ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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恥辱酒場開店

「さあて! これで全員着替え終わったわね。客の反応も上々。さっすが私、都市最大の【フレイヤ・ファミリア】も傅く天才経営コンサル女神アフロディーテ!」

 

 得意げに高笑いするアフロディーテに殴りたいと思う【フレイヤ・ファミリア】の強靭な勇士(エインヘリヤル)達。

 

「ほらほらぁ! ひれ伏しなさい、ダメダメ残念接客マン共ぉ〜!」

 

 何故こうも雑魚っぽい事をするのか。リリウスは猪の頭蓋骨を食いながら思った。

 

「ふふ。コンサルさん(アフロディーテ様)なら、キャストの教育もしっかりやってくれそうです♪」

「キャストが真面目に指導を受けてくれるかどうかは謎ですが………」

「大丈夫です。『雇われ店長』の命令ですから。ね、皆さん?」

「「「く………っ!!!」」」

 

 全員苦虫を噛み潰したような顔をした。アスフィは【フレイヤ・ファミリア】の幹部達が逆らえない『雇われ店長』の権力に引いた。

 

「イラッとしても殴ったら駄目ですからね? リリウスさん、怒っちゃいますもん。ねー?」

「アフロディーテの態度次第」

 

 態度次第では殴るのを見逃すらしい。

 

「ということで、我々は呑みましょ飲みましょ♪」

 

 と、シルはアスフィとリリウスをカウンター席に誘いフルーツ入りカクテルを頼む。

 

「えっ、店長の仕事は!?」

「店長は好きな時にサボれるんです♪」

「世の中の真面目な店長に謝りなさい!?」

 

 リリウスが無言でシルの頭をスパンとはたいた。

 

「きゃん! もう、暴力反対ですよ〜」

「何故少し嬉しそうなのですかシル・フローヴァ」

「叱られたいならミアに頼め」

「お兄ちゃんに叱られるの、夢だったんです♪」

「俺の妹はリリだけだ」

 

 むぅ、と頬を膨らませるシルはぐい、とお酒を飲む。

 

「グラス減ってませんよ、アスフィさ〜ん!」

「ちょっ、あまりくっつかないでください! また殺気を放たれると面倒です!」

「聞いてくださ〜い! リリウスさんが、甘えさせてくれなくて〜」

「文句は本人に言ってください!」

 

 オッタルは無言でモスコミュールをリリウスとシルに差し出す。

 

「モスコミュールでございます。カクテル言葉は『仲直り』」

「喧嘩すらしてねえよ」

 

 でも飲む。

 

「さて、店長はあの様子だし、この天才コンサルアフロディーテ様がビシバシ行くわ! お覚悟は宜しくて?」

「「「……………………」」」

 

 チッ、と小さな音が聞こえた。

 

「今誰か舌打ちしたわよね!? まったく、教育しがいのあるオスガキどもね。なら! こちらもハードモードでやらせてもらうわ! まずは徹底的にどちらが格上か認めさせる………全員、私の足を舐めなさーーい!!」

「「「────は?」」」

「貴方達は今、私に従う事しか出来ないのよ! ああ、魅了も使わず男を従わせるなんて。筆舌に尽くしがたい快感!」

「「「「やっぱり死んでも認めねぇわこの勘違い高慢ちき女」」」」

 

 と、ガリバー兄弟。

 

「品性なさすぎてクソワロタ糞女神」

「『品性が無さ過ぎて(くそ)以下の存在』………って俺に通訳させないでくれよ、ヘディン………いや、ブチギレているのはわかるけど。怒りのあまり神様達の言葉、使うなよ」

 

 ヘディンとヘグニ。

 

「だが、(くそ)以下なら早々に掃除するに限るな?」

「アフロディーテに品性がないのは否定しない」

 

 アレンとリリウス。アフロディーテがちょっと、と叫ぶ。

 

「だが主神の意向で始めた接客業をまともにこなせねえてめぇ等の方が、この場において客が喜ぶ案を出したアフロディーテ以下なのを自覚しろクソ接客の糞以下以下(くそいかいか)店員」

「リリウスさん…………そんなにフレイヤ様の店の心配を!」

「しょーじきそれはどうでもいい。あ、猪のおかわり」

「……………………………………………」

「あら? アスフィさん、平気ですか?」

「あ………大丈夫です…………」

 

 ところでそろそろ夜が明ける。アフロディーテの教育は夜の間に行う予定だったが、開店時間が迫っている。このままで大丈夫なのだろうか? 

