ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

323 / 386
醜い嫉妬

「話が盛り上がっているようだな」

「あら〜、皆仲良く出来ているのね」

 

 と、モンスターと人の奇妙な宴に新たな影が現れる。

 

 黒いローブで全身を隠した黒衣の人物と、白髪の牛人の女性(カウズ)

 リリは一部を見て思わず「でっ………」と声を漏らした。

 

「この子達は、人が大好きだものね〜。仲良くしてくれて嬉しいわ………飴をあげましょう」

 

 飴と言いながらだされたそれはどう見ても高級食材(クリスタル・ドロップ)。瓶詰め価格で三万ヴァリス以上。下級冒険者の装備より高い。

 

「あ、ど、どうも………」

 

 先程リド達から貰った肉果実(ミルーツ)もそうだが、何気に地上では高級なダンジョン採取物がポンポン出てくる。ダンジョン内だから当たり前と言えば当たり前なのだろうか?

 

「えっと、貴方は………」

「私はエウロペ。貴方がベルちゃんね? まあまあ、リリウスの言う通り真っ白な髪なのね………うふふ。リリウスもそうだけど、なんだか親近感が湧くわね」

 

 大人の女性だ、とベルは思った。年上の女性の知り合いの多いベルではあるが、年の離れた女性ともなれば神々やミアぐらい。ミアは確かに大人の女性だが肝っ玉母さんと言うか、親しみは覚えるがそういう目で見れない相手。

 

 この人はなんか甘い匂いがする。思わずドギマギするベルをリューや春姫がジーと見つめる。

 

「この方は? 冒険者、ではありませんよね?」

 

 中層に2人で来れる冒険者となると数が減る。ましてやこれ程の美女となれば話題にならないなどあり得ない。多くの冒険者を調べていたリリが知らないとなると、彼女は冒険者ではないのだろう。

 

「私はエウロペ。ええ、冒険者ではないわ。ここに住んでいるの」

「ここって…………ダンジョンに!?」

「そんなに驚くことじゃないわ。リドやタロス達は強いし、ダンジョンがこの子達の為に用意してくれたここも、色んな階層にあるから」

 

 因みにこの未開拓領域はモンスターの生まれない安全領域(セーフティゾーン)でもある。異端児(ゼノス)達の拠点であり、『里』と呼んでいるらしい。

 

「ダンジョンが?」

「リド達はそう思ってるわ。私も、そう思うの……モンスターはこの子達を嫌うけど、ダンジョンはこの子達を生かそうと思ってくれているって」

 

 そう言って微笑むエウロペの顔には慈愛に溢れていて、ベルは釣られて笑う。

 

「そうですね。そうだと、いいですね」

 

 

 

 

「それで、結果は?」

 

 リューは一人、アリーゼ達と接触していた。

 あの後ウィーネをダンジョンに残し地上に戻ってきた【ヘスティア・ファミリア】………ウィーネの涙を思い出し気が滅入りながらもリューは()()尾行をしていたアリーゼ達に成果を尋ねる。

 

 そう、ベル達は尾行されていた。異端児(ゼノス)を狙う密猟者(ハンター)に。

 【イケロス・ファミリア】。闇派閥(イヴィルス)との関わりの疑いがあった元正規派閥。まあ殆どゴロツキの集まりだったが。

 

「逃げられちゃったわ。慣れてるのね、ダンジョンを………私達以上に」

「逃げられた? 貴方達が?」

「主犯達にね。捕まえたのは殆ど平団員………」

 

 と言うかそういう時囮にするために連れていたのだろう。まあおかげで色々聞き出せたが。

 

「新しい買い取り先も分かったし、またネーゼ達に出張を頼むことになりそうね」

 

 異端児(ゼノス)を買い取る怪物趣味の貴族や商人………リリウスが一度エルリアという国の買い手達を殺し尽くしたが【イケロス・ファミリア】は懲りもせず新たな買い手を見つけている。

 

 『里』に保護された異端児(ゼノス)ならリドやアリーゼ達が守るのだが、やはり生まれたばかりの個体を先に見つけられたりすると守れない。

 

 【イケロス・ファミリア】を叩こうにも人工迷宮(クノッソス)攻略は容易ではなく、かと言って【ロキ・ファミリア】に協力要請を出せば捕まっている異端児(ゼノス)は殺されるだろうし、なんならフィンは怪物と手を取り合っていたという事実を使いこちらに首輪を付けるだろう。

 

「【アストレア・ファミリア(うち)】の人気は喉から手が出るほど欲しいだろうからなぁ、あの勇者様。リリウスに謝ってあたしを嫁にすりゃすぐなのにな」

 

