ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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番外 時を渡る獣4

前話

 

因みにシルに美味しい料理の作り方を聞かれたリリウス

「え? 何で美味しく作れねえの? コツとか言われても、ただ美味くなるよう味付けするだけだ。簡単だろ」(本気の困惑)

 

 

戦闘の才能以外は基本的に天才なので師匠としてはクソ

 


 

「じゃ、改めて話そうかのお」

 

 仮設テントの中、向き合うは二柱の神と、一人の人類。テントの外では巨大な黒蛇がとぐろを巻いていた。

 そのとぐろの半径は小さな町と同等という規格外。

 

 そんな超大型を操る少年は、しかし驚くほど人類への敵意を感じない。

 

「儂等に一人で喧嘩売ったのはお主が初めてよ。しかも『障害(ヴリトラ)』を名乗り、前に立ちはだかるとは」

 

 天界きっての武闘派の『彼処』の関係者だろう。特にヴリトラの名は思うところがある。

 インドラと呼ばれる神はゼウスに同じ雷神としてよく殺し合いを挑み、その余波で下界が荒れていたものだ。

 

 そんなインドラをして苦戦し、その偉業を二つ名とした程の怪物がヴリトラだ。よく知っている。そこの関係者だろうが…………。

 

「ヴリトラ名乗らせるなら外の蛇じゃね?」

「は? あの程度にヴリトラ名乗らせるかよ。俺は『蛇竜殺し(ヴリトラ・ハン)』だぞ」

 

 つまりヴァースキと名付けた蛇との戦いを、彼自身は自分の異名にする程のものではないと言い切っているのだろう。

 

「ヴリトラ・ハンなのにヴリトラ名乗るのか」

「今の俺は人類の敵側だからな」

「そんな事はどうでもいいわ」

「「どうでもよくはないだろ」」

 

 ヘラの言葉に少年とゼウスが突っ込む。

 

「貴方、私の娘達を誑かしたわね?」

「え、なにそれ知らない」

「達? つまり複数。うっらやましいのぅ!」

「少し待ってなさい」

 

 ヘラはニコリと微笑むとゼウスを連れテントから出る。ゴシャグシャと生々しい音が聞こえてきた。

 

「あ〜〜〜〜! 送還される、送還される〜〜〜〜〜!!」

 

 

 

 

 暫くすると血だらけのヘラがゼウスらしき肉塊を引き摺り戻ってきた。

 

「…………誑かしてないよ」

「勘違いさせるような言動をとるのが問題よ」

 

 わぁ、理不尽。これが目が合った女がいただけでブチギレることもあったという【ヘラ・ファミリア】の主神か。納得である。

 

 アルフィアってやっぱり【ヘラ・ファミリア】の良心なんだなと思うリリウスであった(そんな事はない)。

 

「アルフィアもアルヴァも貴方と戦うことに困惑している。二人も誑かした責任を取りなさい」

「具体的には?」

 

 仮に付き合えとかだと、この場合どうする気だろうか? 2人だけど。いや、アルフィアは多分保護欲なんだろうけど。

 

「死になさい」

 

 暴君。何様だこの女。神様か。

 

「なら戦争遊戯(ウォー・ゲーム)で殺せばいい」

 

 出来るものならな、と言葉を付け足せば目を細めるヘラとゼウスらしき肉塊。だが実際、自分達の眷族(こども)より強い人類は初めて見た。

 

 これほどの強者が無名で、そして黒竜に挑むなと言う。その時点でゼウス達は正体をある程度察している。

 

「…………こちらにメリットが少ないわ」

 

 例えそうだとして、だからと眷族達の意思を無視する気は二柱(ふたり)にはない。()()であるというのなら、さらに鍛えるまでだ。

 

「………………」

 

 リリウスもその反応は予想内だったのか、ゴソゴソと影の中を漁り幾つか取り出す。まずは樹の実。

 

 王族(ハイエルフ)のみが採取を許された『アルヴの森の大聖樹の枝と霊薬実(タプアハ)』。

 潤沢な魔力を内包する数多の精霊の混血。

 癒やしの奇跡をもたらす『聖女』の血。

 強化種『人魚(マーメイド)の血』。同じく強化種の一角馬(ユニコーン)の角。

 カドモスの泉水および『竜血』の残りにダンジョン深層の薬草。

 いまだ休眠していた穢れた精霊の一部に、肉体を失い『異界』を構築していた堕ちた精霊達の魔力。

 

