ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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人造迷宮

「僕達が見つけたのとは別の扉か…………」

 

 フィンがリリウスがアイズ達に教えた扉を見つめる。そこもやはりオリハルコンだ。

 ただフィンが見つけた扉より真新しく見える。

 

「壊して入ったからな。何時の間にか直ってたが」

「存在を知っていたのか?」

「ギルドには共有している。お前達が知らないのなら知る必要がないと思われてたんだろ」

 

 まあ生まれたばかりの異端児(ゼノス)が囚われている可能性もあるからだろう。リリウスも何度か保護してるし。

 

「つーか自分これ放置してたんか? らしくないなぁ」

「ここ、自壊機能があって一度生き埋めになった。以来、俺が本格的に下層を探索しようとすると柱の一部を外して警告してくる」

 

 とは言えリリウスの侵入を防げるわけでもなく、ただ通るだけで壊すのは割に合わないのか素通りさせるルートはもう門が開け放たれている。偶にリリウスが憎い闇派閥(イヴィルス)の自爆兵が来る程度だ。

 

「横はオラリオ全域。縦は最初は18階層ぐらい………現在も拡張中」

「18!? そんな深さ、一体何時から!」

「さあな。まあ、百年二百年では足りないだろ」

 

 地上に街を作るのとはわけが違う。岩盤をけずり、崩れぬよう柱を立て………さらには構成する材料。

 

最硬金属(オリハルコン)の扉に超硬金属(アダマンタイト)の通路………通路を覆う石板には『オブシディアン・ソルジャーの体石』が混ぜられてて物理、魔法にも耐性がある」

 

 リリウスやレオンの『光』なら消し飛ばせるだろうが………オッタルも一応使えるのだったか。

 

「ほかに警戒することは?」

「ダンジョンから引き入れられたモンスター。基本的に操りやすい極彩色だが迷宮破壊の芋虫はいない。例外としてポイズン・ウェルミスがいる。あと、不治の呪の装備がある」

 

 それに加えて怪人(クリーチャー)に、その戦力の全容が把握されていない闇派閥(イヴィルス)の残党。

 

 地下勢力はリリウスの活動範囲を一部に絞っている。それはつまり、それ等がリリウスの脅威にならないことを証明している。

 

「もう一つ扉を見つけたんだろ? あからさまに誘ってる。つまりお前達ならこの迷宮の脅威にならないと判断されてる」

 

 はっきりとしたその言葉にフィンは苦笑しガレスとリヴェリアが地下を見る。

 

「まあだから、お前達の試練にはちょうどいいだろ。乗り越えろよ」

「簡単に言ってくれるね」

「簡単じゃなかろうがやれ。冒険者だろ、お前達は」

 

 そして同時に都市最強派閥の一角。未だ最強の影に追いつくに至っただけの身なれど、彼等が次の黒竜戦の戦力なのだ。来る日の為に彼等は試練を超え強くならねばならない。

 

「呪詛に関してはアミッドを頼れ。特効薬作ってた」

 

 あえて呪を受けてその血で使った解呪薬とか、リリウスが自分で刺して出した呪われた血で造った()呪薬とか。

 

 

 

 

「それで、【ロキ・ファミリア】は人造迷宮に挑んだか」

 

 クノッソス入り口の一つ。地下水路と偶然繋がったそこでミアの弁当を食ってるリリウスにフェルズが話しかける。

 

「彼等は勝てるのか?」

「事前に準備して戦力が整ってんなら今のオラリオでも攻略出来るだろ。今回は偵察で………2級まで入れた。まあ、何人かは死ぬかもな」

 

 リリウスはそう言ってモンスターを蹴る。

 女の形を持つそれは人ではなく、精霊の分身(デミ・スピリット)。寄生元は水黽のような極彩色のモンスターで、体から生やした水晶を増殖させ防御したり飛ばして攻撃する。

 

 リリウスの敵ではなかったが人造迷宮内には精霊の分身(デミ・スピリット)のなり損ないが犇めいている。

 

 特に茸が厄介だ。森のと異なりアダマンタイトの通路では広がりきれていないし、羽化していないから知能も低いが死体兵を大量に操る。

 

 分断させられ第2級だけで戦う事になれば最悪そのチームは全滅もあり得る。

 

「まあ、大丈夫だろ…………」

 

 

 

 

 

「来てる来てる! クソ、あれ絶対バジリスクだ!」

 

