ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「GOBUBU!!」
「GOOOBU!!」
迫りくる冒険者共を見て騒ぎ出すゴブリン共。早速群の下っ端に相手させようとするが、ゴブリンロードが一斉にかかれとでも叫んだのか群全体が動き出す。
「ロード4、チャンピオン10、ホブ50、シャーマン45、狼60、雑兵数百、内経験を積んだ上位未満約70………烏合だな。ロードはなるべく生かせ。勝手に脚を引っぱり合う。チャンピオンは戦いに慣れているんだったか? チャンピオン同士距離が離れている場合は殺して良い」
事前に受け取った情報。ここに来るまで戦った小鬼の群の戦闘経験から戦い方を決めたリリウスは即座に指示を出す。
「GUBUBUBU!」
「GOOOOBU!!」
と、何やら異教の神官のような格好をしたシャーマン共が祈りを捧げるように叫ぶと壁に亀裂が走りオーガとタラスク(偽)が現れる。
「奴等モンスターを召喚しおった!」
「出せるだけだ。操れるわけじゃない」
現にモンスターはゴブリンを踏み潰しながら向かってくる。
「攻撃を避けることも考えない向かってくるだけの木偶。転ばせたりするだけで十分だ」
「ええ、ここは我々で。貴方達は先へ!」
ゴブリン共を蹴散らし扉へと辿り着く。本来ならチャンピオンやホブが数匹で引くらしい鎖をリリウス1人で引いて扉に僅かな隙間を作る。
「GOBUBUBUBURARA!!」
行かせるものかと追ってくるゴブリンチャンピオン。槍使いがチャンピオンへ槍を振るう。重厚な鎧に阻まれ、槍先が僅かに刺さるのみ。ニタリと笑ったチャンピオンが腕を伸ばし………。
「
内へ流し込まれる『矢』という形に世界へ顕現した魔力。チャンピオンが内から爆ぜた。
「もぐもぐ、行くぞ」
「何食べてるの!?」
「デカいやつののうみ──」
「ごめんやっぱり聞きたくない!」
賢者を抱えた勇者が扉の隙間に飛び込みリリウスも後を追う。ゴブリン共が後を追おうとするが先頭の数匹が扉の隙間から伸びてきた鎖に捕まり引きずり込まれた。ゴブリン共が尻込みする。
「おお気高き惑わしの
蜥蜴僧侶の筋肉が膨れ上がり重厚な扉を閉めていく。ゴブリン共が何匹か巻き込まれ潰される。
「バハアアア!!」
無防備な背中を狙うゴブリン共はリドの炎に焼かれる。
「助かりましたぞ赤竜殿」
「そう言う言葉は終わってからにしようぜ」
「…………いるな」
「うん、この奥だ」
「…………」
勇者とリリウス、賢者は奥から感じる邪悪の気配へ向かい歩く。
まさしくこれは、世界の危機だ。
「良く来たな、冒険者」
と、偉そうにしている死霊司祭。リリウスは早速小石を投げつけた。横から伸びてきた触手に防がれる。
『MEEEEEEE』
巨人の如き巨大な女の体。足はなく、代わりに蛇の下半身。頭部は瞼のない1つ目の黒山羊。長い髪のように生えた触手……見ているだけで正気が削られそうな怪物だ。
「
リリウスが影から取り出した剣が矢のように放たれる。
「何時の間にこっちの魔法を?」
「ここは狭間。そちらの世界の理屈が通じるなら、まあやれるだろ」
「真に力ある言葉は、ちゃんと理解しないと使えない…………」
「そうなの? 僕、なんとなく出来たけど」
「なんとなくで出来るな。まあ昔から、理解は早い方だ」
感覚派と理屈派。されどどちらも自分以上の才覚に、賢者はむむ、と唸る。
「私を無視するなあ!」
「「「あ、忘れてた」」」
恐らくは邪神であろう異形の女を警戒しながら会話していると死霊司祭が叫ぶ。邪神に比べ矮小な存在感ですっかり忘れていた。
「我こそは偉大なる神の誕生に……」
「御託は良い。要するに敵だろ」
「ああいう人達ってなんで毎回語ろうとするんだろうね?
「向こうからしてもやることは変わらないはずなのにな」
勇者とリリウスは気が合うようだ。これからぶっ殺す相手の話を長々聞く理由が分からない。
「話は聞くべきだ。会話が延びれば、貴様等が生きれる時間が増える」
「…………………」
リリウスは邪神を見る。かなりの速度で剣がぶつかったはずだが、傷一つついていない。小鬼から非常食として奪った剣ではそんなものと言われればそれまでまでだが。
「その身は神。神に連なる力を持たねば傷一つつけることは不可能!」
神殺しの力でいけるだろうか?
