ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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成敗!

「配給をしていたヒューマン2人が美少女ニャ!」 

「………アーニャ。それって、容姿がいいと人を騙しやすいって言いたいのかな?」

 

 ミアハを疑う理由は他にもあるといったアーニャ。聞いてもないのに語りだした内容に全員何とも言えない顔をしてリリウスはシルを見てシルはニコニコ笑みを返す。

 

「ニャニャニャ!? まさか、シルは名探偵だったニャ!?」

「う〜ん。アーニャと同程度の思考をしちゃったこと、なんかショック………」

「名探偵が2人、これは『すぺしゃる』な展開ニャ! もう事件は解決したも同然ニャ!」

「そう、でしょうか。私はなんだが真実からどんどん遠くなっている気しか………」

 

 得意気なアーニャと不安げなオユキ。リリウスは別に真実から離れていってはないことは確信していた。

 

「いくニャ、もう1人の名探偵! ミャーの露払いをさせてやるニャ!」

「もうアーニャ。走るのは良いけど、その場所を知ってるの?」

「……………ミャ」

 

 ピタリと足を止めるアーニャ。何も考えていないようだ。

 

「こっちだ………」

 

 と、リリウスが歩き出す。

 

「ニャニャ!? まさかお前も名探偵!? つまり1人は的外れな推理で場をかき乱す役ニャ!」

 

 それは間違いなくアーニャだろう。馬鹿なことしか言ってないもの。

 

「匂いは追えないんじゃ………」

「慣れた」

「犯人の臭いを知ってるニャ? つまり、おミャーも犯人の一味!」

「甘酒とジャガ丸くんの匂いを追うだけだ」

 

 甘酒は極東の飲み物。オラリオでは滅多に出回らず、リリウスもソーマが持ってきたものしか飲んだことがない。

 

「大量生産するとなると極東の神が関わってるだろ」

「つまり、そこにタケミカヅチ様がいるって事だニャ!」

 

 

 

 

 

「なんだコレはぁ!?」

「きゃあっ!?」

 

 男の怒声、女の悲鳴が聞こえてきた。

 

「こんなもので俺が満足すると思ったか!? 恥を知れ!」

「そ、そんな………私達は一生懸命……」

「そのあたりにしておけ」

「む、ミアハ……」

「なに、時間はたっぷりある。この娘達に身の程を知ってもらうだけの、な」

 

 そう言って笑うのは神ミアハ。怒り収まらぬ様子の神はタケミカヅチだ。

 

「「うぅ………」」

「グズグズするな! それとも、あちらの煮立った油のほうがいいか?」

「ふっ…………跡形もなく肉を磨り潰す、というのもあるな」

 

 と、その時。

 

「待てーいニャ!」

「「!?」」

 

 ひとーつ。人に寄り添う猫が居る。

 

 ふたーつ。不思議な事件がある。

 

 みっつ………みんな大好き正義の味方。

 

「何者だ!?」

「人はミャーを、絶世の美少女・くノ一アーニャと呼ぶニャ!」

 

 くノ一アーニャが現れた!

 

「…………誰だ?」

「さあ?」

密偵(くノ一)が人に呼ばれてどうする」

 

 しかも全然人に呼ばれてないから知られてないし。くノ一としては正しいのだが。

 

「問答無用ニャ! おミャー等の悪行三昧、確かに見せてもらったニャ! 大人しくミャーのお縄につくがいいニャぁ!」

「まさか、この娘が?」

「可能性は捨てきれん………者ども、出あえ、出あえー!!」

「くせもの〜、であえ、であえ〜!」

 

 タケミカヅチの言葉をカサンドラが復唱する。

 

「ねえ、本当にこれ言わなくちゃいけないの?」

「タケミカヅチ様が、極東ではこういう感じだって……それに様式美だって……」

「にゅふふ。出て来たニャア、ミャーの鉄槌を受ける悪者共……」

 

 リリウスは我関せずと挽肉入りジャガ丸くんを食べている。これは、隠し味は焦がし醤油!