 巨大な蛇の下半身に女体のような上半身を持つ女体型。吐き出される猛毒は麻痺毒。闇派閥(イヴィルス)の残党が苦悶の表情を浮かべ石化したかの如くその場に固まり、そして死んだ。

 

 モンスターの中でも最強とされる『竜種』の一角。女体型という強化を加えられたそれは間違いなくLv.5に匹敵する怪物。

 

 ヴァレッタの強襲により分断させられた【ロキ・ファミリア】。リリウスから受け取った事前情報で1つ目の落とし穴を回避した後襲いかかってきた女体型の群。

 

 混戦のさなか再び開いた落とし穴に共に落ちてきた怪物と相対するはシャロン、レミリア、クレア、カルミリア。第一級の居ないそのパーティーに勝機などない。

 

「げ、毒だぜ毒、この狭い空間で」

「バジリスクかしら? あの毒、『耐異常』持っててもキツイのよね」

 

 と、褐色肌の美女が呻きおっとりした美女が女体型の姿を見てあらあらと頬に手を当てる。

 

「え、あんたらは……」

 

 

「此奴等、切っても切っても死なない!」

「奥の本体を倒せば!」

「どうやって!? 近付けもしないのに!」

「てか、この霧………毒? 気分が…………」

 

 第一級はいるが前衛職ゆえに数多の死体を操る大本に手を出せないヒリュテ姉妹他5名。

 立ち込める霧を吸う度に体が痺れていく。元々オラリオの外でLv.3となったヒリュテ姉妹は第一級の中でも『耐異常』が低い。このままでは都合の良い傀儡にされる。

 

「霧じゃねえ。毒胞子だとよ」

 

 投げ込まれる小瓶。パリンと割れると空気に触れた液体は熱を持ち、発火する。引火した胞子が一気に燃え上がる。

 

 神様達がテンション上げるほど大好きな『フージン爆発』である。下界の子供達は詳しい理屈は分からない。

 

「事前に言ってよ、ギリギリだったよ!」

 

 仲間を守護するドワーフの魔法が爆炎を防ぎながらも当のドワーフは狭い空間で爆発を起こしたパルゥムに文句を言う。

 

「てめぇ!」

「ああ〜!」

 

 ティオネは敵意を剥き出しに、ティオナは純粋な驚愕で彼女達を見る。

 

 

 

「大丈夫かしらガレスのおじさま?」

「まあ、硬さだけならオラリオ随一ですからねえ。問題ないでしょう」

 

 スカルシープの群を取り込み大量の(パイル)を放つ女体型から仲間を守る盾とならざるを得なかったガレスに心配そうに声を掛ける美女と心配するだけ無駄だと笑う美女。ガレスは少し驚きながらもニカリと笑う。

 

「お主達も来ておったのか。先に言ってくれれば編成ももっと考えられたものを………」

「私もそうしたかったんだけど、おじさま達が飛び込むって聞いたのついさっきなの」

「歓楽街で何やら謀の気配を察知して人員を割いてましたので。都市最強派閥なら、まあこの程度問題ないでしょう」

 

 と言うかこの程度問題にしていては黒竜や穢れた精霊本体(さき)が思い遣られる。

 

「返す言葉もないわい」

「こらこら、嫌味言わないの。ごめんなさいね、リリウスから情報を聞いたって聞いて、この子ったら不機嫌なのよ」

「あの勇者、どの面でリリウスと話など…………」

 

 ふん、と鼻を鳴らす。事情を知らない【ロキ・ファミリア】の団員は困惑する中ガレスは言い返せない。

 

「まあ今は忘れましょう! 悪を前に喧嘩なんて、そんなの全然正義じゃないもの! それに、ほら、こういう時言ってみたかったのよね!」

 

 そんな空気を笑い飛ばすように彼女は道化のように笑う。

 

「【アストレア・ファミリア(わたしたち)】が来た! ってね」

 

 人造迷宮偵察戦、【アストレア・ファミリア】参戦。

 

 

 

 

「このタイミングで来るかぁ…………」

 

 その映像を眺めるタナトスはん〜と肩を竦める。

 フィン、ではないだろう。頼るべきは頼るが平時は他の派閥になるべく頼らないのが名声を気にする彼だ。それで何とかなるのが彼で、それで何とかさせない為の戦力を用意したのがこちらだし。

 

 少なくとも一度目は【ロキ・ファミリア】を殲滅………まで行けなくとも死者を出すところまでは行けるかと思ったのに。

 