 

「まあ良いわ。良くはないけど………本題に移るわね。まず結論から言って、貴方達にはお客様……お姫様(プリンセス)を喜ばせようという精神が足りない!」

「「精神?」」

「そうよ、心構え! マジのお姫様(プリンセス)だと思って接しなさい! 心を閉ざした鉄仮面を笑わせて、懐に入り込むのよ!」

「言うは易し、行うは難し…………女の機微など月の神秘のごとく知れぬこの身では、竜を屠る方がまだ容易い…………」

「わかってるわよ。そのために一番手っ取り早い方法を今から伝授してあげる。来なさい、私の眷族達!」「「「はぁ〜い! アフロディーテ様〜!! いざ!」」」

 

 と、サンドロとベックリンを筆頭にアフロディーテの眷族達が現れた。ハルモニアはいない。

 何処からか楽器の音? 何時運んだんだろう?

 

「さぁ〜、みんなグラスは持ったか!? 今夜も朝まではじけて行こうぜー!」

「OKベイベー! FOOOOOO〜〜〜!!」

「グイグイよしこい♪」(グイグイよしこい♪)

 

 一人が歌うと複数人も繰り返すように歌う。

 

「グイそれグイそれ♪」(グイそれそれそれ♪)

「グイグイよしこい♪」(グイグイよしこい♪)

「あい♪」(あい♪)(あい♪ あい♪ あい♪)

「あい♪」(あい♪)(あい♪ あい♪ あい♪)

「あい♪」(あい♪)(あい♪ あい♪ あい♪)

 

 誰もがぽかんとする中、オッタルは無表情でヘディンは路傍で馬車の車輪に潰された犬の糞でも見るような目を向けていた。新しい猪の丸焼きが来るまで、リリウスは生ハムの原木をモチャモチャ食べる。

 

「今宵は朝まで飲み明かす〜♪」

「祭りじゃ宴じゃ♪」(祭りじゃ宴じゃ♪)

「シャンパン祭りじゃ♪」(シャンパン祭りじゃ♪)

「シャンパン片手にアフロちゃ〜ん♪ ファミリアみんなで荒れ狂う〜♪」

「オラリオの街で荒れ狂う〜♪ 潰れる団員いるけどそんなの俺たちゃ関係ねぇ♪」

「「「飲んで飲〜んで飲んで♪ 飲んで飲〜んで飲んで♪飲んで飲〜んで飲んで♪ 飲んで♪」」」

「あい♪」(あい♪)(あい♪ あい♪ あい♪)

「「「FOOOOOOOOOO〜!!」」」

 

 歌が終わった。クラッカーがパンパン鳴り響く。

 

「どう? 簡単でしょ!」

「何処がだよ」

「汚物………不潔………不浄……ゴミカス……」

「見ろ! あまりの生理的嫌悪のせいでヘディンが潔癖ヒロインみたいなこと言い出したじゃないか!」

「一応潔癖種族(エルフ)だが?」

「ヒロインじゃねーだろ」

「不快の一言に尽きる………このような乱痴気騒ぎで喜ぶ女性がいるとは思えん」

 

 リリウスはアスフィを見る。

 

「グイグイよしこい♪ グイグイよしこ〜い♪」

「──!? 【万能者(ペルセウス)】!?」

「馬鹿な………血迷ったか!?」

 

 真っ赤な頬で、トロンとした瞳。どう見ても酔ってるアスフィ。

 

「もしかして、お酒飲ませすぎちゃいましたか?」

「確かに、何杯も出しましたが」

「それでも上級冒険者だろうが。どうなってやがる」

「………【ヘルメス・ファミリア】の実態は真っ黒(ブラック)だと聞く。特に、【万能者(ペルセウス)】はうちのヘイズと渡り合えるほど酷使されているとも」

 

 じゃあこの猪の丸焼きは業務改善しない猪人(オッタル)への恨みが込められているのか。

 

「心身ともに摩耗した器が酒に呑まれ、タガが外れたか」

「「しょーもな」」

「「「グイそれグイそれ♪ グイそれそれそれ〜♪」」」

 

 呆れ果てる【フレイヤ・ファミリア】。気にせず歌うアフロディーテのその眷族、そこに交じる酔っ払い(アスフィ)

 

