ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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タラスク

「アアアアアアアア!!」

 

 『風』に歓喜し暴れ回る女体型の群。第一級に匹敵する基礎能力(ポテンシャル)の超大型級。

 特に()()が厄介なのが面倒くさい。

 

「来る!」

 

 苔の体に木の根のような骨格を持つ精霊の分身(デミ・スピリット)。骨格を変え形を変えながら今は複数の脚で迫り、何かを撃ち出す。

 

「くぅ!」

 

 アスタの防御魔法が防ぐが、その顔色はよくない。蔓が魔力に反応するように伸びる。

 

 精霊の分身(デミ・スピリット)に撃ち込まれた種だ。体力と魔力を吸ってくる。根は肉深くに入り込み、抜けずにむしろ成長のための栄養を取られる。

 

 【ロキ・ファミリア】の第2級を庇い寄生された。

 

 消しされるとしたら恐らくはアミッドぐらいだろう。もしくは本体を倒せば………しかし、他にも居る。と………

 

「「「アアアアアアア!?」」」

 

 壁と天井が切り裂かれ崩れ女体型達が瓦礫に埋まる。新たに降りてきた小さな影はリリウス。

 

「って、リリウス!? お前、ここに入ったらやばいんじゃ………」

「問題ない。俺よりやばいのが暴れてるみたいだからな」

「はぁ?」

「ちょ、後ろ!」

 

 ライラがどういうことかと困惑していると瓦礫の奥から植物を寄生させる女体型の枝が見える。ティオナが思わず叫ぶ中リリウスは見向きもせず剣を振るう。

 

 届かぬ筈の斬撃が届き枝と瓦礫とその下の本体ごと切り捨てアスタに寄生した蔓が消える。

 リリウスが『斬光』を元に編み出した威力は劣るが攻撃範囲は同等の『剣閃(けんせん)』である。

 

 Lv.9のリリウスの斬撃が距離関係なく届く時点で奥義というより最早兵器だが。

 

「わ…………」

 

 ヒュイと風切り音が響きアダマンタイトの通路が3階層分ほど切り裂かれる。

 

「アダマンタイトの迷宮を斬ってる…………」

「とんでもないわね………」

 

 と、ピタリと剣を止めるリリウス。目を細め、髪を黒く染め角を生やす。

 

「ちょ、お前! それは待て」

「無理だ」

 

 どす黒い風が渦巻き、片手に収束させ下方へ放つ。下方より放たれたドス黒い風がリリウスの風を押し返した。

 

「────!?」

「なぁ!?」

 

 Lv.9(リリウス)が押し負けると言う予想もしていなかった光景に驚愕するライラ。漆黒の風は尚も吹き続け………。

 

「っ…………あ?」

 

 ガクリと膝を突くライラ。倦怠感が襲い手足が痺れ、臓腑が燃えるように熱い。

 

「これ、毒……リリウスじゃ、ねえよな………」

 

 ならばリリウスの黒風(かぜ)を押し返した何者か………。黒い毒の風に、リリウスに押し勝つ力。まさか、あれがこのような狭い場所に現れるわけがない。

 

「────!!」

 

 削り溶けた穴の縁を掴む爪。グン、と体を持ち上げる。

 

 最初に見えたのは角。次に顔。

 

 歪にネジ曲がった角の生え際は鬣に隠れ、短く突き出た口から鋭い牙が覗く。

 

 ノソリと這い上がり明らかになった全容は異形も異形。六本の足に、亀のような漆黒の甲羅に覆われた体。蛇のように長い尾を覆う鱗は魚のよう。先端は鏃のように尖っていた。

 

「新、種………?」

 

 見たこと無い怪物はギロリとライラ達を睨む。と、吹き飛ばされた穴から戻ってきたリリウスがマーダを振るう。

 

 亀のような見た目と裏腹に黒風(かぜ)で加速しマーダを甲羅に当てる。甲羅よりもアダマンタイトの床が悲鳴を上げ砕け新種の体が再び下の階層へと落ちた。

 

「ライラ、アスタ!」

 

 リリウスはライラ達に小瓶を投げ渡す。リリウスが有事に備えて持ち歩くようにしているリリウスの毒………()()()()()()()の特効薬だ。

 

「オオオオオオオオオオオッ!!」

 

 穴から響く咆哮。先程の怪物のものだろう。全身の細胞が竦む。今すぐ逃げ出したいと思う程の存在感は、アルフィアや……それこそベヒーモスを思わせる。

 

 リリウスは即座に穴に飛び込んだ。

 

 

 

 

「獅子の頭に六本脚…………彼奴等はタラスクとか言ってたか」

 

 つい先日の冒険を思い出しながら呟くリリウス。尤もリリウスがあのダンジョンもどきで見かけたのは死体を繋ぎ合わせた紛い物と、ダンジョンもどきが造った紛い物の量産品だが。

 

 確か本物のタラスクは竜なのだとか。

 

「……………竜だな」

 

 【滅蛇者(ヴリトラハン)】がリリウスが認識をする前から反応している。

 

 そして、反応しているスキルはもう一つ。【獣王化身(ベヘモット・アヴァターラ)】だ。

 

「ベヒーモスの一部を食ってるな」

 

 厳密にはベヒーモス・オルタナティブ。悪辣なる竜に食われ、内から竜を変容させた古代の怪物の模造品のさらに模造。だが強い。

 

(………傷一つなし)

 

 地面が柔らかいせいで衝撃を逃されたとは言え、6年近く深層にて魔石を食らったヴリトラの鱗にすら傷をつけたマーダで斬られ無傷。

 

「オオオオオ!!」

 

 だが遅い。

 階層主すら超える巨大でありながらリリウスへと追い縋るヴリトラと違い理不尽な防御性能と速度は両立出来て…………

 

「あ?」

 

 タラスクは唐突に手足を折りたたむ。本物の亀のようだ。

 そのまま黒風(かぜ)を纏い共に回転し始める。体を傾け甲羅の端が床に触れた瞬間、加速。階層主ほどではないが超大型に属する大質量がリリウスへと迫る。

 

「………っ!!」

 

 重い。タラスク自体相当な重さではあるのだろうが、速度を重さにLv.9のリリウスを吹き飛ばす。

 高速回転に巻き込まれ、勢いそのまま壁に叩きつけられたリリウスへ再び突っ込んでくるタラスク。

 

 オリハルコンの壁が破壊されアダマンタイトの扉が砕け広間に飛び出る。

 

 床が通路より低い。空中に放り出されたタラスクはここでは加速は出来まい。リリウスはバチリと雷をマーダに纏わせる。

 

「ガバァ!」

 

 タラスクはリリウスに向かい炎を吐き出す。

 

「ぬりぃ」

「!?」

「落ちろ」

 

 叩きつけられるマーダ。咄嗟に角で受けるタラスク。隕石の如く床に叩きつけられさらなる下層へ落ちていった。

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