ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「ま、そんな事より! 【
最大派閥の幹部をぶっ飛ばしてその武器を食うのはそんなことで済ませていいことなのだろうか?
「………あ、あいばん?」
「ねぇ、『
「おとこぼん…?」
どういうものです? とリリウスに目を向けるアスフィ。リリウスは知らね、と首を横に振る。
「いやぁね〜! こんな店に来て今さらカマトトぶって〜」
「………………?」
アスフィは首を傾げた。
「………………?」
シルは首を傾げた。
「ちょっと! なんであんたまでキョトン顔なのよ!え………? ……え? ………ここって、そういう店よね?」
「う〜ん、面白いお店にしたいと思いつつも、詳しくないのでそこまで至っていないお店………でしょうか」
「はぁぁぁ!? 何よソレ!?
「そもそも何故そんな知識で『そういう店』? をやろうと思った」
「それはですね〜、フレイヤ様が神聖浴場でデメテル様と話したそうなんですが……」
あの後、結局行ったのか。
「デメテル様はいいました」
『フレイヤ………貴方の子供達って、見た目に美しい子達が多いわよね。良いわねぇ、彼等に注いでもらえば、安酒さえ極上の美酒に変わるでしょうね…………』
「その言葉にフレイヤ様が思いついたのがこの酒場です。イケメン達がお酒を注いでくれたらみんなハッピー! ラッキー! オラリオに喜びと幸せを還元出来る! 素晴らしい慈善事業! 無視してたけど、ずっと五月蝿かったギルドも黙らせられる! 勝てる! と、そんな訳です♪」
要するに何時もの神の娯楽。思いつき、暇つぶしらしい。
「まあイケメンに酒を注いでもらえば美酒になるって言うのは否定しないけどね」
「? 安酒は安酒だろ。ソーマも鼻で笑うぞ『多少美味くなっても、酒そのものが極上に限る』って…………あ、マティーニ。この酒場飯ないの?」
「つまみなど、軽いものなら」
「………うわ、ただのポップコーンがこの量で1000ヴァリス…………まあいいや。塩、キャラメル、チョコ、いちごチョコ、醤油バター、コチュジャン10皿ずつ」
「おすすめは雇われ店長特製ソースだ」
「
因みにオッタルは黒服をやっている。彼は彼で需要はありそうだが、まあ客の女性達は巌のような男より線の細い美男子達に頬を染めているが。でもアマゾネスの何人かはオッタルを見てる。
「皿は極東の【ハニヤス・ファミリア】製の陶器があったらそれで。あれが俺が知る限り一番美味い」
「皿は食うな」
「リリウスなんてただの酒場としか思ってないわよ!」
「? 酒場だろ」
「酒場は酒場ですけど、目指しているものは…………う〜ん。あ、でもアフロディーテ様が来てくれたなら安心ですね」
と、シルは笑う。リリウスは紙皿に乗せられたポップコーンをオッタルから受け取った。これなら食われても問題ないと判断したのだろう。
「この『シェフの超おすすめ。さばきたて猪丸焼き〜切り分けナイフめった刺し〜』を作っておいてくれ」
「……………………………うむ」
オッタルが厨房に戻ると気配が一つ外に出る。流石にイノシシを捌くのは店内ではやらないらしい。本当に新鮮なんだな。
「アフロディーテ様は
「なんかあんたに言われるとチクチク言葉に聞こえるんだけど………まあそうね! 私こそ天界じゃブイブイ言わせてた女神格付け、ナンバーワンの女よ!」
「ブイブイいわせまくってた結果が前回のアレスの騒動か」
リリウスはポツリと呟いた。
「すごくしょうもない格付けに聞こえるのは気の所為ですか?」
「そんなアフロディーテ様なら、うちのお店に何が足りないかズバリご指摘いただけますよね!」
「…………店員のやる気」
「一時的に経営コンサルタントとして、このお店をプロデュースして頂けませんか!」
「「「店長!?」」」
団員達が思わず目を見開いた。
「はあ? そんなの、良いわよ」
「「「「てめぇも即決してんじゃねェェェェェ!!」」」」
リリウスは運ばれてきたイノシシの丸焼きを見る。本当にナイフがめちゃくちゃ突き立てられてる。最早イノシシに対する何か個人的な恨みを感じるレベルだ。
「それじゃあ、異議なし! ですね♪ お願いします、アフロディーテ様!」
「異議しか聞こえなかった気が………」
アスフィは訝しんだ。リリウスは『美の神』が他人の意見を聞くなんて滅多にないから今更だろ、と思った。そもそもこの店自体異議を唱えたかったろうに。
「安心なさい! 私がここを真の
「「「………………くそが………」」」
「第一級冒険者達のあんな苦虫噛みつぶした顔、初めて見たんですけど…………というかそろそろ帰っちゃ駄目ですか、私」
「私がやると決めたからには、本格的に行くわよ! じゃあまずこの店の現状を見せてもらいましょうか!」
「あああああああああああああああああ!!」
アフロディーテの絶叫が響く。リリウスは2皿目のイノシシの丸焼きに突入していた。
