ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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番外編 時を渡る獣3

前話

 


 アルフィアは再び【デメテル・ファミリア】に訪れていた。深い意味はない。元々今日は妹のために新たなレシピを教えて貰う予定だったのだ。

 

 まあ、あの男に会ってやらなくもない。どうにも此方に対する態度が気になるし。と、【デメテル・ファミリア】の本拠(ホーム)の扉を開く。

 

 デメテルが食器棚の上を見ながらあらあら、と頬に手を当てていた。

 

「あら、アルフィアちゃん」

「なにを………?」

 

 虫でも出たのだろうか?

 

「それが、マックちゃんが降りてこないの」

「……………………は?」

 

 アルフィアが思わず閉じていた目を開いて見ると、確かにリリウスが居た。音も気配も完全に消していたようだ。

 

「昨日戻ってきてから、何かを警戒するようにベッドの下やタンスの隙間、棚の上みたいに狭い所に隠れてしまうの」

 

 猫かな?

 

 何かを警戒するように視線だけ動かし周囲を観察している。

 

「特に女性が近付くとビックリして………」

「女…………まさか【ヘラ・ファミリア】の誰かに?」

 

 チラリとアルフィアを見るために顔を出していたリリウスはピュッと隙間の奥に引っ込んだ。当たりらしい。

 

「関わるなと言っただろう」

「…………転ばせたから、手を貸しただけだ」

 

 アルフィアの呆れたような声に俺のせいじゃないとばかりに顔を覗かせジトリとアルフィアを見るリリウス。何故か知らないが、アルフィアは平気らしい。

 

「それは…………まあ、うん。お前のせいじゃないな」

 

 アルフィアは身内のしでかしたことにため息を吐く。基本的に付き合ってから暴走するのが【ヘラ・ファミリア】だが、中には『目が合った。きっと私のことが好き』『モンスターから庇ってくれた。私の運命の相手』とか暴走するのも居るのだ。

 

「理解出来ない。なんだ、あれ。アマゾネスならまだ解る………けどあれ、違う。なんでいきなり重い想いを向けられる」

 

 アマゾネスなら強い雄を求めるという習性がある。実際強いのだから、求められてもまあそう来るかと理解出来る。だが昨日の謎存在はそういうのがなかった。理由なき好意、それだけなら少しおびえる程度だろう。

 

 何故か婚約する未来を思い、それが当たり前のように振る舞い、此方がそちらを愛している前提で話を進め、否定すれば発狂する。

 ナニアレコワイ。

 

 向けられてるのが紛れもない好意でありながらああも悍ましさを感じさせることってあるの?

 

「とりあえず降りてこい」

「…………………」

 

 アルフィアの言葉にノロノロ降りてこようとするリリウス。デメテルはまあ、と驚いていた。誰が呼んでも降りてこようとしなかったからだ。と……

 

「ダァァァリィィィィン!!」

「!!」

 

 シュバッと物凄い勢いで引っ込んだ。ドタドタ走る音が聞こえ、扉が勢いよく開く。

 

「貴方のアルヴァが会いに──」

 

 無言の福音拳骨(ゴスペルパンチ)がアルヴァと名乗る小人族(パルゥム)の腹に炸裂。

 

「…………かっ……………ぁ、ひゅ……」

 

 しかも扉を開けた一瞬で悲鳴を漏らせない殴る位置を瞬時に見抜き殴り抜き、アルヴァは声も出せず、胃の中を吐くこともなく蹲る。

 

「あ、ふぃ…………」

「頭が高い」

 

 アルフィアはアルヴァを外まで蹴り飛ばした。それでも立ち上がろうとするアルヴァ。

 

「の、よく………も」

「まだ高い」

 

 その頭を踏みつける。地面に顔半分が埋まりうめき声さえ出せなくなる。何だ彼奴、理不尽の化身か? リリウスはちょっと引いた。

 

「あの男はお前のダーリンとやらではない」

「………………」

 

 返事はない。気絶してるようだ。

 

「あの、大丈夫、か………?」

「大丈夫!」

 

