ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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戦神の進撃

 避難が済んだオラリオの住民達も戻り、冒険者を称える声が響く。

 ハルモニアの歌声に感動した声も。リリウスは『邪竜の鱗』と『邪竜の皮膜』、それから『邪竜の牙』を食いながらオラリオに帰還すると2匹の影が飛びかかってくる。

 

「ワフ!」

「アオン!」

 

 シャバラとシュヤーマだ。ポーションの臭いがする。誰かに回復してもらったのだろう。それでも血の匂いが残っているが…………彼等も冒険を乗り越えて来たらしい。

 

 リリウスがワシャワシャ撫でてやる。腹を撫でられゴロンと腹を見せる。ハフハフ気持ちよさそうな二匹をひとしきり撫でていると、絶叫が聞こえてきた。

 

 振り返ると笑顔のハルモニアと驚愕しているベル達オラリオの住民。

 

「何があった?」

「あの歌姫が、歌姫をやめるのをやめるそうだ」

 

 そりゃまた何とも。自分で言ったことを自分で覆し悪びれない。何ともまあ、アフロディーテにそっくりだ。

 

 

 

 

「各方面への謝罪と金の催促。必要なのか、それ?」

 

 アフロディーテが事前に交渉していたし、そんな物なくとも今のオラリオは誰だってハルモニアの歌を聴きたいだろう。

 演劇はそこまで興味のないリリウスだって歌なら聴きに行っていいかと思っている。

 

「あんの我儘娘。おかげで私の『歌姫復活計画(プラン)』が台無しよ!」

 

 要するに、自分でやってあげたかったハルモニアの復帰公演をハルモニアが自ら始めてしまって拗ねているのだろう。

 

「やっぱり俺は、アフロディーテが好きだな」

「何を突然? 当たり前でしょ、この世で私を好きにならない男なんているわけないんだから」

「ああ、そうだな。大好きだ」

「その真っすぐ好きだって言うの………本当にもう」

 

 『美』に酔いしれるでも『色』に狂うでもなく、ただただ純粋に向けられる好意にアフロディーテはモニョっとする。

 

 なんというかこう照れるのは自分らしくない。よし、抱こう。

 

「リリウス」

「ん?」

「抱かせなさい」

 

 神々って何時もそうですよね! 人類のことなんだと思っているんですか!

 

「…………ん?」

 

 両手を広げるリリウス。かわいい。

 

「そっちじゃないわよ」

「ああ……ん〜」

「何よお、この私が抱いてあげるっていうのに何が不満なわけ」

 

 煮え切らないリリウスの様子にアフロディーテが不満な顔をする。

 

「不満…………一つ」

 

 と、指を立てるリリウス。

 

「『抱く』のはお前じゃなくて、俺の方」

「……………」

 

 アフロディーテはキョトンとリリウスを見る。

 

「…………貴方、私と別れてから女抱いたことあるの?」

「無いぞ」

 

 穢れなき童貞である。対してアフロディーテは美の女神。男も女も沢山抱いた。

 

「ええ、いいわ。出来たらね」

 

 

 

 

「たっだいまー! 話は通してきたわよ、さっすが私ー!」

 

 ハルモニアが戻ってきた。交渉はうまくいったらしい。まあ、それもそうだろう。

 

「他の商会とか話を通す必要がある場所は?」

「リストアップしておいた」

「ありがとう、リリウス。アフロディーテは?」

「……………疲れて寝てる」

「そう? まあ、迷惑かけちゃったものね」

 

 

 

 

 

「皆々様、本日は『引退撤回公演』にお越しいただき、ありがとうございました!」

 

 リリウスの耳は舞台に出るまで緊張しまくってたハルモニアの声が聞こえてきたが、舞台の上では完璧に隠してみせる女優。

 

「沢山の迷惑をかけた迷宮都市(あなたたち)へのお詫びも込めて、私から感謝と愛を込めて……復活の歌劇、どうだった?」

「最高でございます〜! ハルモニア様〜!」

「えっと………好き好き大好きハルモニアー! やっと見つけた歌姫様〜! ふぅー!」

 

 ベルはまた何やら何処ぞの神(恐らくヘルメス)に何かを吹き込まれたらしい。

 他の観客達も春姫とベルに続き、様々な声を送る。結婚してくれと叫んでいるのは神だろう。

 

「ふふっ……本当にありがとう! 私も大好きよ、貴方達が!」

 

 

 

 さて、公演とは1日で終わるものではない。オラリオに訪れる口実と言えど実際に公演は予定されていて、少なくとも後数日はオラリオにいることとなった【アフロディーテ・ファミリア】。それでも無事公演を終え帰るだけのはずだったが、ちょっとした問題が起きた。

