ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
【イシュタル・ファミリア】。
歓楽街を支配する彼女の目的はフレイヤを最強の座から引きずり落とすこと。そのコンプレックスはバベルに似せた
兎にも角にも自分が一番でなければ納得しないのが『美の女神』というものだ。競う事すら面倒と思うフレイヤが珍しい。因みにアフロディーテは誰が何と言おうと自分が一番だと思っているので気にはするが一々突っかからない。
「しかし、リリウスの弟子であるベルはもちろん身内がいるのも知っていてよく襲いましたね」
不意打ちで分断されるもフリュネをボッコボコにして合流したリューが走りながら呟く。リュー曰く、フリュネは明らかにランクアップ級の強化がされていたらしい。
理性を代価にするフィンやリリウスの魔法、体力、精神力を大きく消費するオッタルのスキル、段階を踏む必要があるレオンの魔法………ランクアップに匹敵する効果を齎す魔法、スキルはなくはないが、明確にランクアップ同然と言われる魔法は確認されていない。
しかも恐らく発動者は分からないが対象者はデメリットがないと思われる。フリュネはデメリットがあるようなことはしない性格との事だ。
「しかし取り逃すとは相変わらず甘いなクソ雑魚妖精」
「し、仕方ないでしょう! 逃げるというのなら捕まえるより仲間の安否を優先すべきだ」
「生きてようがイシュタル殺すの邪魔するなら殺す」
リリウスの言葉とともに溢れた殺気でモンスター達が大慌てで逃げていく。
「ほんと、何でリリウスに喧嘩売るのかしらね」
「こいつが美の女神に惚れたからだろう」
アリーゼの疑問に輝夜がふん、と鼻を鳴らし答える。
美の女神と言うのは自分が一番美しいと思っている。ならばこそ、他の美の女神に魅了されたのなら自分なら上書きできると信じて疑わない。
「以前接触されたようだが、その時は本気じゃなかったとでもいうのだろうよ」
「以前? 何時?」
全く身に覚えのないリリウスは首を傾げた。本来とても頭がいいのに、興味ないことにはとことん使わない性質である。
「おい、地上のルートはこっち!」
「近道を使う」
リリウスがそう言って目指すのは階層の端。行き止まりの筈の壁を蹴りつけるとアダマンタイトの扉ごと吹き飛び通路が開通する。
リリウスの優れた聴覚が何やら男の悲鳴を感知したが無視する。
「匂いはこっちだ」
「そっか。繋がってるんだもの、使うわよね」
リリウスからダンジョンに繋がる人造迷宮が存在し、そこに
【フレイヤ・ファミリア】は無理として【ガネーシャ・ファミリア】や【ロキ・ファミリア】と協力して挑むべきだろう。
「ていうかリリウスは通れないんじゃ」
「本格的な攻略ができないだけだ。通る分には向こうも無駄な事は──」
扉や隠し穴が開き極彩色のモンスターやポイズン・ウェルミスの群が現れた。
「今日は迷宮の主の機嫌が悪いらしい」
「そういう日ってあるわよね!」
と、アリーゼは笑う。
「そういう問題ではないわ! おい、お前何か怒らせるようなことをしてないだろうな!?」
「……………………………?」
輝夜がリリウスに向かい叫ぶがリリウスは考えて考えて首を傾げる。厄介な敵を生み出してむしろ叶うなら今すぐ破壊したいほど怒っているのはコチラなのだが。
「心当たりはないようね。というかこんな迷宮作る時点で十中十で悪なんだから良いのよ」
「正義の言葉ですかアリーゼェ!?」
と、その時。
「クキュー!」
可愛らしい鳴き声と共に何かがリューに向かって飛んできた。リューは咄嗟に捕まえる。
「クギュブ!?」
「あらカーバンクル」
キュウキュウ何かを訴えるように鳴き喚く。
「後で魔石を抽出し秘晶を売るとしましょう」
「クキュ!?」
ガーンとショックを受ける四足獣。と、曲がり角からモンスターが飛び出してくる。リューは片手を塞ぐ邪魔なカーバンクルを放り投げリリウスが首の後を甘噛みで咥える。
「キュ!」
カーバンクルは助けてくれたと勘違いしたのか感激したように見える目をリューに向ける。リリウスは親猫のようにカーバンクルを咥えて走っている為全力で動けなくなってしまった。
「っ! 毒液!」
と、天井に張り付いていたポイズン・ウェルミスの群が毒液を発射する。猛毒の雨、無傷で耐えられるのはリリウスぐらいだろう。と…………
「クキュウー!」
カーバンクルが叫び秘晶を輝かせる。緑玉色の障壁が張られた。カーバンクルの魔力壁だ。モンスターの中でも多くの魔力を持つカーバンクルが操る魔力壁。上級魔導士の防御に匹敵する防御力を誇り、故にカーバンクル撃破の報告が少ないのだ。
「もごご、もご、ぐも」
「食うか離すかしてから話せ」
カーバンクルを咥えたまま何やら呟くリリウス。輝夜がツッコむ横でアリーゼはうんうん、と頷く。
「リリウスが言うように、このまま一気に駆け上がるわよ! カーバンクルちゃん、防御お願いね!」
「クッキュー!」