 なのにリリウスの言葉に反応して顔を上げる。リリウスは再び隙間の奥に引っ込んだ。

 

「心配してくれた! それって私が好きってことよね!? そうよね、ダーリン!」

「え、違う………」

「照れ隠ししても私には解る! 私を想ってくれるダーリンの愛を感じるの!」

「勘違い」

「さあ、2人でどこまでも駆け抜けましょう! オラリオの外でハネ──」

「【黙れ(ゴスペル)】」

「──ムン!?」

 

 響く鐘の音。アルヴァは轟音の砲弾にすり潰された。

 

 

 

 

 

「はい、ごめんなさいでした」

 

 起き上がりリリウスに向かい、アルフィアが蹴り飛ばし殴り飛ばしすり潰すを繰り返し日はすっかり昇る。土下座したアルヴァはそれはもう酷い姿だった。

 

 純白の戦闘衣(バトルクロス)は血と泥に汚れボロボロ。服の体をなしているのは相当頑丈に作られている証拠だが、本当に体をなしているだけ。

 

「お前は俺のことを知らない。俺を好きだというのは、早い」

 

 そこを間違いではなく早いという所にデメテルはニッコリ。

 

「許婚だのなんだのであれば後から好きなところを見つければいいが、自由に恋愛できるんだ。ちゃんとお前を見て、お前を思い、愛してくれる人を探せばいい」

「でも何時も浮気される」

「え、何時も?」

 

 彼女………というよりは【ヘラ・ファミリア】の女に手を出した男は命が惜しくないのだろうか?

 

「…………捨てれば、お前から」

「私から?」

「俺とすぐに付き合おうとしたり、浮気されたり、案外相手をみてないだろ? その程度なら捨てればいい。悪いの相手なんだし」

「………………」

「別に向こうが先に浮気したなら、不誠実でもないだろ。お前ならすぐに付き合いたいって言ってくる相手が見つかるさ。ちゃんと自分からも好きになれたら、改めてそいつと結婚すればいい」

「結婚してください」

「話聞いてる?」

 

 リリウスの手を掴み頬を赤く染め潤んだ瞳を向けてくるアルヴァにリリウスは思わず突っ込む。ちゃんと好きになれる相手にプロポーズしろって言ってんのになんでこうなる、と助けを求めるようにデメテル達を見る。

 

「今のはマックちゃんが悪いわねえ」

「マクール、己の言動に責任を持て」

「なんで??」

 

 何故かデメテルとアルフィアにも怒られた。

 

 

 

 

 その後何とか説得して友達に落ち着いた。ならばと街を案内と言う名のデートを提案するアルヴァの勢いに押され、この時代を知るべきと言うデメテルの言葉もあるので街を散策するリリウス。

 

 【ゼウス】と【ヘラ】か『それ以外』と言われるだけあり、やはり群を抜いているのはその眷族達だがチラホラと彼等に迫らんとする眷族も見かける。

 

 ロキのところはまだ最大Lv.3らしいが、考えてみれば彼等はオラリオの歴史から見れば新参も新参。実は頑張っていたほうなのだろうか?

 

「…………そういえば、お前はフィンに告白されなかったのか?」

「フィンさん? 別に彼から告白されたことはないですよ」

 

 まあ【ヘラ・ファミリア】の女と婚約しても、フィン側が付属品扱いされるだけか。そしてその場合凄いのは小人族(パルゥム)ではなく【ヘラ・ファミリア】となるだけか。

 

 こんな時代からそんな考えで生きているのか、と思ったがこの時点でも二十代頃か。あの男の場合、冒険者になると決めた時点で生き方を決めてそうではあるが。

 

「フィンさんは頑張り屋ですけどね」

「そういう評価なのか」

「でも、頑張ってる方向性が違うというか。だってフィアナも、崇められようとして英雄になったんじゃなくて、英雄になったから憧れられたわけでしょう? 2代目の場合は計算づくだとしても、2代目の一番の逸話は名声でも栄誉でもなく、ただ勝利のために勇気を示した『大穴』への突撃ですし」