 

「ラキア?」

「ああ、約3万の軍勢がオラリオを取り囲んでいる。なめたものだ」

「え、三万なのよね?」

「俺一人で半刻もかからねえ」

 

 なんならオッタルですら半刻かかるかかからないか。それも、相手が散開していたらの話で真正面から来るならLv.6ですら壊滅可能。だってそこまで強くないから。

 

 まあ殺してはならないという条件があるので少し時間がかかるかも知れないが、リリウスなら全員の足を凍らせて足止めも可能だ。

 

「とはいえ【アフロディーテ・ファミリア】には強い相手で、アレスもアフロディーテの身柄と、ついでに歌姫も要求している」

「私がついでなの?」

「アレスは私の元カレなのよ」

「浮気相手だがな」

 

 この前神々の打ち上げの際、へファイストスが現れた途端アフロディーテはめっちゃガタガタしていた。へファイストスはアフロディーテと付き合っていたのだが、アフロディーテはアレスと浮気したのだ。金槌を持ち追いかけてきたヘファイストスは今でもアフロディーテのトラウマである。

 

 因みにこの話を知ったヴェルフが発狂してた。

 

「あ〜、アレス様って、顔がいいんだっけ?」

「顔は良いわよ。でも正直また付き合うかって言われたら無し! ていうか私置いて逃げたくせになぁにが『また付き合ってやろう』よ! どうして上から目線!? 付き合ってくださいってブヒブヒ言うのが普通でしょ! ぶっ殺すわよ!」

「ぶっ殺してやろうか? 国ごと」

 

 リリウスなら国土ごと両断出来る。なんならちょっと上空から剣振って国を6等分に出来る。

 

「良いわよ別に。アレスはともかく子供達がかわいそうじゃない」

 

 まあ今の国王(派閥団長)はアレスの言葉にハイハイ従う暗君だが。因みにその息子は愚王の息子と思えないほど賢君でアレスと父王(馬鹿共)の考えなしの行動に常に胃を痛めている苦労人らしい。

 

「その王子様、噂話を聞いて軍馬にステイタスを刻ませたそうね」

 

 リリウスの事である。とはいえ獲物を狩る肉食獣ではなく、敵から逃げる草食獣。縄張り争いや、足の遅い子供、雌の取り合いなどで戦うことはあっても基本逃げの馬はそうそうステイタスが育たない。ましてや都市の外では………と思いきや、よく調教された対モンスター用の軍馬に毛繕いや餌の質の向上などで『戦えば良いことがある』と刷り込ませ戦わせたらしい。

 

 それでも危険なら逃げる本能で試練を超える軍馬は少ないがゼロではない。元より優れた速度で走る軍馬達はLv.2でありながらLv.3でも追いつけぬ速度で戦場を駆けるらしい。まあ吹き飛ばされるのだが。

 

「どうするのアフロディーテ? 宿って、前払いでしょ?」

 

 そして邪竜退治の依頼で金を使い、公演で稼いだ収入も引退宣言と引退撤回公演の迷惑料として使った。

 

「また公演やるにしても、まず劇場を借りるのにお金がかかるし………」

「う〜ん。まあまだ数日は持つし、その間に考えましょう」

 

 とは言いつつ、何かを考えていそうではあるアフロディーテ。まあいざとなったらリリウスが深層でちょっと金を稼いでくるだけだ。

 

 

 

 

 

「見合いを申し込まれた?」

「兄様が有名になって、リリを取り込みたくなったんですかね? 不幸にしない〜、とか勇気に感銘した〜とか色々言ってましたが………まあ『頭の中身取り替えて出直せエセ勇者』と言ってあげましたよ。その後20以上も年の離れた少女に告白してたってティオネ様に……」

「リリは優しいな」

 

 と、頭を撫でて。

 どこがだよ、と誰もが思ったがまあ出直してこいと言う辺り、条件を満たせば次もあるらしい。

 

「ところで兄様、アフロディーテ様の様子がおかしいのですが」

「アレスがアフロディーテを狙ってるから囮にしようってなったんだが、他にも狙われてる可能性がある相手がいてそれがヘファイストスの関係者なんだ」

 

 なのでギルドは両方を囮にする事にした。その護衛に【ヘファイストス・ファミリア】。最悪三柱(さんにん)がその場に揃うかもしれないと聞いたアフロディーテはトラウマ全開でガタガタ震えていた。

 


 

ハルモニア編、一先ず一区切り。なので次は………

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