ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
『GURURURURU!!』
飢えに支配された邪神の子は吹き飛ばされた怒りよりもまずは腹を満たすことだけを考える。先程までは喰いやすそうな賢者だったくせに、今は味を覚えたリリウスを狙う。考える頭が足りてないのだ。
『GURAAAAAA!!』
「っ!!」
ぶつかり合う2つの拳。迸る雷が暴れ回る。
『──!?』
邪神の子なれど怪物判定は入るようで、リリウスの方が雷撃の威力は上。追撃を加えようとマーダを振るうが腕ごと氷に囚われる。
拘束されたリリウスの肩の肉を一瞬で食い千切る邪神の子。精霊の炎が邪神の子へと迫り、精霊の氷が防ぐ。
極限まで冷やされた大気と炎に近づいただけで焼け死ぬ高温の大気がぶつかり合い
リリウスと邪神の子は大きく息を吸う。
「わっ!」
『GAa!』
不可視の音の砲弾がぶつかり合い弾ける。
『■■■■■■■■■!!』
「…………あ?」
邪神の子が吠えると世界が歪み。空間が軋み、虚空より異形共が現れた。
「俺、あんな力持ってねえぞ」
「基礎が貴方で、他にも混ぜられてる」
その中に
「
まさしく地獄の如く光景。そして悪魔の一匹が自らを呼び出した矮小なる影を見下ろし見下す。局地的な吹雪を放ち、食われた。
「食べるの!?」
「自分で食事をまかなえるとは羨ましい限りだな」
「その為に召喚したの?」
世の召喚士、悪魔に魅入られた異教徒共が聞いたら白目剥いてぶっ倒れそうだ。
されど、さもありなん。邪神の子に仲間という概念など存在しない。本来備わっていた残忍で冷徹、されど高い知能は飢えに曇り力を十全に使いこなせず、ただそこにある力を腹を満たすために使うだけ。
「魔法も喰うぞ」
「ほんとだ、食べてる」
悪魔が放った炎を喰らい、炎を放った悪魔を喰らう。リリウスは背後から迫る悪魔の脚を切り落とし肉を喰らう。
「どれぐらいの威力の魔法なら通じる?」
「《核熱》」
「この閉鎖空間で?」
「僕達まで死んじゃうよ!」
「俺と彼奴は火傷するぐらいだな」
「あ、倒せないんだ」
まあ通じると言っても倒せるとまでは言ってない。
悪魔の群を喰らい、全ステイタスが上昇した邪神の子が再びリリウスへと迫る。食い残し共も自分が味方、あるいは下僕であることをアピールしたいのか勇者と賢者へ向かう。
「数が多いのと強いのそれぞれ戦うことはあっても、両方同時って滅多にないよね!」
「よくある事だ」
オラリオの
「怖いなあ、オラリオ!」
「滅多にないと戦えないか?」
「まさか!」
翠玉色の光が悪魔共を容赦なく消し飛ばす。
「怖いけどさあ、戦うよ! だって世界の危機だもの!」
彼女を知らぬ四方世界の民が見れば、流石勇者だなどと讃えるのだろう。馬鹿らしい。
勇者だから
「なんでも良いや! 此奴等倒して、リリウス達とお別れ会して帰るまでが今日の冒険!」
「そうか………」
『DAEEEEEMOON!!』
迫りする悪魔共。賢者は冷徹に見据える。
「
フワリと羽のない悪魔共が浮き上がり羽を持つ悪魔も空中でバタバタと暴れる。邪神の子も空中で困惑するも直ぐに近くの
「
浮き上がっていた悪魔と邪神の子が重力を思い出したかのように地面に叩きつけられた。
「大賢人曰く、『高いところから落とせば死せる神々とて死ぬ』」
「もっと高さが必要だったな」
ムクリと起き上がる邪神の子。抵抗も逃走もしない餌を貪り始める。
「まあ良い。食事中にこっちも準備を済ませるぞ………ドゥルガー!」
リリウスは上の階層で受付嬢を守っているドゥルガーへ呼びかける。返答は言葉の代わりに大精霊の膨大な魔力。
「【
久方振りの精霊の力を扱うための詠唱。膨大な魔力を放ち扱う術式を構築していく。
「【
属性は光。反応するように勇者の聖剣が光を放ち始める。
「【雲外蒼天へ駆ける勇者へ与えよ光明の剣】」
瞬間、飢餓に支配されたはずの邪神の子が顔を上げたのはより食いがいのある魔力に反応したのか、或いは飢えに曇った思考で確かな脅威を感じ取ったのか。
「
しかし踏み出す前に賢者が再び浮かせる。考える頭が足りないので同じ手を喰らうのだ。
「合わせろ」
「うん!」
光り輝くマーダを構えるリリウス。勇者も聖剣を掲げる。
「夜明けの、一撃!」
「【
太陽が爆発した。
「壁に宝箱が埋まっていた……」
「倒してからタイミング良く出てきたな」
「最後の部屋の宝箱とは得てしてそういうもの」
と、賢者が答える。これも文化の違いだろう。