 ヘラが目を見開く中更に追加される小瓶。

 

「後これ、『生命の泉』の泉水」

「ぶふ!?」

 

 これにはヘラも吹き出した。

 

「は? え? ベルテーンの? 『沼の王』を倒したの?」

 

 メーテリアの治療法を探すヘラですら諦めていたのに。

 

 厳密には、倒すだけなら【ヘラ】や【ゼウス】でも可能。ただしそれは()()()()()()()()ことになる。泉の力で肥大化し、無限の肉人形と無限の再生を持つ『沼の王』の魔石だけを破壊するというのはそれだけ至難の業なのだ。

 

「魔石の位置は知っていたし、毒も効くからな。後凍らせた」

 

 回復を阻害し、源泉に近い肉はそもそも凍らせたりと徹底的にメタを張り完封した。結果泉が無事なまま『沼の王』を退治した。

 

「念の為『生命の泉』の泉水を取り込み続けた『沼の王』の肉片も。因みにこれは全部【ヘラ・ファミリア】への()()()

「…………………貴方は」

 

 癒やしのアイテムばかりのそれに、ヘラはリリウスの真意を見透かさんと見つめる。

 

「野暮な質問はするなよ女神。強いて言うなら、俺はあんな最期を認めない。彼奴の最期は、憂いの一つもなく安らかに逝ってほしい、ただのエゴだ。自分勝手な贖罪とも言う」

「……………そう」

 

 ヘラは納得したような、それでいて何処か寂しそうな顔をした。

 

「儂等は?」

「ベヒーモスの超毒の完全回復薬」

「…………それだけ?」

「俺以外がベヒーモスの毒を食っても治るぞ」

「………………なるほどのう。え、今俺以外っていった? 食えるの、あの肉」

「食えるぞ」

「ベヒーモスを、倒せるのか」

「お前達なら出来るぞ」

 

 でも黒竜は別だ。

 

「だが俺を超えられるなら、少なくとも一段駆け上がる」

「私達の子供達ですら、超えるのは困難だと?」

「困難も何も………俺のほうが強い」

 

 超えられる前提の『障害』など、何の意味もない。超えられぬモノを超えてこそ、人類は器を破り次へと進むのだ。

 

「なぁ〜、儂にはこれだけ? かわい子ちゃんのパンティとかないの?」

 

 ゼウスらしき肉塊は再びヘラに引きづられテントの外に。ゼウスらしき肉塊らしき肉塊となって戻ってきた。あれ、前が見えているのだろうか?

 

「前が見えねえ」

 

 見えてなかった。

 

「参加賞は、お前は何が欲しいかによる」

「ヘラの愛以外いりません」

 

 言わされてるなあ。怖いなあ、女神。

 

「だけどこの場合、私達は貰いすぎよ」

「儂少ししかもらってないんだけど」

「じゃあ、もう一つ。勝敗に関係なくあって欲しい奴等がダンジョンにいる。今はあのアリの巣に住まわせているが」

 

 因みにアリの巣とは生まれてくる命の思想を一つに染め上げてコツコツ千年も拡張を続けていた迷宮の事だ。

 

「………可愛い子、おる?」

 

 懲りないなこの肉塊。

 

 

 

 

 

「というわけで話はまとまった。内容は『総力戦』じゃ!」

 

 ゼウスの言葉に団員達は微妙な反応。それはそうだ、規格外のサイズの黒蛇がいるとは言え、相手は調教師(テイマー)一人。

 

 調教師(テイマー)がモンスターより強いのは絶対条件として、だとしても見た目は子供。

 

「だがヤツは強いぞ。団長(マキシム)よりもな」 

 

 そう告げるのはザルド。ヴリトラを名乗る小人族(パルゥム)にボコボコにされたのは何人か居るが、自ら挑んだのはザルドのみ。

 

「お前が言うならそうなんだろうな。しかし目的が分からん」

 

 黒竜に挑むな、ではなく黒竜を挑むまでの期間を延ばせ、とのこと。つまり黒竜を崇める黒竜教ではない。

 

 後黒竜の鱗のおかげで助かってる村々の位置を教えて対処しろと命じたらしい。ゼウスはともかくヘラ相手に。怖いものなしか?

