ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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会話(ロールプレイ)(ゴブスレコラボ)

「なかなか強かったね!」

 

 海の階層の下。

 サンゴや葉の大きいゆらゆら揺れる海藻のような植物、蒼い光を放つ水晶。空飛ぶ魚のモンスター。

 

 まさに海の底のようなその階層は、どうもモンスターを産まない安全階層(セーフティゾーン)のようだ。

 

 他の階層から紛れ込んだであろうモンスターも特に戦闘能力のない、精々他のモンスターの餌になる存在。リリウスはバクリと捕まえて食ってる。

 

 鰭のような羽がシャクシャクして美味い。

 

「ところでリド、その格好は?」

 

 傍らの蜥蜴人(リザードマン)と似たような格好をしたリドに尋ねるリリウス。リド曰く、宝箱から出てきたらしい。

 

「ここの宝箱、罠が多いから大変だったろ」

「ん? いや、そんな事なかったけど」

「……………そうか」

 

 受付嬢と剣聖はなんとも言えない顔でリリウスを見る。

 

「いやぁ、まさか受付さんまでいるなんて! 安心してください、俺が必ず守りますよ!」

「は、はあ………」

 

 アステリオスと共に現れたベルの声の槍使いは受付嬢に惚れているようだ。受付嬢はむしろ苦手としているタイプらしいが。

 

「ところでアステリオス、お前階層主の魔石食わねえの?」

「我が師、我が宿敵………冒険者達も苦難を乗り越え次の位階へ至る。ならば自分も、次の位階へと至るには相応しい相手を倒して至るべきだ。その魔石は、確実に自分を次の位階へと押し上げる」

 

 リドがなんだか居た堪れない気持ちになった。いや別に悪いことじゃないけど。

 そもそもリーダーとして仲間を守るリドと魂に刻まれた情景に挑む為に力を求めるアステリオスでは目的が違う。

 

「魔石だっけ? それ食うとそっちの冒険者は強くなるのか」

「モンスターがな。リドもアステリオス、こちらの分類ではモンスターだ……差別とかではなく、存在が」

 

 向こうの世界の獣人は獣の耳や尾を持っただけの人間から、2足の獣までいるらしい。アステリオスもリドも向こうでモンスター扱いされることはないのだろう。

 

異端児(ゼノス)……神の被造物である人類を滅ぼすための本能よりも情景が勝ったモンスター。繰り返される転生の果てに、自我を確立するに至った連中だ。そっちだと、混沌を嫌う闇人(ダークエルフ)みたいなもんか?」

「まあ、いなくはないですけど」

「じゃあ違うな。優しいゴブリンだ」

 

 居なくはない、そう思われる存在では決して無い。優しいゴブリンなら、間違いなく居ないのだろう。反応を見れば分かる。

 

「いるとしたらどんなのだろうね?」

「決まっている。人の前に出ないゴブリンだ」

 

 同族の所業を知り、それでも私は仲良くなれますよなんて笑顔で近付くゴブリンがいるとするなら、それは仲良くする気などなく後ろ手でナイフを持った小鬼に違いない。

 

「此奴等だって、だから人前に出ないわけだしな」

 

 人と手を取り合いたいと心から思う異端児(ゼノス)達も、人が自分達に歩み寄れないことを知っている。だから人目の忍んで隠れている。

 

「う〜ん、良く分からないや」

「こちらのモンスターは全部ゴブリンだと思え。犯しはしないが、絶対殺しに来る」

「ああ、そりゃ、無理だね」

「本人達の前で言うべきでないのでは」

 

 うんうんと頷く勇者を咎めるように剣聖がいうが、リドもそう思っているのか気にしないように言う。

 

「まあそんでも、今こうして言葉が通じるんじゃ。少なくとも儂等には関係ないわな」

「如何にも。父祖を同じくしなかろうと、竜の同胞でなかろうと、言葉が通じ力を合わせるのなら、それもまた同胞と言えましょう」

 

 鉱人導師と蜥蜴僧侶。何処か達観したかのような言葉は年の功と教義によるものだろうか。

 

「ま、そっちはそっちで頑張れとしか言えねえわな」

「無論だ、槍の戦士よ」

 

 リリウスは焼いた蛇肉を食う。再生能力に優れていただけあり、肉がドロップアイテムだったのだ。

 

「………それって美味しい?」

「……………………………………………………………食うか?」

「食べる!」

「すごい間でしたね」

 

 というか道中もゴブリンだのモンスターだの食いまくって居たのにまだ食うのか。

 

圃人(レーア)は健啖家。気持ちは分かる」

「貴方はレーアじゃないでしょう……………ないですよね?」

「ふふふ」

「謎です」

「むぐぐ………硬いけど、あっさりした味わい。美味しいけど塩が欲しいな」

「ソーマの作った燻製塩ならあるけど」

 

 もちろん酒を飲む時に使うように造った塩だ。

 

「けれどあれだね。この世のモンスターが全部おいしければ、もっと冒険者も増えたろうに」

「それはもう冒険者と言わないのでは………」

 

