ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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反撃の狼煙

「「「キャー! ヘディン様〜♡」」」

 

 エルフの中でも取り分け美しい顔立ちのヘディンが本気を出せば、この店に来る女……アフロディーテの言葉を借りるなら『男に飢えた夢を買いに来る女達』は直ぐに目を輝かせる。

 

「あ、あの子いきなり本気出してきてるじゃないのよー!? 私が指導してた時は何だったワケ!?」

「そりゃまあ、アフロディーテにやれと言われた時と違って相手はシルだし」

 

 本気の一つも出すだろう。リリウスだってシルなら断ってもアフロディーテなら頼み事を聞くことぐらいある。

 とはいえ、そんな言葉で美の神は納得しない。

 

「キーッ!! このアフロディーテを軽んじるとは!! ムカつくムカつくムカつくぅぅ〜〜〜〜!」

 

 だからなんでこう、一々反応が雑魚っぽいのか。

 

「皆さん! アフロディーテ様が地団駄踏んでる今がチャンスです! そのまま押せ押せでイケイケです!!」

 

 次に動いたのは、まさかのアレンだった。不機嫌さを隠しもせず女に近付くと、当然女は怯える。

 

「な、なんですか!?」

「喚くな。黙って酒をいれろ」

「え? な、何を急に………」

「口答えすんじゃねえ」

 

 困惑する女の座る椅子の背もたれを掴むアレン。神々のいう『壁ドン』に近い体勢。

 己を見つめるアレンに顔を真っ赤にする女。

 

「お前は黙って、俺の言うことを聞きゃあいい」

「ん? 狂三お姉ちゃん?」

 

 何処からともなくズキューンという銃声が聞こえた気がしたリリウスは周囲を見回り首を傾げる。銃と言えば狂三を連想するようだ。

 

「はいぃ………アレン様…………♡」

 

 と、アレンに詰め寄られた女はうっとりしていた。

 

「え〜、あれの何処が良いんですか。私なら夜食にカミソリ入れてやりますよ」

 

 うへ、と吐き捨てた。

 

「あのクソ猫が、客を堕とした、だと!?」

「脅迫にしか見えないのに!? 今までの接客と何が違うんだ!?」

「相手の女がマゾとか?」

 

 驚愕するフレイヤの眷族達。リリウスも理由を考えてみる。これぐらいしか思いつかないが。

 

「あれは、『オラオラ営業』略して『オラ営』!! いくら顔がよくても限られた者にしか使えない上級テク!」

「知ってるんですか、アフロディーテ様!」

 

 シルがウキウキ尋ねる。

 

「ええ。使い方を間違えれば、一気に客を失う諸刃の剣。それをあの子………本能なのか天然なのか、使いこなしている! 本人は何も態度を変えていないし、営業するつもりなんか微塵もない。けど──あの眼! 目的を定めたあの真っ直ぐな瞳で見つめられたら、押しに弱い女子ならイチコロ! 一瞬でKO!!」

「何故ここに来て解説役を」

 

 今回はオッタルのツッコミも間に合った。

 

「………お前もだ。酒を入れろ」

「い、入れますぅぅ♡」

 

 今度はエルフの客を堕とした。え、だからなんでエルフ?

 

 貞淑だの身持ちが硬いだの恋をするとアマゾネス以上に面倒くさいだの言われるエルフでも、こういった店に来るのか。

 

「お待たせしました。こちらはブランデー・クラスタ。そのカクテル言葉は──『時間よ止まれ』」

 

 エルフの客は何かを期待するような目でアレンを見つめる。シルの時に渡したカクテルと言い、何気にカクテル言葉全部覚えているのだろうか? そして判断が完璧。

 

 アレンは余計な事すんなと睨みつけていた。オッタルはフッ、と笑う。

 

(フッ、じゃねえ殺すぞ)

 

 アレンはオッタルに殺意を覚えた。まあ、何時もの事だが。

 

「ねっ、私達もあっちに行きましょ! アレン様に意味深なカクテル貰いたい!!」

「いくっ、いくわ! デレ無しツンツン雄猫の意味深なカクテル私も欲しい!」

 

 どんどん客が流れていく。やはり知名度で負けている【アフロディーテ・ファミリア】は分が悪い。

 先程まではデメテルでも困りそうな接客態度だったが、今は無駄な顔の良さ(ポテンシャル)を発揮し始めた。

 

「ふふ、もう形勢逆転しちゃいましたか? 降参しちゃいますかー?」

「舐めるんじゃないわよ! こっちには切り札があるんだから!!!」

「切り札……!?」

「そう、オラリオのカブキチョウこと歓楽街でスカウトしておいた逸材! さぁ、出て来なさい!」

 

 カブキチョウってなんだろう?

 

「名付けて源氏名…………【勇者(ブレイバー)】ぁぁぁぁぁ!」

 

 照明が薄くなり、スポットライトに照らされる小さな影。

 

「まさか、あの【アフロディーテ・ファミリア】に手を貸す日が来るとはね」

 

 スーツにスカーフ、そしてサングラスをつけたフィンがいた。髪もなんかウニョウニョしてる。

 歓楽街………『鍵』の調査中にアフロディーテに誘われたのだろうか?