「マイナス一億点!! それが今の貴方達のレヴェルよ!!」
「「「あぁ!?」」」
「あひぃ!? そ、そそそれよ! それ!! そういう態度よ! そんなんで女が寄り付くわけないでしょうぉぉぉ!! 後は店長と内勤!」
「「…………?」」
「キャストの衣装ぐらいなんとかしなさいよ! 汗臭い冒険者スタイルで女が喜ぶと思って?」
アフロディーテの膝の上のリリウスも冒険者スタイルではあるが、取り込んだ栄養を余すことなく吸収し一切外に出さないリリウスの汗は水分以外ほとんど何も含まれない無味無臭。なのであまり汗臭くならない。
「顔がいいならそれに合わせて衣装も相応の物にしなさい! そうすればイケメンがもっと引き立つわ!」
リリウスはアミッドと同じく服のデザインにまるで興味ないが、アミッド同様相手がデザインしてくれる。似た者同士だ。
「いいこと? この店に足りないのは『非日常』! 客は現実逃避でイケメンを補給しにくるんだから、現実を忘れさせないと不合格も不合格! 血だらけの
「み、水を得た魚のようにアフロディーテ様の改革が止まらない! やはり腐っても女神……!」
「そこぉ! 一言余計なのよ! とにかく、このオワオワのオワの店には脱皮が急務! そうね………期間限定の出店、イケメンが映えるコンセプト……そういえばリリウスこの前極東の技を使っていたわね……────ピコーン! ひらめいた、これで勝負よ!」
リリウスはアフロディーテから渡された横笛を吹き、アスフィは弦楽を奏でさせられる。シルは鈴を鳴らす。
「かわいい子には旅させよ! イケメンにはコスプレさせよ! 頭の天辺から爪先まで武装は完璧ね!」
第一級冒険者達は極東風の衣装を着せられていた。アフロディーテはともかく、何故かアスフィとシルまで。
「何故私達まで着替えさせられたのですか?」
「可愛くはありますけど………」
「雰囲気よ雰囲気! この店にはコンセプトがない!! だから極東風コンセプトカフェにしたわ!」
「こんせぷとかふぇ、とは?」
『たくしー』同様神々の言葉なのだろう。
「『美男美女に給仕してもらってウッハウハな酒場』の総称よ」
「美しい男が美しい衣装を着て──うおっまぶし!」
と、エルフの貴人。え、エルフ?
「今までの怖い接客があった分、すごくご褒美!」
「鬼畜エルフにハイカラ、暴君
と、女冒険者達。片方は見惚れ片方は戦慄している。
「ドヤッ☆ おーっホッホッホッホッホッ!!」
アフロディーテは得意げに高笑いし、ガリバー4兄弟達はウザがった。
「何故極東風」
「本来は年末だからというか、本来の時期は着物がはやるというか…………まあメタい話はなしね」
「それよりも何故リリウス・アーデは女装を」
リリウスはアフロディーテと同じ女物の着物を着ている。肩とか出ているが一応着物だ。アフロディーテの普段の服より露出が少ない。
「だってえ、ここって男に飢えた女が集まる店でしょ? 可愛いリリウスを男の姿で居させるなんてアマゾネスの群れに将来有望な少年冒険者を放り投げるようなものよ」
アスフィとリリウスの脳裏に歓楽街に放置されるベルの姿が思い浮かぶ。
「後はそこの猫ちゃんも着替えさせないとね。何時まで気絶してるのかしら」
「そろそろ起きる」
「………………っ」
リリウスに床に叩きつけられたアレンは目を覚まし、直ぐ様リリウスへ突撃しリリウスは伸ばされた腕を掴み捻り背中に座る。完全に関節を決めている。
「…………!」
ランクアップしているとは言え、体重が軽いはずのリリウスを押しのけられない。そういう技なのだ。
「落ち着いてくださいアレンさん!」
「ただお前の妹と歓楽街に行っただけだろ」
「俺に妹なんざいねえ! あんな愚図、知ったことか! ただてめぇが関わることがムカつく!」
「大丈夫ですよアレンさん! あの時、アーニャとリリウスさんは2人っきりじゃなくて私やアーディさんと、オユキさんって遊女っぽい方を含めた4人で歓楽街にいましたから!」
「〜〜〜〜〜〜!!」
「シル・フローヴァ!? どうして火に
「流石【
戦車と獣
「昔だったら殺してたのに、今は気絶させるだけなんですね」
「俺も此奴も、別に殺したいのは互いじゃないしな」
「え、あんな毎日殺し合ってたのに? アリーゼ・ローヴェル達がこなきゃどっちか死んでましたよね、あの頃」
「あの頃、俺達が殺したかったのは妹を捨てて、その癖ろくに強くもなれねえ能無しだからな」
「【
「ちげぇよ」
本当に殺したいほど嫌いなのは自分自身。アレンもリリウスも、互いに妹がいることを知らぬまま、とにかく互いに気に入らなかった。
片方だけなら何処かで収集が付いたかもしれないが互いに殺意をぶつけ殺し合い収集がつかなくなった。
「今の俺はムカつきはするが、そこまででもない。此奴は知らん」
まあ、ムカつくのだろうな。置いていった自分と違ってまた一緒に歩けている姿を見て、さぞや背中が軽く感じるに違いない。その軽さを否定するために、リリウスに八つ当たりしているのだ。