ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
とまあ、演説したリリウスではあるが。
別に言うほどのことは思ってない。全く無いわけではないが…………。
ベルが人前で庇ったらしいからその説明と、丁度いいから
リリウスには理解出来ないが、怪物に敵意がなかろうと、怪物であると言うだけで、人類は言葉を交わせる事が出来ようと受け入れない。
そうとも、認められない。怪物との融和を結ぶ異端の英雄など、求めていない。
人と言葉をかわすモンスターなど害にしかならない。心優しい者から殺す、毒にほかならない。
で? ならばどうする。戦うか?
ただ一人でオラリオを蹂躙できるリリウスと?
明らかに
否、戦うか? などと疑問を持つことは許されない。
戦わなくてはならない。
「アホか」
そんなフィンの内面を読んだかのように、ただ一言発するリリウス。
「何を悲痛を浮かべている? 考えを巡らせるだけで、決死の行動をしているつもりか。覚悟を決めたと嘯くのなら、せめて、
戦うと決めた。決めただけ。
倒す手段も思いつかない。なら何もしていないのと同じで、せめてもの抵抗もしやしない。栄光ある勝利にこだわるあまり、僅かな可能性に賭けることも出来ない。
「
【ゼウス】と【ヘラ】の眷族相手に、これ以上民から犠牲を出さぬと民を犠牲にする勝率の高い策ではなく、冒険者達を信じ民を守りきった7年前の方がまだやる気に満ちていた。
なまじ頭が良く成熟していたが故に悲願を定めたその日から大して変わらぬとしても、ならばせめて少しずつでも進んだ道を戻るなと、『英雄に憧れる子供』を叱責するリリウス。
「だからといって………モンスターと組むのかい?」
「別段人類を裏切るつもりなぞない」
結局出した最初の
「以前言われた。停滞しているが故に後進の手を引けていると………ああ、認めてやろう。高みへ近付かず、それでも層は厚くなっていると」
リヴェリアがその言葉に肩を揺らす。
「
その程度の役には立つだろうと、何処からも上から目線で、何処までも高慢。
それを認める事など、冒険者には出来ない。
「お、おいリウっち!」
と、今度はリドが叫ぶ。突然の自分達の存在の暴露などで困惑していたが、冒険者に敵意を向けられるリリウスに我慢出来なくなったようだ。
「なあ、聞いてくれよ! リウっちは口は悪いしおっそろしいし修行でも容赦とかしねえけど、悪い奴じゃねえんだよ。別に人類の敵って訳でもねえ………ちょっと口悪いけど良い奴なんだ!」
幼子な見た目のリリウスを冒険者の悪意から庇うように前に立つ
それに対する人類の反応は…………
「なんて悍ましい!!」
嫌悪である。
人を喰らうその口で紡がれる人の言葉など、人類から見れば人から奪い、騙る悪しき鳴き声。
エルフの叫びにたじろぐ人間のような反応がより神経を逆撫でする。
「貴方は、モンスターが人の言葉を騙った、それだけを理由に人類を裏切るのですか!」
「待ってください! お願いです、待って………! 私達を嫌うのは当然です。憎んだって構わない……でも、でもリリウスは違うのです!」
今度はハーピィのフィア。醜悪であるはずの怪物の顔は人類基準で見ても美しい。故にリドよりも冒険者の耳を奪う。
「リリウスは貴方達の敵じゃありません!」
だから、嫌わないでと涙を流す怪物の献身。人の為に動き人の為に涙を流す怪物に、人類に動揺が走る。
「モンスターが、何を!」
「ですがアリシアさん、奴等の言葉をただ無視するのは………」
「我々はモンスターに劣る蛮族ということになるのでは………」
特に動揺が深いのはエルフ。怪物然としたリドから美しい容姿のフィア。ただの偶然でありながらその流れは冒険者の心に強い動揺を与える。
「な、ら………今回の騒動をどう説明する」
ヴィーヴルは地上で暴れていた。あれも
小賢しい小人にリリウスはくだらないというように肩を竦めた。
「額の
ヴィーヴルが額の石を奪われると凶暴化する。冒険者なら誰でも知っている。それを故意に行い、故意に地上に放った
「リヴィラに関しても同様だ。ラーニェ達………仲間を傷つけられ、攫われ、
戦ったのだからわかる。
「此奴等は人と歩めると、俺は確信した。故に俺は此奴等と共に黒竜を討つ。人類の悲願だろう? 邪魔をするな」
