ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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ダイダロス通り

 【ヘスティア・ファミリア】が莫大な負債を負っているという噂が聞こえてきた。どうやらベルの持つヘスティア・ナイフを製作依頼した際払えなかった二億ヴァリスはそのまま借金となったらしい。

 

「……………二億」

 

 ヴリトラの鱗から造ってもらった時のマーダは4億ヴァリス。色々混ぜ、リリウスの血を媒介に貪食の力を得た今は値段などつけようがない。

 

 フロストペインやズベン等はリリウス作だが値段にすると5億ヴァリスを下回ることは無いだろう。アルナスルやバロルソラスはオラリオで製作された十億ヴァリスの呪道具(カースウェポン)

 

「安いな」

「高いですよ」

 

 逆さまに吊るされたリリウスの言葉にアミッドが呆れたようにいう。ダンジョンに潜り怪我をするなとは言わないし、冒険者に危険なことをするなとも言わないがそれはそれとしてズレた腕を自分で千切ろうとしたので吊るされた。

 

 大概の薬は効かないのでソーマが渋々デメテルの作物から造った神すら酔わせる劇物(ソーマ)を飲ませ酩酊させ麻酔代わりにした。

 

 ソーマは他神(たにん)権能(ちから)に頼ってしまったと少し落ち込んで『引き篭もる』と言い残して自室に入ったが、まあ引き篭もるのは何時ものことだ。

 

リュー(第一級)が居るんだ。稼ごうと本気になれば何時でも稼げる」

「第一級と言えば、もう1人の方はどうしたのですか?」

「セレニアなら【ロキ・ファミリア】に改宗(コンバージョン)した」

 

 元々ベートと共にいるためにオラリオへ戻ってきたわけだし。ついでにランクアップもして第一級になっている。

 

「羨ましいですね、好きな方と一緒にいられるのは。女として憧れます」

「…………一緒に来るか?」

「なっ!?」

 

 リリウスの言葉にアミッドがボッと顔を赤くする。それはそうだろう、今の言葉はつまり『お前が好きなのは俺だろ』と言われたようなものである。

 

「…………私は、ここがいるべき場所ですので」

 

 呼吸を整え気持ちを落ち着かせ、しかし耳は赤いままのアミッド。リリウスはそうか、と返すと鎖を引き千切る。落ちた鎖をボリボリ食いながら窓から出ていった。

 

 

 

 

 ダイダロス通り。地上の迷宮とも称される入り組んだそこはシャバラとシュヤーマの散歩コース。3匹の獣が上に横に駆け回る。

 

 軽い運動なれど並の獲物ならあっさり狩られるであろう速度だ。と、不意にシャバラが鼻を鳴らし向きを変える。

 

「ワフ!」

「うわぁ!?」

 

 フィルヴィスが居た。ついでに【ロキ・ファミリア】の面々も何人か。

 

「シャ、シャバラ!? あ、おいこら! や、やめろ!」

 

 スンスンクンクンと匂いを嗅ぎながらフィルヴィスの懐から肉果実(ミルーツ)を見つけ出す。どうやらその匂いに誘われたようだ。

 

「食い意地の張った奴だ」

「ワフゥ………」

 

 ベシンとシュヤーマが犬チョップ。突然現れたリリウス達に警戒心を向ける【ロキ・ファミリア】。

 

「……………こんにちは」

 

 アイズがおずおず挨拶した。

 

「ああ、こんにちは。どういう状況だ?」

「その子、元【ディオニュソス・ファミリア】で今まで死んだってことにされてたんでしょう? 色々知ってそうじゃない」

 

 と、切り出したのはティオネ。

 ディオニュソスが邪神であった事は一部有力派閥とデメテルが知っている。その邪神の死んだ筈の眷族が生きているとなればまあ怪しい。

 

「フィルヴィスさんはそんな人じゃ………」

 

 レフィーヤが擁護しようとはするがなるほど確かに怪しさしかない。なんだって地上を歩いているんだこいつは………。

 

 弱体化した今の状態では第一級から逃げられないだけか。住んでいても迷うと言われるダイダロス通りだし。

 

「こいつはそのディオニュソスとかいう神の部下じゃねえよ」

「そうは言われても………」

「フィルヴィスは俺のだ」

「────!?」

 

 現状の行動はウラノスの私兵だが厳密にはリリウスの部下だろう。それを伝えるとフィルヴィスの顔が真っ赤に染まり首を傾げるアイズ以外の女達がきゃあきゃあ騒ぐ。

 

「フィルヴィスってリリウスさんの事好きなの?」

「んなぁ!?」

「いや〜、やっぱりこういう話ってしたくなるでしょ? ならない?」

「そ、そういうお前達はどうなんだ!」

 

 顔を真っ赤にしながらフィルヴィスはその場の全員を指差す。

 

「わ、私は居ませんよ。憧れている人ならいますけど」

「聞きたい、私の秘めた恋心」

「アフロディーテ」

「アキさんはラウルさんとか?」

「ないない」

「お前はどうなんだ!」

 

 各々が答える中フィルヴィスが次に目を向けたのはリーネ。単純に並んでいる順だ。

 

「わ、私は………ベートさん………が…………」

 

 最後の方は消え入りそうな声。冒険者でもなければ聞き逃していた事だろう。

 

「「「ええええええ!?」」」

 

 しかし聞こえては居たが耳を疑う名前に女子達が思わず叫ぶ。

 

「ベートォ!?」

「嘘でしょリーネ!」

「考え直したほうが良いぞ」

「フィルヴィスさんまで………」

「わふ、くうん。がるる」

「わぅ! わん、ぐるるる」

「『あの戦士を無しと言える立場か』『酒の席で自らの責で殺しかけた者を笑う輩風情が』と言っている」

 

 シャバラとシュヤーマはまだ酒場の一件を許してないようだ。

 

「見る目はあるが、彼奴はセレニアの番だろ」

「うっ…………うう、セレニアさん、綺麗ですもんね」

「? 彼奴は女子の見た目とかあまり気にしないだろ」

 

 リーネはその言葉にますます落ち込んだ。愛しい相手を少しでも『顔を見る男』と思ってしまいそれを否定されたからだ。

 

「それじゃあアイズは?」

「私? 私は…………」

 

 アイズは無意識にある指の付け根辺りを弄る。そこに指輪などしていないが、まるで指輪を確かめるような動きだ。

 

「いない、かな…………」

「え〜? ほんと? 好きじゃなくても、気になる人とか………」

 

 と、その時だった。

 

「すいませーん! 道に迷ってしまって、ここが何処だか教えてください!」

 

 ベルがやってきた。

 

 ティオナが早速飛びついて漂わせる麝香………歓楽街の匂いに気付きレフィーヤが激怒しアイズが理由の知らぬ苛立ちを覚えながらもリリウスからまぐわった臭がしないとお墨付きをもらい、しかし何故か持ってた精力剤が見つかり誤魔化そうとするベルから取り上げようとしたレフィーヤにかかりウサギと妖精の追いかけっこが始まるまで数分もかからなかった。

 

「ところでお前達は此処で何してんだ?」

「そういうリリウスは?」

「散歩」

「私達は………まあ、怪しい場所に繋がる入り口とかを探しているのよ」

「ああ、それならあっちにあるぞ」

「「「……………え?」」」

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