ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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炎の強襲

 地上に出る。そこはダイダロス通りの中でも歓楽街に近い場所。

 

 同盟を持ちかけたのがイシュタルからにしろ闇派閥(イヴィルス)からにしろ、接触が容易いというのも手を組んだ理由の一つなのだろう。

 

「っ! 止まれ!」

 

 と、歓楽街への門で呑気にあくびをしていたアマゾネスがリリウス達に気付いて叫ぶ。リリウスはマーダに炎を纏わせ構えた。

 

「歓楽街が、男が来るのを止めるなよ」

 

 開戦の狼煙は高らかに。業火の柱が立ち上った。

 何事かと困惑するオラリオの住民。その炎が魔法によるものでないことに気付けるのはオラリオにおいてたった1人。

 

「……………行くぞ」

「クッキィー!」

 

 リリウスのフードに入れられたカーバンクルが高らかに叫ぶ。どうにもあの迷宮を使っていた人間に恨みがあるようだ。

 

「【英傑(ラーマ)】だと!? 深層に向かったんじゃなかったのか!?」

「くっ! いくらLv.9といえど、他派閥に抗争を仕掛けるなど──」

「吠えるな」

 

 隣に立っていた仲間が消えた。少なくともそのアマゾネスにはそう見えた。それほどの速度で移動したリューは空色の瞳でアマゾネスを睨む。

 

「我々の団長であるクラネルさんを先に誘拐したのは貴様等だ。よりにもよって、クラネルさんを、アマゾネス共の群れに! 彼に指一本でも触れてみろ、絶対に許さん!」

 

 誘拐される時に既に触られているのでは? リリウスは訝しんだ。と……

 

「今だ!」

「………ん」

 

 騒ぎに集まってきたアマゾネス達の内何割かがリリウスに向かい杖を振るう。歪な魔力がリリウスを襲う。

 

異常魔法(アンチステイタス)に………呪詛(カース)?」

 

 内幾つかは魔道具(マジックアイテム)呪道具(カースウェポン)。なるほど、自身の力を上げ相手の力を下げれば、必然差は低くなるだろう。

 

「重ね掛けだ! このまま数で押せ!」

「ついでに捕まえて種馬だあ!」

「子種よこせ!」

 

 リリウスは世界最強なのでアマゾネスにもめちゃくちゃモテる。強い雄の種で孕もうと迫るアマゾネスの集団は………輝夜に斬られた。

 

 鮮やかな『技』。人を斬る恐るべき技術のはずなのに美しさを感じさせる程だ。

 

「貴様等には過ぎた種だ」

「……………」

 

 何やら怒っている様子の輝夜にリューは首を傾げた。

 

「そうよね! リリウスと付き合いたいなら、まずお姉ちゃん(私達)を倒してからじゃないと! 来なさいアマゾネス、お嫁さんの作法を教えてあげる!」

 

 リリウスが雷で一人残し全員気絶させた。

 

「…………あら」

「キュキュー、キュクク、キュキュキュ!」

 

 カーバンクルは楽しそうに笑っている。

 

「お前、確かメレンであったな」

「あ、はい。お久しぶりです!」

 

 土下座し手を上に向けるアマゾネス。確か変な女神を回収したアマゾネスだ。ん? つまりあの時の女神がイシュタル?

 

「…………イシュタルって樽みたいな体型のカエルの化け物だったか?」

「それはフリュネですね。イシュタル様はちゃんと綺麗でしたでしょ?」

「???」

 

 容姿を思い出そうとしてぼんやりとしか思い出せないリリウス。先入観のせいでカエル頭の女神が頭の中に投影される。

 

「まあ良い。この辺りは甘い匂いで気分が悪くなって追いにくい。ベルが捕らえられてる場所に案内しろ」

「ええ!? いや、流石にそれは無理です! 後で怒られる!」

「死ぬよりマシだろ」

「任せてください! 最短ルートで案内しやす!」

 