 

 小難しい事なんて考えず、素直に突き進めば良いのだ。

 

「人なんてどう生きるかじゃなく、どう生きたかが評価されるんですよ」

「………違いない」

 

 と、リリウスは不意に足を止める。

 目の前に一人の男が立った。

 

「お前か、うちの団員が世話になったというのは」

「………報復?」

「まさか。負ける方が悪いだろ………唯気になることを言っていたからな」

「気になること?」

「俺の剣を使っていた、と」

「………………ああ」

 

 言われてみればリリウスの剣の基礎は、この男の剣技を盗み取ったところから鍛えたのだった。観察眼を鍛え技を盗み続けてきたリリウスをして、この男が最強だったから。1番長く使っていて、ドゥルガーやレオンから学んだ後も根底には彼の剣があった。

 

「喰らいがいがある、そう思い来てみれば、どちらが餌か分かったものじゃないな」

「じゃあ、どうする?」

「それでも喰らいつくまでだ」

「………場所変えるぞ」

 

 

 

 

 

 

「返す」

「ザ、ザルド様!?」

 

 なんか今日は揺れるな〜と思っていた【ゼウス・ファミリア】の門番はボロボロの幹部を引きずってきた小人族(パルゥム)に思わず槍を向ける。

 

「強かった。同レベルなら、挑戦者(チャレンジャー)はこっちだった」

 

 それはつまり、Lv.5のザルドより上ということ。Lv.5と言えど、その実力はスキルも合わせればLv.6すら凌ぐことを考えれば、まさかそれ以上?

 

「…………おい」

 

 と、去ろうとする背中をザルドが呼び止める。

 

「あの骨は何だ?」

「ダンジョン壊しすぎると出てくる」

「そうか…………平団員の試練に使えそうだな。まあいい」

 

 本題は別らしい。小人族(パルゥム)はザルドの台詞を待つ。

 

「何度でも挑むぞ。必ず、その頂に追いつく」

「……………………………そうか」

 

 

 

 

 

「マクールが?」

「ええ、帰ってきてないの。何か知らないかしら?」

「分かった。一先ずアルヴァを拷問して(問い詰めて)みる」

「うん、落ち着いてアルフィアちゃん」

 

 確かに彼女が最後に見たのはアルヴァとのデートで、そのアルヴァも最初よりは落ち着いていても【ヘラ・ファミリア】だが……………【ヘラ・ファミリア】が疑う理由になる事にデメテルは頭が痛くなった。

 

 その後デメテルと共に話を聞きに行くとザルドとダンジョンに潜ったと聞かされ、療養中のザルドがゴスペられた。オラリオではよく見る光景である。

 

 

 

 

「………………?」

 

 なんか鐘の音と轟音が聞こえたような。アルフィアか?

 まあオラリオではよくあることらしいので気にしないことにした。と、曲がり角で誰かにぶつかりそうになった。

 

「おおと、悪いのう」

「此方こそ……」

 

 考え事していた。と、相手を見てリリウスは「あ」と呟く。

 

「飯おごり爺」

「飯おごり爺!?」

 

 暗黒期、リリウスに酒と飯を奢ると約束したまま死んだ男だ。

 

「………なんでもない」

「まあ、待て、小僧」

 

 リリウスは関係ないとばかりに歩き去ろうとする。

 

「飯、奢ってやってもよいぞ?」

「…………………」

 

 

 

 

 

「ほおう、旅人か。この時代に、冒険者を目指さずオラリオに来るなど珍しい」

「そうか?」

「珍しいとも。なにせお主、強いだろ?」

 

 ただの旅人ならともかく、鍛えた戦士がオラリオに訪れて冒険者にならないなど、少なくとも男は聞いたことがないと笑う。

 

「仕えるべき神を探している」

「嘘乙」

 

 恐らく神の言葉でも借りたのだろう。ロキという神はそういう事を言う神だ。

 