 でもリリウスに謝らせることが先らしい。

 

「まあ【勇者(ブレイバー)】も近々人工迷宮(クノッソス)攻略に乗り出すみたいだし、そこには私達も呼ばれる可能性も高いし、その時に【イケロス・ファミリア】を今度こそとっちめて異端児(ゼノス)を解放しましょう! いるかはわからないけど」

 

 カーバンクルのカールとバーバリアンのバー・バル曰く空の檻か、死体が転がっていたらしい。リリウスが何度か出撃してもその頃には売られているか殺されているか。

 

 リリウスを呼ぶ原因になっているからか、生まれたばかりでも捕まっていない個体が増えているが。逆に言えば、【イケロス・ファミリア】はリリウスに喧嘩を売っているのだ。

 

「こわい物知らずかよ」

「あるいは、それでも優先したいのか…………」

 

 

 

 

 

 

「あの()()()共に手を出せばスカディが動く。それを知りながら何故やる」

 

 レヴィスはディックスと言う男に問いかける。

 ディオニュソス曰く『里』の者ではない()()()の場合そこまで強くやる気にならない。良くも悪くも人もモンスターも平等なリリウスは、故に知り合いでもない存在の為に必死にはならない。

 

 オラリオが人質にされている現状、深くは入りこまない。リリウスは異端児(ゼノス)の友が人の友より多いだけで、決して異端児(ゼノス)贔屓ではない。

 

「おとなしく生まれたてを襲えばいいものを」

「はっ。何も知らねえ生まれたて殺して楽しいものかよ。ある程度育って、怪物の分際で夢なんざ持つ奴等を踏みにじらねえと気が済まねえ!」

 

 嫌悪、厭悪………そして嫉妬を含んだ声色にレヴィスはくだらないと鼻を鳴らす。要するに『宿願』を植え付けられた男が夢を持つ何かに当たりたいだけというわけだ。

 

 

 

 

 

「ん?」

 

 サーガラの背中でドラゴンの肉を食っていたリリウスは急に光ったフィルヴィスを見る。Lv.4ほどしか無かったフィルヴィスの気配が強まり膨大な魔力が溢れ出す。

 

「っ! クソ、やられた!」

 

 分身を解除したのだろう。破壊されたか、自害したか。正規手順ではない魔法の解除。苦しげに呻くフィルヴィスはしかしすぐに顔を上げる。

 

「【イケロス・ファミリア】が異端児(ゼノス)を攫った!」

「あのカスども………。だがまあ、それぐらいなら…」

 

 なにせ理知がある。そう分かりやすく暴れたりはしないだろう。

 

「攫われたのは竜女(ウィーネ)だ。紅石(いし)を奪われ暴走している」

「里の連中は?」

「幸い死者はいない………」

 

 それはリリウスに対して完全に喧嘩を売るどころか殺してくださいというようなものだからだ。

 

「そうか………いい加減殺すか、【イケロス・ファミリア】」

 

 リリウスは特段ウィーネに思い入れはない。まだ知り合ってもいないのだから。だが、今回のこれは明らかに異端児(ゼノス)に人を襲わせるためにやっている。その目的までは不明だが……… 

 

「オオオオオオオオオオ!!」

 

 と、吼えるは深層の階層主。下層の階層主を超えるヴェノムスカイ・センチピード・ドラゴンすら恐れ従う真性の竜。片手の指を食われご立腹のようだ。

 ヘビの特徴を持たない竜にリリウスは舌打ち。

 

「アステリオス、先に地上に向かえ」

「む………」

「お前が弱いからじゃねえ。新入りで、連携が取れねえ」

 

 だから抜く。この階層主はなるほど強いが、それでも【ゼウス】と【ヘラ】の精鋭にも迫るであろうリリウス達の脅威になりえない。

 

 問題は階層主に呼ばれた竜の群。無限に湧き出る竜が邪魔だ。道を広げてもすぐに塞がる。が、その数瞬で十分。

 

 リリウスはヒョイとアステリオスを持ち上げる。

 

「…………え?」

「体丸めてろ。ぶつかると手足千切れるぞ」

「え? え!?」

 

 困惑し、しかし慌てて足を抱え丸くなるアステリオス。リリウスは蹴り飛ばした。

 

 竜の鱗も骨も砕きながら吹き飛ぶアステリオス。

 ブラックライノスの亜種である漆黒の雄牛(ミノタウロス)の耐久でもかなりボロボロだが一瞬広がった道に向かい『マーメイドの血』を投げつけておく。これで問題ない。

 


 

原作通りのところはスキップスキップ。異端児編は3巻分だからね。オラトリオ含めるともっと

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。