「あふぅ〜〜、にゃんかふわふわしますぅ〜〜〜! 自由サイコ〜〜! イケメンのお花畑〜〜!」

「喜ぶ女…………いたな………」

「……………………」

「これ、『しゃんぱんこーる』って言うんですかぁ? いいれふねぇ。日頃の鬱憤はりゃすぞー! 酒持って来ぉぉぉい!!」

 

 アスフィも望んでいるのでアフロディーテが実践させようとする。出来るかと叫ぶ彼等もシルが悪ノリしてやらされるが、ガリバー兄弟以外は不可能だった。

 ヘグニは声がボソボソと、ヘディンはもっと小さな声で、アレンに至っては口パク。

 

 ガリバー兄弟は兄弟の息の合った様を見せつけた。

 得意気な彼等と殴り合う他の眷族達。顔も含めて傷だらけになった彼等を癒しに来た治療師(ヒーラー)は目が死んでいた。リリウスはシェフである彼女にチップを渡すと、初めて子供に花をもらった恐れられる戦士みたいな顔をして一筋の涙を流した。

 

「次! コンカフェといえばチェキ!」

「チェキって、俺の絵とかの?」

「あれはその描画技術の応用。ブロマイドよ。チェキっていうのはその場で絵を描く事」

 

 そういったアフロディーテは不本意だがシルと手でハートを作った。一瞬で模写するサンドロとベックリン。

 

 因みにハートポーズは結構好評であった。

 

 アスフィで実践させようとするが最初にやるように言われたコミュ最弱クソ雑魚褐色エルフ(ヘグニ・ラグナール)は【人格改造魔法(ダインスレイヴ)】に逃げアスフィではなくシルに顎クイし、チェキらせた。

 

 他の眷族とまた殺し合いが始まる。

 

 尚素に戻ると自己嫌悪で死にそうになっていた。

 

「あああああ! うあああああああああ! 俺はシル様になんてことおおおおおお!!」

「大丈夫ですよ、ヘグニさん。私は嬉しかったですから。よしよーし」

「あはは……いいなぁ、慰めてくれる人がいるって………私には、私には………頑張ったって何もない……………あはは。な~んで私はあの神に付き従っているのか………わかっていますよぉ、自分でも馬鹿だってぇ………」

「「お前はもう飲むな」」

 

 丁度いいとアフロディーテは『色恋営業』でお姫様(プリンセス)を慰めろと言う。こういった接客は『あの人に会いたい!』という恋心を利用するのだとか。

 

「悪い商売ですねぇ」

「アンタが言うな! ………ま、間違ってないけどね。客もそれは解っている」

 

 客とキャストの間で騙し合う。時にのり、時に引き、そういう駆け引きを楽しむのが上級者だとか。

 

 客も来始めたのでサンドロとベックリンで実践。

 

 劇団でもある【アフロディーテ・ファミリア】だけあり見事に落としている。しかし、エルフもこういう店にくるようだ。

 

 レッツ実戦とアスフィ相手にやらせるが、先程のノリで迫ったガリバー兄弟は『距離なしベタベタはただただウザい』と撃沈、ヘグニはとても小さな声で何かを言うが『はっきりしゃべらんかい』と論外を喰らう。

 

 ヘディンはそこそこ上手くやっていた。初めに暴君のように接して、しかし優しさを見せるという手段。しかし優男(ヘルメス)の被害者であるアスフィは胡散臭さを一瞬で見抜いた。心の障壁が銀行の金庫並みに分厚い。

 

 アレンは早く帰りたいなら適当に乗ったふりをしろと言う。苛つくとも。が、それは地雷。

 

「……あぁ? 苛つくのは…………こっちの方だっつの」

「!?」

「何なんだよお前ら…………こっちは色んなことを忘れさせてくれる、現実逃避をさせてくれるって聞いて、手伝ってやってんだよ。なのにこの体たらく………もっと愉快な気分にさせろよ! 人を笑顔にさせたいなら、まずお前が笑え………! おらっ、飲め飲め飲めええええええ!」

 

 アスフィは酒瓶をアレンの口に突っ込む。突然の事態に反応が遅れるアレン。驚愕し固まる他の強靭な勇士(エインヘリヤル)達にも襲いかかった。

 