 

「お前は分かるか?」

「さてな。一つ言えることは、俺達は頼りないと思われていながら、強くなれると期待されているぐらいか」

 

 そしてその期待は未来であり、今ではない。

 

「ならばせめて、示してやるだけだ。俺達をなめるなと」

 

 

 

 

 

「見た目もかわいいし、夫にしてあげようかしら」

「年の差を考えろババア。あの子はもっとお淑やかで品のある女と肩を並べ陽の光の下を歩くべきだ」

 

 小姑かよ。

 

「メーテリアとか?」

「仲良くはなれるだろうが、そちらには発展しないだろう」

 

 むしろ伯母と甥みたいな関係になりそうだな、と思う団員の一人が蹴り飛ばされた。

 

「誰の妹がおばさんだ」

「こ、声に出してない………」

「声に出さずとも感じた」

 

 理不尽である。

 しかし、とアルフィアはイメージする。

 

 メーテリアがいつか子をなし、母の白を受け継いだその子供に自分とあの子が冒険を聞かせる。悪くはない。問題は妹の相手か。半端な輩は潰してしまいそうだ。

 

「何か最近のアルフィア暴走しがちじゃない?」

「ヘラ様が言うにはあれは母性大暴走(オーバーマザー)。過ぎると存在しない記憶を発症することあるから、まだ初期症状」

 

 もしリリウスがつい本音を我慢できず『頭を撫でてほしい』と要求していたらこの程度の暴走では済まなかったろう。

 

「アルヴァはどう思う?」

「マクールは凄く強い。それは間違いないですよ………そんな強い人が、私達は黒竜に勝てないと判断しているんですよね」

 

 それは純然たる事実。まずはそこを認めたうえで、認めさせる。

 

「そしてあわよくばお嫁さんになる!」

「ブレないわね」

「貴方達に言われたくはない」

 

 結論、どっちもどっち。

 

 

 

「お、はじまるぞ」

 

 オラリオ中に浮かび上がる神の鏡。『戦争遊戯(ウォー・ゲーム)』を観戦するための神の力に都市中が目を向ける。

 

 ゼウスとヘラに挑むなんて何時以来か。最近だとセトあたりが挑んでいた。

 

「今回挑んだのは何処の神の眷族とも知れぬ小僧一人、か」

調教師(テイマー)らしいが、深層の階層主か?」

 

 ガレスとリヴェリアは巨大すぎる蛇を見る。ただ地上に現れただけで歓楽街が半壊し、移動で完全に潰された。神イシュタルはとてもキレているという。

 

 なんなら『魅了』を使い従わせようとしたとも聞いているが、こうして『戦争遊戯(ウォー・ゲーム)』が開催されているのなら噂はあくまで噂なのだろう。

 

「あそこまでの存在を操るとなると、何か特殊なスキルがあるのかな?」

「かっかっかっ! それはあれか? 自分より強い同族が、世界の敵なんぞになってる現状を受け入れられず少しでも下げたい嫉妬か?」

 

 フィンの言葉を笑い飛ばすノアール。

 

調教師(テイマー)ならば、あの蛇竜より遥かに強い。説明などそれで十分だ」

「随分とあのガキを高く評価してるじゃないか」

「さてはこの前飲みに行ったというのはあの小僧か」

 

 バーラとダインは面白そうだ、と鏡を見る。

 

「それでも、僕等が彼を知らなかったように、彼は【ゼウス】と【ヘラ】を知らない」

 

 情報としては知っているのだろう。だが、あれ程の強者が挑めばフィン達とてその存在を知る。

 

「彼は今日知ることになる。ゼウスとヘラという、絶対的な頂を──」

 

 

『さあ! 始まります世紀の一戦! 単身にて闇派閥(イヴィルス)を殲滅した謎の少年ヴリトラ! ゼウスとヘラ、千年の歴史にどう挑むか!』

『これは、ガネーシャだ!』

 

 解説はガネーシャである。

 

『ていうかヴリトラって、後でインドラブチギレないかな』

『ガネーシャ様が素でビビってる!? 一体何者なんだあ、ヴリトラ少年! そう、少年! かわいいけど少年だちくしょー!』

 

 バベルにて神々はそれがいいんだろ、と呆れる。

 特段慌てている様子も真面目に観戦しているものもいない。誰もがゼウスとヘラの勝利を疑わないからだ。

 

『それでは、試合開始ーー!!』

 

 初手はリリウス。まだ距離がある中、剣を振るう。なお、神々の言葉でその戦略は………

 

 

 

「斬光・六花(りっか)

 

 

 

「「「開幕ぶっぱだあああぁぁぁああ!?」」」

 

 そう、呼ばれるらしい。

 


 

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