 極東の調味料だ。なかなか美味い。

 

「ニャハハ! 成敗ニャ!」

「ごめんなさーい。遊んであげてくださーい」

 

 存外すばしっこく暴れ回るアーニャ。者どもとやらが次々やられていく中、タケミカヅチが動きを見極め腕を掴み投げた。

 

「ギャフン!?」

 

 零能たる下界の神が冒険者の動きを追える訳がないので、身体能力ではなくただただ超越した『武』で動きを読み切り力を流したのだろう。

 

 ソーマ曰く極東の神は天界で身体能力の制限も受けなければ神の力(アルカナム)すら使用せず1本の刀で()()()()()の斬撃を放つとのことだが………。

 

「この馬鹿猫が悪かったな。もぐもぐ、おかわりある?」

「だ、誰が馬鹿ニャ! ミャーはこの通り犯人を見つけた名探偵ニャ!」

「犯人? 何の話だ」

 

 ズビシ! とタケミカヅチを指さすアーニャだが当のタケミカヅチは意味がわからないと首を傾げる。

 

「とぼけたって無駄ニャー! さっきミャー達に出あえ出あえと言いながら襲ってきたニャ! きっと後ろめたい事があるに決まってるニャ!」

「ああ、あれはノリだ」

「ノリ!?」

「詳しくいうと今歓楽街から悪辣な輩を一掃しようとしていてな。そういった連中が急襲してきた可能性を考慮しての行動だ」

「……………後でアリーゼ先輩達に話を通しておきます。何人か護衛として派遣してくれるかと」

「それは助かる。成る程、アストレアの下に集まる眷族は身も心も美しい娘子が多いという話は本当であったか」

「芯を持つ強い目をしている。アストレアと同じ、美しさの秘訣はその心根が体に現れる故か」

 

 2人は全く口説いていないがイセリナもセシルも真っ赤になってしまう。

 

「ハニャ?」

「私達が炊き出ししたり、遊女さん達から支援金をもらっていたのもそのため」

「悪い事する人達に……目障りになるようにって……そういう人達を炙り出そうと………」

「タケミカヅチの眷族達も、そういった連中を探し出しては討伐している最中(さなか)だ」

「じゃ、じゃあこの神様達が雌達を痛めつけていたのはどう説明するニャ!」

 

 磨り潰すとか煮え滾った油とかのことを言っているのだろうが………。

 

「ジャガ丸くんの作り方だろ」

「うむ。油の温度はカラッと揚げるために重要であるし。ひき肉を混ぜると風味もまして、何より美味い」

「巷では肉を混ぜるのは邪道と憤る女剣士がいるらしいが、これはこれで美味いからな!」

 

 その女剣士、リリウスも知っているかもしれない。

 

「タケミカヅチ様は、ジャガ丸くんの事となると厳しいみたいで………」

「当たり前だ! ヘスティアのようなマスコットがいる屋台と張り合うためには味を極めるしかない。俺は王道で勝ちに行く!」

「だってさ、アーニャ!」

 

 何故かシルが襖の向こうから声をかけている。タケミカヅチ達に姿を見られたくないのだろう。娘の方でくればよかったのに。

 

「ウニャアアアァァァ!? そんな馬鹿ニャアアアアア!!」

「探偵じゃなくて、追い詰められた犯人みたいな声出してますけど」

「じゃあ、俺も向かうか。ジャガ丸くんと甘酒ぶんぐらいの仕事はしてやる」

 

 と、リリウスが立ち上がりそうだ、とタケミカヅチに振り返る。

 

「タケミカヅチ、ジャガ丸くんに混ぜる挽肉、肉味噌にしたり極東の味付けを足すのもありだ」

「ふむ、参考にさせてもらおう」

「ニャア………今度こそ犯人を…………」

「駄目だよ、アーニャ。迷惑かけたんだから、ここでちょっとお手伝いしなさい」

「ニャアア………」

 

 シルに言われアーニャは渋々代わりに場所の修復作業に入った。セシル達もタケミカヅチを手伝う。ついでにタケミカヅチ達に頼んで遊女達の目撃証言も集められないか交渉しているようだ。

 

 

 

 

「この辺りか………」

「は、はい。例の借金の噂を1番聞く区画です。ですから、この辺りを虱潰しに探せば………」

「必要ねえよ」

 

 リリウスはえ、と困惑するオユキをおいて建物に向かう。

 

「やっぱりリリウスさんにおまかせしたほうが早かったですね♪」

 