 勇者の言葉に受付嬢が苦笑する。

 

「じゃあなんだろ? 美食屋?」

「グルメハンター」

「探検家ならぬ、険啖家」

「体に悪い食い方しそうだな」

「ゴブリン生で食べるリリウスが言っちゃう?」

「俺は何でも食えるからな」

「そう言えばさっきも錆びた剣食べてたね」

 

 言葉どおり何でも過ぎる。

 

「ええ、剣を!? 口の中は大丈夫ですか!」

「あがが…」

 

 受付嬢がリリウスの口を開けさせ中を確認する。血とかは出てない。後歯が鋭い。

 本来なら彼女の力でリリウスの口を開けさせるなど出来る筈無いから、リリウスが牙で怪我しないようにしているのだろう。

 

「くっ、あんなに近く………羨ましい!」

「そうか?」

 

 槍使いは羨ましそうに見ていたが男女のあれそれよりも中のいい姉弟にしか見えない。

 

「……あぐ……………ベーコンのフライ音」

「ベーコン? 食べたいの?」

 

 リリウスは影から槍を取り出す。槍使いがお、と反応した瞬間放たれる光線。

 

 岩も海藻もサンゴも消し飛ばしながら突き進み巨大な穴が空く。

 

「GIGIGYA!?」

「GOBUBUBORAA!!」

 

 聞こえてくるゴブリンの声。とても小さい。

 まだまだだいぶ先のようだが、リリウスには聞こえていたのだろう。

 

「モンスターは生まれないんじゃないのかよ?」

「生まれないだけで移動はしてくる。女の匂いにでもひかれたか…………」

 

 赤熱化した地面を歩いてくることはないだろうが………魔法が飛んできた。

 リリウスは片手で弾くと角度を見る。少し下向き。

 

 バチと紫電が走る。

 

「…………何してんだ?」

「空気を壊してる」

「空気を?」

 

 賢者が興味深いというように尋ねてくる。

 

「雷がジグザクに進むのは空気が雷を遮るから。それを無理矢理破って進むと、空気を破壊して毒気を産む…………らしい」

 

 神の言葉だ。よくわからない。ただ穴の向こうから咳き込む声や苦しむ声が聞こえてきた。

 

「毒とか使えば速いんじゃ」

「俺の毒は強力だからな。こっちならすぐ死ぬってこともないだろう」

「雷が発生させる毒気………興味深いけど実戦には向かない」

「小鬼殺し殿がおりますれば、興味は持ちそうですな」

「まぁ試す方法がないが、やれたら洞窟や遺跡で使いたがるだろうな」

 

 リリウスは声が聞こえなくなると穴へ向かい歩く。

 

「え、ちょ、毒気があるんじゃ」

「俺に毒は効かないし、生き残りがいるかもしれない。ゴブリンはみな殺しだ」

「…………彼奴ゴブリンスレイヤーの弟か?」

「かみきり丸からそんな話聞いたことはねぇがなあ………」

 

 と、その時ドロリとリリウスの目から赤い涙が流れる。

 

「! 大丈夫ですか!?」

「ああ、槍の副作用だな。今ちょっと目が見えないけど、問題ない………音と匂いでわかる」

 

 心配そうな受付嬢だったが、赤く発光するほどの穴を歩けるものは残念ながらこの場にはアステリオスぐらいしか居なかった。誰も止められずリリウスは穴の奥へと向かいゴブリンの掘っていた穴と合流する。

 

 

 

 

「ただいま」

 

 ゴブリンの片腕を持ちながら口元を赤く染めている。食ってきたようだ。

 

「上位種が居た。しぶといな、あれ」

「生き残ったのか」

「ああ、だが殺す」

「何か、ゴブリンに対して当たりが強いね」

「………ああ、似てるからだな」

 

 勇者の言葉にリリウスは目を細め答える。

 

「誰に?」

「俺を産んだ女と女を孕ませた男」

「それは一般的に親というのでは?」

「奴等が俺の親なものかよ………」

 

 忌々しそうに眉間に皺を刻むリリウス。

 

「金と酒、女と暴力、酔っている物に違いこそあれ、昔の【ソーマ・ファミリア】はまさしくゴブリンの巣だ。どいつもこいつも自分は報われるべき努力は足りてる……酒を飲めねぇのは誰かのせい。だからその誰かを傷つけるのは当然の権利とばかりに……………」

 

 リリウスの実の両親もまさにそれ。酒の代わりに快感を求め子供を拵えて、まともになって稼げなかったのはお前のせいなのだからお前は悪だと殴る蹴る。

 

 稀に他の団員と組んでこちらの忠告無視して適正階層を超え死にかけてもお前のせい、自分は女も買えないのに新しく生まれてくるから苛立たせたのだ。ならお前が悪い、理由はないけどお前が悪くてこちらが正しいのだから殴る。それがまかり通っていた派閥だった。

 

「気に入らない。だから殺す………向こうも同じだ。今回は、俺が奴等にとってゴブリンだった。それだけだ」

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