「私はお姫(プリンセス)様だぞ〜〜〜〜!」

「えええ!? 色恋営業じゃなくて飲み営業!? ちょっと、これじゃ折角のイケメンが活かさないじゃない! 仕切り直し仕切り直しぃ! コンサルの言う事には素直に従いなさーーい!」

 

 

 

 

 

「も〜〜…………くらくらぁ。すやぁむにゃぁぁ………」

 

 ようやく落ちた。超飲んでいた。

 鬼気迫るアスフィに押され飲まされていたヘディン達の酔は厨房のシェフが魔法で解いた。

 

 

「ホンっト、ポンコツキャストばっかりね! これに比べれば元がつくリリウスを含めて、私の眷族(ファミリア)の方がまだ超絶優秀だわ!」

 

 アフロディーテは改めて店を見る。

 

「最初来た時、店員の人相の悪さに帰ろうか悩んだけど、貴方達みたいな人もいるなんて!」

「【フレイヤ・ファミリア】は怖いけど、【アフロディーテ・ファミリア】の人達は気さくでいいわ〜」

「いや〜、君達みたいな可愛い子にそう言われると嬉しいな〜! あ、こちらの席のお姫様(プリンセス)にシャンパンを」

「うむ」

「じゃ、グラス持って〜…………この出会いに、かんぱ〜い!」

「「うぇ〜い!!」」

「なんでぇ? 今日は久々に楽できるって言ってましたよね? なんで結局料理中に呼ばれて魔法を酷使されるんですか。全部、全部あの猪のせいですよお。シル様がこっちいるからあっちは休みだし。羨ましい、許せない」

「よしよし、お前は頑張ってるよ。ごめん、料理は簡単なのだけでいいから」

 

 リリウスはアスフィ同様死んだ目をした桃色の髪の女の頭を膝に抱きかかえ頭を撫でてやる。

 

「見本のつもりが、既に何人か自分のお客さんを作ってるわよ。これじゃ女神アフロディーテの店ね」

「「「────!!」」」

「そんな………オッタルさん! 黒服としてのレベルが上がってます! よっ、内勤猛者(おうじゃ)!」

「そっちじゃないわよ! じゃなくて、うちの子達の有能営業みなさいよ!」

「う〜ん。ヘイズさんは、忠愛はともかくタイプとしては年下好きなのではと思ってましたが、やはり」

 

 シルは何故かゴクリと戦慄する。

 

「ふふん♪ 都市最強なんて言っても、所詮はダンジョンの中だけね。脳筋はやはり脳筋ね。哀れを通り越して気持ちよくなってきたわ! 迸る優越! 今ここ、コンカフェの舞台では私達が最強! 【フレイヤ・ファミリア】なんて目じゃないわ、カス同然ね〜!」

 

 リリウスは膝を貸してやっている女の耳をそっと閉じておく。が、耳を閉じない強靭な勇士(エインヘリヤル)達はビキビキとブチギレていた。

 

 暗殺計画を考え始めたので軽い一発なら許すかと思うリリウス。

 

「駄目ですよ、皆さん。見返すなら拳じゃなくて、接客で、です」

「……その要求は聞けません」

「だめ、ですか?」

 

 小首を傾げ見上げるように。アレンも押し黙る。

 

「皆さんなら出来ると、雇われ店長の私は信じていますよ?」

「………………何処まで俺達をおちょくれば気が済むのか」

「え〜! 本当にそう思っているのに」

 

 と、シルはアフロディーテの下へ移動する。

 

「………アフロディーテ様。勝負をしましょう」

「……勝負ぅ?」

「【フレイヤ・ファミリア】のキャストはホールの東側を。【アフロディーテ・ファミリア】は西側を使用する。勝負終了の時点で、より多くのお姫様(プリンセス)を掴んでいた方が勝ち………そんな接客勝負、いかがですか?」

「……………それ、本当に勝負になると思っているの?」

「うちの店員さん達、本気を出したらすごいんですよ?」

「……………………ふふ。あははははははは! 貴方バカぁ? いいのね、絶対そっちの負けだけどいいのね? オーッホッホッホッ! 受けてあげますとも! こんなの余裕よ楽勝よぉ!! なんかすんませーんって感じぃ〜〜? うちの派閥があの【フレイヤ・ファミリア】に吠え面描かせる時が訪れようとは!!」

「何故フレイヤ様と同じ美の神でありながら………ここまで下品なのか」

「時折品性を見せるんだが………案外普段は溜めているのかもしれねえ」

 