 古びた建物の扉を蹴りつける。中にはガラの悪い男達がいた。

 

「何だてめぇ等!?」

「カチコミかぁ!?」

「ぶっ殺してやる!」

 

 秒でケチョンケチョンにした。

 

「わー………瞬殺って言葉もこの人達への過大評価になりそう」

 

 リリウスの姿が一瞬ぶれたかと思えば全員が吹き飛ぶ。まるで殴り飛ばす過程を抜いて結果だけを世界に顕現させたかの如き早業。

 

「あ、こっちが遊女さん達の借金の証文でしょうか?随分たくさんありますけど」

「あ、ありがとうございます! これでもう、身に覚えのない借金に追われることも……」

 

 と、オユキが証文に手を伸ばすがリリウスがシルから受け取るとモシャモシャ食った。

 

「え、ええ!? な、何してるんですか!!」

「…………お食事? まあ、どうせ全部偽物なら破いてもいいじゃないですか」

「そ、それは…………ですけど………」

「それとも、手に入れておきたかったですか? こんなに集めてたんですもんね」

「………………え」

 

 シルはニコニコと笑みを浮かべオユキを見据える。

 

「な、何を言って………」

「臭いがしなかったんですよ。歓楽街に蔓延する麝香の匂い、不特定多数の男性と寝た………」

「シル………必要か、それ? 狂三お姉ちゃんの時は周りを納得させるために必要って言われたが、今回ここにいるのはその女と俺達だけ。俺は探偵ごっこにゃ興味はねえぞ」

 

 シルもリリウスも最初からオユキが嘘をついて居ることなど気付いていた。リリウスはそもそも歓楽街の治安に興味は薄く、シルは楽しそうなアーニャを見守っていたから口に出さなかっただけ。

 

 ジャガ丸くんと甘酒を食ったからミアハとタケミカヅチの望み通り不埒な輩に対処することにしただけだ。

 

「………くくっ。あーはははは!!」

 

 と、オユキは何を言っても誤魔化すことは不可能と判断したのか本性を顕にする。

 

「すげぇなあんた達! 咄嗟についた嘘とは言え、全部見抜かれるなんて思っても見なかったよ! ああ、あんた等の言うとおりさ。そこの男はアタシ達の元仲間……アタシ達から金と証文をガメようとした裏切り者」

 

 どころか一度離れた仲間に接触して金を作らせようなんて、馬鹿なのだろうか? たまたまオユキが1人だったが自分のように金のために仲間になる冒険者がいないとは限らないのに。

 

「あんた達、出てきな!」

「あらら?」

「そこで伸びてる連中の代わりに、新しく雇った冒険者さ。金は弾んであるから、よーく働いてくれるよ?」

 

 と、オユキが叫ぶと冒険者達が現れる。恩恵を持っただけのチンピラ。ダンジョンで稼ぐだけの実力がないから地上で犯罪に手を染める落伍者共。

 

「あれは………魔剣?」

「あはははははは! この世は金さあ! 金さえあれば冒険者だって思いのまま、力だって手に入るんだよ!」

「………………で?」

「あぁ?」

 

 未だ状況を理解できていないオユキは余裕の顔でリリウスの態度を訝しむ。

 

「弱い奴等が弱い魔剣を持って、少しばかり力を足して………それで何が出来る?」

「はあ!? このガキ、状況が理解できないのかい!」

「あのですねえ………可愛らしいから忘れがちですけど、リリウスさんは世界最強なんですよ? レベルの概念も理解できない成り立て冒険者なんて、幾ら数を揃えても相手になりませんよ?」

「!? やっちまいな! お前達!」

 

 1秒もかからなかった。

 

「ひっ!? 嘘、そんな………!」

「次は最強(クロッゾ)の魔剣もったオッタル()の群れでも連れてくるんだな」

「何その光景すごく見てみたい」

 

 男女平等の暴力が主犯の鼻と顎の骨を砕いて気絶させた。

 

 

 

 

 

「で、そっちはなんか新しい情報掴んだのかよ」

「何も」

「ほらほら、やっぱりレナちゃんの情報が必要なんだよー」

 

 なんであの人達当たり前のようにまた泊まりに来てるんだろう、多くの団員がそう思ったが誰も口に出せなかった。

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