「しかし何だってあんな人けのない場所に」

「お互い様だろ」

「儂はほら、今回の稼ぎちょろまかして歓楽街に向かっとる途中じゃったから」

「屑か?」

「ふふふ。いずれ弟子を育てた時に教えてやるつもりじゃ」

 

 というかそのちょろまかした金でどこの派閥ともしれないガキに飯を奢るってどうなんだ。

 

「なに、なんとなく、お主と飲みたいと思ったのよ」

「そうか………」

「…………悩み事か?」

 

 酒を飲むリリウスに男は尋ねる。

 

「まずそうに酒を飲む理由など、儂はそれしか知らん」

 

 話してみろ、とは口に出さない。だが此方を見つめ続ける。話せ、と言っているようなものだ。

 

「…………この街から去る俺が、この街に影響を残していいのかと思ってな」

「ほう。まあ、お主のためにもなるかもしれんぞ?」

「ならねえよ。どうせ何も持って帰れない」

 

 リリウスには確信があった。自分という異物が増えたこの世界は、自分の時代に決して繋がらない。過去(いま)を変えたところで現在(みらい)に何の変化も及ばさない。

 

 なら、この街に何か影響を与えたところで悪戯にかき回すだけだ。この街に得となるか損となるか分からず、此方は何もえない一方的な混乱を残す。

 

「お主、さては馬鹿だな?」

「……………ああ?」

「結果が悪い方向に行く可能性があるから、いい方向に行く可能性を無視する。頭が良いのに考えすぎて動けなくなったりする………フィンそっくりじゃわい」

「少なくとも、関わらなければより悪い結果にならないのは確かだろ」

 

 暗黒期(みらい)が良い結果とは言えないが、もしリリウスが下手に手を出し歴史を変えたら最悪陸の王者や海の覇王での死者が増え、或いは敗北するかも知れない。黒竜に壊滅ではなく殲滅され、後進が一歩も育たず暗黒期にて一方的に滅ぼされるかもしれない。

 

 少なくともリリウスが何もしなければ、本来の歴史にそう筈だ。

 

「馬鹿か。未来など誰にも、神にも分からぬではないか」

「未来から来ててもか?」

「────」

「……………なんでもない。忘れろ」

 

 飲みすぎた、とこの程度の酒じゃ酔わないくせに言い訳してリリウスは椅子から飛び降りる。パルゥムだから足が浮いてたのだ。

 

「仮令、未来から来ていても、だ」

「?」

「それでも未来など分かるものかよ」

「まあ、俺がいるしな」

 

 その時点で、成る程確かに世界はもう元の歴史を通らない。

 

()()

 

 が、男はリリウスの考えを否定する。

 

「違うぞ若造。同じ人間、同じ場所、同じ時代があったとして、それは決して同じ未来へ繋がらない。何故なら誰もがその時その時しか生きられぬからだ」

「……………………」

「お前が同じ生まれでも、その強さに至る前に死んでいた歴史があったかもしれない。それ以前に、強くなろうと思う間もなく死ぬ未来や、強くなる理由すらない未来だってありえなくはないのだ」

 

 仮令ばリリウスが妹をその腕で抱きしめる前に死ぬ未来もあったかもしれない。あの時の【ソーマ・ファミリア】は、そうなってもおかしくない環境だった。

 

 或いは運よく妹と逃げられる未来だって、誰かに頼り救われる未来も、行動の一つの違いであったかもしれない。

 

 リリウスはリリウスなのだからその選択をしなかった、なんて事はありえないのだ。それはその時を過ごしたリリウスではなく、その時を過ごすリリウスにしか分からない。

 

「お主がこの時代に現れずとも、この世界がお主の知る歴史を辿る保証などないわ。だというのに自分の行動を一々気にするのは、烏滸がましいぞ小僧」

「………………そうか。そういう考えもあるのか」

「そう、考え。儂の考えじゃ………これからどうするか、どうしたいか。決めるのはお主よ」

「……………うん。決めた、決まった。俺の知る歴史より良い未来に向かうかは知らないが、したいことは決めた」

 

 そうか、と男は酒を呷る。

 