 オッタルとリリウスが何処か呆れたように言う。

 

「聞こえているわよ黒服猪、リリウス! 聞いたわね、私の可愛い子供達? 今日から天下は、この真の美神の派閥(アフロディーテ・ファミリア)のものよ!」

「「「いやほーい☆」」」

「オーホッホッホ! オーーーホッホッホホッホッホホッホッホホッホッホ────げほ、ごほ! むせた」

 

 リリウスは水を渡してやる。

 

「「「「シル様には悪いが、乱心としか思えない」」」」

「だから信じているんですってば。私だって、皆さんをバカにされて少しカチンと来ちゃったんですから。勝負って、相手が『絶対勝てる!』って確信している時の方が倒し甲斐があると思うんです。何より、皆さん、何時も『絶対勝てる相手』としか勝負してないでしょう?」

 

 ダンジョンに潜る回数は少なく、地上において他の団員をしごく事のほうが多い幹部達。その言葉にハッとしリリウスを見る。

 

「フレイヤ様のファミリアなら、どんな勝負でも勝てますよね? だって皆さんは最強の眷族さん達なんですから。それとも、最強の看板、おろしちゃいます?」

 

 安い挑発。それでも受けない、臆すると言った選択肢は彼等にはなかった。だが、【アフロディーテ・ファミリア】みたいなことをやらなくてはならないのかと燃え上がったやる気は鎮火しかけるが、それでも我を殺し己を騙る覚悟を決める。

 

 

「えっ、【白妖の杖(ヒルドスレイヴ)】!?」

「わ、私達、なにかしました?」

 

 突然やってきたヘディンに不安そうな怯えた視線を向ける女性客。

 

 永争(えいそう)せよ、不滅の私。

 

 ヘディンは心の中で唱える。

 

わたしがかんがえたさいこうにあたまがわるいわたし《ヴァリアンヒルド》!!

 

「そうですね。貴方は、何時も私の手を煩わせる。だが……私はそれを疎ましいと感じてはいない。自分でも大概おかしいと思いますが………この一時を好ましいと、感じてしまう」

「「ええええええっ!?」」

 

 女性客の目にハートが浮かぶ。

 

「「「「や、やった!?」」」」

「恥も誇りも捨て、やった!! あの残虐非道邪智暴虐の暴君が!」

「見ろ! 女共が!」

「ヘディン様!?」

「あ、あの子達ずるい!」

「私も甘い言葉囁いて欲しい!」

 

 と、女達が東側へ移動し始める。

 

「…………まったく。困った女神様達だ」

「うわっ、気持ち悪」

 

 リリウスに頭を撫でられながら目が復活してきた女はその姿を見て吐き捨てた。が、他の女達には効果絶対。やはりオラリオでの知名度はヘディン達の方が上。

 

「流石ですヘディンさん! 王が動かなければ兵も動かない…………率先して動くあなたこそ勝利の風を呼ぶ真の智将!」

 

 オッタルはツッコミが追いつかないと冷や汗を流す。

 

「これで反撃の狼煙は上がりました。さあ勝負です、アフロディーテ様」

 

 

 

 

「本当にもう、すごかったよねー」

「……………?」

 

 キャイキャイ興奮した様子の女性冒険者達の声にアリーゼ達は振り返る。

 

「なんだろうね?」

 

 アーディも興味深そうに耳を傾けた。なんでも【フレイヤ・ファミリア】が酒場を始め、そこで団員達に接客してもらえるらしい。

 

「まー、あの人達かっこいいもんね」

 

 とは言いつつ、別にその店に興味は………

 

「リリウスちゃんまで居るんだって!」

 

 ピタリと、去ろうとしたアーディの足が止まる。

 

「しかも何故か女装よ女装! まあ、男目当ての気分だったからそこまで気分上がらなかったけど」

 

 アリーゼが振り返る。

 

「あの子、頭よしよししてもらってたよね。私もお願いしようかな〜」

 

 イスカが目を見開く。

 

「駄目だ此奴等」

 

 ライラは呆れる。

 

「あのガキが女装し接客するからなんだと言うのだ。その手の姿はアーディの『ぶろまいど』とやらで散々見せつけられただろうに」

「こんせぷと? に合わせて極東の衣装! すごく似合ってたわよね〜」

 

 興味なさそうだった輝夜がピクリと肩を揺らす。

 

「…………駄目だ此奴等!」

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