「この迷宮は我が邪神の肚の内。ここで流れた血肉全てが取り込まれ、産み落とすための情報となる」
てっきり魂が取り込まれていると思っていたが、そうではないらしい。仮にこの迷宮に訪れ逃げ出せるだけの実力者がいても、血の一滴でも流せばその強さを持つ新たなモンスターが生まれるようになるらしい。
「……………血?」
「ああ、勇者は結局ただの一滴も血を流さなかったが、貴様は違う!」
黒山羊の触手で投げ飛ばされた時、少し血が流れた。リリウスは即座に邪神へと駆け出す。
「無駄だ! 神に連なる力を持たぬ貴様に止めるすべはない!」
「なら僕が!」
神々が鍛えた光の聖剣。神造武具を持つ勇者が叫ぶがそうはさせるものかと死霊司祭が邪魔をしてくる。
「彼女が目覚めた暁には、白痴のモンスター共も目覚め世界を蹂躙する神の兵に相応しい雑兵となるだろう! その中にお前達の力が加わることを光栄に思え!」
既に血を取り込んだリリウスを無視して勇者と賢者を狙う死霊司祭。リリウスが神に連なる力を持っていないと判断しているのだろう。
「馬鹿が」
取り出したるは
球体状の透明の壁が
首と体の位置がズレ球体の中が黒緑の血液に溢れ首が血の中に沈む。
「……………………は?」
「ええ………」
「…………………」
死霊司祭は何が起きたのか理解できないのか固まり、勇者は引いて賢者も口を開けてその光景を見つめる。
「…………………怒られた」
「誰に?」
「たぶん神様」
「そっかぁ…………さて、残るは君だけだ!」
と、勇者は気持ちを切り替えることにした。
「ま、まだだ! まだ、最後の子供が残っている!」
ビキリと死霊司祭の背後の壁がひび割れ、中から人間の子供サイズの人型のモンスターが生まれる。ネジ曲がった角を持つ獣人のようにも見えるモンスターだ。
「さあやれ! 冒険者共を皆殺しにするのだ!」
グチャリ、湿った音が響く。発生源は口元。音の正体は咀嚼音。何を食ったかといえば、己の指だ。
「いい!?」
「…………ああ、スキルか」
「
「
「お腹が減って自分を食べちゃうの!?」
「それだけの飢えにさらされているの?」
「慣れだ」
と、死霊司祭が怪物を蹴りつける。
「ええいこの役立たずめが! 立て! 立って戦え!」
「────」
ガシュリと死霊司祭の脚が消えた。モグモグと口を動かす怪物はゴクリの喉を鳴らすとベロリと唇を舐めた。
「あぎゃ! ぐああああ!!」
そのまま怪物に襲いかかられ肉を食いちぎられ骨を噛み砕かれ飲み込まれていく。
「………………」
「あう!」
ドン、と賢者が突き飛ばされる。宙に舞う赤い液体。地面を削りながら速度を落とした怪物は咥えた腕の肉を噛み千切り残りを飲み込もうとしてリリウスに蹴りつけられる。
「リ、リリウス。腕が……」
「んなもん飯食えば治る」
顔を青くする賢者に対してリリウスは眉間に皺を寄せながら断面を繋げ肉を食らい腕を繋げる。かなりの力で蹴り飛ばしたが、怪物は果たして…………。
瓦礫がどす黒い風に吹き飛ばされる。
「耐毒の魔法かアイテムを使え!」
リリウスの言葉に即座に実行に移すのは、流石何度も世界を救った勇者達。地面を溶かすほどの猛毒が辺りに撒き散らされる。
風の発生源たる怪物はダラダラとヨダレを垂らしながらリリウス達を睨む。
『OOOOOOOOOOOOOOO!!』
「「「──────!!」」」
「怪物……邪神の子か。最後の最後に厄介なのが出たな」
邪神
神の奇跡で死んだ。
地母神
二度とリリウスに力を貸さないと決めた。
死霊司祭
ブレックファースト
邪神の子
リリウスの腕をモグモグしてたら蹴られた。怒るよりお腹が空きました。
リリウスのスキルを凡人が写し取った末路。永劫に満たされない腹を満たすために全てを食らう。う〜ん、世界の危機だ。