「彼女達が動くとなるとリリウスちゃんかなぁ。隠しては居たんだけど、匂いとか音である程度こっちの戦力もバレてたろうしなあ…………今日は出資者(スポンサー)いるから格好つけさせて欲しかったよ」

 

 タナトスが恐る恐る振り返れば不機嫌な顔の女神(スポンサー)。彼女の目下仇敵はフレイヤだが自分以上の名声を持つ【ロキ・ファミリア】も普通に嫌いだ。

 

 まあ幸い、レヴィスのおかげで第一級の1人(アイズ)は落とせそうだが………。

 

「……………ん?」

 

 と、そのアイズが全力で(魔法)を発動した。

 レヴィスからすればただの悪あがきにすらならない風。しかしそれはレヴィスに対してではなく、迷宮全体へと伝える風。

 

 風の正体を察した冒険者達が流れる風を遡り発生源へと向かう。

 

「……………ありゃりゃ」

 

 人造迷宮は、迷宮。数多の命を吸う悪夢の坩堝であろうとそこだけは変えてはならない。絶死の迷宮であっても『正解(アリアドネ)』は存在する。

 

 冒険者が集う。風に導かれアイズの下へ。

 

 更に精霊の風に反応した女体型共まで風に惹かれ通路に詰まり門の開閉を邪魔しモンスターを潰し、もう散々である。

 

「タナトス様ぁ! 天の牡牛までもが風に反応し、暴走しています! 拘束具を破壊して、今にも飛び出しそうです!」

「マジでぇ…………()()()は大丈夫?」

「あちらの封印は………ただ、()()()()()()1()8()()()()()()()()()()

「バルカちゃん発狂するだろうなあ…………」

 

 さてさてどうしたものか。精霊の分身(デミ・スピリット)を抑えられるものは今ここには居ない。

 

「いっそ解放させたらどうだ」

「え〜。出資者(スポンサー)様の要望でもそれはちょっと………」

「仮想フレイヤとしては最適な相手だ。『(エサ)』を手に入れ次第あの女に仕掛ける予定だったからな………」

 

 まあ仕方ないか、とタナトスは肩を竦める。どのみちレヴィスがいなければ諌めることも出来ないのだ。

 

「仕方ないなぁ、解放して」

「よろしいのですか?」

「この際しょうがないよ。元々スポンサー様にあげる予定だったし」

 

 と、その時………

 

「タナトス様! 大変です!」

「今度はなぁに? バルカちゃんが俺の命でも狙い出した? 極東のDO☆GE☆ZAでも披露する?」

「『結界』から一匹のモンスターが抜け出て、更に黒の砂漠で入手した『毒竜』の角を喰らい暴れ回ってます!」

 

 

 

 その『竜』は元々百首邪竜(テュポーン)と名付けられる予定であった。

 モンスターとモンスターの融合…………とある人道介さぬ研究員が怪人(クリーチャー)の技術を流用し編み出した技術によって深層の数多の竜を融合させた多頭竜。それは最後の追加要素を取り込んだ瞬間、数多の竜の首はたった一匹の蛇竜に呑まれた。

 

 それでも元は複数の『竜』の集合体。忌々しい風に、騒がしい上に苛立った竜は己を封じる封印の網目に体の一部を通した。

 

 その肉塊は竜となりアダマンタイトの壁を破壊しながら上を目指し、たまたま見つけた竜の角に反応した。

 

 それはとある巨獣の心臓を喰らい、変質した悪辣なる竜の角。竜たるその怪物は引かれるようにそれを喰らった。

 

 『心臓』ではない。それは既に食われている。

 砕かれた角の欠片。巨獣を生み出すには至らず、されど獣を生み出す程度には力が残っていた。

 

 オリハルコンの壁や床を溶かし障害物など無視しながら歩みを再開した。

 

 

 

 

「………………………リリウスちゃんを招こう。流石にね、全壊させたらバルカちゃんに悪い」

 

 そしてこれを止められるのはリリウスだけだとタナトスは確信していた。神代以前(古き良き時代)に戻ってほしいだけであって人類を全滅させたいわけではない。

 

 己の眷族(こども)であるバルカの苦労も奮闘も知っているタナトスは、流石にクノッソスそのものを無に帰しそうな存在を放置出来なかった。

 

「タナトス様、大変です!」

「今度はなぁに?」

「リリウス・アーデが侵入! バルカ様が発狂し自壊装置は起動できない事に気付いたのか、壁や扉を破壊しながら潜っています!」

「…………あ〜、これはぶつかってくれるね。英雄様に感謝感謝」

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