「どれどれ〜?」
勇者が開けると最後の抵抗とばかりに毒針が飛び出す。機構の一部が錆びていたのか真っ直ぐ飛ばずリリウスに向かって。
「パリポリ………ここの罠は俺に恨みでもあるのか」
「こちらの罠は、神のサイコロ次第だから」
毒針食べてる、と賢者は引いた。
「金貨に宝石、指輪に……………
「《
記された座標に繋がる
「う〜ん、よくわからないけど、それを使えば何時でも帰れるってことだよね?」
「そうなる」
「じゃあお別れ会する時間はありそうだね!」
既にゴブリン達を処理し終えた他のメンバーと合流し、森の
「お肉やお魚がないのが残念だけどね」
「……………………」
「あ、モンスターのお肉とかはちょっと」
リリウスが影から取り出そうとするが受付嬢がやんわり止めた。
「受付さーん! ほら、こんなに採れましたよ!」
樹の実を持ってきた槍使いが早速受付嬢に見せる。
「あいすくりん…………ああ、氷菓か」
勇者が得意げに取り出したあいすくりんなる氷菓子。火の秘薬に水を掛けると冷気を出すらしく、それを利用したのだという。
リリウスはお礼にジャガ丸くん小豆&バニラアイスを渡した。剣聖は困惑し勇者と賢者は目を輝かせる。
「拙僧はチーズが欲しいですな」
「【デメテル・ファミリア】のチーズでよければ」
「甘露!」
「酒はねえのかい?」
「あるけどこれは渡せん」
リリウスは影から酒瓶を取り出す。そのまま勇者に渡した。
「お前なら大丈夫だろ」
交わらぬはずの異界の冒険者達の宴も悲喜こもごも。過去を語り、冒険を語り、未来を語り、やがて訪れる別れの時。
「それでは赤竜殿。某も何れ竜の息吹を吐ける位階へと至れた際に再会することを願いまする」
「ま〜、今回は世界の危機だけど、そっちの神ともたまに遊ぶらしいからなあ。そん時会えたらよろしくな」
「今度はそちらのうまぁい酒持ってこいよ」
と、リド達。
「じゃあな。俺に似てるっていう冒険者に負けんじゃねえぞ。ま、俺に似てるならそいつが負けるとは思えねえが」
「うむ。だからこそ、勝ちたいのだ」
と、アステリオス達。
「その、お世話になりました」
「途中までだ。気にするな」
頭を下げてくる受付嬢にリリウスは軽く手を振る。結局途中で別れ、ほとんど剣聖が守っていた。
「それでも彼女を最初に助けたのは貴方ですよ。もっと誇りなさい」
剣聖にまでそう言われればリリウスもお礼を素直に受け取る事にした。
「今日その日に魔法を使えた貴方は魔法使いの才能がある。こちらに居ないのは残念」
賢者は本当に残念そうだ。
「僕は! ………………ん〜? 特に無いかな! 楽しかったってもう話したしね。あ、でも………助けが必要なら何時でも呼んでね。そっちの世界の危機はリリウス達がどうにかするにしても、友達の危機はそういうの関係ないからね!」
「……………ああ、そっちもな。助けが欲しけりゃ俺を呼べ」
「えへへ〜…………」
魔神王を倒して世界を救って以来、助けを請われることはあっても助けてやると言われたのは仲間以外では初めてだ。
「そっちの冒険者は何時か神になれるんだっけ? こっちの戦女神もね、元々人間だったんだ。僕もなれるかもね」
「そうなのか」
「そしたら2人で
「いいぞ」
「えへへ、約束!」
リリは年の割に落ち着いたいい子だが、自分が遠慮などさせないよう育ててたらこんなふうに天真爛漫に育ったのだろうか? などと思うリリウス。
「それじゃあ、なるべく集まって。範囲が分からないから」
賢者を中心に集まる一同。スクロールが開かれ巨大な魔法陣が浮かび上がり眩く輝く。
「…………リドとアステリオスは居ないか」
【ソーマ・ファミリア】の自室。ここがリリウスにとって帰ってくる場所の様だ。ふぁ、と欠伸をする。
そういえば今回の冒険、一度千切られた腕をくっつけていた。一応アミッドに診てもらいに行こう。
「……………何その格好」
「リ、リ、リリ、リリウス!?」
体のラインが出て脇腹が見え肩を出し丈は長くも、しかしスリットの入ったスカートという清楚なんだか大胆なんだか良くわからない修道女っぽい格好をしたアミッドがいた。
患者も治療院の職員も何やら感動し崇めている。
「これは、その、違うのです! ダンジョンで服がボロボロになってしまい…………」
ダンジョンで服がボロボロになって何故着替えたのか…………彼女も彼女で別の盤に巻き込まれたのだろう。
「こほん。それで、要件は?」
「腕取れてくっつけ直したから一応変な付き方してないか確認お願いしに来た」