「そういえば、名は?」

「……………マクール」

「偽名じゃな」

「そうだよ。お前は?」

「儂か? 儂は、そうじゃなあ…………」

 

 どうやら男も偽名を名乗る事にしたらしい。

 

「マクール………うむ。ゴォール。ゴォールじゃ、知っとるか?」

「フィアナ騎士団の前身、マクール騎士団団長マクールの同期」

「よく知っとるの。儂もフィンから聞かされただけじゃが…………まあ名も遺らぬ騎士(マクール)を名乗る時点で知っとるか」

 

 小人族(パルゥム)の極一部が知るフィアナ騎士団の伝説に、フィアナの父の名としてしか記されない名前。生前何を行ったか、何を行えたかも伝わらない英雄ですらない騎士の名前。

 

「儂はな、相当な傑物だったと思っとる。だからゴォールもフィアナを直ぐには認められなかっただろうとな」

「俺は違う」

「ほう?」

「親友だったんだろ。だから、殺した自分を納得させる為に英雄なんてものに執着しなきゃならなくなったんだ」

 

 どちらにしろ、馬鹿な男だったのは間違いない、と嘲笑するリリウスに男はそうか、と苦笑した。

 

「ではな、マクール」

「じゃあな、ゴォール」

 

 

 

「おいこらノアール!」

「ん?」

 

 酒で火照った体で少しふらつきながらホームを目指すゴォールを名乗った男に怒号が飛ぶ。振り返ればドワーフの男がドスドスと走ってきた。

 

「2人で歓楽街に行くって話だったろ! 貴様を待っとる間にバーラに見つかり、ぶっ殺されるかと思うたわ!」

「わはは! またずに向かえばよかったものを」

「ぬう。これで叱られるのは儂だけか」

「いやぁ? 金は結局使っとるしな。儂も怒られるぞ」

「なんじゃあ? そんなに高い酒飲んどったんか?」

「何時も通り安酒じゃよ。そっちのほうが口に合う………ただまあ、よく食い、よく飲む奴と飲んでたからのお」

 

 ノアールはそう言って楽しそうに笑う。ドワーフの男、ダインは珍しいと目を丸くする。

 

「漸く弟子候補でも見つけたか?」

「いやぁ、彼奴儂より強いし。それに、弟子ではなく友人程度が丁度いい」

 

 

 

 

 

 『扉』が破壊された。

 初めての侵入者に、当代の始祖(ペルディクス)は苛立ちと歓喜を覚えた。

 

 完成を急がねばならない。故に侵入者など邪魔なだけ。しかし同時に、未完成とは言え始祖ダイダロスが生み出さんとしたダンジョンを超える迷宮の性能を確かめる良い機会ではある。

 

 ある程度の人格を得てから始祖の妄執を埋め込まれた男は子供のような、そんな好奇心で侵入者を歓迎した。

 

「存分に堪能するが良い。未完成とは言え、ダンジョン以上の美を目指した迷宮。人の悪意を」

 

 

「斬光」

 

 暫く歩いたリリウスは、自壊装置がまだ組み込まれていないことに気付き床や壁や扉を消し飛ばした。

 

 

 

 

 

 天へと伸びる光の柱がオラリオより現れた。

 1つ………2つ、3()()4()()

 

 次々上がる送還の光にギルドは直ぐ様何処の派閥の神が還されたか確認を急ぎ、結果は居ない。つまりあの光は正規登録された神々ではなく、ギルドより隠れ混沌を振りまく邪神共。

 

 直ぐ様送還の光の発生源に向かえば地下へと続く穴。飛び込めば、溶かされ砕かれ斬られ千切られ融かされ割られ………最早迷宮の体をなしていない迷宮がそこにあった。

 

闇派閥(イヴィルス)の拠点か?」

 

 ランクアップを果たした高位の眷族すら犠牲に足止めして徹底的に隠されていたはずの地下迷宮。そこが悲惨なほど破壊されていた。

 

 一体何ものが、と思った瞬間、地震。迷宮が激しく揺れる。

 何処からともなく轟音と破壊音が響く。移動している!?