信じられるか、という言葉は出ない。
出せるわけがないのだ。事実として自分達以上の戦力に……。
「リリウス、さんは…………」
だから、絞り出された少女の声は否定でも拒絶でもない。
「
問いかけにも似たそれは、事実ただの懇願であった。否定してほしいと、人類を選んでくれと言う泣き出しそうな少女の声。リリウスは不思議そうに首を傾げた。
「共に歩むと言ったろう。黒竜を討ちたいなら、相応の強さを手にして俺達の横に立てばいい」
その言葉に人類への敵意はなく、その言葉に怪物への贔屓はなく。ただ
彼の前では自分はモンスターと同列。それを認めることなどアイズには出来なかった。
「【
「
銀の髪が胡桃色に変わり、紫紺の瞳は藍色に染まる。今度は
恐らくは曼荼羅の数だけ他者の魔法を扱う………それがあのスキル、或いは魔法の正体。
曼荼羅の光が薄暗くなることから、一度発動したら一つの対象を使えるのは一度だけ。
切り替えられた人物に合わせて髪質と瞳が変わる。
艷やかな胡桃色の髪は普段のくせっ毛ではなくサラサラと流れていた。
フィンが探る記憶の中で、リリウスの知り合いに限定しあの髪と瞳は…………
「【
放たれる業火。アイズの風を容易く焼き尽くす。
「ぬううう!!」
ガレスが全身から血を噴き出す身体で突撃する。鎧も砕け武器もない満身創痍。
フィンも挟むように迫る。
「【禍つ彼岸の花】──【ゴコウ】」
5つの斬撃がフィンとガレスを斬り飛ばす。
「づ………【アストレア・ファミリア】の……!」
魔法を知っているが故にギリギリで致命を避けたフィン。威力、速度、規模………全てがオリジナルを大きく超えているが間違いなくアリーゼと輝夜の魔法。
「っ………ああああ!!」
再び迫るアイズにリリウスが片手を向ける。紡がれるは
「っあ」
加減された雷はしかしLv.6のアイズを沈めるには十分。全身が麻痺し、動かない。
フィンが血を流しながらも槍を構えるが、それは果たして勇気なのか。
ベート、ティオネ、ティオナに続きガレスとアイズも戦闘不能。
恐怖に支配されつつあった【ロキ・ファミリア】はそれでもフィンの背中に闘志を取り戻す。
「…………いいな」
ポツリと響く声。男の声にも女の声にも聞こえるその声の主は、巨大な蛇竜。
「ヴリトラ?」
「彼等をご覧よ。弱くとも抗う………蛮勇にしろ勇気にしろ、私は好きだよ。幼い君を思い出す………今じゃそれを見れるのは私じゃないがね」
ガラガラと尾を鳴らし笑う蛇。強者へ挑む弱者を素直に称賛する。
「私はそれだけで黒竜に挑む資格があると思うけどね」
「今のままじゃ足りねえがな………………タクシャカ」
「あ〜い」
興が削がれたとでも言いたげなリリウスの言葉にタクシャカと呼ばれたドラゴニュートはすぅ、と息を吸い黒い煙を吐き出す。
「……………?」
そのままヴリトラが開けた大穴から地下に潜ろうとしたリリウスは止まる。
地下水路の奥。
「リウっち?」
傷は癒えたとはいえ、そこまで強くないアルル達もいる。
「
リリウスの言葉にヴリトラは
砕かれた筈の穴は瓦礫が粘土のように蠢き修復される。
リリウスが穴に近付くと槍のように尖り襲ってきたが眼前で止まる。
「…………範囲限定の形状変化魔法。壊しすぎたか」
どうやら
お前のせいです、あーあ。
「………………」
リリウスは黒煙の奥でこちらを見つめる視線に気づく。フィンだ。
「怪物の手を借りないと言うなら、証明してみせろ。力も覚悟も足りないお前の言葉に何の重みもない」
リリウスの第3魔法に人格改変の副次効果はないよ。じゃあ何故こうなっているかと言うと
【サンサーラ・マンダラ】
・神懸魔法 自身の人生、価値観、成長に大きな影響を与えた存在を覚者(悟りを開いた者)として、自らが悟りに至るために彼等を模倣する魔法。
発動中ステイタスの値の再分配(寂静浄土なら『耐久』『力』の値が下がり『魔力』が増える)と種族特性の変質。及び
で、その際【
冴えた頭で何時もより世界が五月蝿く感じるので若干苛つくことはあるけど、要するにこれがリリウスの素面。
つまりアルフィアみたいな性格に変化するのではなく、成長したリリウスの性格がアルフィアに似ているだけなんだよ!
次にお前等は『な、なんだってー』と書く。
現在判明
因みにこっちは神懸の効果。