 すごい切り替えの速さだ。

 

 

 

 さて、ベルが捕らえられているのは当たり前だが女主の神娼殿(ベーレト・バビリ)。ベルをこっそり味見するつもりだったフリュネは現在漸く意識を取り戻しクノッソスから地上に向かっているので彼女の愛の巣()に捕らえられることはなかった。

 

 まあフリュネ以外でもアマゾネスはベルみたいに将来有望な強い雄は好きな訳で…………。

 

「ちょっとぐらい味見しねえ? なあ、どうするよレナ」

「私はパース。もう心に決めた雄がいるも〜ん♪」

「私は味見しようかな」

 

 と、アマゾネス達が気絶したベルを前に餌を前にした飢えた肉食獣のような表情を浮かべている。

 

「お前達、勝手なことするんじゃないよ!」

 

 それを一喝する猛獣使いもといリーダーはアイシャ・ベルガ。団長でも副団長でもないが力だけのフリュネ(団長)やイシュタルに常に侍るタンムズ(副団長)よりも団員に慕われる実質的な団長だ。

 

「そのガキはイシュタル様が使うんだ。下手に手を出したらただじゃ済まないよ。どうせ全部終わったらあんたらにも貸し出されるだろうさ」

「えー、イシュタル様の後じゃヤダー」

「イシュタル様、イシュタル様ーしか言わないもんなあ」

 

 なんなら主神より慕われてたりする。と、その時………

 

「なんだ!?」

 

 ダイダロス通り方面から火柱が見えた。あそこは、門? まさか襲撃!?

 

「クロッゾの魔剣か? 連中、もう登ってきたってのかい!」

 

 足止め部隊の帰還の報告はなかったが、まさかやられたのか? と、夜闇に何かが向かってくるのが見えた。あれは、鳥?

 

「ケェー!」

 

 窓ガラスを割りアマゾネス達を薙ぎ払う大鷲。大鷲!?

 

 モンスター、ではない。だがただの動物でもない。

 

「ちぃ!」

 

 Lv.3(アイシャ)の攻撃を受け止める大鷲。ボウ、と羽根を炎が覆う。羽ばたき、巻き起こる熱風。アマゾネス達を吹き飛ばした。

 

 大鷲はそのままツンツン嘴でベルの頭をつつく。

 

「う、う〜ん………こ、ここは?」

「キィ!」

「うわ!?」

 

 バサ、と羽ばたく大鷲。近くで見ると意外に大きく思わず叫ぶベル。

 

「あれ、君は………師匠(せんせい)のところの、えっと………」

「スパルナだ」

 

 と、そう答えるのは何時の間にやら音もなく現れたエピメテウス。

 

「リリウスの奴がここを襲撃したのが見えたのでな。【イシュタル・ファミリア】が何かやらかしたのだろうと襲撃しに来てみれば案の定というわけだ………」

「イシュタル………? あ!」

 

 ベルはアマゾネスの集団に襲われたのを思い出す。

 

「あの、僕以外の皆は!? 命さんが近くに居たはずで…………!」

 

 どうして自分がさらわれたのだろうか。この歓楽街で騒ぎを起こした報復? それとも、アマゾネスの()()()()目的? どちらにしろ、無関係な命が置いていかれた可能性がある!

 

「そこにいる」

 

 と、エピメテウスが見つめる柱の陰から命が出てきた。

 

「お、お見事です」

「命さん!」

「ベル殿!」

 

 お互い安堵する。命は回収された自身とベルの武器を持っていた。彼女は眷族仲間を探知できるスキルがあり、ベルのナイフは恩恵が刻まれた眷族。武器庫を探知したのだろう。

 

「攫われた、と見て良いな?」

「は、はい………突然」

「そうか…………なら、燃やすか」

「へ?」

 

 ベルが困惑する中エピメテウスは炎纏う大剣を振るう。女主の神娼殿(ベーレト・バビリ)の一角が消し飛んだ。

 