 

小人族(パルゥム)!? 貴様、何故ここに!」

「君達が怪しげな店を開いたと聞いて偵察に来ていたんだが、さっきの説明通り、神アフロディーテに声をかけられてね」

 

 アスフィも元々偵察で訪れたらしい。どんだけ信用ないんだ【フレイヤ・ファミリア】。そりゃそうか、あるわけなかった。

 

 フレイヤの顔を踏んだリリウスは怪物際(モンスター・フィリア)の一件を思い出し納得。

 

「貴方達が状況を巻き返そうと必死こいている間に、ちょちょっとね! これはもしもの時の切り札になると思って声掛けしておいたの」

 

 本当は自分の眷族だけで圧勝するつもりだったが、意外にも盛り返されてきた。

 

「貴方達の無駄な頑張りに免じて、こちらも本気を出すことにしたわ!」

「ブレイバー君! ヘルプ!」

「いやむしろ我々がヘルプに付かせて頂きます。お助けをー!!」

 

 女性客がブレイバーという単語に反応した。流石オラリオモテる男ランキング連続1位。

 

「やれやれ、こんな事もあろうかとこの格好(スタイル)で来て正解だったな。親指様々だ」

「親指便利すぎんだろ!」

「生意気すぎるぞ貴様!」

 

 ガリバー4兄弟達が叫ぶ中、フィンは笑顔で客の一人に近付く。

 

「あのっ! 嬉しいです…………まさかあの有名なフィン様と一緒にお酒が飲めるなんて……ここは天国…………?」

「ハハッ、その通り。ここはパラダイスだからね。極上の時間を共に過ごそう………お姫様(プリンセス)☆」

「んんんんんんんんんんんんんん!! お願いしますううううううう!!」

「「あ、あたしもフィン様が良いいいい!!」」

 

 奪われた客が戻って戻ってくる。屈辱に耐えて客を奪ったヘディンとアレンが忌々しそうに睨む。

 

「悪いね、ヘディン、アレン。けど、ちょっと見てみたくてね………君達【フレイヤ・ファミリア】が敗北するところを」

「「クソ勇者がああああ!!」」

 

 と言いつつ、フィンは何かを探すようにスタッフを見る。そういえば歓楽街襲撃の帰り、フレイヤがイシュタルの眷族っぽい麝香の香り漂う男を連れ歩いていたような気がする。

 

「「フィン様、大好きです〜! ヨイショ〜!」」

 

 あ、またエルフの客も交じってる。

 

「ありがとう。嬉しいよ、お姫様(プリンセス)。今宵はずっと君の愛の囁きを聞いていたい。そう願っている………さあ、二人の運命に。そして、ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていない今日という日に、乾杯」

「「「フィン様しか勝た〜〜〜ん!!」」」

 

 このままいけば、アフロディーテが勝つだろう。そう、このままなら。何か知らんが強靭な勇士(エインヘリヤル)達がやる気になってる。

 

「【ロキ・ファミリア】まで出てきたとなると…………これは『闘い』!」

「何言ってんの?」

 

 リリウスは訝しんだ。

 

「あのクソチビが出てきた以上、もう止まらねえぞ」

「「「「ぶっ潰す」」」」

「武を以て殺す。計略を以て討つ。ありとあらゆる手段を尽くして殺し尽くす」

 

 殺る気もといやる気満々な勇士の姿にシルはニコニコ、オッタルもうむ、と頷く。

 

「そうだ。戦いはまだ終わってはいない。猛ろ。勝利を掴め」

「「「「「団長面するな猪くたばれ」」」」」

「……………………」

「可哀想な、オッタルさん。後で頭を撫でてあげますね♪」

「「「「「やるぞ!」」」」」

 

 盛り上がってきた、のだろうか?

 

「はいはい、噂を聞いてお客様が集まるんですね。はー、仕事仕事」

 

 リリウスに頭を撫でられていた女は立ち上がり厨房へ向かっていった。

 あの女には借りがあるリリウスは、さてどうしたものかとその背を見送る。と………

 

「リリウス〜!」

「アーディ?」

「わっ、本当にいた!」

「あら可愛い」

「イスカにアリーゼ」

「…………………」

「輝夜?」

 

 アーディ、イスカとアリーゼ。輝夜までやってきた。

 

「おいおい、勇者様までいんのかよ。何この混沌(カオス)

「ライラ………」

 

 あまり乗り気ではなさそうなライラまでいる。

 

「リリウス! 私も頭撫でて〜!」

「ん」

 

 飛び込んできたイスカの頭を撫でてやるリリウス。

 

「あら、本当に【フレイヤ・ファミリア】も接客してるのね」

「アア、アアアアアアアア、アリーゼ・ローヴェルぅぅぅ!? 嘘、本物!? な、何でここに!」

 

 ヘグニが面白いぐらい動揺している。あれは、そう、『推し』を前にした応援者(ファン)の反応!

 

「あ、えっと…………応援してます」

「そう? ありがとう。貴方の活躍も聞いてるわよ。Lv.7、すごいわね!」

「あ、笑った……【紅の正花(スカーレット・ハーネル)】が俺に。褒めて…………こ、これは、夢?」

「チッ、クソザコがぁ!」

 

 ヘディンがキレた。

 


 

竜刀(りゅうとう)鈴鳴(すずなり)

製作者・椿

材料・名もなき邪竜の鱗・牙、ハルモニアの血

刀身に穴が空いた特殊な構造の刀。特殊な音域を奏でる。

マーダがリリウスの血で変質しているのを参考に邪竜が数千年利用していた『調和』の力を持つハルモニアの血を使用し、オリジナルに劣る『調和』の力を持つバフ、回復の刀。その上赤雷まで出せる。

鞘は銅線を巻き付けた特別製。抜刀の速度を極限まで速める。

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