 

 慌てて外に出れば、歓楽街が吹っ飛んだ。送還の光は上がらない。イシュタル神をはじめとした神々は幸い巻き込まれなかったようだ。

 

「蛇……?」

 

 それは漆黒の蛇。そのサイズは規格外。

 階層主すら身じろぎ1つで潰しそうな大蛇は、バチバチと帯電して…………

 

「ギギ………!」

 

 違う。あの雷は攻撃だ。苦しんでいる。

 よくよく見れば頭に誰か乗っている。

 

「こっちだ、木偶の坊」

 

 痛みで無理やり誘導される大蛇は大慌てで逃げる住民を潰さぬようにゆっくりと這いずりオラリオの外壁を破壊する。それでもまだ己が開けた大穴から尾の先が出て来ない。

 

 漸く出ると大穴は凍りついた。

 そのまま移動していき、やがてオラリオから離れた場所に止まる。

 

 【ゼウス】と【ヘラ】が向かえば大蛇の頭に座る小人族(パルゥム)が彼等を見下ろす。

 

「お前は何者だ」

 

 尋ねる団長(マキシム)の言葉に少年は立ち上がる。

 

「俺はマク………あー…………ヴリトラ」

「偽名か」

「ああ、偽名…………と」

 

 背を向けたヴリトラと名乗る少年へ牙を剥く大蛇はしかし蹴りにより顎の骨を砕かれながらひっくり返る。とんでもない『力』。その規格はLv.7の自分すら凌ぐ。

 

「目的は何だ」

戦争遊戯(ウォー・ゲーム)

 

 と、少年は告げる。

 

「俺が勝った暁には、風印(ふういん)されてる黒竜より聖地(オリンピア)の炎の解決を優先して、黒竜の討伐を限界まで待て」

「何の意味があるの?」

 

 団長(レブナント)が尋ねる。

 

()()()()()()()()

 

 少年はやはり告げる。

 

「俺程度に敗れるのなら、大蛇(ヴァースキ)程度に勝てぬのなら、後三十年経とうが黒竜には勝てねえだろうからな。だからきちんと鍛えろ」

「俺達では足らないと?」

 

 ピリッと空気が張り詰める。英傑(マキシム)と同格のLv.7幹部達まで思わず冷や汗をかくほどの威圧に、しかし少年は気圧されなどしない。

 

「ああ、言うね」

 

 ただ告げた。それだけで、尋常ならざる威圧感が放たれる。顎の傷を癒やした大蛇もビクリとその巨体を縮こませる。

 

「簡単な話だ。俺は「障害」、超えるべき壁。超えられぬなら期待通り、黒竜に挑むに足らない。超えられるなら、まあ俺がとやかく言う資格はない。俺を踏み台に、次の領域へ上がればいい」

 

 自分はそれだけの存在であると傲慢にも言い切る。

 

「世界を救う力がお前達にあるのだと、証明してみせろ」

 


 

アルヴァは弱いから、アルフィアは病気だからまだ来てないよ。来たら流石に反応した。

 

ヴァースキちゃん。

今回の最大の被害者。生み出された直後に斬光でぶった斬られまくって雷で焼かれまくって無理矢理従わされている。Lv.8階層主級の漆黒種というこの時代のオラリオでも勝つのが難しい竜種ではある。

 

イシュタル

今回の被害者その2。突然現れた蛇に歓楽街が破壊された。リリウスがここなら壊れてもいいかと誘導したため。かわいそうなイシュタル。ひとえに未来で闇派閥と手を組んだせいだが。

 

 

技解説

対竜奥義 斬光・六花

リリウスが開発した斬光の発展技。雷性(ヴァジュラ)を付与したただただ超速い斬光の連続斬り。レオン先生だってバンバン撃ってたじゃん? それをただ速くしただけ。具体的には75分の1秒に3回振る。

*←こんな感じに敵を6等分する。

居合の基礎は輝夜から、斬撃の増やし方はタケミカヅチから教わった。

 


 

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