえなあ、俺には」

「……………本当に?」

「…………ま、大概の人間は自分が善にも悪にもなれないか、なれると思っているんだろうな」

 

 だから悪を嫌い、過剰な正義を拒絶する。自分が獲物になることを恐れて。

 

「ところでお前は術者か?」

「……………」

 

 コクリと頷くと影に手を沈め何かを取り出し賢者に差し出してくる。

 

「これの鑑定──」

「待って、今の影は何?」

「? ああ、狂三お姉ちゃんの力の一部をフェルズが再現して………影を媒介に収納空間を作るんだ。飯もここに──」

 

 ズルリと出てきた闇人(ダークエルフ)の死体を即座に影に押し戻す。多分本当に彼にとっては飯なのだろうが、一応気を使ってくれているらしい。それよりも…………

 

「再現して………つまり、造った? その魔道具を?」

 

 勇者一行も見かけより物がたくさん入るポーチとかを持っているが、神代の出土品でもなく個人で造ったなんて。

 

「何か困ったことがあれば便利なの作ってくれるんだ。ソーマは確か……土左衛門みたいとか言ってたな」

「ドザエモン? 他に、その人の作品は?」

「特に持ってきてない」

「そう………」

 

 少し残念そう。

 

「あ、名乗り忘れてた。私は──」

 

 

 

 

 

「じゃあ、リリウスの世界には神が身近にいるんだ」

「その神にかき回されることもあるが………」

 

 一概にどちらの世界がマシとは言えないだろう。その世界にはその世界の苦難があり、彼女達はその苦難を乗り越えてきたあちらの英雄達ということだ。

 

「お前もおっぱい剣士も、簡単に信じるな」

「世界の外は経験済み」

「そうか………ところでこの聖壁(プロテクション)ってのはどんな魔法なんだ?」

「魔法じゃない。奇跡」

 

 違いがわからんと首を傾げるリリウスに賢者らしく丁寧に教えてくれる。そもそも魔法とは真の言葉で森羅万象に干渉する術で、奇跡は神の力を借りる者。本来巻物(スクロール)は人の行う魔法を保存するものであり、神の賜る奇跡(プロテクション)を保存した者は彼女も初めて見るらしい。

 

「効果は壁を作り出す。こちらは通過できて、敵や敵の攻撃は防げる」

「それは任意か?」

「?」

 

 例えば敵の大群を防ぎつつ指揮官っぽいのだけ引きずり込んでリンチするとか、そういう使い方は出来ないのだろうか?

 

「…………使えなくはないと思う、けど。試したことはない」

「何故?」

「守りを齎す神を信仰する人がそういう発想にならないから」

「通さない壁だろ? 洞窟の入口塞いで焼き殺すとか、毒ガスいれるとか、使い道はいくらでもありそうなもんだが」

「そういう発想に至れない人だから、地母神の奇跡を授かれる」

 

 想像してみる。

 デメテル辺りが神の力を貸せるようになったとして、そういう使い方をする者に奇跡を与えるか? 答えは否だろう。

 

「なるほど分かった」

「そう。ならいい」

 

 と、下に行く連絡路を見つけた。

 

 

 

「……………地底湖の次は、森? 明るい、空気も美味しい」

「順番はバラバラだが、まじでダンジョン再現する気なのか」

 

 リリウスが木々の隙間から空を覗く。そこに空はなく、岩肌が見える。

 無数の光る水晶が階層を明るく照らす光源のようだ。

 

「…………ん」

 

 ボゴッと地面を突き破り生える腕。

 

「ゾンビ!?」

「ぞんび?」

 

 知らないモンスターだ。と、改めて新たに生まれたモンスターを見れば………闇人(ダークエルフ)。混沌に属していてもモンスターではない筈では?

 

「モンスターを生み出す邪神がダンジョンマスター、だったけ?」

「恐らくは」

「適当じゃない?」

「…………闇人(ダークエルフ)なら、ここに来るまでに何匹か食い殺した」

「────」

 

 リリウスの言葉に察したのか賢者は闇人(ダークエルフ)に振り返る。

 

「まあ、とは言え殺すが」

 

 

 

 

「ふんふ〜ん、おったから〜、あったかな〜」

 

 森の中を一人の少女が楽しそうに歌いながら歩く。

 

「ふふん、たくさんお宝あったなあ。合流出来たら自慢しちゃおう!」

 

 道中見つけた宝箱は全て罠が誤作動を起こし発動せず、中身のお宝は全部大きさよりも沢山の物が入る道具袋に入れている。

 

「それにしても、みんな何処かなあ?」

 

 勘に従い上ではなく下に下に向かってみたが、一向に会えない。

 

「あ、遺跡!」

 

 そして台座に置かれる宝箱!

 

「宝箱を開けなきゃ冒険者じゃないよね!」

 

 戦士(ファイター)が体力に物を言わせて宝箱や罠を調べる行為を古来より漢探知と言うらしい。女の子だけど体力には自信がある!

 

「お、宝箱」

「ああ!」

 

 しかし彼女が駆け寄るよりも早く宝箱が開けられる。

 

「ん?」

 

 声に反応し振り返った白髪の人物は何やらナイフを咥えている。バキン、と噛み砕いた。

 

 

 

 《真実》の神様は偉大なる天空の神を見ます。

 9割の確率で攻略に有用な剣が出るはずのほぼサービスな宝箱。

 

 発動確率の超低い錆びた罠が発動し、しかも結果は残念ファンブル。宝箱の中身は《幻想》の女神が約束を取り付ける為に会いに行った美の女神から貰ったお菓子(食べれないからって勝手に中身の候補に入れた)。

 

 こっちの世界だと直ぐに死んじゃいそうと呟く《真実》に、偉大なる天空神はふんと鼻を鳴らしました。

 

「その程度の逆境乗り越えずして、こちらの最強にはなれぬ」

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