「えええ!? な、何してるんですか!」

「案ずるな。死なないようにしている」

 

 見れば炎纏うアマゾネス達は確かに生きていた。なんなら炎に守られているかのように、地面に激突しても気絶するのみだ。

 

「お、お待ち下さい! ここには実は、自分の知り合いが居て!」

「そ、そうです! 僕達、その人を助けたくて!」

「………………そうか」

 

 エピメテウスは炎を消してくれた。ベルと命はほっと安堵する。

 

「というかエピメテウスさんって、意外と大雑把と言うか大胆というか……」

「既に【イシュタル・ファミリア】は事をやらかしているからな。リリウスが言っていた椅子樽とやらは、間違いなくここだろう。ランクアップしたスパルナのいい相手になると思ってリリウスの女共と監視していたんだが………こうも早く事が進むとはな」

 

 因みにリリウスの女共とは【アストレア・ファミリア】の事だ。リリウスを狙っているのは数名だが、まあお姉ちゃん的な意味でリリウスの女とも言えるかもしれない。

 

「椅子樽?」

「イシュタルだ。興味のないことはとことん覚えんからな………」

「というより先程ランクアップって…」

「キイ!」

 

 スパルナは得意げに羽を広げる。同じ炎使いであるエピメテウスと共に深層を巡りこの度めでたくLv.4に至ったオラリオでも上位も上位。大派閥の団長であろうとそうは居ない英雄候補目前の精鋭中の精鋭の上級冒険者の一角となった。

 

「居たぞ侵入者だ!」

「捕らえろ!」

 

 と、ゾロゾロとアマゾネス達がやってくる。エピメテウスはふむ、とベルを見る。

 

「あの中にお前達が救いたい女は居るか?」

「いえ、春姫殿は狐人(ルナール)で………って、そうだ殺生石!」

「…………殺生石だと?」

 

 エピメテウスが目を細める。

 

「…………なるほど。ベル・クラネル、ここは俺が引き受けてやる。お前は春姫とやらを助けてこい」

「え、助ける?」

「詳しい事はその女に聞けば良い」

 

 そう言ってエピメテウスは剣を振るい通路に線を刻む。アマゾネス達は全く目視できなかった斬撃に思わず足を止めた。

 

「さて、月並みな台詞だが。その線を越えたいのなら相応の覚悟を示してもらおう」

「っ! 図に乗るな若造!」

 

 そう叫ぶのは歳を重ねた元男娼にして今は生粋の戦士の男。イシュタルに惚れ込んでいるが副団長と側近の座を若い男に取られ、才ある若者を妬み続ける日々を送る、そんな男だ。

 

「その意気や良し。意気だけはな………では手を捻るとしよう。赤子共」

 

 

 

「【イシュタル・ファミリア】のホームの一部が消し飛んだわ!」

「あれはエピメテウスの炎? 彼奴歓楽街とか来るのか」

「ああ、エピメテウスさんならイスカ達と一緒に地上で【イシュタル・ファミリア】を監視してただけよ」

 

 まあエピメテウスからすれば神や精霊以外なんて生まれたての赤子のようなものだし、今更性欲とかないのだろう。

 

「彼奴が来てるならもう案内いらないな」

「ふへぇ!? か、勘弁してください! 殺さないで!」

「何もしねえよ。そのまま帰れ」

「あの、帰るべき本拠(場所)燃えてるのですが………」

「…………………【ソーマ・ファミリア】行って俺の部屋で寝てていいぞ」

「っ!? へへ。毎度」

「おい………」

「…………?」

 

 何処か期待したように歓楽街から出て行くアマゾネス。輝夜がリリウスを睨む。

 

「リリウスダメよ、女の子と寝るなんて! なら今日は私の部屋でお姉ちゃんと一緒に寝ましょうね☆」

「分かった」

「分かっちゃうの!?」

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